非水溶液の電気化学を勉強したいと考えております。
非水溶液系では水溶液系と比べて、参照電極の選び方に気をつける必要があるか、水溶液系と比べて電気二重層が異なるか、
非水溶液系ではpHを定義することは出来ないはずなのにプロトン系と非プロトン系があるのはなぜか?
などたくさん疑問があるのですが、ネットで検索しても
http://www.amazon.co.jp/dp/4563045330/
絶版になっている上記の本しか見つかりませんでした。
現実に乾電池などで使われている電解質溶液には、非水溶液が使われているものも多いはずなのに一体どの本で勉強すれば良いのでしょうか?
無機化学系の本を見てみても非水溶液の電気化学に関して詳述されているものが見つかりません。
どなたか非水溶液の電気化学の書籍および勉強の仕方を教えて頂けないでしょうか?
よろしくお願いいたします。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
> 参照電極の選び方に気をつける必要があるか
あります.何を参照極にしても測定自体はできるのですが,基準電位が何を意味しているかがわからないと,ただ測っただけ,で終わってしまうのです.その電位がどういう意味づけの電位なのかを規定できないと話になりません.水系の場合は塩橋を使うことで,最終的には標準水素電極に結びつけることができます.しかし非水溶媒では液間電位差の問題があるため,どうやっても標準水素電極に直接もっていくことができません.そのため,作業的な参照極はともかくとして,最後にフェロセンのような基準物質の CV あたりを取ることで,その溶媒系での Fc/Fc+ 基準で何Vというような比較ができるようにしておきます.フェロセンは多くの有機溶媒によく溶け,また電極反応もほぼ可逆な波が得やすいので,基準物質としては便利です.かつて,仁木克己先生がフェロセンを基準にする電気化学データベースの作成に尽力されていましたが,そのおかげで,フェロセン基準での比較は世界的に容易になっています.基準物質を使う決めることで,さまざまな溶媒環境下での量子論的計算対象を限定することで,最終的にはすべての電位情報を統一的な尺度で議論できるようにしようというのも,このプロジェクトの意義の一つでしょう.
> 水溶液系と比べて電気二重層が異なるか
異なります.あたりまえですが電気二重層には溶媒分子も吸着しています.吸着溶媒分子の分極率や双極子モーメント,運動制約などが,水と他の分子では違うのですから,同じになるとはとうてい考えられません.もっとも,基本的なイメージについてはあまり変わらないはずです.
> 非水溶液系ではpHを定義することは出来ないはずなのにプロトン系と非プロトン系があるのはなぜか?
pH というか,遊離水素イオンの活量は,どんな溶媒でも定義できます.アプロティックな溶媒であっても,添加物によっては pH が問題になることはあるでしょう.プロティックな溶媒では,有限の水素イオンが存在し,その還元による水素発生が卑側の電位窓を制約することはあり得ますし,溶液反応や電極反応自体に影響することもあるでしょう.わざわざ酸塩基を加えることもありますし.
非水溶媒か水系かというのは,あまり本質的な問題ではありません.もちろん,それぞれの場合において,実験的には気を遣う部分が違うということはありますが,それは本質的な違いではありません.電気化学の基本は同じです.その上で,誘電率や溶媒和の違い,反応環境の違い (通常の化学反応における溶媒効果と本質は同じ),支持電解質の選択,その他を考慮するということになるでしょう.この問題を専門に扱う教科書が少ないのも,非水溶媒の特殊事情というのは,原理的にはそれほどないということの反映でもあるのでしょう.
お二方ありがとうございます。
No1様
Nonaqueous Electrochemistry Orbakh, Doronの方ですが、Amazonで購入出来るようですが、高すぎて手が出せません。大学付属の図書館にもおいていないようです。
Electrochemistry in Nonaqueous Solutions Izutsu, Kosuke
は恐らく同じ著者の和書の英訳本なのではないでしょうか?2009版のものは2002のものよりも内容が増補されているかも知れませんが、発売日である12月まで待つことが出来ません。
No2様
BASのサイトでは非水溶媒用のAg/Agcl電極も販売しているようなのですが、普通のAg/Agcl電極でも使えるということなのでしょうか?
液間電位差が問題となるとのことなのですが、例えばKCl溶液とアセトニトリルの電位差はいつでも同じなのでしょうか?電気二重層だと参照電極に使われるような一部の電極でのみ電位差がいつでも同じだといえるわけですが、液間電位差ではこういう問題は発生しないのでしょうか?
誘電率や溶媒和の違い,反応環境の違い ・・・などがあるとの回答なのですが、具体的に溶媒分子の種類や大きさなどによって定性的および定量的にどのように二重層の形成が異なるかということと、支持電解質の選択のこつのようなものを知りたいわけなのですが、
これらに関して解説してあるものはないのでしょうか?
No1様、No2様
では一般的に非水溶媒で電気化学測定をされている人たちは何を参考にして実験研究を行っているのでしょうか?
書籍ではなく、論文でも構いませんので、
何か参考に出来るものがありましたら教えて頂けないでしょうか?
よろしくお願いいたします。
No.4
- 回答日時:
> 組成が極端に違うと言われても水系と非水系で組成が同じようなものはないのではないのではないのでしょうか?
ないですね.だから参照極の扱いは注意を要する,ということになるのですが.
Vycor glass を塩橋に使っている場合は,測定溶媒と参照極内部液の溶媒を同じにし,規定した濃度の Ag+ を入れて Ag線をセットし,もちろん,Vycor glass 自体も測定用の電解質で十分にコンディショニングして用いれば,液間電位差はある程度小さく,かつ再現的にできるでしょう.この場合は,絶対値はともかくとして,他者にも(原理的には)再現可能な参照極電位を提示できるので,実験的には問題ないとも言えます.ただし,溶媒が変わったときの電位情報は,これだけでは比較できません.
> 銀線をつっこむという話ですが、銀線でも水系でCVをとったことがありますが、±50mVほど経時的に動いて全く使いものにならなかった記憶があります。
もちろん,電解質や被測定物質によっては,ぜんぜんだめですが,経時変化しようが,最後にたとえばフェロセンと被測定物質の共存する溶液で CV でも取れば,電位軸はそのフェロセンを基準に取れる,ってことなんですけどね.経時変化は,あってもいいんですが,あんまり大きいとやりにくいのはたしかで,その意味ではあまりきれいな銀線はだめですね.適当に酸化してるくらいがいいんですよw
> ということは非水系での測定での電位は水系と比べて、信用出来ないデータになってしまうということでしょうか?
そうではなくて,電位基準の問題を,水系よりちゃんと考えないとわけがわからなくなる,というだけのことです.
> 非極性溶媒を使った場合には、極性溶媒と比べて電気二重層は薄くなることが予想されるわけですが、
そうですか?ヘルムホルツ層は大差ないか,あるいは溶媒分子や電解質イオンが大きめになることを考えれば厚いかもしれませんよ? Gouy-Chapmann 層だって厚くなってもいいくらいだと思いますけど?
> 分極率、双極子モーメントが電気二重層厚さに与える影響というものを定量的に扱った式というものがあるのでしょうか?
残念ながら聞いたことがありませんが,ないこともないんじゃないですか.
ただ,電気二重層の物理的構造をきちんと測定したりすること自体,困難を極める話ですし,そもそも「厚さ」を知ることの意味がよくわかりません.厚さが同じでも,中身が違うなら電気的な意味 (界面の電磁気学的環境) も異なってくるわけですし.
No.3
- 回答日時:
> BASのサイトでは非水溶媒用のAg/Agcl電極も販売しているようなのですが、普通のAg/Agcl電極でも使えるということなのでしょうか?
非水溶媒用 Ag/AgCl なんて売ってますか?BAS で売ってる非水溶媒用っていうのは,塩橋の代わりに Vycor glass が使われていて,内部液が交換しやすくなっていて,Ag+ の濃度の管理がしやすくなっている,という,Ag 線のものだと思うんですが.
> 液間電位差が問題となるとのことなのですが、例えばKCl溶液とアセトニトリルの電位差はいつでも同じなのでしょうか?
それは支持電解質とかを,濃度も種類も固定できるならある程度は同じにできるでしょう.同じだというだけで,何Vあるかを知るすべはありませんが.また組成の極端に違う溶液間の電位差は,一般的に経時変化も大きいということも念頭に置くべきです.
> 具体的に溶媒分子の種類や大きさなどによって定性的および定量的にどのように二重層の形成が異なるかということ
これは実験的に調べるしかないのではないですかね.そのために電気化学測定を行うんじゃないんですか?電極材料にも依存する話ですし.
> 支持電解質の選択のこつのようなもの
特別な場合を除けば,水溶液のときととくに変わりません.溶解度とよけいな反応などをしなさそう,ということが基本です.ただし,非水系では現実的にはあまり選択肢は多くありません.カチオン種としてはテトラアルキルアンモニウム,アニオン種としては,ClO4(-),PF6(-),BF4(-) あたりが無難なところでしょう.これらで問題になるときや,実験系に特別な要求があるときには個別に考えるしかありませんが,水系でもそれは同じでしょう.
> これらに関して解説してあるものはないのでしょうか?
> 一般的に非水溶媒で電気化学測定をされている人たちは何を参考にして実験研究を行っているのでしょうか?
たとえば,電気化学会編「電気化学測定マニュアル」(基礎編,応用編),藤嶋昭ほか「電気化学測定法」(上下),日本化学会編「第5版 実験化学講座」あたりにも少しは載っています.電気化学の基本的な部分は非水溶媒でも水系でも共通する話が大半なので,電気化学の測定の本質をつかむことこそ重要だと思いますけどね.
個人的にはアセトニトリル中とかでの実験もたまにはしますが,電位基準をどうするか以外はとくに水系と違ったことを考えてやるわけではありません.めんどうなので,参照極は銀のワイアをただぶち込み,測定の最後にフェロセンを追加投入して CV を一発取って,電位軸の目盛を打ち直すということは,よくやります.電位軸を気にしなくていい測定の場合は,それさえやらず,銀ワイアの疑似参照極ですましてしまうことも多々あります.
すいません、やはりよく分かりません。
>また組成の極端に違う溶液間の電位差は,一般的に経時変化も大きいということも念頭に置くべきです.
組成が極端に違うと言われても水系と非水系で組成が同じようなものはないのではないのではないのでしょうか?非プロトン系だと絶望的ではないでしょうか?
銀線をつっこむという話ですが、銀線でも水系でCVをとったことがありますが、±50mVほど経時的に動いて全く使いものにならなかった記憶があります。
ということは非水系での測定での電位は水系と比べて、信用出来ないデータになってしまうということでしょうか?
電気二重層に関してですが、具体的に計算した溶媒和構造が知りたいというのではなく、非極性溶媒を使った場合には、極性溶媒と比べて電気二重層は薄くなることが予想されるわけですが、分極率、双極子モーメントが電気二重層厚さに与える影響というものを定量的に扱った式というものがあるのでしょうか?
No.1
- 回答日時:
和書には非水系の電気化学の本はないでしょう。
>非水溶液系では水溶液系と比べて、参照電極の選び方に気をつける必要があるか
ぜーん、ぜん、必要ありません。塩橋無しでジクロルメタン溶液とAg/AgCl標準電極を使ってもCV程度ならほとんど問題はありません。
>pHを定義することは出来ないはずなのにプロトン系と非プロトン系がある
プロトン系と非プロトン系があることとpHの定義には何の関係もありません。
自分で測定し、元の論文にあたって見ることを薦めます。
Nonaqueous Electrochemistry Orbakh, Doron (EDT)
Marcel Dekker Inc (1999/07 出版) Hardcover:ハードカバー版
ISBN: 9780824773342 DDC分類: 541.37 Source: ENG
Academic Descriptors: A54403000
Electrochemistry in Nonaqueous Solutions Izutsu, Kosuke (EDT)
Vch Pub (2009/12 「出版予定」) Hardcover:ハードカバー版
ISBN: 9783527323906 DDC分類: 541 Source: ENG
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