質問

一通り電気化学を勉強したうえで質問します。

酸化還元電位つまり電気化学ポテンシャルとは何のことなのでしょうか?
例えばA→A^+になる電位をEとするとこの電位というのは
AのHOMOにある電子が一つ失われることを意味します。
この電子というのは電極或いは溶液中のイオンに飛び移ることを意味するわけですが、これはAのHOMO準位のエネルギーと電極或いは溶液中のイオンのフェルミエネルギーが一致したときということになるのでしょうか?
計算でこの電位を出す方があれば、書籍名で構いませんので教えて下さい。
化学者向けの電気化学の本はいくらでもありますが、物理学者向けの本がなく困っています。
何卒よろしくお願い致します。

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回答 (4件)

#1です。
R.A.Marcusの不均一系の電子伝達の理論ですが、Marcus theoryで牽けば幾らでも掛かります。
例えばwikiでは、↓
http://en.wikipedia.org/wiki/Marcus_theory
ノーベル財団のサイト、↓
http://nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/lau …
簡単な説明、↓
http://www.public.asu.edu/~laserweb/woodbury/cla …

最近の書籍で推薦できるようなものが思い当たらないのです.
ちょっと古いのですが,坪村宏「光電気化学とエネルギー変換」(1980)や佐藤教男「電気化学(上)(下)」(1993,1994)は,一通りのことは述べられているのですが,いずれも現在は入手は困難.大学とかの図書館にはあるかもしれません.
あと,標準水素電極の絶対電位についての考察については,この手の議論の古典ですが,S. Trasatti, J. Chem. Soc., Faraday Trans. 1, 70, 1752 (1974) も見ておくといいと思います.

まず,電気化学ポテンシャルと酸化還元電位は同じではありません.
電気化学ポテンシャルは,物理系の方なら,化学ポテンシャルと電気ポテンシャルの和であるということでいいですかね.これは,質問に挙がっている例だと,A と A+ のそれぞれについてある値があるわけです.そして,このような酸化還元系ではもうひとつ,電子のことを考える必要があります.
そして,電子だけが電極相と溶液相を行き来できるので,本質的にはこの電子の電気化学ポテンシャルが溶液相と電極相で一致したときが平衡条件です.この辺の考え方は,metal/metal contact などの場合となんら変わりません.このとき,言い方を変えれば,電極のフェルミレベルと溶液のフェルミレベルが一致したということになるでしょう.ただし,溶液側のフェルミレベルというのがくせ者です.これは A や A+ 単独については定義できません.物理の人はここで誤解する場合が見られます.同様に,酸化還元電位も A や A+ 単独については定義のしようがありません.
酸化還元系 A <=> A+ + e について,平衡状態では μA = μ~A+ + μ~e ですから,μ~e = μA - μ~A+ ,そしてこれが電極中の電子の電気化学ポテンシャルと一致するわけです.その結果,電極相と溶液相の間には内部電位差が発生し,その大きさは,A,A+ の化学ポテンシャル,いいかえれば濃度や,それ自体の酸化力,還元力 (これは標準化学ポテンシャルμ°に反映される) に依存するということになります.
一般的には溶液の内部電位を知る方法はないので,溶液との内部電位差が固定されるような電極,つまりそれは一定の組成の酸化還元系と平衡にある電極 (その基準として採用されたのが標準水素電極),ということですが,それを基準に取り,基準の溶液と被測定溶液の間に内部電位差が発生しないように両溶液を接続することで,任意の酸化還元系と平衡にある電極の電位を測定します.そしてそうやって測った電極電位は,A や A+ の濃度に依存するということです.

では,このような場合に A の電子供与力 (還元力) はどうやって評価できるか,というとこれは A だけを見ていてもだめで,A と A+ について,ある条件を決め,そのときの電極電位の高低を評価してやれば,還元力を比較できることになります.一般的には,この値が低いほど(-方向だが,基準電位には任意性があるので,符号そのものには意味がないことに注意)還元力が強い,と言えるわけです.還元は HOMO レベルの電子が外に出る過程と考えれば,この電位から HOMO レベルを評価できると考えることは,まあ自然な発想なのでしょう.しかしことはそれほど簡単ではありません.
一般的には,A と A+ が標準状態 (つまり活量が1) にあるときの電極電位をもって,標準酸化還元電位とし,俗にいう酸化還元電位はこのことです.しかし,そもそもこの電位の測定というのが,ある任意に決められた酸化還元系 (たとえば B <=> B+ + e) に挿入された電極の電位との差分でしか測れないということが問題になります.この差分は,ふたつの酸化還元系が組み合わさった全酸化還元反応 A + B+ = A+ + B の自由エネルギー変化を測っているのと,完全に等価です.結局,電気化学系の測定をいくらやっても,A = A+ + e というような酸化還元系のフェルミレベルは求められません.金属のフェルミレベルは電子放出現象などで測れることは測れますが,溶液と金属が接触すると内部電位差が発生してしまい,その値を実測することもできないので,金属を基準にすることもできません.

結局,HOMO レベル等を電気化学測定から見積もるには,何かひとつでいいから,電極電位と通常の物性物理学でいうところのフェルミレベルを結びつける必要があるのです.あとはそこからの相対比較ですむわけですから.
そのような観点で,HOMO レベルのわかっている一連の物質について,酸化還元電位測定が行われ,たとえば条件さえうまく揃えられれば,イオン化ポテンシャルと酸化還元電位の間に(単位を合わせれば)傾き 1 の関係は得られています.たとえば,Kohchi et al., J. Am. Chem. Soc., 106, 3968 (1984).このような結果から,軌道レベルと酸化還元電位を結びつけることは可能で,さまざまな検討の集約値として,標準水素電極の電位が,真空準位のした 4.44eV (だったかな?) という見積もり値がよく使われています.この値にどのくらいの信憑性があるのかについては,現在でも意見は分かれます.

この回答へのお礼

回答ありがとうございます。

教えて下さった論文に関しては後ほど目を通してみます。

それと出来ればこのような電気化学と物性物理の接点といった立場から書かれている最近の書籍を教えて頂けないでしょうか?

それともこういったものは論文でしか出ていないのでしょうか?
お願い致します。

物理の方に説明する自信はありませんが、一応気になったので一言。
A→A^+ + e^-
になる過程なのですが、熱力学的にこの過程のポテンシャルはAとA^+の濃度に依存します。この辺はNernstの理論をご参照下さい。
さらに電極のフェルミレベルとの関係についてはR.A.Marcusの不均一系の電子伝達の理論(今はもっと良い理論があるが、化学屋にはこれでも充分難しい)が参考になると思います。

この回答へのお礼

回答ありがとうございます。

R.A.Marcusの不均一系の電子伝達の理論というのを一度読んでみたいのですが、検索してもかかりませんでした。
出来れば正式名称を教えて頂けないでしょうか?

お願い致します。

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