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『地主のうちには、旧来の祖先の土地を持っておった方もありまするけれども、またその個人の努力によって土地を作った人もある。これは岐阜県の人でありまするが、自分も老後の計をなすために農地をほしいと思って常々勤勉力行してようやく三町歩まで取ったところが、農地解放でとたんに全部取られてしまいました。老後の計を失なってとほうにくれておる。これは岐阜県の例であります。まあずいぶん北海道においても先ほどお話があったように、実際政府の方針によって北海道に移住して営々苦心して、ようやく経済が成り立つ時期に全部取られてしまって、年令も相当に達して、もはや再び働く力がないというような人もありまして、まことにお気の毒の状態が所々に存在しているんであります。今申し述べたように、法自体にもずいぶん無理があったり、また、法を執行する適用の面におきましても、いろいろ行き過ぎがあったからして、そこにいろいろの社会問題が起こってきたように私は思います。
 まず、第一に、精神的面から申しますると、所有権がほとんど無視された関係から、これは一大衝撃を受けたことはいなめない事実であります。また、旧地主の大部分というものは中小地主、いや実は大体小地主であります。全国平均がわずかに九反であります程度で、実はこれはアメリカの方の話でありまするが、日本の地主というものを財閥と考えて、大財閥を整理するような考えでやったというような話も伝わっておりまするが、とにかくそれは間違いでありまして、実は非常に中小地主で、経済力は非常に希薄であります。そういうものがその経済の基盤であるところの農地を一挙にして失いまして、そこに生活の基盤がなくなってしまつた。そこに起こってくるものは、生業は失なった失業であります。ほかの場合ならば、失業手当もあるし、また転職の世話もしてくれまするが、旧地主に限ってはそこに何ら、ただ農地証券紙のようなほんとうに価値のないような農地証券をもらった、まだずいぶん農地証券をもらわない方があります。そういうような、実に気の毒な失業状態が発生して、次いで貧困になり、貧困になるいろいろの問題がまたそこに起こってくる。中には自分の子女の生活にも、教育にも困るというようなものも起こって参っております。もちろん、旧地主のうちには、生活保護法によって生活扶助を受けているものもありますけれども、中には生活保護法によることをいさぎよしとしないものも多々ある。これらはまた悲惨な生活、中には餓死したものもあるようであります。そういう問題が起こってきた。それからまた、先ほど来問題に出ておりました農地買収対価の問題でありますが、もちろん農地については戦前戦後を通じまして農地の移動とか、価格等につきまして統制があった、相当所有権が制限せられているわけ護ります。それらを十分考慮しましても、一般的、経済的な評価から申しまして確かに安かったのは、何人も感じているのであります。しかし、これは国全体の大きな政策のためであるとがまんをしておったのでありまするが、それが一定年限の間農地として利用すべき義務があったのが、それが解除せられまして無制限に、先ほど来問題になっておるような転用転売されておる。そして思わぬ商い価格でこれが売られまして、農地改革という偶然の機会から、全く明らかな不労所得が発生したということは否定できない事実であると思います。農地改革にわれわれ賛成するゆえんは、耕す者が農耕地を所有するという原則、これはけっこうだと思うのであります。ところが、現実においては、先ほど御説明がありましたが、許可がありましても、相当たやすく実は転売転用されておりまして、そして農地を売却した者はその日にも困る生活をしておるにもかかわらず、それを買い取った者がそれを売りまして、利子生活をしておるというようなことは、非常な矛盾があります。ついこの間、これは日本経済新聞を見まして思わず感じを深くしたのでありまするが、これは日本経済新聞の今月の初めの新聞でありますが、そこにありました「日経柳壇」という川柳が載っておるのでありますが、「職をかえ農地を売って利で稼ぎ」、この通りの状態が実は現われておるのであります。まことにこの農地改革の精神を没却した事実が現われてきておるそうでありまして、かようなこと、では、いわゆる旧地主は納得できない。終戦後間もなく行なわれた農地改革に対して今なお十幾年もいろいろ主張を続けておる。そこに私は相当な理由があると思う。
 これらは一つ十分に調査会でお調べいただきたいと思うのでありますが、私たまたま昭和三十一年から二年にかけまして、こういう問題を自分で調査してみたのですが、これは全国を東北、関東、北陸、東海、四国、中国、九州と分けまして、大体各地区にティピカルなサンプリングを二県ないし数県とりまして、全国で四万二千三百五十四戸調べたのであります。その結果出た数字が、餓死した者が四十七名、変死またはこのために病死した者が二千二十三名、発狂または病気にかかって入院中の者が千七百七十一名、一家離散した者が八百五十名、通計四千六百九十名、これは実数でございます。ちょうど調査戸数に対して約一割強のこういうひどい状態が現われて参りました。これを、北海道を除きまして全国の推定戸数約三十万といたしまして、拡大推計いたしますと、全国で十四万四千八百十八人というような餓死等の不幸にあった者があるはずでございます。もちろん、これはサンプリンク調査でありまするから正確ではないのでありまするが、大体の傾向がわかるのじゃないかと思います。かような総戸数に対して一割強のいろいろの悲惨な事実が出たという政治は、これは私大いに考えなければならないというふうに考えます。明らかにそこに社会問題が発生しておると見なきゃならぬと思うのです。社会は社会構成員のために存在する。しかるに、社会の政治がある手段をとられた結果としてその社会の一割以上が非常に悲惨な状態になるという政治は、それ自身よほど反省しなければならない、かように思うのであります。そういうことを私は今度お調べになるのじゃないかと思います。農地改革自体ではなくして農地改革から流れ出たいわゆる社会的ないろいろな実態をお調べになって要すれば、これに対して適当な施策を講ずる、こういうことが、いわゆる第二条の「社会的な問題を調査審議する。」とこういう事項であると思いますが、政府の御所見を伺います。』

第34回国会 参議院 内閣委員会 第25号 昭和35年5月12日 083・下條康麿
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=103 …

A 回答 (1件)

主権は、どこにあったのか?


それが、農地解放により、小作だった小農民も、土地売買、農地売買、出来るようになっただけかもしれないですね。
 それ以前の体制は、勝手に土地売買などしたら、獄門磔にでもなったのかもしれないですね。
 農地解放ドリームが、現代では、農地崩壊バッドドリーム、主催者はいない、そんな、地上絵、そんなところかも、しれないですね。

omake.

https://my.mail.ru/mail/kitaec94411/video/_myvid …
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