No.2ベストアンサー
- 回答日時:
ご質問の事例では,地役権設定はできないと思います。
民法第280条は,地役権を「他人の土地を自己の土地の便益に供する権利」と定義しています。また,第281条で要役地を「地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるもの」,第285条で承役地を「地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるもの」としています。
このように条文では,要役地所有者(地上権者,賃借権者については,古い判例は否定しているが,登記先例は認めている)と承役地所有者は別人であることが前提になっています。
そして地役権は,ある土地の一部分(たとえば土地の北側の一部分)に設定することはできる(民法第282条2項)ものの,用益権であることから,共有持分のうえにも持分のためにも,存在させる(設定する)ことができません。民法第282条1項もそのことを前提にしているものであり,当初は適法であったものがあとからそのような状態になることをも否定する規定だといえるでしょう。
ということで,自己所有の土地を要役地とする地役権を自己所有の土地に設定することができず,また他人の共有持分にも設定できないということから,AもBも,AB共有の土地を承役地に,ABそれぞれが所有する各土地を要役地にする地役権は設定できないものと考えます。
ひょっとすると自己借地権(借地借家法第15条)があるから,とお考えだったのかもしれませんが,これは借地借家法が民法に優先する法律(法律の優劣の関係で,特別法は一般法に優先しますが,民法が一般法,借地借家法が特別法に当たります)であるために民法第179条(混同)の適用がなくなり自己賃借権が認められるのであって,地役権についてはこのような特別法はなかったと思います。
それにご質問の事例では,AもBも,AB共有の私道の「全部について、その持分に応じた使用をすることができる」(民法第249条)ので,その使用可能な私道にわざわざ地役権を設定するほどの理由(承役地を要役地の便益に供する)に乏しいように感じます。
もしも水道の引き込みに反対する共有者がいるとしても,他の共有者はその第249条に従って土地を使用収益する権限を有するので引き込みができるはずですし,反対共有者がどうしてもそれに反対しようとするならば,それを求める理由を主張・立証しなければならないはずです(最判昭41.5.19)。
といってもそれは裁判所での話になってしまいますので,とりあえずは弁護士に入ってもらってその辺りの話をしてもらうぐらいしかできないかもしれません。お金かかっちゃいますけどね。
この回答へのお礼
お礼日時:2016/06/15 17:33
大変詳しい回答ありがとうございました。感謝致します。ようやく納得です。追加で質問したいのですが、近所の水道の引込の反対は壮絶でした。印鑑もらえないと嘆いておられました。AB共有の私道を分割(分筆)した場合は地役権でできるのでしょうか。お時間あるときに再度お願い致します。
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