No.6ベストアンサー
- 回答日時:
>つまり前訴の判決で確定した事実に明らかに矛盾がある訴えが後訴で提起された場合にその『攻撃・防御』を遮断する力が既判力と解釈してよいでしょうか。
既判力の作用については学説上の争いがありますが、一般的には、消極的作用と積極的作用の両面があるという説明がされています。
消極的作用とは、前訴の既判力のある判断内容に反する当事者の申立や主張について、後訴の裁判所はそれを排斥しなければならないというものです。(上記のご質問は消極的作用についての説明です。)
もう一つの積極的作用とは、後訴裁判所は、前訴の既判力のある判断内容について拘束される、すなわち、後訴の審判は、それを前提に行わなければならないとするものです。
たとえば、BがAに対して後訴において、抵当権不存在確認の訴えを起こしたとします。そうしますと後訴の裁判所は、前訴の既判力の基準時点においては、前訴の裁判所が認定した債権(甲債権とします。)は存在していることを前提に判断しなければなりません。
もっとも、その抵当権の被担保債権が、そもそも甲債権であるかどうかは、前訴の確定判決の既判力が及ぶものではありませんから、その抵当権の被担保債権は、甲債権ではなく、乙債権であり、乙債権は既に消滅しているから、附従性によりその抵当権も消滅していると後訴の裁判所が判断することは当然許されます。
お返事が遅くなり申し訳ありません。
丁寧な解説ありがとうございます。
ようやく既判力というものがどんなものかという概要がつかむことができました。
これからはより基本書などで詳しく勉強しようと思います。
No.5
- 回答日時:
No.1、4です。
基本書としては、・「民事訴訟法 第4版」(上田徹一郎・法学書院)
・「新民事訴訟法講義 第2版補訂版 有斐閣大学双書」 (中野貞一郎ほか・有斐閣)
この二冊が一番オーソドックスじゃないかなあ、と思います。あと、有斐閣Sシリーズの「民事訴訟法」とかは、全体を掴むのにいいと思います。読みやすく値段も安いので、最初はこちらからどうでしょう。
そして、民事訴訟法の勉強は民法を終えてからでないと、イマイチ分かりにくいという人が多いので(私もそうでした) もし、民法の勉強がまだ一通り終わってらっしゃらないのなら、そちらを先行させても良いかと思います。個人差があるので、断定はできませんが…。
お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。
なるほど、民法の勉強を一通り行ってから民事訴訟の勉強を行おうと思います。解答ありがとうございます。
No.4
- 回答日時:
No.1です。
もうちょっと整理して考えてみました。「既判力」という言葉の定義は、「裁判が確定した時点で生じ、そこで判断された訴訟事項に当事者も裁判所も拘束されるという効果」であります。その結果、既判力の及ぶ範囲で、当事者及び後訴裁判所は前訴裁判所が下した判決と矛盾する訴え、判決はできなくなるわけです。
そして、既判力が適用できる範囲は定められています。当事者及び、裁判所を拘束する強制力なわけですから何でもかんでも適用するというわけにはいきませんよね。で、以下のようになります。
(1)口頭弁論終結時の権利関係を確定(時期的限界)
(2)判決主文に対してのみ及ぶ→判決理由中の法律判断事実認定は除外(物的限界)
(3)当事者に対してのみ及び、第三者は除外(人的限界)
細かく言えば例外が存在しますが、一応この範囲内で、前判決が当事者及び後訴裁判所に対して攻撃防御を遮断する力を持つ、と。
勿論、挙げられた事例の場合は既判力によって後訴判決が前訴判決に拘束されていると言えます。既判力の解釈自体は仰っている意味内容で良いと思いますが、問題はその範囲がどこまで適用されるのかにあると思いますので、また参考書等で確認される事をオススメします。
↓既判力に関して主要な論点は、とりあえずこんな感じです。
(1)において「基準時前に存在していた形成権を基準時後に行使できるか」
(2)において「相殺以外で認められている争点効の存在」
(3)において「実質的当事者への既判力拡張」
この回答への補足
回答ありがとうございます。
既判力には適用範囲もあったのですか(考えてみれば当たり前ですね)民事訴訟の勉強中に出てきた単語だったのですが、全く解説がないためそのようなことも思いつきませんでした。他の参考書なども一度覗いてみようと思います。(あつかましいですが市販されている参考書で民事訴訟についてオススメの参考書がありましたら教えてください)
No.3
- 回答日時:
訂正です。
誤 「AがBを相手取って、売買契約に基づいて、売買代金支払請求訴訟を起こした。」
正 「AがBを相手取って、売買契約に基づいて、100万円の売買代金支払請求訴訟を起こした。」
No.2
- 回答日時:
>法律辞典で調べますと『民事訴訟における既判力の意味とは、確定判決の判断内容の後訴での通用力・拘束力』とあります。
後訴の裁判所は、前訴の確定判決と矛盾する判断をすることができないということです。具体的な例を挙げます。
「AがBを相手取って、売買契約に基づいて、売買代金支払請求訴訟を起こした。(前訴)Bは、当該売買契約の不成立を主張したが、裁判所は、Bの主張には理由がなく、Aの主張に理由があると判断し、原告の請求を全部認容する判決を言い渡し、それが確定した。(なお、事実審口頭弁論終結時は、平成18年3月1日とする。)
後日、BはAによる強制執行を阻止するため、Aを相手取って、請求異議訴訟を起こした。(後訴)
Bは以下の主張をした場合、それに対して後訴裁判所はいかなる判断をすべきか。」
1 Bが、平成16年8月1日に消滅時効の期間が経過したので、売買代金支債務が時効により消滅していることを理由に売買代金の支払義務がないと主張した場合。
仮に後訴裁判所が、Bの主張に理由があると心証を抱いたとしても、Bの請求を棄却する判決をしなければなりません。前訴の確定判決は、「平成18年3月1日時点において、AがBに対して100万円の支払請求権を有している。」ということにつき既判力を有していますから、後訴裁判所がBの請求を認容する判決をすることは、前訴の確定判決と矛盾することになるからです。
なお、Bは前訴において主張していなかった消滅時効を後訴において主張していますが、既判力の標準時(事実審口頭弁論終結時です。)において存在していた事由を主張することは許されません。これを既判力の遮断効といいます。
2 Bが平成18年4月1日に上記売買代金をAに弁済した旨の主張をした場合。
後訴裁判所は、Bの主張に理由があると認めれば、Bの請求を認容する判決をすることができます。Bの弁済の抗弁は事実審口頭弁論終結後の事由なので、前訴の既判力によって遮断されず、平成18年4月1日に弁済により消滅したという後訴裁判所の判断は、平成18年3月1日時点において、AがBに対して100万円の支払請求権を有しているという前訴裁判所の判断と矛盾するものではないからです。
この回答への補足
回答ありがとうございます。
つまり前訴の判決で確定した事実に明らかに矛盾がある訴えが後訴で提起された場合にその『攻撃・防御』を遮断する力が既判力と解釈してよいでしょうか。
No.2さんの例ですと『平成18年3月1日にAがBに対して100万円の支払請求権を有している』と確定した時点で『それを遡る消滅時効を後訴で提起することはできない』が、『そのあとに債務の履行をしたので強制執行を阻止するために請求異議訴訟をしても前訴との矛盾は生じないので既判力は及ばない』
ということでしょうか。
No.1
- 回答日時:
私が勉強した時の捉え方としては、今現在の判決が確定した時点で、その判断内容が後訴裁判所の攻撃防御を遮断する効力だと解していました。
前訴裁判で決定された内容を覆すような判決を後訴裁判所が決定する事はできない、という意味だと思います。
たとえば、
「賃金債権不存在確認訴訟で敗訴した当事者が、その次に提訴された貸金返還請求訴訟で、再度債権の不存在を争う事を禁じる」等……
でも、これは前訴と後訴の請求内容に同一関係、矛盾関係、先決関係が認められる場合に限られるものだったと記憶しております。要するに裁判が何度も何度も無駄に消費される事で、当事者の不安定な状態が長引くのは防がなければならない、という趣旨ではないでしょうか。
この回答への補足
回答ありがとうございます。
もう少しお聞きしたいのですが、
例えば
1:甲にはAという債務の履行をする責任はないという旨の確認の訴えを甲がした。
2:結果甲はAという債務の履行はしなくてもよいと裁判所で確定判決が出た
3:そのあとに、債権者である乙が甲に対しAという債務の履行をせよという旨の給付の訴えを起こした
4:しかし甲自身にはもうAという債務を履行する責任はないという判決が出ているので、結果乙の訴えは取り下げられた
ということがあったとします。
(この事例どこかおかしい場合はお手数ですが指摘をお願いします)
このとき前判決で確定した判決(例3債務の履行はしなくてよいという確定判決)は後判決の攻撃や防御(例4の債務の履行の請求)にまで影響をおよぼすことができる、それが既判力と解釈してよいのでしょうか
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