No.1ベストアンサー
- 回答日時:
今度ハリウッドでリメイク(ドリームワークス?)するそうですね。
トム・ハンクスが演じるのなら『フィラデルフィア』みたいな雰囲気になるのでしょうか。
この作品が傑作だといわれるのは、「オドオドした態度」で30年間役所勤めをしてきた平凡な男が、ガンに冒されて余命わずかだということを知り、命をかけてでも何か(公園)を残そうとする「鬼気迫る」姿に共感を覚えるのではないでしょうか。
また、いろいろな生活道具や街並みの風景は変わっても、この映画に出てくる人達の性格(まじめで人の良い渡辺さんに対する人々の対応や、現在の“援交”を思わせる女など)は今と対して変わらないな、と思いました。
ですので娯楽という意味では“面白い”映画とはちょっと違うと思います。
強いて言うとすれば、『七人の侍』より以前の作品であり、両作品を見比べると、どちらにも出演している俳優が演じる登場人物の性格の対比(小心者の志村喬はもとより、『七人-』では部下役だった加東大介さんに脅されたり等)が面白いと思います。両作品の製作が逆だったのならあのきたりだったでしょう。
あまりご質問の答えになっていなくてすみません。
No.2
- 回答日時:
こんばんは。
苦手なのは質問の中にある通り、年齢的なこともあるのかもしれませんね。
ただ若い年代でも、病気や怪我などで健康を害したことで「生」の意味を模索するようなことがあった方たちには身につまされる作品だと思います。
ボクは10代の後半でこの作品を見ましたが、ブランコの場面では感涙しました。ただ涙もろいだけかもしれませんけど(^_^;)
映画そのものの出来としては、前半がモノローグや客観で話が展開するのを、後半の葬式からはいきなりすべてが回想になるという大胆な構成も評価されたのだと思います。
また若くてお茶目な小田切みきさんの配置もいろんな意味の対比を含んでいて、感心しました。
彼女が喫茶店で志村喬さんに会い、
「こんなものでも何か人に喜ばれるものを作っていると思うと嬉しいの」
とウサギのおもちゃを見せて生き生きと語る場面があります。
それに志村さんがはっと何かを気づいて、ウサギのおもちゃを手に喫茶店を出て行くバックに、喫茶店の奥で誕生会が開かれているため「ハッピバースデーツーユー」という曲が鳴っているという、今見たらちょっとあざとい気もしないではないですが、この場面も見た当時には感心しきりでした。
黒沢作品のダイナミックなところに惹かれているファンは、これ以外の「わが青春に悔い無し」や「素晴らしき日曜日」なんかも苦手な作品なのだと思います。
余談ですが、志村喬さんのドキュメンタリー番組があって、熊井啓監督が語っていましたが、「生きる」の志村さんのガンの演技はちょっとオバーだろうと思ってみていたものの、晩年の体調を崩されてからの志村さんが「生きる」の主人公そのものに重なって仕方がなかったそうです。
「真夜中のカーボーイ」などの作品で知られるジョンシュレシンジャー監督が、「生きる」を自身のベスト10に選んでいます。
「シドアンドナンシー」のアレックスコックスもこの作品と「乱」をベスト10の一本に選んでました。
どちらの監督も邦画は他には選んでませんから、やっぱりスゴイ作品なのだと思います。
そういえばリメイクは「酔いどれ天使」がスコセッシ&ディカプリオで進行中だそうです。
どうなっちゃうんでしょうね?
No.3
- 回答日時:
安穏と暮らしていた市役所勤めの主人公。
仕事にポリシーや責任感はありません。
ただ無為に時間を過ごしていく彼は正に死んでいました。
しかし、死を宣告されることにより彼は生きることの大切さ、命のかけがえのなさを知る。
地域住民のため、何よりも自分自身の生きた証として、ちっぽけな公園作りに全力を尽くします。
彼の影響で、市役所も変わるのかと思わせたが、死後は何事もなかったかのようにまた、無為な市役所に戻ってしまう。
エンターテイメント性はまったく感じられませんが、ストーリーには重厚なテーマが秘められており、役者の演技も、主人公の性格・内面的心情を的確に表現しているものであると思います。
No.4
- 回答日時:
黒澤明を語る時に避けて通ることはできない一つの大きな山の頂点に立つのが「生きる」で、私は大学生の時に観て以来5回観ましたが、話の内容は十分に判っていても、励まされ、感動することにおいては、何ら変わることはありません。
娯楽性やエンターテイメント性は低いというご意見もありますが、私は全くそうは思いません。ドンパチ派手にやるのが娯楽の全てではないと思いますし、大変面白く作られた映画だと感じます。私が最初に感動する場面が、今は冷たくなってしまった一人息子に打ち明けたいのだが、現にそこに存在する息子は小さい頃の光男ではもはやない、というくだりです。勘治は妻が死んだ時のことを思い出します。光男は5歳くらいで、霊柩車のすぐ後ろを走るタクシーに乗っているのは、勘治、光男、勘治の兄喜一、その妻たつです。霊柩車が右折する時、光男は「はやくはやく、お母ちゃんが行っちゃうよー」と言います。実に寂しげな早坂文雄の音楽と共に、「生きる」の中で忘れられない切ないシーンの一つです。回想が終わり、「光男、光男、」と呼びながら、勘治は階段を上って行きます。途中で二階の明りが消え、息子夫妻は寝てしまいます。男手一つで息子を育ててきたのに、その息子がどんどん遠くに行ってしまう。この孤独感は家事や育児に参加する父親の哀しみに通じるものがあると、そういう立場に立って、私は初めて気づきました。父親としてはかなり関わったつもりでも、子供は母親の方がいいと言うもので、それが痛いほど判る現在の私には、これらのシーンが今まで以上に心に染みました。
次に強烈なのが、後半への超絶的な場面転換です。帽子をかぶり、颯爽と出かけて行く勘治が、次に現れるシーンは、5カ月後、勘治の遺影が映る通夜の場面です。この飛躍の手法によって、我々は生まれ変わった勘治を過去形の形でしか追体験できないことになり、従って、その他大勢の無責任に勘治を外側からしか見ることができなかった家族や市役所の人たちと同じ視点から勘治を見て行くことになります。それが映画を観るという行為にも通じています。
そして、なんと言っても素晴らしいのが、通夜のシーンです。ここでは、各自が自分のイメージに従って勘治の人物像を勝手に造りあげていきます。このようにしてこの場面では勘治に関する多様な解釈や様々な回想が展開され、それはまるで「羅生門」のようです。千秋実や左卜全がユーモラスな味を見せていて、志村喬の思い詰め過ぎた生真面目な演技を中和させる働きもしていると思います。
助役ややくざの脅しにもひるまない勘治は、「白痴」のムイシュキン的な〔穏やかな〕超人として設定されています。この前年に黒澤が「白痴」を撮っていることを考えても、「生きる」にドストエフスキーの影が感じられるのは確かです。「生きる」の世界で描かれるのは、聖なる超人、どちらにも転ぶ凡人、姑息で俗悪な権力、これら3者の微妙な関係です。我々は凡人として、身近に存在する小権力の自己保身や封建性を固守する行き方などに大いに反発を感じたりしますが、直接、本人に向かって批判を加えることはなかなかしません。それでも、「生きる」を観ることによって、「もっとしっかりしなきゃ」と思わされたりするのです。
私は、「生きる」は「七人の侍」とは全く違ったタイプの黒澤監督の代表作だと思います。観れば観るほど面白くなる映画だとも思います。
この回答へのお礼
お礼日時:2005/09/24 14:11
皆さんお返事ありがとうございました。
もう少し、年をとったら『生きる』を観てみようと思います。
皆さんのご意見、とても参考になりました。
ありがとうございました。
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