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イジングモデルのシミュレーションでショットキー比熱のグラフを描いたんですが、その系に強い磁場を加えたグラフをもう一つ描いてみたら、画像のように、比熱のピークの部分が緩やかになってほんの少し高温寄りにずれました。
イジングモデルの磁場依存項が加わったことによって各粒子の励起エネルギーに幅ができたということなのかな、と何となく推測しているのですが、これはゼーマン効果とは違うものでしょうか。
また、ピークが少し右にずれた意味がわからないので、わかる方いらっしゃったら教えてください。

「ショットキー比熱に磁場の効果を加えたら」の質問画像

A 回答 (2件)

だんだん質問が高度になりますな~.



単純なイジングモデル(正方格子,単純立方格子などで強磁性,最近接相互作用)
の温度(T)-磁場(H)相図は添付の図のようになっています.
イジングスピンの向きは ±z 方向,磁場の向きも z 方向としています.
太実線の部分が相互作用により強磁性が発現(自発磁化あり)したところで,
±z のどちらの方向を向くかはハミルトニアンだけでは決まりません.
実際の物質だったら表面のちょっとしたこと,格子欠陥などによる影響,外部磁場など,
シミュレーションでしたら初期状態の選び方や途中の丸め誤差の影響,,
などによって決まります.
太破線のところはいわゆる常磁性状態で,
自発磁化はないが磁場を掛けるとその方向に磁化するという状態です.
磁場を掛けますと今のモデルではその方向に磁化が生じます.
添付の図の太矢印がそれを表しています.

さて,H=0.0[テスラ]のシミュレーションでは H=0 の線(縦軸)に沿って温度 T を変えています.
このとき,太実線から太破線へ移るところ(Tc)で強磁性状態から常磁性状態への相転移が起きますが,
上で述べたような単純なイジングモデルでは2次相転移になっています.
2次相転移では転移点で比熱が発散しますが,
H=0 のシミュレーションではその発散の兆候が見えています.

次に,H = 50.0[テスラ] では,添付の図からわかりますように,相転移が起きません.
したがって,比熱の発散も起きません.
ただし,H=0.0[テスラ] のときの発散の痕跡は残っていて,
それが赤線のブロードなピーク(発散しない)として見えているのです.
このピークは圧倒的に磁場向きのスピンが多い状態(ピークの低温側)から,
少しだけ磁場向きのスピンが多い状態への移り変わり(クロスオーバー)に
伴うものです.

それでは,青線と赤線でピークの位置がずれているのはなぜでしょう.
前に述べましたように,太実線のところにごく弱い +z 方向の磁場を掛けますと,
+z 方向に磁化が生じます.
磁場を強くしますと,その分だけ磁化を持った状態が安定化します
(圧倒的に磁場向きのスピンが多い状態).
これが熱による擾乱効果で乱され少しだけ磁場向きのスピンが多い状態になるのが
赤線のピークです.
磁場によって磁化を持った状態がより安定化されているために,
その状態を乱すためには磁場が(ほとんど)ゼロのときよりはより多くの熱エネルギーを必要とします.
これがピーク位置が高温側にずれる理由です.

> 各粒子の励起エネルギーに幅ができたということなのかな

イジングモデルはスピン間の相互作用モデルですので,
スピン1個1個が励起エネルギーを持っているわけではありません.
そういう意味で,2準位系独立粒子の集合体とは大分話が違います.

ゼーマン効果は,狭い意味では原子から放出される電磁波のスペクトルが磁場を掛けることにより
分裂することを言います.
これは磁場をかけると「上向き電子スピン」と「下向き電子スピン」のエネルギーが異なるために
スペクトルが分裂するのです.
スピンハミルトニアンで磁場を考えると -Hσ (σは今はイジングスピンと思えばよい)の項が現れますが,
この項をゼーマン項ということがあります.

なお,一般的な性質として(特殊な場合を除いて),
比熱は T→0 と T→∞ で共にゼロになります.
「ショットキー比熱に磁場の効果を加えたら」の回答画像1
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この回答へのお礼

助かりました

度々ありがとうございます!非常にわかりやすいです。
2準位系独立粒子の集合体とイジングモデルではショットキー型の定性的な説明に違いがあるのですね。
2準位系独立粒子の場合は、温度が各粒子の励起エネルギーに相当するところまでいくと急にたくさんの粒子が励起エネルギーを必要とするから比熱のピークが現れる、
ということだったと思いますが、イジングモデルにおいて「磁場向きのスピンが多い状態」から「少しだけ磁場向きのスピンが多い状態」への移行の際に[ある決まった温度の時だけ]たくさんの熱エネルギーが必要とされる定性的な理由というのはあるのでしょうか?
H=0の時の強磁性状態→常磁性状態の相転移時に比熱が発散する定性的な理由がわかれば理解できるような気もするのですが・・・。

お礼日時:2017/01/15 00:51

> H=0の時の強磁性状態→常磁性状態の相転移時に比熱が発散する定性的な理由



定磁性状態ではスピンがランダムな方向を向いているとすると,
↑↑(or ↓↓)ペアと↑↓(or ↓↑)ペアがほぼ同数あるわけで,
エネルギーはほとんどゼロ.
強磁性状態ではほとんどのスピンが↑方向を向いていますから,
-(J/4)×(相互作用数)がエネルギーです.
実際は,常磁性でも T_c に近くなるとクラスターができて
エネルギーゼロではなくなりますがね.
つまり,T_c 付近でエネルギーが急激に変わるので,
比熱が大きくなるのです.
発散するかどうかは,相転移の次数,あるいは相転移かクロスオーバーかによります.
この比熱増大がなまったものが磁場中での比熱ピーク(クロスオーバーで発散しない)と思えばよいでしょう.

前の回答で
> 比熱は T→0 と T→∞ で共にゼロになります.
と書いたのはちょっと筆が滑りました.
T→0 の方はOKですが,T→∞ はちょっと前提条件が要ります.
系がとりうるエネルギーに上限があるときは(今のイジングモデルはそうなっている)
T→∞ で比熱はゼロに近づきます.
一方,上限がないときは(運動エネルギーなどは上限がない)そうなりません.
実際,理想気体の比熱は温度によらない定数です.
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この回答へのお礼

ありがとう

なるほど、言われてみれば簡単に思えますね。
よく理解できました。ありがとうございます。

お礼日時:2017/01/15 17:11

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