No.1ベストアンサー
- 回答日時:
ざっと調べた結果ですが、
ローマ帝国が東西に分かれるまでは、プラエノーメンは機能していたようです。皇帝の名前を見てみると、プラエノーメンがあり、逆にこれが無いと皇帝としての継続性に欠けてしまうので、プラエノーメンは皇帝としての資質と正統性にとっても重要でした。
分裂後の東ローマ帝国を見てみると、641年まで在位したヘラクレイオス1世からアルメニア系貴族の影がなくなります。もっともヘラクレイオス1世の名前はFLAVIVS HERACLIVS AVGVSTVSでFLAVIVSという後期ローマ帝国のコンスタンティヌス帝から続くプラエノーメンがあるのですが、この次のコンスタンティノス3世にはプラエノーメンがなく、その後の東ローマ皇帝にもプラエノーメンはついていません。
これは、ヘラクレイオス1世が実際にはアルメニア系貴族であり、自分はローマ皇帝の正統性をつなげるためにプラエノーメンを必要としたものの、継嗣が皇帝を継ぐにあたってはすでにアルメニア系というかギリシャ式の行政制度や公用語もギリシャ語に改めていたため、皇帝を継ぐ方式もローマ式である必要がなくなったからでしょう。
ローマ人は居たとしても、ギリシャ語に改まり、また東ローマ帝国がイスラム勢力の侵入を許したことなどにより、急速にプラエノーメンは衰退したと思われます。
また、西ローマ帝国は最後からひとつ前11番目のフラウィウス・ユリウス・ネポス:Flavius Julius Nepos 475年まで在位はプラエノーメンFlavius を持っていますが、最後の西ローマ帝国皇帝とされるロムルス・アウグストゥルスにはプラエノーメンがありません。
もっとも西ローマ帝国は400年を過ぎたあたりから、ガリア人やゲルマン人に激しく浸食されていましたので、彼らがローマ式のプラエノーメンを使うことはなく、400年をすぎてから世代交代に合わせてプラエノーメンは使われなくなって言い田でしょう。それはローマ社会の崩壊であり、皇帝という最後のローマの要が崩壊した(ネポスの退位)475年以降は形骸化が激しくなった、と思われます。
したがって、東ローマ帝国では641年、西ローマ帝国では475年の皇帝退位をもってプラエノーメンは機能しなくなったと思われます。
回答ありがとうございます。返事が遅くなって申し訳ありません。
ブラエノーメンが出生の正当性を証明するための制度として残っていたというのであれば、皇帝以外の貴族や一般人の間ではもっと早期に衰退していたのでしょうか?
ブラエノーメンの制度がまだ残っていた頃、長男に自分と異なるブラエノーメンを名付けた父親がどのような理由・心情でそのような名づけを行い、周囲がそれをどのように評価したのか気になります。
No.2
- 回答日時:
#1です。
お礼ありがとうございます。>ブラエノーメンが出生の正当性を証明するための制度として残っていたというのであれば、皇帝以外の貴族や一般人の間ではもっと早期に衰退していたのでしょうか?
ブラエノーメンは出生の正当性というより、家系の正統性のためのものであったといえます。共和時代のローマだとブラエノーメンは数えるぐらいしかなく、基本的には元老院に参加できる貴族が利用していたものです。平民にはブラエノーメンはなかった(あっても史実として残るような使い方はされなかった)のです。
帝政期になると、少々使い方が異なってきたようです。理由は異国人(ガリア系・ゲルマン系)の貴族貴族階級などがふえたことなどに寄るのだと思いますが、たぶんキリスト教の影響もあったと思います。
皇帝はローマの最高指導者としての権威がありますから、ブラエノーメンは非常に大切にされたでしょう。ただ、皇帝も養子という形で継ぐことが多く、そうなると本来持っていたブラエノーメンをやめて、皇帝として正統性をもつブラエノーメンに変えることになったわけです。これがある意味、非常に重要であったから皇帝のブラエノーメンは長続きしたのだと思います。
しかし、それもローマ分裂後異国の命名方法を採用したことで、事実上意味をもたなくなったといえます。
皇帝以外の人々については、ローマ分裂時気であっても貴族としての出自を大切にしていた家系はプラエノーメンを利用していたと思いますが、ローマも後半になってくると異民族の侵入がものすごくありましたから、どこまでそれが保たれたかは微妙ですね。また、ブラエノーメンを最終的に破壊したのがキリスト教であっただろうと推測します。
>ブラエノーメンの制度がまだ残っていた頃、長男に自分と異なるブラエノーメンを名付けた父親がどのような理由・心情でそのような名づけを行い、周囲がそれをどのように評価したのか気になります。
父親が自分と異なるブラエノーメンを付ける場合は、その家系の祖先に偉大な人物が居た場合がほとんどでしょう。ですから、父親としてはその偉業を残すことが重要だと考えれば長男につけたでしょうし、それのほうがハクがついたでしょう。
周りの人も身内なら「祖父のブラエノーメンのほうがいいよ」と助言する人もいたでしょうし、息子が大きくなってブラエノーメンとノーメンまたはコグノーメンを聞いた人は「あ、あの人の家系なんだな」と意識したでしょう。
日本でも「将軍のご落胤」なんて言う騒動はよくあったようですから、写真やDNAなどの証明の方法が無い時代には名前はとても重要だったのだと思います。
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