売買の目的物が原始的不能の場合と売買の目的物に瑕疵がある場合の違い
先日、ある試験でこんな問題がでました。
XはYに対して400万円の一時金の支払いを給付内容とする債権Aを有している。
Xは甲に対してこの債権Aを代金350万円で譲渡した。
甲がYに対して債権Aの履行(400万円の支払い)を要求したところ、
譲渡時の前にYからXに400万円の支払いがなされており、
その債権Aは既に消滅していた。
この場合に、Yから支払いを拒まれた甲がXに対して支払った
350万円を回収するために民法上どんな手段をとることができるか。
私は、X及び甲間の売買の目的物である債権Aに瑕疵があったのだから、
甲はXとの契約を解除できる(民570条)。契約を解除すると双方に
現状回復義務が生じるから(545条)、解除後にこの545条によって
450万円の回収ができると答えたのですが、模範解答は次のようなものでした。
X及び甲間の債権譲渡契約は、契約の時点で金銭債権Aが存在しなかったから
「原始的不能であって契約は無効」であり、不当利得として(民703条)
450万円の回収ができる。
この「原始的不能であって契約は無効」という考え方は
初めて知ったのですが、条文以外を別の法理を根拠とするものなのでしょうか。
570条→545条という理屈が当てはまる場合と
原始的不能であって契約は無効→不当利得という理屈が当てはまる場合の
違いはどう判断すれば良いでしょうか。
まとまりない質問で申し訳ございませんが、どなたかご教示ください。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
570条は、売主の瑕疵担保責任を定めた規定ですが、
同条を含む売主の担保責任は、
売買契約を代表とする有償契約の特殊性にかんがみ、
契約法の一般原則を修正したものです。
したがって、契約の原始的不能は無効という契約法の一般原則と、
瑕疵担保責任との違いの判断基準が何かといえば、
有償契約かどうかという話になります。
では、ご質問の問題では、有償契約たる債権売買なので、
質問者の答え通り、瑕疵担保の話になるかというと、それも違います。
売買の目的物が存在するものの、その瑕疵により価値が低い場合に、
等価的均衡を保つべく売主に課されるのが瑕疵担保責任なのであり、
売買の目的物がそもそも存在しない場合には、その瑕疵もあり得ず、
瑕疵担保責任が出てくる余地もないからです。
言うなれば、目的物がないことは、「瑕疵」以前の問題なのです。
なお、原始的全部不能による契約の無効の典型例として、
別荘の売買契約を締結したところ、その前日に別荘が落雷で全焼していた場合、
というのがありますので、これと同様に考えればよいのではないかと思います。
最後に、厳しいとは思いますが、あえて一言。
原始的不能の契約は無効、というのは、
契約の有効要件という、契約法の超基本中の基本の話であり、
どんな基本書にも絶対に書いてあることですので、
まずはその点をしっかり確認することをお奨めします。
基本をないがしろにして理屈だけ覚えても意味がありませんから。
No.1
- 回答日時:
X甲間の債権譲渡契約とは、
Xの履行債務:400万円の債権を甲に譲渡する
甲の履行義務:Xに350万円支払う
という双務契約ですよね。
で、今回はXの履行義務(=甲の履行停止条件)が債権の消滅によって不能だというわけですよね。
ということは、
民法133条 不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
が適用され、債権譲渡契約そのものが、締結時から無効というわけです。
545条は、適法に成立した契約を中途で解除した場合の取り決めであって、この場合(最初から契約が無効だった)にはなじみません。
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