No.6ベストアンサー
- 回答日時:
「当時の人々は「陸軍大将」という人間に対し、どのような意識を持っていて、どの程度の敬意を払っていたものなのでしょうか」
答えるのが難しい質問ですが、「非常に偉い人」「雲の上の人」と言う意識を持っていただろうと思われます。
明治末期の時点で、日本と言う国はまだ発展途上ですから、極論すると「支配する役人と支配される農民」で成り立っていた国で、中間階層があまり存在しませんでした。軍人は直接国民を支配するわけではありませんが、軍人の最高位である大将というのは、現在の「事務次官」や「統合幕僚会議議長」などより遥かに「偉い人」であり、一般国民からは隔絶した地位を持っていたと言えます。
日本の軍隊について読みやすくまとめた本としては
日本の近代 9 「逆説の軍隊」戸部良一/著
中央公論社
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=30483001
があります。公立図書館には置いてあると思いますので探してみて下さい。
ところで、「乃木大将が愚将である」という見方は、「坂の上の雲」で司馬遼太郎氏が乃木大将をそのように描いたことで定着しています。No2さんやNo5さんが言われるような見方です。
「坂の上の雲」の日露戦争の陸戦に関する部分は「機密日露戦史」と言う本に大きく依存しています。この本は、谷寿夫
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B0%B7%E5%AF%BF% …
という軍人が主に執筆し、「参謀本部編」として戦前は機密扱いされて一部のエリート将校のみが閲覧できた本ですが、谷氏の「私見」が多く反映されており、決して全面的に信頼できる本ではありません。
「坂の上の雲」は1968年から1972年まで新聞に連載されましたが、「機密日露戦史」が活字本として出版されて容易に読めるようになったのはその直前の1966年です。司馬遼太郎氏が「坂の上の雲」を執筆しようと考えた重要な動機が、あるいはこの本を読んだことによるものかもしれません。
旅順要塞攻略戦において、乃木大将指揮する第三軍の戦闘指揮が当時の軍事常識から見て妥当、むしろ先進的であったことは、下記の二つの本に詳述されています。
(1) 旅順攻防戦の真実 乃木司令部は無能ではなかった PHP文庫
別宮暖朗/著
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=31699764
(2) 撤退の研究 時機を得た戦略の転換
森田松太郎/著 杉之尾宜生/著
日本経済新聞出版社
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=31976559
(1)の本では、旅順攻略戦全体が詳細に述べられています。「坂の上の雲」しか読んだことがない人は全く知らない情報が多くあるはずです。
(2)の本では、「機密日露戦史」が執筆された背景、その内容、「坂の上の雲」によって形成された乃木大将像の現実との乖離について述べられています。(2)の本は、公認会計士の森田氏が「企業編」、防衛大学校の元教授で一等陸佐の杉之尾氏が「軍事編」を書いた本ですが、杉之尾氏の分析は非常に読み応えがあります。
私自身、小学生の頃から「坂の上の雲」を愛読し、今までに10回くらい通読した経験があります。「司馬遼太郎の書いたことは機密日露戦史の引き写し」という指摘は残念ですが、事実はそういうことです。
なお、
「二百三高地が落ちたのは果敢な日本軍の攻撃ももちろんあったと思いますが、戦艦からの艦砲射撃の効果が大きかったと聞いております」
『28サンチ榴弾砲による射撃の効果』のことでしょうか。
日露戦争で、軍鑑による艦砲射撃は基本的に行われておりません。戦艦による艦砲射撃が陸上に対して大規模に行われて大きな戦果を出すようになったのは遥かに後年、第二次大戦の後期になってからです。
この回答へのお礼
お礼日時:2008/02/12 20:26
ものっすごく詳しい回答&資料の紹介ありがとうございます!「こころ」を通して、明治という時代に興味を持ったので、これらの資料に目を通してみたいと思います。御丁寧な回答、本当にありがとうございました。
No.5
- 回答日時:
乃木大将のお人柄については素晴らしい軍人であったのだろうと思いますが、二百三高地の攻略についてはだめだったと思います。
指揮官が馬鹿だと兵が死ぬという見本のような話です。二百三高地が落ちたのは果敢な日本軍の攻撃ももちろんあったと思いますが、戦艦からの艦砲射撃の効果が大きかったと聞いております。であるなら最初からそれに気付くべきであって乃木大将が徒に兵をたくさん死なせたのは愚策だったと思います。No.4
- 回答日時:
追記
乃木将軍の殉死を扱った小説に、
「殉死」司馬遼太郎 文春文庫 と言う本があります。
ただ、庶民の乃木将軍に対する憧憬はあまり扱っておらず
乃木の殉死に至るまでの内面の描写が中心ですが…
今でも大きな書店では入手できるので、参考程度宜しければ
読んでみてください。
No.3
- 回答日時:
陸軍大将という”肩書き”に対するイメージは、分かりませんが、乃木個人に対しては、日露戦争を勝利に導いた人物として、英雄視されていたのでしょう。
現在で近い存在を挙げると、オリンピック金メダリストやノーベル賞受賞者などが考えられます。国家を挙げてその人物を讃えるということは似ていると思います。程度やあり方は違うでしょうが、当時の状況を想像する一助にはなるでしょう。
殉死後、神格化されますが、これは殉死の影響を色濃く受けていて、生前の状況とは違う可能性があります。参考までにwikiの乃木神社のリンクを貼っておきました。
参考URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%83%E6%9C%A8% …
No.2
- 回答日時:
司馬遼太郎の小説を読んでの乃木像なので、参考程度に。
まず、日露戦争での虚像です。
二百三高地の攻略で司令官を命じられ、攻略に成功しました。
(一説では、児玉が指揮をとったとも言われてますが…)
その時捕虜になったロシア人が、乃木の取った処遇に痛く感心して
乃木の人格で旅順要塞が落ちたとPRしたり、乃木の子供が
二人とも戦死した事で、美談として取り上げられた事があります。
日露戦争の立役者として、認知されていた部分が有ったと思います。
また人格者で、無能な参謀の更迭要求を突っぱねて庇いつづけたりする
(軍人としては失格ですが)人格を日本人の長者らしい人物と映っていた
のかも知れません。
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