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 アメリカの州兵は、平時において州知事の指揮を受けているにもかかわらず、部隊及び装備を見てみると連邦軍とバランスをとり、連邦軍及び州兵を合わせることにより、全体として一個の軍となっているように思えます。例えば第38師団はインディアナ州だけでなく近隣の州兵からも編成されていますし、コロンビア特別区の州空軍が戦闘機の部隊であるのは、連邦軍の国内での展開が法律的に制約を受けているため、平時の首都防空を州空軍に期待しているように思えます。
 そこで質問ですが、
1、州軍を新編する際に連邦が関与する程度
2、州兵の予算について連邦が関与する程度
について教えてください。
 1については、いくら州が砲兵部隊を作りたいと思っても、連邦が承諾しなければ新編できないような気がするし、2については、ロードアイランドやデラウエア州といった小さな州では、(例え輸送機の部隊で、兵がパートタイムであったとしても)州の予算だけでの空軍の維持は困難に思えます。

A 回答 (1件)

軍事だけ勉強しても軍事は分かりません。

例えば、戦史は歴史学の一分野です。また、憲法を超越する軍は、自国を痛め付けるだけです。我々は軍の編制表を見る前に、基本に戻ってまず憲法を読まなくてはならないでしょう。

アメリカ合衆国憲法
http://japan.usembassy.gov/j/amc/tamcj-071.html
同 英文
http://www.law.cornell.edu/constitution/
第一条第八節(一)
連邦議会は次の権限を有する。合衆国の国債を支払い、共同の防衛および一般の福祉に備えるために、租税、関税、付加金、消費税を賦課徴収すること。(後略)
同(十五)
連邦の法律を施行し、反乱を鎮圧し、また侵略を撃退するための民兵の招集に関する規定を設けること。
同(十六)
民兵の編制、武装および規律に関し、また合衆国の軍務に服する民兵の統轄に関して規定を設けること。ただし、各州は、将校を任命し、また連邦議会の規定に従って、民兵を訓練する権限を留保する。
同(十八)
上記の権限、およびこの憲法によって合衆国政府またはその省庁あるいは公務員に対し与えられた他のすべての権限を行使するために、必要かつ適当なすべての法律を制定すること。
第一条第十節(三)
各州は、連邦議会の同意なしに、トン税を賦課し、平時において軍隊または軍艦を備え、他州あるいは外国と協約あるいは協定を結び、または現実に侵略を受けた場合、あるいは猶予しがたい急迫の危険がある場合でない限り、戦争行為をしてはならない。
第二条第二節(一)
大統領は、合衆国の陸海軍および合衆国の軍務に実際に就くため召集された各州の民兵の最高司令官である。(後略)
第四条第四節
合衆国は、この連邦内の各州に共和政体を保障し、また侵略に対し各州を防護し、また州内の暴動に対し、州議会あるいは(州議会の招集が可能でない時は)州行政府の請求に応じて、各州に保護を与えなければならない。
修正第二条
規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない。
(引用終り)

以上、「民兵」(militia)という言葉は頻出しますが、「州兵」は出てきません。ご存知と思いますが、州兵は民兵の一種であり、いわば「州民兵」(state militia)です。米国最重要の歴史文書の一つである、1776年の『バージニア権利の章典』は、次のように述べています。「民兵こそ自由な国家にふさわしい防衛である。平時における常備軍は自由にとって危険であり、忌避されるべきである」。これは、1787年起草の合衆国憲法とは異なりますが、当時の同国の防衛観を表わすものです。米国は、19世紀末まで連邦常備軍の規模が小さく、戦争のたびに民兵をかき集めていました。本土防衛だけでなく、外地の戦争でさえ、大幅に民兵で補完していたのです。民兵は National Guard としてまとめられました。直訳すると「護国軍」ですが、「州兵」と訳すのが通例になっています。
ちなみに、米西戦争(1898)直前の合衆国陸軍は2万5千名程度の組織に過ぎなかったそうです(『世界大百科事典』(平凡社)による)。また、第一次大戦(1914~18)に参戦した米軍は、古強者(ふるつわもの)の欧州の軍隊に比べて、練度の低さを指摘されました(勇猛果敢な部隊もあったが)。日本軍はこの戦争にも観戦武官を送り込んでいて、「米軍は大したことない」と侮り、その思い込みのまま、十数年後にいわゆる十五年戦争(1931~45)に突入しました。中国侵略・南方進出が米国の容喙を招くのは必至だったにもかかわらず。
話を元に戻して、条文中の「民兵」は「州兵」と読み替えることができます。しかし、「『州兵』と言うぐらいだから当然『州の軍隊』のこと」と思う人がいるなら、その認識は半分くらいしか当たっていないでしょう。憲法から分かるように、州兵の編制・武装・規律を定めるのは、連邦議会の権限です。各州は、連邦議会に従った上で、一定の権限を留保するということなのです。そもそも各州は、連邦議会の同意がなければ平時において軍隊を持てないし、自発的に戦争することもできません。侵略に対し各州を防護するのは、それこそ連邦政府の義務であり、そのために国軍も州兵も使う、ということです。また、前述したように、州兵について定める権限が連邦議会にあるからこそ、有事の際は国軍と州兵を合わせた効果的な運用も可能になってくるわけです。

州兵については、次の文書が詳しく解説しています。
(1)米国の「国土安全保障」と州兵の役割――9.11同時多発テロ以降の活動を中心に(鈴木滋)
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/2 …
(2)対イラク武力行使における米国ナショナル・ガードの役割(小林成信)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/pr/pub/geppo/p …

州兵は、平時には州知事の指揮に服し、州の治安維持・災害救助などに当たっています。しかし、次の認識を持つ人がいるとすれば、誤りでしょう。
「『州の軍隊』が州兵の原則であり、例外として、有事には大統領の指揮に服し、国外に派遣されたりする」。
この「原則・例外」という区別は誤りで、正しくは両方とも州兵の原則です。(1)から引用すると次の通りです。

> 州兵は「陸軍州兵」(Army National Guard)と「州兵空軍」(Air National Guard)
> という二つの組織を持ち、国内にあっては暴動鎮圧や災害救助などに従事すると
> ともに、海外においては、国家安全保障上の緊急事態に際して迅速に行動できる
> 「動員日の軍隊」(Mobilization Day Force :M-Day Force) として数々の作戦に
> 参加してきた。このような「二重の地位と任務」(Dual Status and Mission) は、
> 州兵が有する最も際立った特徴であるが、

また、州兵の予算について、(2)から引用すると次の通りです。

> 州兵の装備、訓練、兵営の経費は連邦政府と州政府が分担している。人件費や
> その他の諸経費は連邦政府が全額負担している。」阿部竹松著『アメリカ
> 合衆国憲法』有信堂、2002 年、148-149 頁参照。

具体的に連邦と州でどう按分しているかまでは、調べが付きませんでした。それでも、連邦予算の軍事費割合は大きいのに、州予算のそれは小さいことなどから考えて、「分担」といっても連邦政府がかなり負担していると思われます。
2006年度予算教書(概要)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/eco_ …
米国の州政府の財政運営と政府間関係(1992年度など)
http://www.clair.or.jp/j/forum/c_report/html/cr1 …
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この回答へのお礼

大変親切にありがとうございました。
この質問をした後に、
(1)米国の「国土安全保障」と州兵の役割――9.11同時多発テロ以降の活動を中心に(鈴木滋)
までは検索してたどり着きましたが、
(2)対イラク武力行使における米国ナショナル・ガードの役割(小林成信)
までは行き着きませんでした。
実は(1)を読むまで、「州兵」の文字から州兵設置の根拠は州憲法にあると誤解していました。州は1個の国statsとの認識があったからです。国が軍を持つのはあたりまえと考えたわけですが間違っていました。
それにしてもアメリカは、常備軍と同程度の予備戦力を、容易に動員できる制度を作り上げたことに驚嘆しました。

お礼日時:2005/10/07 22:36

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