No.3ベストアンサー
- 回答日時:
2の回答が正確です。
この質問は理論的に言えば、錯誤の問題に他なりません。
>過失の窃盗ということで故意は否定されます
と書いていますが、これは適切な書き方ではありません。
「故意が否定されるから過失の窃盗になる」と書くべきです(「ということで」という書き方はあいまいで、理由のようにも読めるし単に並べているだけのようにも読めます。よって「適切ではない」です。)。
そして故意が否定されると当たり前のように書いていますが、なぜ故意が否定されるのですか?その理由を考えてみましょう。
簡単です。理論的な根拠は「事実の錯誤だから」です。
他人の傘を自分の傘と間違って持って帰るのは、他人の傘であるという客観的事実と自分の傘であるという行為者の主観的認識に食い違いがあるということですから、まさしく「事実の錯誤」です。そして「事実の錯誤だから故意を阻却する」のです。故意を阻却するのですから故意犯は成立しません。よって故意の窃盗罪にはならないという結論になります。
つまり、この事例は、
>事実の錯誤の問題としてこの事例を考えても故意は否定される
のではなく
「まさしく」事実の錯誤の問題「であるから」この事例「においては」故意は否定される
のです。
さて、事実の錯誤では、構成要件的故意を否定しても他の犯罪になる可能性があることがあります。その場合には当該他の犯罪の成否を検討する必要があり、一般的な教科書にはその説明が書いてあります。
しかし、当該他の犯罪が明らかに存在しない場合には「故意を阻却するから犯罪不成立」で終わりにしてしまって構いません。論じるだけ時間の無駄というものです。ですからそんな事例は教科書ではくどくど説明しません。
ただ、「故意が過失に変わっただけの犯罪」というのは典型的にいくつか存在するので、「過失は不処罰」という話を付け加えると、「他の犯罪の成否の可能性は意識していますよ。この事例の場合には過失犯が存在しないということも理解していますよ」というアピールにはなります。しかし、教科書の執筆者がそんなアピールをする必要はないのでそんなことは一々書きません。「他の犯罪の成否を常に意識しておきなさいよ」という注意喚起の意味で書くことはあります。まあ、試験の答案になら書いておいても悪くないね、と、その程度です。
>すべての犯罪は客観的構成要件要素を満たせば故意犯か過失犯にわかれると考えてよろしいのでしょうか?
間違いではありませんが言っていることに論理的に意味がないです。
私の知る限り、無過失責任を認める犯罪類型はないはずなので「故意または過失がない限り犯罪にはならない」のですから、すべての犯罪は故意犯または過失犯であるということになります。しかし、これは単に、犯罪の成立要件として主観的要素としての故意または過失を要するという話に過ぎません。「客観的構成要件要素を満たすかどうか」という話とは全然別次元の話です。客観的構成要件要素を満たすかどうかは「犯罪成立の要件」ではありますが、「故意犯か過失犯に分かれる」かどうかとは論理的に何のつながりもありません。
返答ありがとうございます。
他人の傘を自分の傘と間違えるのはまさしく事実の錯誤
→故意は否定されるので過失犯として検討する
→窃盗の過失犯は規定がないので不処罰
‥という考え方でよろしいですかね?
No.2
- 回答日時:
>他人の傘を自分の傘と間違って持ち帰るのは、過失の窃盗ということで故意は否定されますけれど
思考の順番が逆だと思います。故意があるかどうかを検討し、故意が認められなかったら、次に過失犯が成立するかを検討するのです。ただ、過失窃盗罪がないので、過失犯の成否を考えるまでもないというだけのことです。
>錯誤の問題などは関係ないのでしょうか?
事実の錯誤は、事実に対する認識と認識の対象となる客観的事実との食い違いです。本件で言えば、行為者は、自己の占有する傘と認識していたが、客観的事実は他人の占有する傘なのですから、これもまさしく事実の錯誤の事例です。
しかし、この事例で窃盗罪の故意が認められないことは誰も異論がないわけですから、いわゆる教科書に載っているような「事実の錯誤論」で、わざわざ取り上げて議論の対象にするまでもない事例というだけのことです。
返答ありがとうございます。少し話はずれますが、故意が認められなかったら過失犯が成立するか検討すると書いてありますが、すべての犯罪は客観的構成要件要素を満たせば故意犯か過失犯にわかれると考えてよろしいのでしょうか?
No.1
- 回答日時:
他人の傘を自分のと間違えて持ち帰るのは、御指摘の通り
過失窃盗ということになり、現行法では不可罰です。
錯誤の問題になるのは次のような場合です。
・他人である甲の傘だと思って持ち帰ったが、
実は、やはり他人である乙の傘だった。
これは客体の錯誤、といわれるものです。
甲でも乙でも、他人の傘を持ち帰ったことは確かですから
法定的符合説や具体的符合説、抽象的符合説、いずれの
説を採っても、この場合は窃盗の故意があることに
なります。
なお、方法の錯誤もあり得ますが、傘の窃盗でこんなことが
現実に発生するか、ちょっと疑問ですね。
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