No.5ベストアンサー
- 回答日時:
歴史に関するお尋ねなので、昔の時代から順を追って考えていきましょう。
歴史というものは漫画の切り貼りで早分かりできません。まず、中世になって武士が勃興し朝廷が実権を失うと、朝廷は武家に官位・官職の名目を乱発して銭を得るという道に落ち込みました。ディプロマミルならぬ官位商法でしょうか。
実際に朝廷に出仕してその官職を務めるわけではなく、もはや実体のない名目です。これを官途名(かんどな)といい、何兵衛・何右衛門・何左衛門など、よく知られています。
のちには、武家の殿様が朝廷の許しも得ずに、家来に官途名を与えるようになりました。こうなると僭称ですから、正式な官職名からズレを生じることもあります。権兵衛もその一つでしょう。由来を調べても、「権官(ごんかん)と兵衛(ひょうえ)の組み合わせだが、正式に『権の兵衛』などという官職があっただろうか」となります。
さて、中世では武士と農民がはっきり分かれていませんでした(兵農分離は、戦国時代から江戸初期にかけて行われた)。農民の有力者の中にも、官途名を得るものがありました。
さらに時代が経つと、有力ではない一般農民でさえ、「権兵衛」などと名付けるようになりました。つまり、兵農分離以後にもかかわらず、名前だけでは武士か農民か区別が付かないケースです。
網野善彦によれば、なぜ日本では農民風情(ふぜい)が官職名を好んで子供に名付けたか、理由は必ずしも分かっていないそうです。網野ほどの碩学が言うのですから、学界でも分かってないのでしょう。
それでは、武士と農民に差はなかったかというと、そんなことはありません。農民の大部分は、おおやけに名字を名乗ることが禁じられていました。それによって、農民の権兵衛と武士の権兵衛の区別はすぐ付きます。
一説に、「名無しの権兵衛」とは「名字なしの権兵衛さん」から来ているそうです。つまり、もともとは粗末な名前ではなく疑似官職名で、武士の名であったが農民にも広まり、いわば名前がインフレを起こして価値が下がり、からかいの的に選ばれてしまったと思われます。
回答が長くなりますが、もう一点述べると、やはりキーワードは「無造作」というようなことでしょう。
まず無造作ではない話をしておくと、当時の人は幼名・諱(いみな)・仮名(けみょう)・字(あざ)など幾通りもの名前を持っており、改名も比較的自由でした。武士においては、幼名は例えば「犬丸」(わざと粗末な名前を付けるという、おまじない)です。のちに元服して「権兵衛」などという仮名を名乗り、諱はまた別にあって、という感じでした。
これは、赤ちゃんに「権兵衛」と官職名を付けるのも変だし、また、諱は本名だから官職名を本名にするのも変だし、との配慮です。一方、そんな配慮ができない農民は、赤ちゃんの時から権兵衛と名付けたりしていたようです。
しかし、山本権兵衛の家(中級武士だった)では、権兵衛が六男で名付けが面倒くさくなったのか、無造作にも幼名の段階で「権兵衛」としてしまいました。すでに当時「名無しの権兵衛」などの言い回しは広まっていたので、将来からかわれるのが必至だったにもかかわらず、です。あるいは、前述の「わざと粗末な名前を付けるおまじない」だったのでしょうか。
ただし、山本権兵衛は1852年生まれで、明治初期までは改名も比較的自由でした。1872年(明治5年)に改名禁止令が出たが、すぐには厳守されなかったのが実情です。よって、そのころ改名しておけば良さそうなものだったのに、山本はそうしませんでした。
彼は若いころ気性が荒く、無造作なところがあったようです。歳を取ってからは緻密な仕事ぶりで知られていますが。
お礼が遅くなりました。歴史を十分に咀嚼されている方に、名前などについて、豊かな説明をして頂き感謝します。
1.<権の兵衛」などという官職があっただろうか」。
2.<「名無しの権兵衛」とは「名字なしの権兵衛さん」から>
3.<無造作にも幼名の段階で「権兵衛」><将来からかわれるのが必至だったにもかかわらず>
4.<「わざと粗末な名前を付けるおまじない」>
5.<そのころ改名しておけば良さそうなものだったのに>
以上は主だったものですが、沢山の新しい知識を頂きました。
No.4
- 回答日時:
質問文からは、「ごんべえ」への卑俗が「卑俗」か「非俗」か不明なのですが、文の内容から「卑俗」と判断しました。
A:>なぜ、山本には、権兵衛という卑俗な名前が付いたのでしょうか?
回答A:親がつけた。その親はごく普通の名前という認識であった。
「名無しの権兵衛」や「権兵衛が種まきゃ」という言葉が生まれた理由ですが、
まず「権兵衛(ごんべえ)」が当時の農民層に多い名前であった為に、個人を特定されない場合に使いやすかったからです。
その為に、↓の使用法が他の場合にも使われ一般化したのだと思われます。
説1
江戸時代の深川の遊郭は吉原と違って幕府公認でい為に、公式には遊女を雇用はできなかった。
その為に、遊女に男性(権兵衛)の名前を付けて、規制の目を逃れていた。
説2
入ったばかりで名前のない遊女を名無しの権兵衛と呼んでいた。
↑以外には、
赤坂の日枝神社にまつわる手鞠歌にある「名主の権兵衛」が変化した。
という説もあります。
B:>彼は、本称は「ごんべえ」であるが、これを嫌ってか公称「ごんのひょうえ」と呼ばせていました。
これについてですが、彼は戸籍上は「ごんべえ」であるが正しい読みは「ごんのひょうえ」と思い込んでいたのではないでしょうか。
【山本権兵衛】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E6%9C%AC% …
(出生時より若輩時にかけて使用した本称は「ごんべえ」であるが、進水式で祝詞用に神主がつけた名前であり、宮中でも使用したごんのひょうえが公称である。)
これについては↓のエピソードがあります。
山本権兵衛が海軍大臣の時、軍艦明石の進水式にで自分を「山本ごんのひょうえ」と語りました。
そうしたら、その後の世間では
「ごんのひょうえが種蒔きゃ烏がほじくる」とか「膝栗毛の弥次郎ひょうえ」などと、「権兵衛(ごんのひょうえ)」ネタが流行りました。
↑について、山本大臣が質問された時、以下のように答えたそうです。
「全く世間はつまらぬことを言うものだ。学者は紳士だと言われている癖に、小学生徒でも知っていることを喋喋する馬鹿さ加減がおれには解らない。古来より我が朝に設けられた右兵衛、左兵衛の官を知らぬのか。これを「うべえ」だの「さべえ」だのと言う馬鹿がいるかね。それらをおいて、おれのばかりを「ごんべえ」と言うのは理由がわからぬは。おれも今日の地位は武官であるから、「ごんのひょうえ」と言うのが正当である。だから、「ごんのひょうえ」と言ったのだ。」
私には、理屈をつけていますが、彼は「ごんのひょうえ」の方がカッコイイ! と考えていたのだろうと思います。
(だからといって「ごんべえ」を卑俗と思っていたかについては疑問がありますが)
質問者様は、
【名前が卑俗→言葉ができた】 ではなく 【そんな言葉がある理由→名前が卑俗】
という質問内容とは逆の本末転倒(結論から原因を創造する)の発想をしているように思います。
そもそも質問者様が「権兵衛」という名前が卑俗であると考える根拠は何でしょうか。
「卑俗」という評価は「DQNネーム」比べてさえ遥かに侮辱的な評価だと思います。
それに、このような不特定の存在を表す言葉は世界中にあります。
【人名を使う慣用句(9)】
http://www.eigo21.com/etc/kimagure/z128.htm
(John Doe 「訴訟で実名不明のときに付ける当事者(原告)の男性の仮名;並みの人」)
質問者様はこれらも「卑俗な名前」とお考えなのでしょうか。
早速の回答ありがとうございました。
「全く世間はつまらぬことを言うものだ。」
と山本権兵衛も言っているように、権兵衛という名の評価は低いです(もちろん、それは世の中全部の人で言っている、とは思いません)。当人の山本は、まるで反対の思いです。
そのような雰囲気の中で、権兵衛という名が付いたのは、なぜか、ということを問うています。
No.3
- 回答日時:
ご質問読ませていただきました。
「名無しの権兵衛」・「権兵衛が種まきゃ」を非俗な意味ととらえれば、そうも思いますが、私はそのようには感じませんが。
明治の頃あるいは遡り江戸時代、父・祖父が同じ名前を名乗っていた事など多々見受けられますので、その選が有力ではないでしょうか。
戸籍謄本を遡って見たり、○○村地史など読まれて見れば、そのような場面に出くわします。
ちなみに、「ごんのひょうえ」とゆう公称は役職名としては成り立ちません。
参考まで、失れしました。
早速のご回答ありがとうございました。
<父・祖父が同じ名前を名乗っていた>
こともあり得るのです。権兵衛の名前は、一族やその地域において、由緒正しい名前かもしれない、のですね。
「ごんのひょうえ」については、以下のようなWikiの山本権兵衛の説明を、鵜呑みにしました。
<出生時より若輩時にかけて使用した本称は「ごんべえ」であるが、進水式で祝詞用に神主がつけた名前であり、宮中でも使用したごんのひょうえが公称である。>
No.2
- 回答日時:
>権兵衛という卑俗な名前が付いたのでしょうか?
基本 低俗じゃないです。元々は兵衛府の権官という意味
兵衛→、天皇やその家族の近侍・護衛のために国造の子弟から選抜された舎人の機能を強化・拡充する形で天武天皇時代に成立した部署
意味→朝廷の官職について、正規の員数を越えて任命する官職。「定員外の官人」の意味。平安時代に多用
現代風に言えば、皇居を守る皇宮護衛官の予備役
戦国時代の大名でも権兵衛という名前の人は居た。
『仙石権兵衛秀久』信濃小諸藩の初代藩主
ただ、一般市民の中で「権兵衛」は百姓に多い名前だったので疎まれただけ
なので「権兵衛」は卑俗でなく高貴な名前
早速のご回答ありがとうございました。
昔は、確かに
<「権兵衛」は卑俗でなく高貴な名前>
でありました。しかし、山本権兵衛は、公称の「ごんのひょうえ」を使い、本称の「ごんべえ」を避けました。したがって当時は、本人にも世の中にも、既に非俗な名前と評価されていた、と思います。
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