No.2ベストアンサー
- 回答日時:
>Tgは分子鎖の周りに存在する自由体積が多いほど、つまり密度が低いほど低くなる傾向にありますから・・・
密度が小さいほど、Tgが低くなる傾向があるのは、
密度が低いほど、自由体積が多くなる傾向になるからです。
でも、この答えでは禅問答のように聞こえてしまうかもしれませんので、
もう少し詳しく説明したいと思います。
今、1gのゴムを加熱して少しずつ、温度を上げていくとします。
その時、ゴムは少しずつ膨張して、体積が増えていきます。
この時、ゴムの質量に変化はありますか? 変化はないですよね。
少し温度を上げたところで、質量は1gのままです。
少し体積が増える前も体積が増えた後も質量は1gで変化ありません。
この1gの中に入っているゴム分子の数も、そのゴム分子を構成している
炭素や水素などの原子の数も変わりません。
では、なぜ温度上昇によって体積が増えたのでしょうか?
それは、ゴム分子が占める体積以外にゴム分子の周りや
ゴム分子とゴム分子との間に自由体積と呼ばれる何もない空間が
存在し、温度上昇と共にゴム分子間が少し離れて、自由体積が
増えたためです。
今度は、逆にゴムの温度をドンドン冷やしていきましょう。
温度低下と共に体積が減っていきます。
ドンドン冷やしたら、ゴムの体積は0になってしまいますか?
いくら冷やしても0にはなりませんよね。
ゴム分子が占める真の体積がありますから・・
でも、自由体積は、ドンドン減っていきますよね。
自由体積の概念が判っていただけましたか?
ガラス転移温度以上では、ゴム分子の主鎖のC-C結合がくるくる回転し
分子の形を自由に変えることが出来る状態です。
目では見えませんが、常に分子の形が変化し続けているのです。
このようなゴムを冷やしていくと、ゴムの周りの自由体積が減っていきます。
自由体積が極端に減少し、隣の分子とぶつかり合うようになると、
隣の分子がぎゃまになり、C-C結合が回転できなくなってしまいます。
丁度、満員電車の中では、手足を動かしたくても、隣の人がじゃまになって、
手足を動かすことが出来ない状態に似ています。
一般に、どの高分子も自由体積分率が2.5%まで低下してしまう温度が
その高分子のTgだといわれています。
高分子の種類(つまり、主鎖の構造の差)によって、自由体積分率が2.5%になる温度が、異なるのです。
密度が低い物ほど、自由体積が多いのですから、温度を冷やしていって
自由体積分率が2.5%になる温度も低くなる傾向にあることは十分考えられることだと思います。
よって、特別に強い相互作用や特別な構造がない限り、
密度の低いものほどTgが低くなる傾向にあるものと考えられます。
ところで、高分子になどの固体に比べ、一般に液体は沢山の自由体積をもっています。
それ故、ゴムに液状の可塑剤やプロセスオイルなどの液体を配合すると
それら液体は、沢山の自由体積をもったまま、ゴム分子間に入り込み、
それ以前のゴム分子よりも自由体積を増加させます。
よって、Tgが下がるのです。
沢山の自由体積をゴム分子間に存在させるためには、液状成分とゴムとの
相溶性が大切になりますね。
大変わかりやすい回答ありがとうございます。
わかりやすさと親身な対応に感動致しました\(~o~)/
たいへん勉強になりました。
これに懲りず、また、よろしくお願い致します<m(__)m>
No.1
- 回答日時:
ゴムは、室温でエントロピー弾性(ゴム弾性)を示します。
輪ゴムを液体窒素に浸漬すると、凍ってしまい、一般の樹脂のようになってしまいます。
通常の樹脂は、弾性率が高く、少ししかひずみません。
これをエネルギー弾性または、エンタルピー弾性と呼びます。
ゴムのように数100%や、それ以上に伸びることはありません。
ゴムが凍ってしまう温度をガラス転移温度(Tg)と呼びます。
ゴムの耐寒性とは、低温になりゴム弾性の特徴である数100%も伸びることが出来なくなることですから、ガラス転移温度の高いゴムほど耐寒性が悪いと言えます。
各種ゴムのガラス転移温度は、書物で調べることが可能です。
ポリイソプレン(-73℃)、ポリブタジエン(-90℃)といった具合です。
SBRはスチレン(+105℃)とブタジエンの共重合体ですから、スチレン含量が増えるほど、Tgは高くなり、耐寒性は悪くなります。
しかし、スチレン含量が増えるほど(同じ架橋度ならば)ヤング率は高くなり、引っ張り強度も高くなります。
Tgは分子鎖の周りに存在する自由体積が多いほど、つまり密度が低いほど低くなる傾向にありますから、おおざっぱに言えば、引っ張り強度が低下する方向にあるといえるかもしれません。
耐寒性を持たせるとゴム弾性が向上する・・・
これは、エンタルピー弾性が発現せずに、ゴム弾性になるということでしたら、耐寒性を持たすことと同じことを言っているにすぎませんね。
弾性率(ヤング率)は、微小変形での特性、引っ張り強度は非常に大きな変形領域での特性です。
一般の材料は
1)軟らかくて(ヤング率が小さくて)、弱い(引っ張り強度が低い)
2)硬くて(ヤング率が高くて)、脆い(引っ張り強度が低い)
3)硬くて(ヤング率が高くて)、強い(引っ張り強度が高い)
4)軟らかくて(ヤング率が小さくて)、粘り強い(引っ張り強度が高い)
5)硬くて(ヤング率が高くて)、粘り強い(引っ張り強度が高い)
の5タイプに分類できるそうです。
一般のゴムでは、加硫などや組成変更によってヤング率を高めていくと、引っ張り強度も上昇する傾向にあるのではないでしょうか。
「弾性の低下」とは、伸びが小さくなるとのイメージなのでしょうか?
このような表現や感覚は、あまりオススメできません。
弾性とは力を加えた後に、力を除く(力から解放する)と元の形に復元する性質のことです。
金属やプラスチックにも弾性はあります。
むしろ、ゴムよりも大きな弾性率を示します。
伸びの大小ではありません。
この回答への補足
いつも回答ありがとうございます<m(__)m>
>Tgは分子鎖の周りに存在する自由体積が多いほど、つまり密度が低いほど低くなる傾向にありますから・・・
とありますが、なぜ密度が低くなると、ガラス転移温度が低くなるのでしょうか?
よろしくお願いします。
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