お世話になっております。些細な疑問なので、寄り道程度にご回答下さい。
数学の論理で"開いた文"という"主張"にはなりがたい文がありますが、例えば次の含意について、結果の不等式は開いた文と言えますか?
a,b∈実数 とする。
a>0 ⇒ ab>0 である。
ab>0 ⇒ a>0,b>0 または a<0,b<0 ですが、この含意では、bの正負を与えてませんから、bに補足しない限り真偽を問えない。もう少し補足するなら、
「a>0とき、b>0なるbをaに掛ければ、ab>0である」みたいな命題であるべきですよね。
という理由でこの命題は、元のものも逆も偽として考えても差し支えないでしょうか?
宜しくお願い致します。
A 回答 (5件)
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No.1
- 回答日時:
> a,b∈実数 とする。
> a>0 ⇒ ab>0 である。
これを普通に読めば
∀a∀b((a∈実数∧b∈実数)⇒ (a>0 ⇒ ab>0))
すなわち「任意のa、任意のbについて、もし(aが実数で、かつbが実数)であれば、(a>0ならばab>0である)」という閉じた命題です。(「閉じた」というのは、出て来る変数a,bがどちらも∀(あるいは∃)によって束縛されていて、自由変数(束縛されていない変数)はないからです。)
これがもし、最初の一行がなくて単に、
> a>0 ⇒ ab>0 である。
と書いてあったとすると、それは
a>0 ⇒ ab>0
という開いた命題です。(「開いた」というのは、自由変数(束縛されていない変数)が含まれているからです。)
> 「a>0とき、b>0なるbをaに掛ければ、ab>0である」みたいな命題であるべきですよね。
違います。「正しくはこうあるべきだ」なんてことはありません。たしかに、一番最初に書いた命題の真偽値は偽ですが、そのことは「この命題を書く事自体が間違いだ」なんてことを意味していません。単に、偽の命題を書いた、というだけのことで、そうしたところで一向にかまわないんです。
なお、「a>0とき、b>0なるbをaに掛ければ、ab>0である」は、余計な言葉が挟まってますが、最初の一行
> a,b∈実数 とする。
を含めて読めば
∀a∀b((a∈実数∧b∈実数)⇒ ((a>0 ∧ b>0)⇒ab>0))
つまり「任意のa、任意のbについて、もし(aが実数で、かつbが実数)であれば、((a>0かつb>0) であれば、ab>0である)」という閉じた命題です。その真偽値は真ですが、もちろん「真の命題を書いてはいけない」なんてことも、ありません。
> 元のものも逆も偽として考えても差し支えないでしょうか?
間違いです。おそらく、命題の「逆」って何のことだか、お分かりではないのでしょう。
A⇒B
という形をした命題についてだけ「逆」の命題が存在し、それは
B⇒A
という形の命題です。
a>0 ⇒ ab>0
の逆は
ab>0 ⇒ a>0
ですね。
A⇒Bが偽であるとき、逆であるB⇒Aは必ず真です。一方、A⇒Bが真のとき、B⇒Aは真になることも偽になることもあります。
たとえば、
・a=1, b=-1のとき、a>0 ⇒ ab>0は偽で、ab>0 ⇒ a>0は真。
・a=1, b=1のとき、a>0 ⇒ ab>0は真で、ab>0 ⇒ a>0も真。
・a=-1, b=-1のとき、a>0 ⇒ ab>0は真で、ab>0 ⇒ a>0は偽。
(a=-1, b=-1のときにa>0 ⇒ ab>0が真だ、ということは理解してますか?)
なお、最初の命題
∀a∀b((a∈実数∧b∈実数)⇒ (a>0 ⇒ ab>0))
は、A⇒Bの形をしていないから、逆というものはそもそもありません。
ご回答ありがとうございました。
パッパッと書いてしまったのでNo.2様のおっしゃるようにもう少し推敲するべきでした。改めて
P:ab>0 Q:a>0 (aとbは実数)として
P⇒QとQ⇒P の真偽を考える、と質問すれば良かったかも知れません。
P⇒Q については、Pと同値な
a>0かつb>0 …(1) または
a<0かつb<0 …(2) が成り立つハズです。この場合Qは(1)を満たすだけでこの命題は真と言えますか?
Q⇒P については、質問にある通りですが、bは実数というだけですので、ab>0という結論は主張になるのかどうか、つまり(この辺りは当方の理解が曖昧なのですが)開いた文と言って良いのかどうか、という疑問になります。
No.2
- 回答日時:
こ~いうのは多くの場合てきとうな限量子がついているものと解釈しそうな気がするけどねぇ.
さておき, 最後の段落は何をいっているのかわからない. 「という理由で」の「という理由」って, どんな理由ですか? 「この命題」ってなんですか?
この回答への補足
回答ありがとうございました。少し難しい言葉が出ましたね。限量子というのは見方によっては、補題とか特徴付けという事でしょうか?
論理などと書いてしまいましたが、高校数学に毛が生えた程度と思って下されば有り難いです。試験近いので、整理の為に背伸びして「証明の楽しみ」という本で論証について復習してみた次第です。
最後の下りは、当方のミスでした。「という理由で」でなく「というのを理由にして」が真意です。「その命題」は例に挙げたものです。
失礼しました。
No.3
- 回答日時:
●「 開いた文 」であるかどうかは、状況しだいでしょうね。
1) a, b ∈ {x| x は実数である} であるとする。このとき「 (a > 0) → (ab > 0) 」である。
上記の 1) の直後に、「 このことを証明せよ。証明できない場合は、その理由を示せ 」などの文言が続けば、1) は「 開いた文 」という扱いではなくなるであろうと、私は考えます。単に 1) だけが記述されているのであれば、1) は「 開いた文 」であると、私は考えます。
上記の 1) という命題を、単なる「 開いた文 」と理解するか、それとも「 全称命題 」と理解するかということで、dormitory さん は悩んでいらっしゃるようですね。「 全称命題 」の説明は後まわしにします。
● 以下では、R = {x| x は実数である} と表記することにします。
上記の 1) を「 開いた文 」ととりあえず理解することにします。「 開いた文 」は、「 条件 」「 命題関数 」などとも呼ばれるようです。この 1) をより論理式らしく表記することにします。∧ は「 かつ 」を意味し、→ は「 ならば 」を意味する記号であるとします。
2) ((a ∈ R) ∧ (b ∈ R)) → ((a > 0) → (ab > 0))
a = 1, b = 2 を代入することにします。
3) ((1 ∈ R) ∧ (2 ∈ R)) → ((1 > 0) → (2 > 0))
上記の 3) は、(真 ∧ 真) → (真 → 真) になります。よって、3) は真です。次は、a = 1, b = - 2 を代入します。
4) ((1 ∈ R) ∧ (- 2 ∈ R)) → ((1 > 0) → (- 2 > 0))
上記の 4) は、(真 ∧ 真) → (真 → 偽) になります。よって、4) は偽です。次に、a = りんご を代入します。b には何が代入されているか不明とします。
5) ((りんご ∈ R) ∧ … ) → ( … )
上記の 5) は、最初の代入だけを済ませた段階で、真であると判定されます。
(偽 ∧ … ) → ( … )
以上は、2) が、すなわち 1) が「 開いた文 」であることを単に確かめただけです。2) は a, b しだいで、真になったり偽になったりします。
● 2) の直前に「 どの a, b についても 」という文言を付け加えて、新たに 6) という命題を作ります。この 6) は「 全称命題 」と呼ばれるものです。「 全称命題 」は、「『 開いた文 』の冒頭に『 どの ( 変数 ) ついても 』という文言が付け加えられた命題 」です。
6) どの a, b についても (((a ∈ R) ∧ (b ∈ R)) → ((a > 0) → (ab > 0)))
この 6) は次のとおりに表記されることがあります。
6) ∀a(∀b(((a ∈ R) ∧ (b ∈ R)) → ((a > 0) → (ab > 0))))
上記の 1) の直後に、「 このことを証明せよ。証明できない場合は、その理由を示せ 」などの文言が続けば、6) 扱いになるであろうというのが、私の考えです。
上記の 3) が偽でありましたから、6) は偽です。
● まちがっていましたら、ごめんなさい。
ご丁寧な回答ありがとうございました。猛烈な睡魔が襲ってきたのでご回答の吟味は明日に回させていただきます。ごめんなさい。 追加質問は補足させていただきます。
No.4
- 回答日時:
● ごめんなさい。
全称命題に関して、説明か不足していました。● 全称命題の例
7)「 どの 変数 a, b, c についても 」+「 変数 a, b, c を含む開いた文 」
上記の 7) は全称命題です。ところが、次の 8) は開いた文です。なぜならば、変数 d によっては、真偽が分かれることがあるからです。
8)「 どの 変数 a, b, c についても 」+「 変数 a, b, c, d を含む開いた文 」
後半に登場するすべての変数が、前半にも登場していれば全称命題です。( なお、7) 8) において、後半の開いた文の中に ∀ や ∃ という記号が含まれないものとします )
No.5
- 回答日時:
ANo.1へのコメントについてです。
> 開いた文
「開いた」(正確には「開いた論理式」ですが)とは、限量子である∀や∃が付いてない変数(自由変数)を含む、ということです。当然、その真偽値は、自由変数に何を代入するかによって真にも偽にもなります。(全称限量子∀については解説が出ているようです。存在∃については、まだ説明すべき状況にないように思います。)
> P:ab>0 Q:a>0 (aとbは実数)として
> P⇒Q については、Pと同値な
> a>0かつb>0 …(1) または
> a<0かつb<0 …(2) が成り立つハズです。
いいえ、違います。
憶測ですけれども、きっと、P⇒Qの意味を「Pが成立つのが前提で、それでもってQが成立つかどうか…」だとか「PからQを導く」という風にでも思い込んでらっしゃるんでしょう。もしそうなら、100%まるっきりの間違いだから、今すぐ忘れて下さい。
P⇒Qは、「PならばQ」と読んで、「Pでないか、またはQである」という意味です。それだけ。
"⇒"は二つの命題(論理式)から一つの命題(論理式)P⇒Qを作る論理演算子です。「∧(かつ)」や「∨(または)」と同列の、ただの演算子です。そして、P⇒Qはこれ全体が真か偽のどちらかの真偽値を取る命題(論理式)に過ぎません。
Pがab>0、 Qがa>0であれば、P⇒Qとは「ab>0でないか、または、a>0である」ってこと。だから、たとえば
a>0かつb<0 なら a>0であるから、P⇒Qは真
a>0かつb=0 なら a>0であるから、P⇒Qは真
a>0かつb>0 なら a>0であるから、P⇒Qは真
a<0かつb>0 なら ab>0でないから、P⇒Qは真
a<0かつb=0 なら ab>0でないから、P⇒Qは真
です。(この例をしっかり吟味して、思い込みを払拭して下さいな。)
一方、P⇒Qが偽になるのは、「『Pでないか、またはQである』ではない」とき、すなわち「Pであり、かつQでない」とき。このときだけです。Pがab>0、 Qがa>0であれば、「ab>0で、かつa>0でない」場合です。だから
a<0かつb<0 なら ab>0で、かつa>0でないから、P⇒Qは偽
です。
ところで、ANo.1へのコメントでは専ら「もしa,bが実数ならば、それらが何であれ((1) ∨ (2))⇔Pである」という話をなさっているのでしょう。それが意味するのは「開いた文」
((1) ∨ (2))⇔P
ではなくて、
∀a∀b((a∈実数∧b∈実数)⇒(((1) ∨ (2))⇔P))
である。自由変数がないから、これは「閉じている」。
以上、ANo.1をほぼもう一回書き直したようなもんです。ということは、果たして回答をお読みになったのかどうか、疑問に思わざるを得ません。なのでひとつアドバイスです。応答を急ぐことはありません。時間を掛けてそれぞれの回答をじっくり読み、理解しようとして下さい。
ご回答ありがとうございました。多分また、「どうせよく読んでないだろう」と思われるのでしょうね。
主題は解決されました。解答を早朝に確認したものですから。P、Qのいずれかが開いた文であっても、含意P⇒Qは一つの主張(命題)となるのは間違いないようです。自分で調べましたが、あとは文の書き方の問題で調べたものとstomachmanさんのおっしゃる内容に違いがあったので改めて確認したいと思います。
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