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私は物理を教える立場にある者ですが、すでに完成したといわれる物理学体系においても、謎だらけに感じる部分がいっぱいあります。そのいくつかを何回かに分けて皆さんにお尋ね・ご相談したいと思います。私だけの無理解なら喜ばしいです。
さて、空間中に、正負の点電荷が一組あります。それぞれの質量は古典力学が適用されるべき大きさ、例えばkgオーダーとします。それぞれの電荷の大きさは、2点電荷間の万有引力より十分大きいクーロン引力を与えるだけの大きさ、例えばクーロンオーダーとします。この2点電荷以外に力の原因はありません。そこで、慣性系を座標系にとり、2点電荷を結ぶ方向以外の適当な初速度を与えた条件の下、この点電荷のその後の運動を古典論的に決定する基礎方程式(運動方程式が書ければ一番いい)は記述できるか?これが最初の問題です。相対論や量子論は不要(?)ですが、電磁気的な作用は完全に考慮する必要があります。

A 回答 (7件)

siegmund です.



> 以下、独り言的に整理してみます。
はその通りと思います.

手元にある本では,
ランダウ-リフシッツの理論物理学教程の「場の古典論」
に電磁力学の記述がかなりあります.
v/c に関する展開理論が中心ですが,超相対論的記述も少しあります.
正直言って,なかなか難しいです.
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この回答へのお礼

丁寧な回答を頂き有難うございました。皆様のコメントは大変役に立ちました。参考書の情報も有益でした。
ただ、角運動量保存則や慣性系の意味付けについて、新たな疑問も抱くようになりました。これについては、もしかしたら改めて質問させて頂くことがあるかもしれません。どうか、今後ともよろしく願います。
なお、もっと素朴な立場や、実験的見方からのコメントなども来るかと、やや期待していたのですが、一応、回答の投稿が落ち着いたようなので、お礼の上、〆切とさせて頂きます。ポイントは最後の回答に付けさせてもらいます。点の区別には大意ありません。

お礼日時:2001/10/25 15:30

siegmund さん適切な補足ありがとうございます。


仰るとおり電磁場の Lagrangian も書いておくべきでした。

せっかくですので少しまとめてみます。
電磁場とその中に置かれた粒子からなる系全体に対する作用Sは
 S = S_p + S_f + S_pf
の3つの部分からなります。
ここに、
 S_p:粒子のもつ性質にのみ依存する作用
 S_f:場自身の性質にのみ依存する作用
 S_pf:粒子と場との相互作用に依存する作用
です。具体的には
 S_p = - Σmc∫ds
 S_f = - 1/(16πc)∫F_{ij}F^{ij}dΩ   (dΩ = cdtdxdydz、Fは電磁場テンソル)
 S_pf = - Σ(e/c)∫A_i dx^i       (Aは4元ポテンシャル)
という形になります。
ここから変形すると、siegmund さんの回答にあるような Lagrangian になります。
私の No.4 の回答では S_f という場のみに依存する項を落としていました。
繰り返しになりましたが、このサイト用の回答ということでお許し下さい。


こちらが本題ですね。
> もしこのモデルの運動が容易に予測できないのであれば、
> 物理学の基本が完成しているとはとても思えなくなります。
の部分に関してですが、私も siegmund さんと同じ意見です。
物理学において数学的に厳密に解くことの出来る問題はほとんどありません。
高校物理などで出てくる振り子運動でさえ近似が入っています。
ある理論体系が出来たときには、厳密に解けるものは解き、
解けないものは必要な精度まで近似を使うなどして、
様々な現象に対し矛盾のない理論かどうかを検証するしかないように思います。
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この回答へのお礼

丁寧な回答を頂き有難うございました。皆様のコメントは大変役に立ちました。
ただ、角運動量保存則や慣性系の意味付けについて、新たな疑問も抱くようになりました。これについては、もしかしたら改めて質問させて頂くことがあるかもしれません。どうか、今後ともよろしく願います。
なお、もっと素朴な立場や、実験的見方からのコメントなども来るかと、やや期待していたのですが、一応、回答の投稿が落ち着いたようなので、お礼の上、〆切とさせて頂きます。ポイントは最後の回答に付けさせてもらいます。点の区別には大意ありません。

お礼日時:2001/10/25 15:33

stomachman さんご指摘のように,


あるいは guiter さんの No.4 のご回答の趣旨のように,
「完全に考慮」というのが難しいところで,
電磁力学とでも言うべき話です

普通のニュートン力学はガリレイ不変な形式になっているのに対し,
電磁場のマクスウェル方程式はローレンツ不変な形式ですから,
「完全に考慮」するなら,両者は両立しません.
guiter さんご指摘のように,「完全に考慮」なら特殊相対論的記述が必要です.

粒子の速度が光速に比べて小さいときは,v/c の最低次まで取ればよいわけで,
これが普通の電磁気学のテキストに載っている記述です.
ビオ・サバールの法則やローレンツ力も上の意味で v/c の最低次の近似です.
実際,guiter さんが No.4 で書かれた相対論的ラグランジアン
 L = - mc^2√(1-v^2/c^2) - eφ + e/c*(A・v)
で v/c の最低次まで取り,
作用積分極値条件からオイラー・ラグランジュ方程式を作ると
ローレンツ力が出てきます.

難しすぎるからでしょうが,
普通の電磁気学の教科書には余りこういうことには触れられていません.
したがって,v/c の最低次の近似の式とマクスウェル方程式をコンシステントでないように
組み合わせたりするとおかしな結果になることがあります.
実は,私も電磁気学の授業で学生から
「こういう問題で,○○の式とマクスウェル方程式とをこういう風に使うと
答が違っちゃうんですが,なぜなんでしょうか」
と聞かれて即答できなかった経験があります.
結局,「今すぐにはわかりません.来週まで待って下さい」ということになりました.
ちょっと考えてどうなっているかわかりました.
組み合わせ方が v/c の次数をコンシステントに引き出すように
なっていなかったのです.

話が横道にそれました.
「完全に考慮」するには,guiter さんの No.4 のラグランジアンに
電磁場のラグランジアン
 (1/2)(E・D - H・B)
を加えればOKです.
電磁場のラグランジアンは普通 -ρφ + j・A がついていますが,
今の話では電荷と電流は荷電粒子で生じているわけですから,
-ρφ + j・A は荷電粒子との相互作用項で,
粒子側と電磁場側の双方から考慮すると相互作用を2重に数えてしまいます.
結局,ラグランジアンは
L = - mc^2√(1-v^2/c^2) - eφ + e/c*(A・v) + (1/2)(E・D - H・B)
で,粒子が多数あれば右辺の最初の3項が粒子の関しての和になります.
これが場の自由度まで含んだラグランジアンということになります.

これと作用積分極値条件から連立偏微分方程式が出てきますが,
まともに解くのはどうにもならないでしょう.
物理的な様子を知るための概念が,
ポインティングベクトルやラーモアの放射公式などです.

> もしこのモデルの運動が容易に予測できないのであれば、
> 物理学の基本が完成しているとはとても思えなくなります。

具体的問題の運動の様子が容易にわかるのかどうかと,
基本法則がわかっているかどうかは別の問題と思います.

stomachman さん:
> 慣性系を適切に選ぶと、
> どちらの質点も同じように光子を放出しながら原点の周りをぐるぐる巡って、
> ついには原点に落ち込む.

歴史的にはラザフォード原子模型の古典的不安定性として有名ですね.

この回答への補足

ありがとうございます。初等的な教科書が欲求不満を与える理由まで含め、大変見通しよくなってまいりました。(解けるはどうかは別にすれば)この電磁場を含むラグランジアンが、最初にお尋ねした基礎方程式を原理的に決めている、、これで解決か、、、
以下、独り言的に整理してみます。
2つの点電荷は、相互に相手が感じる場をつくりあいながら、場が担う分も考慮した重心のまわりの角運動量を保存しながら運動する。ただし、空間に広がりゆく電磁波があるので点電荷の力学的エネルギーや角運動量は保存せず減速の一途をたどる。それでも(場も含めた)系の重心に固定した座標系は慣性系であり、この慣性系で記述する点電荷の位置および双方が感じる場の時間変化の全ては、特殊相対論に基づく2体系のラグランジアンをもとに原理的には完全に決定される。
これでいいでしょうか。

補足日時:2001/10/15 15:48
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補足です。



通常の力学では相互作用の瞬時の伝播という前提により、
それ自身の中にある不正確さを含んでいます。
実際には相互作用は有限の速度(光速度c)で伝播し、
この伝播速度がどの慣性系から見ても同一である(相対性原理)ことや
Maxwell 方程式の座標変換による不変性などを考えると、
どうしても Lorentz 変換や相対性理論などが絡んでくることになります。

stomachman さんも書かれていますが
特殊相対論の論文名は「運動する物体の電気力学」です。
Einstein は古典力学と電磁気学の統一をしたわけです。

ここで、外場の中の電荷 e に対する Lorentz 不変な Lagrangian は
 L = - mc^2√(1-v^2/c^2) - eφ + e/c*(A・v)           …(1)
とかけます。(第3項のvはベクトルでA・vは内積)
ここで、私のNo.1での回答は v/c のべきで展開したときの0次近似です。
相互作用の伝播速度が有限であることからくる
ポテンシャルの遅延を完全に無視しているわけです。
念のためもう一度0次近似の Lagrangian を書くと
 L0 = Σmi(vi^2)/2 - e1e2/r
ですね。

今度は2次まで考えてみます。
数式を書くのが大変なので結果だけですが、
 L = L0 + Σmi(vi^4)/(8c^2) + e1e2/(2r*c^2)*{(v1・v2)+(v1・n)(v2・n)}
のようになります。
(n はe1からe2へ向かう単位ベクトル、a・bは内積)
ただし、ここまでの精度ではまだ電磁波の放射は考慮されていません。
Lagrangian が粒子の位置と速度だけに依存し場の自由度を含んでいないことからもわかりますね。
実は、電磁波の放射およびそれによる場の発生は3次の近似で初めて現われます。

ご質問の「点電荷のその後の運動を古典論的に決定する基礎方程式」は(1)式ということになりますが、
この式から v、φ、A などを決定するためにはある程度近似しないと
(今回の近似とは逆に超相対論的近似も含めて)
解くことが出来ないということですね。

この回答への補足

貴重なお時間を頂き解説下さいましてありがとうございます。本質がだいぶ明らかになってまいりました。クーロン力以上の電磁気効果を取り入れるということは、とりもなおさず相対論を考慮することなのですね。
私が2体問題を持ち出したのは、容易に解けない問題を提案したかったからではありません。力学系の中で、自己完結的に議論できる最も簡単な系が孤立2体系であり、これが分かるようでなければ、物理の基本法則を知った気持ちにはなれないという信念(ただし物理教育的な立場からの)に基づいております。そして、今回考えたようなモデルは、(実現は難しいが)思考実験系としては極めて明確でリアルなものです。例えば、今度は、両方とも同符号の電荷にして、万有引力とクーロン反発力を完全に相殺させてみます。すると、スカラーポテンシャルはなくなり、貴兄のおっしゃる高次の項の効果がもろに効いてくると思いますが、もしこのモデルの運動が容易に予測できないのであれば、物理学の基本が完成しているとはとても思えなくなります。
長くなりました。貴兄の解説に関する疑問などもあるのですが、ご迷惑と思いますので控えます。相対論などについてもう少し勉強するのが先決と自覚しております。「お礼」の指定をすべきところですが、そうすると締め切ってしまうことになるらしいので、別の視点からのご意見や議論などの場として、もう少しこの回答受付を継続させて頂くことをお許し下さい。

補足日時:2001/10/12 17:59
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よくは分かりません。

どこまで特殊相対性理論(=運動する物体の電気力学)を無視するか微妙な話。
でも、クーロン力の他に、サイクロトロン放射で生じる光子が持ち去る運動量を勘定に入れて運動方程式を作れば、大体宜しいのではないでしょうか。加速度と放射の関係は天下りに与えてやることになりますが。
慣性系を適切に選ぶと、どちらの質点も同じように光子を放出しながら原点の周りをぐるぐる巡って、ついには原点に落ち込む。だから運動は慣性系に固定された平面上で起こる。座標系に依らず光子が同じ速さを持っているからこういう事が言える訳で、既に特殊相対性理論が紛れ込んでいるようにも思いますが…
 一方の放射を他方が受ける相互作用の効果についてまで考慮すると、話はややこしくなりますね。「完全に考慮」ってのが悩ましい。
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万有引力は小さいので無視するとして、電磁気的な作用は完全に、


ですか。方程式系を「記述」するだけであれば、ローレンツの力に
よる運動方程式と、マクスウェルの方程式系を連立させた形でいいの
ではないでしょうか。電流の部分は運動する荷電粒子で適当に置き
替えればいいでしょう。

ただ、これだと複雑過ぎて解けそうにはありませんね。実際の物理学の
世界では正面突破はとりあえず諦めて、個別の問題でいかにうまく近似
するか、という方向で進んでいるのでは? 専門家では無いのでよく
分かりませんが。

質問の例であれば、近似として本来静電場・静磁場の法則である
クーロンの法則とビオ・サバールの法則をマクスウェルの方程式系の
代りに持ってきて、微小時間ごとに逐次的に数値計算する、とか。

荷電粒子の運動を基礎法則から厳密に記述しようとするときの問題に
ついては、以下の文献にある程度のことが書かれています。

「物理学入門 上」砂川重信著、岩波書店(1981)
「理論電磁気学」第2版、砂川重信著、紀伊国屋書店(1973)
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以下の話は参考になりますでしょうか?



2つの粒子にそれぞれ適当な初速を与えた場合でも、
重心系で考えると、慣性質量
 μ = m1m2/(m1+m2)
を用いて Lagrangian は
 L = μ/2*(x'^2 + y'^2 + z'^2) + ke^2/r
と一粒子の運動に帰着出来ますね。
ここで x などは相対座標、x' などはその時間微分、r は相対距離です。
また、表記が面倒なだけなので2粒子とも電荷は e としました。

今は2粒子間に働く力はクーロン力のみなので角運動量が保存しています。
したがって、重心系から見ている人にとって2粒子はある平面上を動くことになります。
その平面を xy として
 x = r*cosφ
 y = r*sinφ
と変換すると Lagrangian は
 L = μ/2*(r'^2 + r^2*φ'^2) + ke^2/r
となります。
すると、Euler-Lagrange 方程式は
 μr" - μrφ'^2 + ke^2/r^2 = 0  …(1)
 ( μr^2φ' )' = 0         …(2)
のようになります。

(2)式から、mr^2φ' = L(定数) が得られますが、
このLが2粒子の相対的な軌道角運動量です。
(1)式に代入すると
 μr" - L^2/(μr^3) + ke^2/r^2 = 0
のような運動方程式が得られます。

相対論は考慮していません。
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