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Q.1

よくテキストなどに、「シュヴァルツシルト半径(a=2GM/c^2)の内側では、時間と空間の役割が逆転する」といったような記述がありますが、具体的な考え方が分からずにいます。
通常の計量 ds^2=(1-a/r)(cdt)^2-(1-a/r)^(-1)dr^2-r^2〔(dθ)^2+(sinθ)^2(dφ)^2〕 において、r⇔ct,dr⇔cdtのような入れ換えを行い、
内部で計量が ds^2=(1-a/ct)(dr)^2-(1-a/ct)^(-1)(cdt)^2-(ct)^2〔(dθ)^2+(sinθ)^2(dφ)^2〕のようになると見なせばよいのでしょうか?

Q.2

『クルスカル座標』は、どのような観測者にとっての時空なのでしょうか?
外部での時間 v={(r/a)-1}^(1/2) exp(r/2a) sinh(w/2a) や
内部での時間 v={1-(r/a)}^(1/2) exp(r/2a) cosh(w/2a) などがどの観測者が測る時間なのか分からずにいます。
ある本で、「クルスカル座標とは、ブラックホールの近くに位置し、ブラックホールから一定の距離を保つためにブラックホールから遠ざかるように絶えず加速されている観測者にくっついた座標系である。そのような観測者はやがて光速に達する。」
といった記述を見かけたのですが、どうも意味が掴めずにいます。

以上二点、どうぞよろしくお願いいたします。

A 回答 (2件)

シュヴァルツシルト計量について今枝の図5.1を見ると、シュヴァルツシルト半径の外では光円錐が縦を向いているのに対し、シュヴァルツシルト半径の内側では光円錐が横を向いてしまっています。


(G=1, c=1, dθ=dφ=0 とすると)
 ds^2=(1-a/r)(dt)^2-(1-a/r)^(-1)dr^2
なので、r<0 ではdt^2とdr^2の前の符号が平坦なミンコフスキー時空とは逆になってしまいます。質量のある物体の世界線上ではds^2>0 でなければなりません。したがって外側では物体は静止していられるのに対し、内側では
 dr^2 > (a/r - 1)^2 (dt)^2
でなければならず、dt>0ならば物体は必ず動き、同書p.103にあるように中心に向かって落ちていくことを止めることはできません。このことを「時間と空間の役割が逆転する」と表しているのでしょう。
図5.3(クルスカル図)で t=一定 は原点を通る直線に対応します。したがってクルスカル座標の原点(u,v)=(0,0) は全ての時刻tにおいてシュヴァルツシルト座標でr=2Gm/c^2 を保ちます。またt→∞でクルスカル座標のuが異なる点は全て光円錐状に乗ってしまいます。これはシュヴァルツシルト座標から見ると光速で運動していることに対応します。クルスカル座標については
 Hawking, Ellis;The Large Scale Structure of Space Time,(Cambridge)
に詳しい説明があります。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。
クルスカル座標系については解決しました。

>中心に向かって落ちていくことを止めることはできません。
>このことを「時間と空間の役割が逆転する」と表しているのでしょう。

なるほど、そのような解釈の仕方もあるのでしょうか。
しかし、例えば『佐々木節/一般相対論』などには、内部(r<a) ではtが空間座標でrが時間座標であると明確に書かれていたりもします。

この本では、著者(佐々木氏)は、ブラックホールの内部時空は動的時空で、『カントフスキー・ザックス型宇宙』 であると結論付けているようです。
カントフスキー・ザックス型宇宙というのは、 計量が ds^2=(cdt)^2-W(t)dx^2-A(t)^2〔(dr)^2+δ(r)^2(dθ)^2〕 で与えられるタイプの宇宙モデルで、スケール因子がW(t)、A(t)のような関数で与えられるような、動的な一様・非等方宇宙モデルです。 (詳細は『一般相対論的宇宙論/成相秀一・冨田憲二 著』などにあります)
通常のシュヴァルツシルト計量 ds^2=(1-a/r)(cdt)^2-(1-a/r)^(-1)dr^2-r^2 dΩ^2 にr⇔ct,dr⇔cdtのような入れ替えを行うと、 空間項の係数(1-a/r)^(-1)、r^2が(1-a/ct)^(-1)、(ct)^2のように時間の関数になり、 まさに内部で計量が時間的に変化するような動的宇宙モデルになりそうです。
なので、佐々木氏は暗にそのような事を主張しているように思えるのですが、(あいにく「カントフスキー・ザックス型宇宙である」ということ意外は詳しく書かれてありません)そうだとすると今枝氏の「時間と空間の役割が逆転する」といった表現も、決して方便のような意味ではなく、ブラックホール内部で『tが空間座標、rが時間座標』であることをまさに主張しているようにも思えてしまいます。

「時間と空間の役割が逆転する」を方便のような意味で捉えるべきなのか、それとも現に座標が逆転するのか、どうも釈然とせず悩んでいます。

お礼日時:2009/05/13 20:04

クルスカル座標系について


 まずニュートン力学で考えると地表からzの高さにある質量mの質点のポテンシャルはmgzです。一般相対論では重力のままに落下するような座標系が局所ローレンツ系で、この座標系から「重力のままに落下していない」座標系を見ると、地表からの距離zを一定に保つように地表とは反対方向に加速度gで加速されているように見えます。クルスカル座標系でもブラックホールから一定の距離を保つためには遠ざかるように絶えず加速される必要があるのではないでしょうか。r>aでのクルスカル座標
u={(r/a)-1}^(1/2) exp(r/2a) cosh(w/2a)
v={(r/a)-1}^(1/2) exp(r/2a) sinh(w/2a)
より
 v/u = tanh(w/2a)
t→∞で u = v となります。一方、微小距離は
 ds^2 = (4a^3/r)exp(-r/a)(du^2 - dv^2) + r^2 dΩ^2
なのでdΩ=0, u=v の線上ではds=0,すなわち光速であることが分かります。一定の距離を保っていることはまだ示せていません。これはどの本にあったのでしょうか。
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この回答へのお礼

御回答ありがとうございます。引用元はブルーバックス『ブラックホール物理学/今枝国之助 著』です。

ご回答を待っている間、自分なりに考えてみました。
クルスカル座標系のu=0の観測者にとって、地平面はv=u の直線で表されるような去り方をしているので、観測者自身は事象の地平面に対し等速(光速)で動いているはずです。

なので、クルスカル座標系とは
『時刻0で地平面から中心(特異点)へ向けて光速で飛び立ち、
一定の速度(光速)で等速運動している観測者の座標系』ではないかと思いました。

これをシュヴァルツシルト座標系から見ると、徐々に加速し光速に達するように見えるのかもしれません。(計算では示せずにいます)

中心(特異点)に到達するのがv=1なので、観測者は(1/c)秒で中心に到達することになりそうです。
また、クルスカル計量 ds^2 = (4a^3/r)exp(-r/a)〔dv^2 - du^2〕 - r^2〔(dθ)^2+(sinθ)^2(dφ)^2〕 は、(4a^3/r)exp(-r/a)=1を満たすようなrの位置で(クルスカル座標の観測者にとって)平坦な時空になるので、クルスカル座標のv,uはそのような位置rにおける観測者の測る時間と空間で、そのような観測者の時間と空間を基本として時空の歪みをあらわしたものがクルスカル計量、ということでしょうか。
(方程式 (4a^3/r)exp(-r/a)=1 は解けませんでした)

今枝国之助氏の説明はややひっかかる部分もありますが、クルスカル座標系の意味についてはだいぶ分かったような気がしました。

前半の『内部での計量』の問題については、やはりどうも分からずにいます。

お礼日時:2009/05/06 19:22

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