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項目応答理論とは別にもう一つ質問させていただきます。共分散構造分析というものが一体どういうものなのか教えてください。なぜ適合度の判定が出来るのかなどに触れていただけると嬉しいです。卒業論文で利用する予定なので、この理論について学部生として必要な分だけは理解しておきたいと考えています。主観で結構ですので、この点も踏まえて回答お願いします。

A 回答 (1件)

こんにちは.



項目応答理論も共分散構造分析も,名前はよく聞き,実際注目されているが,その原理を正しく理解して使っている人は少ない……というのが,学部生だけでなく,院生や先生レベルにおいても現状です.いわゆる数理的側面からこれらを理解するのは,心理学者としてはいささか荷が重く,少なくとも,t検定や分散分析のように「知っていなければいけない」というものではなく,使いたい人が最低限のことを知っておくという性質の分析法でしょう.

私自身も共分散構造分析についてはよくしりませんが,人に説明する時に以下のようなイメージ的説明をします.

共分散構造分析は,それまでの統計解析法を包括する優れた手法……なのですが,この説明では何がすごいのかよく分からないでしょう.

心理学者が結果の解釈や使い方は知っておくべきとされる統計解析法に「重回帰分析」と「因子分析」があります.
重回帰分析は「原因→結果」の図式を適用して,【想定したモデル内において】原因や結果が何であるかを考えるものです.科学の究極的な目的として「単なる相関関係ではなく,因果関係を調べる」がありますが,その意味では重回帰分析はなかなか有効です.しかし,重回帰分析の問題点は「観測変数」しか扱えない,実際に測定した数値しかモデル内に組み込めないというものがあります.
対して因子分析は,観測変数のデータから,その背後にある因子という「内生変数」について調べることができるものです.人々が持っている(だろう)知能という内生変数は形がないので直接調べることができませんが,それをテストを使って「知能指数」という「観測変数」形として調べることができますしかし知能指数が,その人の知能を直接反映しているかというとそんなことはなく,間接的に測定しているに過ぎません.このような間接的な情報である「因子/内生変数」を調べることができる因子分析ですが,問題点は自分が想定する「原因→結果」の図式を使えない,と言うことが挙げられます.

このように,重回帰分析は「自在に原因-結果を想定でき」ますが「内生変数を扱えない」,対して因子分析は「内生変数を扱える」が「自在な原因-結果を想定できない」と,それぞれに長所短所があります.
……このように書くと,流れから推測できると思いますが,共分散構造分析は「内生変数を扱える」かつ「自在に原因-結果を想定できる」というように両方のいいとこ取りができるのです.なぜならば,共分散構造分析は重回帰分析や因子分析を包括するモデルだからです.更に言えば,分散分析やその他の統計解析法の多くも,包括しています.まさに共分散構造分析は統計解析法の王様と位置づけることができるでしょう.

以上で共分散構造分析の偉大さの一端は分かっていただけたと思います.つまり共分散構造分析一つあれば,その他の統計解析法の多くは不必要になる可能性もあります.

ただし!

これほどあまりにも便利な統計解析法ですが,無論欠点も存在します.共分散構造分析がこれほどの汎用性を持つにはそれなりの【代償を必要】とします.
そもそも共分散構造分析が汎用性を持ちうるのは何故かというと,予め組み込まれている前提条件が少なく,実際の分析をするためには分析者があれこれと指示をしなければならない,からです.重回帰分析では「観測変数のみを扱う」「従属変数は一つだけ」などのように予め前提条件が存在します.この前提条件が枷になることもありますが,逆に言えば,そのような枷があるからこそ,その前提条件について悩む必要がなく習熟が簡単なのです(因子分析にも前提条件が当然あります).しかし共分散構造分析では,その前提条件がないので,逆に言えば,わざわざ指定しなければなりません.

突飛なたとえをします.どこかに移動する場合様々な移動手段が存在します.例えば「歩いて移動」「車で移動」「飛行機で移動」などなどです.「歩いて移動」しかできないAさん,「何でも移動できる」Bさんがいるとしましょう.とにかく「○○に行け」と指示を出す場合,Aさんだったらその指示が出た瞬間,何のためらいもなく,目的地に向かって歩き始めるでしょう.対してBさんは,「○○に行け」だけの指示では動けません.具体的にどのような移動手段かを指示しなければなりません.このように様々な手段を持つ人に対しては,細々とした具体的な指示をしなければなりません.Aさんは前提条件がある(「車で移動するな」「飛行機泥どうするな」)重回帰分析タイプです.Bさんは前提条件がほとんどない共分散構造分析タイプです.

話を戻しますが,共分散構造分析の大きな欠点の一つとしては「自分であれこれと命令,指定をしなければならない」という点があります.簡単に言えば,データに対してかなり明確な仮説モデルがないとだめなのです.「よく分からないけどとりあえず分析をしよう」ということができません.他にも大量データでなければならない,などの欠点もありますが,最大の欠点は上記の「あれこれの指定」でしょう.しかし逆に言うと「あれこれ指定しなければならない」とは「あれこれ指定できる」となり,欠点が長所に転じます.
この意味で共分散構造分析は,それまでの統計解析法の前提条件に満足できない人が,前提条件そのものをいじって,自分であれこれモデルを作りたい,というような玄人好みの統計解析法であると言えるのではないでしょうか?

長くなりましたが,最後に「適合度の判定」についてごく簡単に.
適合度の判定とは,要するにそのモデルが適切かどうかを判断する指標がある,ということでしょうか? その意味でしたら,実は多くの統計解析法にそのような「適合度の判定」に類するものがあります.重回帰分析ではモデルの分散分析(F検定を使ったもの)が該当します.
適合度の判定は,予測値と実測値がどれほど合致しているかを示しますが,共分散構造分析とは先に散々繰り返したようにモデルを作ります.すると,モデルによる予測値と,実際のデータ実測値とを比べることにより,そのモデルがデータに適合しているかどうかを調べることができます.

> なぜ適合度の判定が出来るのかなどに触れていただけると嬉しいです

大抵の統計解析法の多くには,適合度の判定に類するものは実装されています(因子分析が例外的ですが.但し,因子分析も最近のオプションによっては適合度の判定ができるそうです).

最後に.
共分散構造分析は,最初に述べたように,必要な人が困らない程度にがんばって理解する,という性質の統計解析法です.そのために学部生の場合であれば,論文でこの分析法が使われている場合は結果の数値の解釈だけできれば,ひとまずokだと思います.使う場合でも,自分が使う範囲で困らない程度の習熟すれば良いと思います.
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この回答へのお礼

回答どうも有難うございました。非常に分かりやすい説明をしていただき、嬉しく思います。適合度の判定については、CFIやGFI、AGFI、RMSEAのつもりで言っていました。講義で習ったのは良かったのですが、いまいちイメージがつかみにくい部分があり、その部分が解消できたように思います。本当に有難うございました。

お礼日時:2004/02/04 20:50

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