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権利外観法理と善意取得と手形行為独立の原則の違いがよくわかりません。
いずれも善意に手形を取得した者を保護する制度であることはわかるのですが、具体的な適用場面の違いがわからないのです。答案を書く時、いつもどれを使ったらよいのか迷ってしまいます。

お時間ありましたら、どなたか教えてください。

A 回答 (4件)

確かにその3つは学習上、混乱するところですよね。


以下では、いわゆる通説と呼ばれている見解に基づいて説明してみます。

まず、手形行為独立の原則は、もっぱら遡求の場面で問題となります。
定義上、前提行為がなければ、この原則はそもそも適用されないわけですから。
典型的には、遡求の相手方たる裏書人Yの前者Aに(制限能力者であるなど実質的理由により)手形債務が発生していない場合にも、Yに対して遡求できるかどうか、という問題で適用が論じられます。
遡求の場面以外では、手形保証の場面が有名ですが、これは32条の問題として別論されるところですね。

権利外観理論は、手形の署名者が実質的理由により手形債務を負担しない場合に、その署名者に手形上の請求を認めるために考えられた理論です。
かの有名な「振出人が署名したけど交付はしてない」という場面では、交付が欠けるために手形債務が発生していないことが問題だったのですよね。
手形債務不発生の場合に適用される点では、手形行為独立の原則と共通しています。
違いは、請求を受けた本人に手形債務を負担しない理由があるのか、本人の前者にその理由があるのか、という点にあります。
なお、必ずしも一般的ではないかもしれませんが、手残り手形の場合(振出人Yが所持人Aに支払いをしたが、Yが手形を受け戻さなかった=Aの手に手形が残されたため、A以後の手形取得者XがYに支払いを請求した場合)に、権利外観理論の適用を認める見解がありますが、これは、XのところでYの手形債務が支払いによりいったん消滅していることから、Yの手形債務が発生しなかった場合と利益状況が同じであることを根拠としています。

これに対し、善意取得は、手形上の権利移転の瑕疵を救済するものであり、「所持人が振出人に対する権利を有効に取得しているかどうか」が疑わしい場合が、主な適用場面になります。
この原則が適用されるためには、振出人などの「手形上の請求を受ける本人」の手形債務が発生していること(または他の制度により「本人」が所持人との関係で手形債務者と扱われること)が前提です。
あくまで、権利移転の瑕疵を救済する制度なのですから。

この回答への補足

適用場面に関する詳細なご説明をいただきありがとうございました。大変スッキリしました。
要約すると、
(1)請求を受ける本人に手形債務が発生しているが、請求する側の権利取得に瑕疵が生じている場合
⇒善意取得の問題
(2)実質的理由により請求を受ける本人の前者に手形債務が発生していない場合
⇒手形行為独立の原則の問題
(3)実質的理由により請求を受ける本人自身に手形債務が発生しない場合
⇒権利外観法理の問題
と解釈してよろしいでしょうか。

補足日時:2006/01/31 15:01
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この回答へのお礼

適用場面に関する詳細なご説明をいただきありがとうございました。大変スッキリしました。
要約すると、
(1)請求を受ける本人に手形債務が発生しているが、請求する側の権利取得に瑕疵が生じている場合
⇒善意取得の問題
(2)実質的理由により請求を受ける本人の前者に手形債務が発生していない場合
⇒手形行為独立の原則の問題
(3)実質的理由により請求を受ける本人自身に手形債務が発生しない場合
⇒権利外観法理の問題
と解釈してよろしいでしょうか。
*補足欄にレスしてしまったので再レスしております。

お礼日時:2006/01/31 15:27

1番追加補足


手形が紙切れから有価証券として要件を具備するかという観点で、手形の発行時期=手形署名時期であるとの認識・理解から第82条手形署名を参照条文としました。
 
現実には証書の作成(署名)後、相手方に交付する前に紛失盗難が生じたり、第三者に保管依頼したところ勝手に処分されるなど、証券(=手形)が不当に流通してしまうことが生じます。これを「交不の欠缼」と呼びます。
 交不の欠缼している手形も、善意の所持人の保護が必要となります。そこで手形は交付されて初めて手形としての機能を生じるという考えては対処できないことになります。そのため、署名者の手形作成と同時にその手元で権利発生すると考えたり、善意の所持人に事実上の権利行使を認めようとする工夫がされてきました。これが手形理論・手形学説と呼ばれるものです。

手形学説には、契約説と単独行為説があり、単独行為説はさらに発行説と創造説とがあります。現在のわが国では手形の法的性質を単独行為ととらえる立場が支配的です。

○発行説
手形署名-Aが手形発信(=手形行為成立)⇒交付⇒Bに手形到達(=手形発効・手形上の権利が発生し証券上に表章される)
○修正発行説
手形署名-任意の手放し(=預けるなど)⇒手形行為成立⇒発効⇒手形上の権利発生
○創造説
手形署名(⇒不特定多数人に対する意思表示として成立)⇒証券の所有権者・担保権者のもとで発効⇒手形上の権利発生
○純正創造説
手形署名⇒手形行為成立⇒発効⇒手形上の権利発生

発行説では、「交不の欠缼」の場合の所持人の保護は、権利外観理論の助けを必要とすることになります。
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この回答へのお礼

実務では発行説なんですか。私は契約説でいつも答案を作ってます。
こんなにも詳細に説明していただきありがとうございました。

お礼日時:2006/01/31 18:23

#2でお答えした者です。


お礼を書いていただいてありがとうございました。
非常に単純化されてはおりますが、基本的にdailyroppouさんがまとめておられる通りでよいかと思います。
もっとも、見解によっては、これと異なる理解をするものもあるとは思います。
また、いま手元に文献がないので、思わぬ誤謬があるかもしれません。
気付いたら書き足します。

なお、#1の回答者の方へのお礼に書いておられるので指摘しておきますが、「制度の競合」はあり得ます。
一例として、交付が欠けており、かつ、手形の流通過程で権利移転の瑕疵がある場合には、権利外観理論および善意取得の双方の要件を検討する必要があります。
これと似て非なるのが、請求の相手方によって用いる制度が異なる場合です。
振出人に対する請求では善意取得を検討し、裏書人に対する請求では手形行為独立の原則を検討する、というのがそれです。

手形法は論点数が限られており、問題・答案の検討を通じて地道に論点を潰していけば、比較的容易に得点源とすることができます。
がんばってください。
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この回答へのお礼

長々と回答を書いていただきありがとうございました。問題点が解決しました。
再来週の期末試験に向けて必死で勉強したいと思います。

お礼日時:2006/01/31 18:31

権限概観法理論(参照条文・手形法第82条)


本来の手形上の権利が発生していない場合にも、第三者が善意で手形の持つ権利概観(=有効な手形であるような見かけ)を信頼し、また手形作成者がその権利概観を作り出し、流通においたことに原因を与えている(=帰責性がある)場合には、概観どおりの責任を負わせるという理論です。
⇒偽手形であっても、受け取り第三者を保護するケースです。

善意取得制度(参照条文・手形法第16条)
形式的資格のある手形所持人はその手形取得に際しても保護されています。つまり、自分に手形を譲渡した相手方が、手形の盗取者、拾得者等の無権利者であったり、また単に預かっているだけで処分権限のないものであった場合でも、譲受人は一定の条件の下に有効にその手形の権利者となることができるとする理論です。
 本来、無為権利者からは権利を取得できません。つまり他人のものを勝手に処分してもその権利を譲渡することができないとするのが基本的な考えです。しかし、それでは手形を受取る者は、相手が手形の正当な権利者であるかどうかを逐一調査確認しなければ安心して手形取得ができず、有価証券として安全かつ速やかに流通するという手形本来の機能が果たせないことになります。
 そこで手形法は、元の権利者がどのような理由で手形の占有を喪失したかを問わず、手形を譲受ける者が手形の外観(形式的な裏書の連続+所持)により、譲渡人を権利者と信じ、かつ信じたことに重大な過失がないと認められる場合に、譲渡人が無権利者であっても譲受人が権利者となれることを認めています。
善意取得の要件
ⅰ譲受人が手形を手形としての譲渡方法(裏書+交付)により取得
⇒相続・合併または指名債権譲渡などによる取得は対象外です
 ⅱ無権利者から手形を取得である
  ⇒「譲渡人-譲受人」間の裏書自体が有効になされていることが必要
 ⅲ手形取得時点で悪意・重過失がないこと

手形行為独立の原則(参照条文・手形法第7条)
 同一証券上になされた各手形行為(為替手形-振出し・裏書・引受・保証・参加引受、約束手形-振出し・裏書・保証)のうちのある手形行為が、無能力や偽造などにより実質的に無効である場合に、その影響により直ちに他の手形行為を無効にせず、各手形行為の有効・無効はそれぞれ個別にこれを判断するという法理です。
 この原則の解釈には二つの立場があります。一つは、各手形行為が同一の証券上になされていても、他と関係なく別個に手形上の記載内容の債務を負担するという独立の文言的行為であることから、その性質上当然のことだとする立場です。
 もう一つは、本来一定の手形行為間(振出し-裏書、被保証手形行為-手形保証、飛散か引受行為-参加引受)には、先行行為が無効であれば後行行為も無効となるという先後関係が認められますが、それでは手形行為の安全性を害するので、特に手形法で政策的にこのような無効・取消しに関しては、独立にその効力を判断することを認めたとする立場です。
 いずれの立場も、前提となる手形行為が方式上の瑕疵(手形条件の欠缼など)により形式的に無効な場合には手形行為独立の原則の適用はなく後行行為は無効となります。

手形法の「おさらい」のようになりましたが、いかかでしょうか・・・

この回答への補足

基礎的な定義・趣旨等から説明していただきありがとうございます。基本の重要性を再認識いたしました。
幾つか気になるところがあるのですが、
(1)権利外観法理に関して手形法82条が参照条文として挙げられているのはどのような理由によるのでしょうか?
(2)たとえば、交付欠缼の場合は権利外観法理の適用が問題とするのが普通ですが、この場合でも裏書が連続していれば所持人に形式的資格は認められるわけで、善意取得を問題とする余地があるように感じられます。こういった場合制度の競合は生じないのでしょうか?

補足日時:2006/01/31 15:11
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この回答へのお礼

基礎的な定義・趣旨等から説明していただきありがとうございます。基本の重要性を再認識いたしました。
幾つか気になるところがあるのですが、
(1)権利外観法理に関して手形法82条が参照条文として挙げられているのはどのような理由によるのでしょうか?
(2)たとえば、交付欠缼の場合は権利外観法理の適用が問題とするのが普通ですが、この場合でも裏書が連続していれば所持人に形式的資格は認められるわけで、善意取得を問題とする余地があるように感じられます。こういった場合制度の競合は生じないのでしょうか?
*補足欄にレスしてしまったので、改めて再レスしております。

お礼日時:2006/01/31 15:29

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