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モーツァルトのレクイエムは、Kyrieを独立して第2番とする楽譜もあるようですが、全音の楽譜ではKyrieは第1番のRequiemに含まれています。
したがって続くDies irea は、前者では第3番に、全音では第2番になります。
どちらが正しいということはないのでしょうが、このような曲番のつけかたについて、その経過をご存じの方は教えてください。

A 回答 (2件)

モーツァルトのレクイエムの曲番号は、出版社や校訂者が便宜的に振ったものなので、特に重要な意味があるわけではありません。

モーツァルトはこの曲を完成せずに亡くなり、その後のいきさつはかなり複雑なのでここには書けませんが、自筆原稿は、弟子のジュースマイアーと、アイブラーやフライシュテットラーなどの複数の作曲家の手に渡り、加筆、補筆されました。最終的には、モーツァルトの弟子のジュースマイアーが完成させた版が長く歴史的な完成版として演奏され続けてきましたが、モーツァルトとほかの作曲家たちの加筆が混在する手書き原稿には曲番号はありません。モーツァルトの知り合いの作曲家シュタードラーも当時筆写していますが、やはり番号はありません。

しかし、初演後間もない1800年に、妻コンスタンツェが筆写した楽譜をもとにブライトコプフ&ヘルテル社が出したジュースマイアー版の初版のスコアや、翌年アンドレという出版社から出たヴォーカルスコア、そして、1812年に出たブライトコプフの改訂ジュースマイアー版にはすでに番号が振られています。いずれもIntroitusとKyrieをひとまとめで1番としています。これが出版史上最も古い形です。レクイエムは多くの作曲家が書いており、IntroitusとKyrieのテクストを切れ目なく一つの曲の中で使用したものが多くみられます。モーツァルトの場合も中断なく演奏されるようになっており、Introitusを省略してKyrieだけを演奏することはできないので、その意味ではひとまとまりのものとして捉えられるでしょう。

その後、同じブライトコプフから出た旧モーツァルト全集(ブラームス編纂)のレクイエムもジュースマイアー版ですが、こちらではオリジナル通り、番号は一切振られていません。ウニヴェルザル社のフィルハーモニア版から出ているジュースマイアー版スコアでは、従来通り、IntroitusとKyrieをまとめて1番としています。

全音から出ているのはヴォーカルスコアのみで、版についての説明は書かれていないようですが、これは1870年以降にドイツのペータースから出版されたヴォーカルスコアのコピーで、ピアノパートの編曲はフリードリヒ・ブリスラー(1818~1893)です。番号もペータースのままで、全音の校訂者として記載されている別宮貞夫によるものではありません。同じ時代に出版された別のヴォーカルスコアも同じ番号の振り方で、IntroitusとKyrieは1番です。やはりこれが古い形です。

一方、オイレンブルグ社のスコアでは1番と2番に分かれています。このスコアの校訂者はフリードリヒ・ブルーメという著名なドイツの音楽学者で、20世紀の人です。また、現在モーツァルトの楽譜の標準となっているベーレンライター社の新モーツァルト全集のジュースマイアー版の楽譜でも、Kyrieが第2番となっています。新モーツァルト全集が編纂される当たって参照された底本は、ジュースマイアーやアイブラーが加筆した自筆原稿、ブライトコプフの初版等なので、番号の振り方はこれらの底本を踏襲していません。先行の校訂楽譜としては、ブラームス編纂の旧全集と、ブルーメ校訂のオイレンブルク版の2点しか挙げられていません。となると、Kyrieを別楽章として2番としたのは20世紀に入ってからと考えられます。フリードリヒ・ブルーメは当時ドイツで中心的な音楽学者の一人だったので、オイレンブルグ版の番号が採用された可能性もあります。Kyrieはテクストとしては独立しており、レクイエム以外のミサ曲などでは独立した楽章となります。Kyrieのみが作曲される場合もあります。そういう事情から、Kyrieを分けて番号を振るという判断、習慣が新たに出てきたのかもしれません。

いずれにしても、20世紀になってからの新しい番号の振り方と思われ、典拠となる原稿や古い版があって番号を振り直したわけではないので、新モーツァルト全集の解説にもその根拠は書かれていないようです。ウィキペディアの英語版、ドイツ語版、フランス語版などもこの番号になっていますが、ジュースマイアー版のオリジナルがそうだという意味ではなく、現在標準となっている新モーツァルト全集に倣って書いているのではないかと思われます。
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この回答へのお礼

実に詳しい懇切丁寧なご説明をいただき、厚く御礼申し上げます。
歴史的にはRequiemとKyrieが第1番としてまとめられていたが、テキストとしての独立性および他のミサ曲で別楽章で扱われていることから、20世紀以降になってKyrieを独立とする傾向も現れてきたという流れのようですね。
ありがとうございました。

お礼日時:2023/08/24 22:23

参考程度に。



>モーツァルトのレクイエムは、
>Kyrieを独立して第2番とする楽譜もあるようですが、
こちらのほうが先です。
最初のジュースマイヤー版がそういう構成です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Requiem_(Mozart)#S …
ウィキペディアのドイツ語版もおなじです。
https://de.wikipedia.org/wiki/Requiem_(Mozart)#W …
なぜか日本語版は全音とおなじ構成になっています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%AF …

ただ、こちらでは分けてあります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%AF …

間を置かずにレクイエムからキリエに続くから、
最後のコムニオが
レクイエムとキリエのメロディーを使ったものだから、
モーツアルト本人の作曲だから、など
キリエが全音ではイントロイトゥス【入祭唱】に
入れられている理由はいくつか考えられますが、
はっきりしたことはわかりません。

手元にある、アメリカの楽譜でも
全音のようにひとつになっています。

全音に問い合わせるのが
いちばん確実だと思います。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。
あまり拘ることはないようですね。

お礼日時:2023/08/24 22:06

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