No.2ベストアンサー
- 回答日時:
昔、英語をふくむゲルマン語の詩は、頭韻詩 (alliterative verse) とよばれる形式が主流でした。
なかでも、 「ベオウルフ (Beowulf)」 なんていう作品は、とても有名なのではありませんか。英詩では、韻律や脚韻による形式が発達するにつれて、頭韻詩がおとろえます。しかし、技法としての頭韻がここぞというところで使われることは、しばしばあります。個々の作品に注意深くあたれば、結構みつかるのではないでしょうか。
たとえば、コールリッジ (S.T.Coleridge) の 「老水夫行 (The Rime of the Ancient Mariner)」 第2曲 (103-104行め) にでてくる頭韻は、有名なものだそうです。
<参照: 『英詩の味わい方』 (尾島庄太郎 1957 研究社)>
とくに頭韻で知られる詩人としては、オーデン (W. H. Auden)、パウンド (Ezra Pound)、ウィルバー (Richard Wilbur) がいるそうです。
<参照: "Wikipedia"> http://en.wikipedia.org/wiki/Alliterative_verse
つぎのサイトは、古今の英詩における頭韻についてたいへんくわしそうです。わたしが知らなかっただけで、有名な詩もきっと紹介されているとおもいます。
<参照: "Forgotten ground regained"> http://alliteration.net/index.htm
ヤコブソン (Roman Jakobson) をはじめとする詩の分析でも、頭韻は欠かせない観点でしょう。ただし、テキストとしての作品の分析では、作者の意図は踏み越えられてしまいます。細かく深い分析になると、頭韻も作者の意識的な技法なのかどうかわからないところまでいってしまうようです。
そのようなものもふくめて、日本の有名な和歌などにも、頭韻がしばしばみられます。
よき人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よく見よよき人よく見よ
(天武天皇 万葉集 27)
これは、作者が吉野を訪れたときのことば遊び、でしょうか。
小竹 (ささ) の葉はみ山のさやにさやげども我は妹 (いも) 思ふ別れ来ぬれば
(柿本人麻呂 万葉集 133)
「さ」 と 「わ」 の音の対比は明らかです。それが意味の対比と一致しています。ところが、 「さ」 の音の連続があまりに 「軽くすべりすぎる」 (『日本古典文学大系』) として、 「さやげども」 を 「乱るとも」 と訓じる意見もあります。頭韻のむずかしいところです。その場合、 「み」 も 「さ」 と交互に頭韻をふむことになります。
ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
(紀友則 古今集 84)
h の音ではじまる4つの句が客観的な描写であるのに対して、 「しづ心なく」 だけは、花を擬人化して主観的な表現です。その第4句に注意がひかれるのです。
頭韻のみられるよく知られた和歌を、さらに 「百人一首」 からいくつかあげておきます。
滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそながれてなほきこえけれ
(藤原公任 拾遺集 449)
あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびのあふこともがな
(和泉式部 後拾遺集 763)
ありま山いなの笹原風吹けばいでそよ人をわすれやはする
(大弐三位 後拾遺集 709)
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする
(式子内親王 新古今集 1034)
これらの有名な和歌にみられる頭韻は、それを作者の意識的な技法とみるかどうかはべつとして、詩としての表現効果を高めているとおもいます。
No.3
- 回答日時:
greffe さんのコメント、なんとなく意味がわかるだけですが、おもしろいですね。
雪が降るところにいらっしゃるのですか?和歌の引用にタイプミスがあるので、訂正させてください。
【誤】 小竹 (ささ) の葉はみ山 "の" さやにさやげども我は妹 (いも) 思ふ別れ来ぬれば
(柿本人麻呂 万葉集 133)
【正】 小竹 (ささ) の葉はみ山もさやにさやげども我は妹 (いも) 思ふ別れ来ぬれば
(柿本人麻呂 万葉集 133)
No.1
- 回答日時:
フィンランドの民族叙事詩 「カレワラ」。
次のところ:http://www2.plala.or.jp/Lian/bookindex/Fantasy/k …
の3.に「頭韻と繰り返しを用い、詩と節の区分けがない独特の歌謡形式だという。」としています。意味はわかりませんが、フィンランド語原文による(下記サイト)の冒頭は、
Mieleni minun tekevi, aivoni ajattelevi
lähteäni laulamahan, saa'ani sanelemahan,
sukuvirttä suoltamahan, lajivirttä laulamahan.
Sanat suussani sulavat, puhe'et putoelevat,
kielelleni kerkiävät, hampahilleni hajoovat.
で、確かに頭韻が豊富です。
参考URL:http://www.sacred-texts.com/neu/kvfin/01.htm
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