No.1ベストアンサー
- 回答日時:
こんばんは.
>『ルマリン固定後のグラム陽性菌の染色』
>菌を使用した実験を始めるように言われました。染色に関して教えてください。
>Vivoでの研究なので、Agarでの培養以外に組織のホルマリン固定をしています
>(生標本ではありません)。
>この組織標本を使用して、細菌が存在しているのか、
>あるいは白血球に貪食されているのか、を見ようと思います。
>それを見るのに、どのような染色が良いのでしょうか?
>通常のHE染色で良いのか?
>ホルマリン固定後でもグラム染色で良いのか?他の染色が良いのか?
蔵書の表題『染色法のすべて』の,『VII.染色体検査』(P65)から,
ご質問に該当する下記染色法の部分を転載します.
ちなみにこの書籍の発行所は『医歯薬出版(株)』で,
多くの医師や臨床検査技師による共著です.
医学系臨床の現場で使用されているもので,改訂版も出ているようです.
29.グラム染色法(Gram stain)
【目的】
デンマークのHans Christian Joacim Gram(1853~1938)が,
1884年に発表した染色法(注1)で,この染色法により細菌などの微生物は,
グラム陽性菌Gram-positive micro-organismsと
グラム陰性菌Gram-negative micro-organismsとの染め分けをして,
細菌の種族同定の一助にしようとするものである.
組織切片についてのグラム染色法は,Brown and Brenn法(注2),
MacCallum-Good-pasture法(注2),Taylor法(注2),
Huckker-Conn法などの多くの方法が報告されている.
これらのグラム染色のWeigertの変法(注4)は脱色液としてアニリン・キシロールを使用し,繊維素fibrinの染色法として広く用いられている.
【準備】
通常の10%ホルマリンで固定した組織を型のごとくパラフィンに包理し,薄片は5~6μmくらいまでの薄い方がよい.なお,グラム染色には中性ホルマリンで固定した組織の方が染め上がりがよいとされている.
【試薬の調整】
ⅰ)グッドパスチャーのアニリン・石炭酸フクシン液
塩基性フクシン・・・・0.59g
アニリン・・・・・・・1.0ml
石炭酸結晶(融解)・・ 1.0ml
30%アルコール・・・100.0ml
ⅱ)グラムのヨード液
ヨー素・・・・・・・・1.0g
ヨー化カリ・・・・・・2.0g
蒸留水・・・・・・・・300.0ml
はじめに,ヨー化カリを少量の蒸留水と溶解させ,
完全に溶かした後にヨー素を加え,蒸留水を加えて完全に溶解させる.
ⅲ)スターリング(Stirling)の液
クリスタル紫(またはゲンチアナ紫)・・0.5g
純アルコール・・・・・・・・・・・・10.0ml
アニリン・・・・・・・・・・・・・・ 2.0ml
蒸留水・・・・・・・・・・・・・・・88.0ml
ⅳ)飽和ピクリン酸溶液
ピクリン酸・・・2.0g
蒸留水・・・・100.0ml
スターリングの液はゲンチアナ紫が原法であるが,
クリスタル紫の方がよい.
『化学構造(添付画像に掲載しています)』
クリスタル紫の溶解性は20℃の水には1.43%,
アルコールには5%である(注1)
【手技】
(1)組織切片を型のごとく脱パラフィンして蒸留水に入れる.
(2)グッドパスチャーのアニリン・石炭酸フクシン液で
10分間染色(室温)
(3)蒸留水に浸漬,水洗.
(4)40%ホルマリン
(市販のホルマリン原液をそのまま使用する)で,
切片が鮮紅色になるまで1~2分間分別する.
(5)流水中で3分間水洗.
(6)飽和ピクリン酸溶液に3~5分間浸漬する.
切片は紫黄色となる.
(7)蒸留水で水洗.
(8)95%アルコール中で約30秒間分別.
(9)蒸留水で水洗.
(10)スターリングの液で3分間染色.
(11)蒸留水で十分に水洗.
(12)グラムのヨード液に1分間浸漬.
(13)蒸留水で簡単に水洗し,濾紙で切片面の水分を吸い取り
半乾きとする.
(14)アニリン・キシロール等量液中で十分に分別する.
切片が明るい淡紫赤色となり,
紫色の脱色がなくなるまでを目安とする.
(15)キシロールで透徹,2回.
(16)封入.
【コツ・注意点】
(8)のステップは30~60秒とやや長めに行う.
(10)のステップでは,一枚ずつ染めて次のステップにうつす.
一度に多数の切片を染める場合には,一回に5枚以内にした方がよい.
過染すると(14)のステップでの分別が上手くゆかない.
(12)のステップは長すぎないようにする.
(13)のステップでは,濾紙で切片上の水分を軽く吸い取り,そのまま数分間放置して半乾きとする.観想させてしまってはいけない.
(14)のステップでは,最初にアニリンのみによって分別すると分別が早く行われる.アニリンは新鮮なものを用いることがコツの1つである.なお,(4)のステップはホルマリンを染色バットに十分に入れて,その中を切片を往復させる方法によって分別する.時間は短めの方がよい.
【染色態度】
グラム陽性菌:濃青色
グラム陰性菌:赤色
その他の成分:淡赤~紫色まで種々の色調を示す.
【参考文献】
1)Law,J.W. & Oliver,Hj.:Glossary of histo-pathological terms. Butterworths,London,1973.
2)Luna,L.G.(Ed):Manual of histologic staining methods of the AFIP(3rd Ed.)Mcgraw-Hill,NY.,1968.
3)小林忠義,影山圭三(編):病理組織標本の作り方(第3版).医学書院,1971.
24年もさかのぼる昔に学んだ関係書物からの内容でした.
今の私にとってはこの知識も現在の古生物の研究には,
薄片試料を染色する必要が無いため直接役に立っていません.
つまり知識の更新が行われていませんのでご了解ください.
なお図書館で『染色法のすべて』を読まれることも考慮してください.
お役に立てばと,
今夜の仕事を終わって急いでキーボードを叩き,一気に作成しました.
それでも現在時刻は午前1時を過ぎています.
明日のこともあり読み直す暇がありません.
脱字や誤字があることも考えられますが,
その際は機知にてご判断されご笑納ください.
この回答が,
ご質問者さまの疑問解消の一助になれば幸いです.
tibikotan様
大変お忙しい中、まさに、欲していた情報をいただきましてありがとうございます。海外留学中につき、欲しい本にたどりつけずに困っていたので、本当に助かりました。
Gram染色自体が、ペプチドグリカンの厚い・薄いによる違いを利用した染色方法なので、ホルマリンを使用して菌が破壊されたり、あるいは切片を切る時も、菌の壁が割れたりしたら、染色そのものが難しいのでは、あるいは全てグラム陰性になるのでは、ということを危惧していましたが、安心しました。(学生実習で生標本のグラム染色しかしたことがありませんでした)
十分勝負できそうなので、早速チャレンジします。
大変ありがとうございました。
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