留置権を行使できる要件として、「物と債権との間に牽連性があり、物に関して生じた債権といえる」というのがあります。
例えば
1。修理屋(A)に修理代金未払いの所有者(B)がCに売ったケース。
→Aは、Bの未払いに対する代金支払い請求権を主張してCに対して留置権を行使できます。
2。B(建物所有者)はAに建物売却引渡し、さらに二重譲渡でCに売却登記移転のケース。
→Aは、Bの債務不履行に対する損害賠償請求を主張してCに対して留置権は行使できません。牽連性がないからだというのですが、意味が分かりません。
ケース1ではBの代金の未払いに対する債権をもって留置権を第三者に主張していて、
ケース2ではBの債務不履行に対する債権をもって留置権を第三者に主張しているわけです。1では牽連性があり、2では牽連性がない、、、、つまり1はつながってるけど、2はつながってない、、
というのはどういうことなんでしょうか?
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
※留置権の他の要件は当然に満たすという前提で話をしています。
結論から言ってしまえば、「牽連性ありと言うためには、留置権発生時点において被担保債権の債務者と物の引渡し請求権者が同一であることが必要」ということ。牽連性とは「物の返還を拒むことで債務の弁済を間接的に強制できる関係にあるかどうか」ということだ思えば分かりやすいでしょう。そうすると、被担保債権の債務者と物の引渡し債権者が同一でないとこの関係があるとは言えないですから、同一であることが「留置権発生時においてなければならない」ということになります。なお、一度留置権が発生すれば後で同一でなくなっても物権の対世効として留置権は主張できます。牽連性はあくまでも留置権の成立要件であり存続要件ではありません(ここは試験で引っかけを狙うところ)。
1は、留置権が何時発生するのかという点を細かく見れば色々議論は可能ですが、大雑把に言えば、留置権発生時において被担保債権の債務者と物の引渡し請求権者は同一です。つまり、BはAに「金払うまで返さない」と言われれば、返してもらうために金を払うしかないという関係があります。この時点で留置権は発生し、その後でBがCに変わろうが何しようが、一度発生した留置権は物権である以上対世効があり誰に対しても主張できるので、引渡し債権者の変更は留置権の存在に影響しません。
一方2は、明らかに、被担保債権となるべき債権が発生した時には土地の引渡しを請求する者は別の人です。被担保債権である損害賠償請求権の債務者はBですが、その損害賠償請求権が発生する前には留置権は生じません。少なくとも損害賠償請求権が発生する時点以後でないと留置権は生じませんが、損害賠償請求権が発生した時点では既に土地の引渡し請求権者はCであり、損害賠償請求権の債務者Bとは別人です。とすれば、損害賠償請求権の発生時点において物の引渡し請求権者が損害賠償請求権の債務者と別人であるので両債権に「牽連性はない」ということになります。つまり、AがCに「金払うまで渡さない」と言っても「CはAに金を払う理由がないから困ってしまうだけ」なのです。
なお、二重譲渡ではなくて順次譲渡なら話が違います。AがBに譲渡し、代金を受け取る前にBがCに譲渡した場合には、AはCに留置権を主張できます。被担保債権であるAのBに対する売買代金債権はBに譲渡した段階で既に発生しており、留置権もこの段階で発生するので、その後で物をCに譲渡しても物権である留置権はCに対しても主張できるということです。
No.2
- 回答日時:
すでに詳しい回答がついているので、蛇足ではありますが...
ケース2のような不動産の二重譲渡(実際の事実関係はもっと複雑)の事例について、判例は、大ざっぱにいえば「第三者が登記を経て所有権を失った場合の損害賠償請求権は、所有権の移転を目的とする債権が質的に変わったものだから、『その物に関し』とはいえない」としています。もっと平たくいえば、この場合の損賠は、「家をよこせないんだったら『代わりに』金を払え」ということです(本当は家が欲しい。損賠はその代償)。
この点、ケース1は、修理屋は物の所有権が欲しいのではなくて、「その物に関して生じた修理代金債権」を担保したいだけです。「時計をよこす『代わりに』金を払え」ではありません(もともと金が欲しい。時計は要らない)。
>> 牽連性とは「物の返還を拒むことで債務の弁済を間接的に強制できる関係にあるかどうか」ということだ //
というのは、まったくその通りなのですが、「じゃあ家に居座ることで損害賠償が取れるんじゃないのか?」となります(質問者さんの勘違いは、ここに原因があると思われます)。「もともと何が欲しかったのか」と考えれば、分かり良いかと思います。
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