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http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/yajilab/siryou_IRan …
例えばこのサイトの12ページの図でストークス線は±3本目のところをピークとしていますが
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
普通に考えると、±1本目が最大で後は準位が上がるにつれて
ピーク強度は減衰していくのではないかと思うのですが、
これって何によって決まるのでしょうか?
お願い致します。

A 回答 (4件)

● 質問のP12の図は振動回転スペクトル=赤外線吸収スペクトルに関するものですね。

その吸収の起こる条件がΔν=1、ΔJ=+1、-1と求められています。その次のページに量子数ν、Jに対するエネルギーE(ν、J)が与えられていますが、付随する項がJに依存しBJ(J+1)とJ^2に依存することに注意してください。
 そうすると
 吸収の強度=振動の基底順位にある粒子数×遷移確率
になるはずです。
1)基底順位での粒子の分布はBolzmann分布によるので、基底順位での粒子の分布はJが小さいほうが多いことが解ります。
2)遷移確率は遷移先であるΔν=1(νが1つ上の順位;励起された1つ上の順位)の順位のエネルギー差が問題になります。幅が広がると、起こりにくく、幅が小さいほど遷移確率は大きくなります。
 ここでp11『振動回転順位』の右図を参照してください。P枝とR枝の振る舞いの違いがわかりますか?実は、P枝の一番左のもの;上の順位から遷移を始めるものの遷移エネルギーが一番小さく(矢印が短く)だんだん右に行くに従って、長くなっています。P枝では一番遷移が起こりやすいものはJが高い順位のものであり、Jの低い順位のものは起こりにくいことになります。逆にR枝のほうでは低い順位のものがやはり小さく、Jの大きいものの方が大きいという結果になってます。
従って、粒子数×遷移確率を調べると
P枝;(中央→左へ) 
 小(粒子数大・遷移確率小)
 最大(粒子数中・遷移確率中)
 小(粒子数小・遷移確率中)

Q枝;(中央→右へ)
 中(粒子数大・遷移確率中)
 中(粒子数中・遷移確率小)
 小(粒子数小・遷移確率最小)
このような表現になります。

つまり、
粒子数 P枝(左側)(小)→(大)Q枝(大)→(小)(右側)R枝
遷移確率       大      中      小
吸収の強さ     小  最大 小 中 中  小

粒子数と遷移確率を掛けなければならないので
逆V字型(粒子数)と右下がりの斜線(遷移確率)の掛け算になるということです。
それで上のような変化をするというわけです。        
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この回答へのお礼

非常に丁寧な回答ありがとうございます。

前半は理解出来たのですが、後半は理解出来ませんでした。

つまり、
粒子数 P枝(左側)(小)→(大)Q枝(大)→(小)(右側)R枝
遷移確率       大      中      小
吸収の強さ     小  最大 小 中 中  小

の部分なのですが、単純に逆V字型と右下がりの斜線をかけ算したと考えると、単純に逆V字型のピークの位置が左にシフトして非対称な形になるだけであって、上記のようにピークが2本できるという説明は出来ないと思います。もし仮にピークが2本できたとしても2つのピークがPとQで対称に出てくるという説明はどうやっても出来ないと思います。
どう考えれば良いのでしょうか?

お礼日時:2009/03/01 18:54

● 『お昼ね』が、長時間の『惰眠』になってしまいました・・


 回答が遅れ、申し訳有りません。
 このあたり、ずいぶん若いころに計算をして、それ以降、触れずにきたものですから・・・吸収包絡線についての解説をどこかで見つけてほしいのですが。

●p13,p14でP,R枝の吸収強度が左右対称に描かれているのは、略図だからでしょう。
 実測の波形は必ずP枝のほうが強くはっきりとしていて、R枝のほうは弱くなります。ラマン散乱のストークス線強度についてはちゃんとそのことが触れてあるのですけど。(p25)
 ν0を中心に、2Bの等間隔に吸収が現れ、P枝・R枝の中の相互比はピークを持つことは表してあります(p13,p14は、ここまでを説明するのが主目的だったのでしょう)が、P枝全体とR枝全体の相対強度についてだけは情報が落ちていませんか?本来全体として右肩下がりになるはずなのですが。(実測波形を見れば一目瞭然、ある意味実験屋の常識?ということでは・・)

●本題です。
 振動回転スペクトルの解析では、まず振動状態で解をえて、その摂動(小さな補正項)として回転による補正を加えていきます。振動状態と分子の双極子モーメントの変化からIR吸収、分極率の変化からラマン散乱が起こりますが、まず大まかな振動状態についての解の影響を最初に考えておかなければなりません。
 IR吸収領域での振動回転スペクトルはΔν=1(ΔJ=0)のときは禁制遷移で測定にかかりません。だからまず振動スペクトルレベルで吸収が起こるかどうかということからν0が最低で、それがν0の両側にずれていくに従って分子の対称性が崩れ禁制が解かれていくと考えておかなければならないはずです。振動によるエネルギーはかなり大きいので、その幅はかなり大きなものになるでしょう。このことを補ってください。

1)振動スペクトルの禁制遷移であることの影響
 簡単にν0を頂点とする下に凸の放物線を考えておくとよいかもしれません。振動スペクトルだけのエネルギー間隔は大きいので、この影響がまず最初に考えなければならないことでしょう。ν0は禁制で吸収が起こらず、その両側にずれるに従って、禁制がだんだんと解かれて吸収が可能になるはずです。(これを正確に求めようとすると波動関数を求めその振動のエネルギーの変化による摂動を求めなければならず、定性的な議論に収めておくしかないのでは?)

2)この上に小さなエネルギーを持つ回転スペクトルの摂動が加わります。
 前回答えた逆V字型の粒子の分布を考え1)との積を考えると、Q枝を中心として両側にピークができることになります。(簡単に逆Vといいましたが、本当はボルツマン分布の釣鐘状の指数関数的な分布でしょうね。ここまでは左右対称ですね。)

3)それにさらに右肩下がりの遷移確率を掛けなければなりません。
 そうするとP枝側のほうが遷移確率が大きくなって吸収が強く、R枝のほうが遷移確率が小さくなるために吸収ピークは小さくなる。(遷移確率は難しいですね。量子力学でもかなり進んででてくる領域ですね。結構難しい式で、ここでは・・・基本的にエネルギー差の指数関数です。)

4)これにν0を中心として2B間隔の吸収強度の垂線を描いていくと、実測波形に近いものが描ける。

以上、4点から振動回転スペクトルの吸収を考えると実測波形の説明ができるように思います。
 前回の説明は、振動スペクトルのIR吸収の禁制遷移の説明が抜けていたようです。これを補って考えてください。
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この回答へのお礼

丁寧な回答ありがとうございます。

1)振動スペクトルの禁制遷移であることの影響
 簡単にν0を頂点とする下に凸の放物線を考えておくとよいかもしれません。振動スペクトルだけのエネルギー間隔は大きいので、この影響がまず最初に考えなければならないことでしょう。ν0は禁制で吸収が起こらず、その両側にずれるに従って、禁制がだんだんと解かれて吸収が可能になるはずです

ここの部分なのですが、ν0からの遷移であっても、Δν=1(ΔJ=±1)の条件さえ満たされていれば、他の準位と同じように遷移が可能なのではないでしょうか?

それともJが小さいときにはΔν=1(ΔJ=0)の遷移が完全に禁制されているのに対し、Jが大きくなるにつれてΔν=1(ΔJ=0)の遷移であっても起きやすくなることということなのでしょうか?


どうしても理解出来ません。
お願いいたします。

お礼日時:2009/03/02 14:43

> 12ページの図でストークス線は...



赤外吸収スペクトルのP枝をストークス線と呼ぶのは、間違いです。ラマンスペクトルと混同しないように気をつけて下さい。

> なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

回転準位に縮重があるからです。
吸収の強度が粒子数に比例すると考えれば、

 吸収強度 I(J) ∝ (2J+1)*exp(-BJ(J+1)/kT) ……(1)

のようになります。I(J)をJで微分してdI(J)/dJ=0 になるJを求めると

 J=(√(2kT/B)-1)/2

ですので、B=10cm-1, T=300Kとすれば J=2.7 となって、J=3あたりで吸収強度が極大になることが説明できます。

詳しい説明は、
http://hyperphysics.phy-astr.gsu.edu/HBASE/molec …
をご覧下さい。

> 2つのピークがPとQで対称に出てくるという説明

上の説明ですと、
 P枝の一本目の吸収(v:0→1, J:1→0)

 R枝の二本目の吸収(v:0→1, J:1→2)
の強度が同じになるはずですけど、実際にはかなり吸収強度がちがいます。スペクトルを見ると、P枝の一本目の吸収(v:0→1, J:1→0)の強度は、むしろR枝の一本目の吸収(v:0→1, J:0→1)の強度と同じくらいの大きさです。そのため、式(1)ではなく、

 P枝の吸収強度 IP(J) ∝ J*exp(-BJ(J+1)/kT)
 R枝の吸収強度 IR(J) ∝ (J+1)*exp(-BJ(J+1)/kT)

と考えたほうがいい、というひともいます。
詳しい説明は、
www.colorado.edu/Chemistry/chem4581_91/HCL.pdf
の7ページをご覧下さい。
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●101325さん、回答いただいてありがとうございます。

Q-branchの両脇で吸収、散乱が小さくなることをどのように説明しようか・・・単純に振動スペクトルの幅を持った吸収に回転スペクトルが乗っかると考えてしまって、間違いに気づき訂正しようと思ったのですが、遅れてしまいました。(Fermi共鳴のサイト参照してて・・・)この幅自体が回転運動・ほかに分子同士の衝突等の影響によって生じているものなので変だなぁ、まちがってるなぁ・・・とは思ったのですが。

●質問者様も、自分もこの回転エネルギーへの粒子配分を、ボルツマン分布で考えたのですが、ひとつ落ちてましたね。
このボルツマン分布は気体の並進速度のときの分布のようになっていることを見落としていたのでは?

 気体でのボルツマン分布
   状態数×exp{-E/(kT)}~v^2・exp{-(m・v^2)/(2kT)}
 状態数の影響により速度v=0では~0になってしまいます。
 
 これと同様、回転運動ではJの値によって縮重度が2J+1になるため、
    量子数Jの粒子数~(2J+1)×exp{-BJ(J+1)/(kT)}
・・・・この(2J+1)の効果が、前に言った「放物線」にあたります。前の説明のときにこのことを忘れてしまっていました。実は2次ではなく、1次でしたね。

<状態数2J+1について>
 これは、本来回転運動のエネルギーは方向性がなかったものが、外部電場や磁場のように『方向のある要素』が加わると、その方向に対する方位量子数が必要になり、その方位量子数をLとして『方向量子化』の結果として、|L|≦J
が得られます。これは外部磁場とかの影響を考えるとき良く出てくる関係です。
 1つのJの値に対してLは
  L=-J,-J+1,・・・,-1,0,+1,・・・,J
の2J+1個の状態が可能になります。
 1つのJに対して、IR・レーザー光を当てると、その入射よって方向量子化が起こり、状態数=1から状態数=2J+1に分かれることになります。
 だからこの縮重による状態数の影響はJ=0から離れれば大きくなるのでP,R枝の両側に広がるほど大きくなるので状態数の変化はQ枝を中心としたV字型になります。

<外部から電場(『方向性』を持つ相互作用)を加えたときの回転運動のボルツマン分布を考えに入れて>
 これを考えると、
 ボルツマン分布×遷移確率={状態数×exp因子}×{遷移確率}
だから、
 {Q枝を中心としてV字型×釣鐘型×右下がり}
で全体の吸収・散乱の波形が決まるようです。

 これでやっと満足のいく答えになったかな。
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