No.4ベストアンサー
- 回答日時:
民族の迫害という問題はまた次元の違う話です。
これは差別意識と、それを利用した政治手法であって、資本主義と社会主義、全体主義と自由主義のようなイデオロギー対立から直接派生したもではありません。反ユダヤ人感情に代表されるような歴史的偏見、人種差別などは、どのような社会にも存在するもので、日本もアメリカも例外ではありませんが、ともかく社会の敵を創造することによって、国内の政治的対立や矛盾への追求を回避して、国民の注意をそちらにむけてしまって、強権を手に入れ、統治者の意のままに国政をうごかすわけです。
例えば現在でいうならばテロ。テロを絶対的な悪だとする一方で、それに対しては如何なる手段をも許されると国民をいったん納得させれば、税金は使い放題、人権無視、法律の軽視も容認されるというわけです。
20世紀前半。ドイツではユダヤ人がすべての悪の根源とされました。だから彼らの権利は奪われ、土地、財産を掠めとり、生命をも奪い、絶滅を企画するにいたるわけです。その一方で彼らはゲルマン人の優位性もうたい、その生存圏の確保が必要だとうそぶき、ウクライナからフランスにいたる広大な地域をその帝国の版図におさめるべく際限のない戦争に突入するわけですが、これらはすべて虚構であり、政治的欺瞞にすぎないわけですから、国民を騙せても、現実の世界では軍事的敗北という物理的結果におちつくわけです。
日本も同様に神国日本の優位性と、アジアでの支配的地位を当然の権利として要求し、西欧人からの解放のなのもとにそれにとってかわる日本人によるアジア直接支配をもくろみいわゆる大東亜共栄圏の幻想を作り上げるわけですが、それも現実的には同化政策をすすめた朝鮮、台湾だけでなく、中国や軍政下においたフィリピン、ベトナム、インドネシア、マレー等、事実上の民族迫害であったという点において同様な結果におわるのは歴史的合理性があるといえます。
要するに、ルワンダやコソボ、ボスニアの例を加えるまでもなく、民族迫害、思想の迫害のメカニズムはどこででも起こりうるし、いつでもありうるというわけであって、それが例えば赤狩りのようにイデオロギー対立の”形態”をとっていたとしても、それはただの偽装であって、いわれなき迫害はつねに政治的な欺瞞にすぎません。
また考えればわかりますが、イデオロギーの対立自体も、戦争や革命によって解決しなければならないような問題でもありません。
もちろん全体主義政権を倒すのには力の行使が不可避な場合はありますが、戦争の根源にはヒトラーや盧溝橋事件を起こした関東軍幹部のような特定の個人の作為があるわけで、イデオロギー(=考え方)が起こしたわけではないのです。
No.3
- 回答日時:
その手の本はごまんとあるので、詳しくしりければ本でも読めばいいと思うのですが、ま、簡単にいうと、第二次世界大戦前、世界恐慌よりもさらに前、つまりアメリカで狂乱の世紀とよばれた1920年代から世界には資本主義と社会主義という二大イデオロギー対立があって、極端な自由放任主義と共産主義の理想との対立がありました。
そしてそこにおきた世界恐慌の勃発、つまりバブルの崩壊が、不況とそれに強い社会主義経済の特色を発揮させた結果、ニューディール政策に代表される資本主義と社会主義の融合がおきて、社会福祉や公共政策への修正が資本主義にもたらされ、経済的自由放任の時代から統制の時代へと移行していくわけですが、国家が統制を強める過程で国家権力の増大と全体主義を生み、共産主義への嫌悪感がファシズムを強く後押しする形で、その後連合軍側となった国もふくめて各地でファシズム政党が誕生します。
第二次世界大戦はそのような混沌とした状況の中で、はっきりした色分けもなく始まりますが、後にはファシズム対自由主義の戦いであるとプロパガンダされることになるので、ここに混乱と誤解が生まれるわけです。
ちなみに大戦前はやはり共産主義との戦いのほうに人々の関心はいっていて、アメリカでも親ナチ派が非常に多く、社会主義的なルーズベルト大統領に反対する極右グループがクーデタを計画し、マッカーサー元帥を首班とする政権をたてようとしたことがあるくらいです。
またイギリスのチェンバレン首相がヒトラーと取引してチェコを売り渡したのも、そもそもは資本主義と社会主義の戦いのなかで、右翼政権であるナチがソ連の拡張への防波堤となるという西側の打算があったわけです。
あらゆる点から考えて、イギリス・アメリカ・フランスという西側民主主義国は、ファシズム国家を利用できると考えていて、イデオローグの対立というよりも共通点のほうを見ていたわけですが、現実には独裁者ヒトラーの野望を過小評価していたことになるでしょう。
戦争はイデオロギーとは関係なくおこりました。
その典型が独ソ不可侵条約です。
そしてその破綻とソ連が連合軍側にくわわったことで、戦争は全体主義対自由主義という枠にも、資本主義と社会主義という枠にも収まらず、ヒトラー+おまけ対その他という構図になり、結局全ての問題は戦後まで棚上げされ、それが冷戦としてすぐに再燃するわけです。
滑稽ですが、一方のヒトラーの方では、この戦争をユダヤ対ゲルマンの戦いだと考えいて、実情を無視してアメリカやイギリス、ソ連はユダヤの言いなりで、彼らの世界制覇をふせぐのだという虚構にいきていました。
そういう点からもイデオロギー対立は実際にあるわけですが、必ずしもイデオロギーは現実に即してないので、別次元の問題として別個に考える必要があるでしょう。
この回答への補足
とても詳しく書いてくださってありがとうございます。
恐縮ながらもう1つ質問させてください。このようなイデオロギー対立が、民族の迫害を招いたというのは、どういう経過か教えていただけませんか?ヒトラーが一人で起こした劇にすぎないのでしょうか?
No.2
- 回答日時:
第二次大戦をイデオロギー上の対立と見る場合は、一般的には、「独裁的な国(ドイツはヒットラー、イタリアはムッソリーニ、日本は天皇)と「自由な国」との戦い、という考え方ですね。
スターリンのソ連を、自由な国っていうのかね、というつっこみをしたくなりますが、特にヨーロッパでは、ソ連は「敵の敵は見方」という事で、独ソ戦から大戦終了直後までは、対ソ連感情がかなり良かった事があって、独裁VS自由という見方もその頃に源があると思ってよいと思います。(ここまでは自信ありです。)でも、そのページが何故民主主義「帝国」という言い方をしたのかはよくわかりません。そこに注目して推測すれば、NO1の方のような考え方も成り立つような気はします。
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