No.5ベストアンサー
- 回答日時:
こんにちは。
まず、媒体としては、
1.出版物
軍記・軍談:太平記、真田三代記、太閤記、三国演義、漢楚軍談など。
地誌・名所案内・旅行記:単なる地理書ではなく、各地の簡単な歴史や、重要な神社仏閣の縁起まで書いてあります。
縁起類:神社仏閣の縁起。名所案内に近い需要のされ方でした。
稗史:まあ歴史小説。八犬伝など。
漢籍:十八史略など。漢文ではなく、日本語に訳したものも読まれました。
これらの出版物は、貸本屋がもっぱら扱っていました。本を背負って、大名屋敷や町屋などを廻っていました。また、より庶民的な出版物(草双紙など)にも、歴史的事象を易しくリライトしたものが多く出版されていました。
その他:皇朝史略、日本外史など。寺子屋や漢学塾、藩校などで教授されました。なお、こうした漢籍を学ぶ層は、中期から後期にかけて、武士から豪農層へと広がっていました。
ここで一言しておかなくてはいけないことは、これらの出版物を享受していた層と、身分階層とは、かならずしも関係してはいません。むしろ、その土地の気風の方が影響しました。尚武的雰囲気のある地域では、農民から武士まで軍記物を好みましたし、江戸などでは、名所案内や縁起物を、武士も読んで、旅行への憧憬をかきたてられたりしていました。
2.演劇
娯楽としての浄瑠璃、歌舞伎、村芝居には、歴史的題材を扱ったものが多くありました。
その他、神社でおこなう神楽も、神代の時代の物語から材を執ったものが少なくありませんでした。
3.口碑
伝説ですね。これはこの時代に、地誌などに記載されて文字化されました。
こうした媒体は、相互に密接に影響し合ってました。本が芝居になり、芝居が口碑を変容させもしました。また、近世期の識字率の高さは有名ですが、それでも文字を読めない人のために、「本読み」といわれる習慣がありました。仕事の合間や、夜の囲炉裏端で、上記の出版物を音読して聞かせる方法です。こうして、歴史は、文字の読めない人にも享受されていきました。
さて、こうした媒体によって形成された「歴史意識」ですが……。
公的な「歴史教育」がなかったかわりに、娯楽や教養として、さまざまの「歴史」的要素は、溢れていたといっていいと思います。私なぞは、生活と歴史の距離は、この頃の方が今より近かったのではないかと思うくらいです。
もちろん、歴史は基本的に「物語」でした。だからストーリーを楽しむもの、好奇心を満たすものでした。
しかし、中期から後期にかけて、外国の情報や、外国船の漂着(こうした情報も、出版はできませんが、手書きの「写本」によって知れ渡ります)などが知られるにしたがって、だんだん、ナショナリスティックな要素を帯びていきます。で、日本は、もともとは天皇を中心にしていた神国じゃないか、という歴史意識が生まれます。
出版物や芝居に対する統制は、江戸期を通じて何度もありましたが、こうした「情報」や「思想」への統制は極めて不充分でした。林子平『海国兵談』は、さすがに過激でしたし、また、おおっぴらに「出版」してしまったので取り締まらてしまいましたが、これはむしろ例外。
貸本屋でも、「写本」の海外情報の本を持ちあるいていました。一番人気だったそうです。また、民間に、極めて成熟したネットワークがあったことはいつか述べましたが、それにのって、情報や思想が流布します。
後期から幕末にかけてのベストセラーといわれる「日本外史」は、皇国史観の歴史書ですが、こうした背景で生まれ、読まれたんですね。
つまり、江戸期の歴史観は、物語的な受容に加えて、ナショナリスティックなものが加わります。そしてそれは、識字率の高さ、四民の通じての学習欲にのり、際めて広範囲に広がった、というようにまとめられると思います。
それが明治維新を準備したし、明治国家はそれを利用して国民国家形成を進めていきます。
長文失礼。ご参考になれば。
d-dropさん、詳しいご回答ありがとうございます。
娯楽・教養から歴史に親しんでいたのですね。
外国の情報に接する事でナショナリスティックな要素を帯びてきたのですね。それが後に尊皇攘夷とかにも繋がるのでしょうか。
識字率・学習欲という下地があって、広範囲に広がったのですね。
No.4
- 回答日時:
No3の補足です。
源氏物語を読んだとしても物語としての読み方と歴史としての読み方があると思います。
前者の読み方が大多数で、後者は少数派でしょう。
芝居や講釈を歴史として解釈するより単なる娯楽として楽しんだのではないでしょうか?
農民層でも名主や庄屋などの有産階級は学問に興味を持つ余裕がありました。
しかし大多数の農民は僧侶など世をすてなければ学問に接する余裕も機会もありませんでした。
江戸時代末期に情報が豊富になり経済活動が盛んになって始めて歴史認識が、それもやや偏った形で一般化したのではないでしょうか。
No.3
- 回答日時:
江戸時代の歴史認識は極めて少数の知識人以外研究する人は居なかったと思います。
一般庶民は徳川幕府の思想統制の下にあり、例えば赤穂浪士の吉良邸討ち入りという事実を演劇にするにも氏名や時代を変更して脚色しています。
武士階級にしても儒学、朱子学の域を出ることはなく、実学(実用的な学問)ですらあまり重んじられませんでした。
講談や講釈師の説明をそのまま信じていたでしょう。
御回答ありがとうございます。
武士階級でも講談や講釈師の説明をそのまま信じていたのですか。
源氏物語などを読んでいたという事は、「平安時代」という時代の存在や、貴族文化などについてもある程度の知識はあったのでしょうか。
No.1
- 回答日時:
信長や秀吉、信玄や謙信といった武将については講談などでもおなじみですから庶民でも知っていたでしょう。
ただ史実とは違う猿飛佐助や霧隠才蔵も実在だと思っていたでしょう。
知識人なら頼山陽の日本外史などを読んだりして日本の歴史のアウトラインは知っていたでしょう。
ただ、日本書紀や乞食等の歴史書については一般には流布していませんからごく一部のものを除いては存在すら知らなかったでしょうし、実証的に研究する人もあまりいなかったでしょう。
御回答ありがとうございます。
講談を通じて知っていたのですね。地方の農民もある程度は知っていたのでしょうか。
知識人は頼山陽の日本外史などを読んでいたのですね。
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