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「どですかでん」は黒澤監督の壮大な(?)実験作といわれているようですが、上映当時の各層の反応・反響はどうだったのでしょうか?また、製作にあたって黒澤監督がめざしたものとは何でしょうか?ビデオで見ましたが、凄く前衛的で強烈なインパクトのある映像に感じました。内容は多岐にわたり、筋立てて理解することはできませんでした。それから、この映画のイメージキャラクター(?)の電車の車掌になりきる少年は何者なのでしょうか?俳優ではないのでは・・・。

A 回答 (3件)

黒澤監督の映画作品はすべて壮大な実験作です。

(ご本人の言葉です。)まずは山本周五郎の原作「季節のない町」読んでください。この原作と、黒沢監督の画家としての色彩感覚が織り成す幻想的な物語です。電車の運転手(車掌ではありません)になりきる少年と、彼に向かって電車馬鹿となじる少年たちを比べてください。電車馬鹿には永遠に変わらない、信じるものがあります。今の子供たちにはそれがあるのでしょうか。心の奥底に電車馬鹿をうらやむ気持ちがないでしょうか?
それを否定したいがために、石を投げつけるのではないのでしょうか。
 自分の生活とこの映画の複数の主人公たちの生活を比べてください。彼らは外界のことは知らずに、狭い空間の中を、精一杯生きています。人殺しや詐欺などが起こる空間でしょうか?皆さんの周りはいかがでしょう?この特殊な空間で生きる人々を象徴しているのが電車馬鹿六ちゃんです。そこへ、日本独特の落語の味付けが加味されているように思えます。
 「どですかでん」は黒澤監督初のカラー映画です。黒澤監督は、周りの映画がすべてカラーになったあともいつまでも、白黒映画を撮っていました。(確か20年近く) その間カラーで撮らなければならない題材をずっと暖めていたのだと思います。しかし、興行的には失敗でした。このこともひとつの原因と思いますが、その後自殺未遂を起こしました。それまでの白黒時代劇が(世界的に)あまりにすばらしかったので、その期待とは全く別物の作品だったからでしょう。黒澤監督は、時代劇にこだわりを持たずに多方面の映画を作ろうとされていたようです。
電車の少年は「赤ひげ」ですばらしい子役を演じているので是非見てください。
黒澤監督はこの作品を機に、当たり続けた時代劇から脱皮し、次の方向へ向かって行ったのだと思います。そのひとつが山本周五郎の世界と黒澤明の世界の融合なのだと思います。「雨あがる」と最後の脚本がそれにあたるのでしょうか。
絵画と映画の融合ということが可能ならば、「どですかでん」「夢」がそれにあたるのでしょうか。「影武者」にもそんなシ-ンがあります。
 話が広がってしまいましたが、黒澤明は世界に誇れる日本人です。是非1本づつ作品をご覧になってください。
 
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1970年当時に行われた座談会で、以下のような発言がされています。



熊井啓〔映画監督〕:「赤ひげ」も同じ原作者で、りっぱな写真なんですが。ちょっとりっぱすぎて、何か戸惑いを感じました。が、今度の映画は、見ていまして、ぼく自身のことをいわれているような、冷や汗をかきながら笑っているという、感じで見ていました。紙一重でぼくなんか、あの世界に入っていく人間ですから。親近感がある。それでいてねらうものをねらっておられるので、ぼくは十何年来の黒澤さんの作品中で一番よかった。
山田宏一〔映画評論家〕:その意味では、ぼくは「素晴らしき日曜日」に一番近いと思う。
白井佳夫〔映画評論家〕:フランスのジャン・ルノワールが、ある年齢に達してから融通無碍な境地に達して、描く世界がポーンと自由な世界に抜けた時代がある。「どですかでん」は、いわばそれと似ている、という気がしますね。…今度の黒澤さんの作品は、カラーを得て一つ上昇した、という感じがする。自由な世界につき抜けたから早く撮れたし、ストレートにいったんだ、という気がするんですがね。
黒澤明:カラーが使えたので、とてもおもしろかった。…こんなにリラックスして撮った作品はありませんね。
熊井啓:ぼくは、「生きものの記録」なんかをもう一度思い浮かべながら見て、こうも感じました。これは、原爆か水爆が落ちたあと、ささやかに生き残った人間たちのドラマで、一種のSF映画なんじゃないか、と。こういう人間たちだけが生き残って、こういう世界を作るだろう、という予感映画ですね。単なるメルヘンじゃなくて、黒澤さんがこの映画を作った背後には、そういうものがある、という気がします。今までの黒澤作品のエネルギッシュな迫力とはまた違った、新しい世界ですね。
白井佳夫:これだけ新しい映画ができたのだから、新しい宣伝を東宝にお願いしたいですね。いい日本映画を見たがっている人たちの、待望の映画ですよ。みんなに、胸を張って見せられる作品です。成功させなければ、いけない作品だな。〔「黒澤明集成3」キネマ旬報社より抜粋〕


頭師佳孝 1955年生まれ。新藤兼人監督「母」で子役として注目され、目をつけた黒澤が「赤ひげ」の長次役に抜擢。「どですかでん」の電車狂・六ちゃん役では、チャップリンやマルセル・マルソーのパントマイム劇を参考にしたり、都電・荒川車庫で電車の運転を練習中、電車を脱線させてしまい、黒澤に「危ねえなあ」と言われた。その後「乱」の武士、「夢」の第四話「トンネル」の野口一等兵役がある。〔「黒澤明集成2」キネマ旬報社より〕
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この回答へのお礼

驚きました!ありがとうございます。こんなに詳しく書き込んでいただいて。そうですか、黒澤監督初のカラー作品というのがキーポイントかも知れませんね。それから頭師さんってれっきとした俳優さんなんですね。勉強になりました。

お礼日時:2001/07/29 16:52

少年役は、頭師佳孝さんのようです。

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この回答へのお礼

早速のご返答ありがとうございます。それから頭師さんて・・・?わかります?

お礼日時:2001/07/27 19:06

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