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無期懲役というのは一生刑務所の中ということなのですか?
終身刑が死ぬまででしたっけ?

死刑が一番重くて次が無期懲役?
無期懲役後の仮釈放と保護観察ってどんな生活なんですか?
ほとんど見張られてるだけで普通の生活ができるんですか?
無期懲役について詳しくわかりやすく教えて下さい。

A 回答 (7件)

「無期懲役刑に関する誤解の蔓延を防止するためのホームページ(及びブログ)」というサイトを管理している者ですが、自サイトへのURLを貼ると宣伝行為になるので、ここに説明を載せます。

まず、概説。

無期懲役刑とは
 はじめに、無期刑そのものの性格について説明したい。無期刑(Life imprisonment)とは、刑の終期(満期)の無い、一生の期間にわたる自由刑という意味であり、単に刑期を決めていない絶対的不定期の刑罰という意味ではない。「刑期を決めていない刑」は、不定期刑(2種類ある)である。
 刑の終期が来ることのない以上、刑に終わりはないため、無期懲役とは、一生続く、終生の懲役刑というのが正確な定義である。

仮釈放制度とは
 仮釈放制度とは、刑事施設に拘禁されている受刑者を、刑期満了前に一定の条件をつけて仮に釈放する刑事政策上の制度である。前述の通り、無期懲役は、終生の懲役刑であるが、現行法は、無期刑にも仮釈放の可能性を認めているため(刑法28条)、無期懲役の受刑者も、「終生という刑期の途中で仮釈放によって社会に復帰できうる」のである。30年の懲役刑が、「30年という刑期の途中で仮釈放によって社会に復帰できうる」のと同様のことである。仮釈放を許すことができる年数的な要件としては、法律上、有期刑は3分の1以上、無期刑は10年以上の服役を必要とする。
 仮釈放は、刑罰からの解放を意味するわけではなく、仮釈放中の者は、保護観察に付されることとなっており(犯予法33条)、場合によっては仮釈放が取り消されることもある(刑法29条)。仮釈放期間については、わが国では、残刑期間主義が採られているので、無期刑の場合は一生、有期刑の場合は満期日までである。

終身刑の本来の定義
 本来、終身刑とは、刑期が終生にわたるものをいい、仮釈放の可能性がなくその刑期全てを実際に必ず刑務所で過ごさなければならない刑のみを終身刑というわけではない。
 無期刑と終身刑は、少なくとも刑法用語の正しい定義からすれば全く同じ意味であり、いずれも「一生の期間にわたる自由刑」をいい、仮釈放の有無によって区別されず、いずれも英語では「Life imprisonment」または「Life sentence」との語が充てられ、「仮釈放なしの無期刑」(=「仮釈放なしの終身刑」)は「Life imprisonment without parole(LWOP)」との語が充てられる。
 両者(無期刑と終身刑)の違いは、本来的には、原語の訳の違いに過ぎず、現地の用語を日本語に「直訳」した場合には、アジア圏のそれは「無期懲役」という訳となることが多く、アジア圏以外のそれは「人生」や「生涯」に相当する語が用いられている場合が多いため、「終身刑」という訳となることが多いというだけの話である。例を挙げれば、イギリスの場合は「Life sentence」、ドイツの場合は「Lebenslange Freiheitsstrafe」、フランスの場合は「Reclusion criminelle a perpetuite」、ロシアの場合は「Пожизненное заключение」、中国の場合は「无期徒刑」である。
 しかしながら、わが国においては、巷間的に、誤った定義が多用されており、恩赦がない限り一生を必ず刑務所で過ごさなければならない刑が「終身刑」と呼称されるとともに、「仮釈放のある無期刑」のみが「無期刑」と呼称されて、両者は区別される場合が多い。また、このことに加え、諸外国の「無期刑」が「仮釈放のない無期刑」ではなく「仮釈放のある無期刑」である場合であっても、「終身刑」と(特にマスコミなどから)日本語に「直訳」される場合が多いため、様々な誤解や混乱が生じているが、仮釈放のない無期刑(LWOP;絶対的無期刑)を置いている国は、アメリカ合衆国(一部の州を除く)、オーストラリア(同)、オランダ、中国など、むしろ比較的少数にとどまっている。

仮釈放制度の運用の概況
 前述の通り、わが国の現行法制における無期刑は「仮釈放のある無期刑(Life imprisonment with parole)」である。ここでは、その仮釈放の運用実態について見ていくことにする。
 まず、法務省大臣官房司法法制部発行の「矯正統計年報」および平成12年(2000年)10月3日の政府答弁書により、統計のある1977年から2006年までの無期懲役刑仮釈放者の平均在所期間(未決勾留の期間を含まない)と仮釈放者数について考察する。
 無期懲役刑仮釈放者の平均在所期間は、1977年から1988年までは、16年程度であったが、1990年には20年3ヶ月となるなど、1989年から長期化の傾向が見られ、1989~1996年は18~20年余で推移し、その後も1996~1997年、2000~2001年、2004年を境に長期化の傾向が見られ、1997~2000年は21年程度、2001~2003年は23年程度、2004年~2006年は各年とも25年を超え、2004年は25年10ヶ月、2005年は27年2ヶ月、2006年は25年1ヶ月となっており、法務省の速報値によれば、2007年は31年10ヶ月となっているとのことである。
 また、2000年以降では、仮釈放者55人のうち52人が在所20年を超え、2003年以降では仮釈放者全員が在所20年を超えている。
 仮釈放者数について見ると、最近5年間では計29人(年平均5.8人)である。78~82年は計241人(年平均48.2人)、83~87年は計168人(年平均33.6人)、88~92年は計92人(年平均18.4人)、93~97年は計71人(年平均14.2人)、98~02年は計50人(年平均10.0人)であり、70年代や80年代前半のそれと比較するのは、(高度経済成長以前は量刑相場が厳しかったため)60年代などに確定者数がそれなりに多かったことなどが考慮されていないので相当でないが、短期的な比較においても、減少傾向を示しており、一部で指摘されているような「仮釈放が著しく認められにくくなっている」状況にあるとまでは言えないものの、従前より慎重に審理されつつあるといえる。
 ところで、当然のことであるが、前述の年数は、「仮釈放を許された者」の在所期間であり、それだけをもって無期懲役刑の仮釈放の運用について語るのは相当ではないので、30年以上服役している未仮釈放者の数についても見てみることとする。
 在所30年以上の無期懲役受刑者は、1985年2月末時点では7人であったが、2000年8月1日には42人となっており、統計から推測すると、現在(2007年8月末)では、75~90人程度が在所30年以上となっていると思われる。また、長期間の服役を経て獄死する者も存在している。
 このように、近年では、従前と比較して慎重な仮釈放審理がなされており、仮釈放制度の運用の適正化が図られてきているといってよい。

今後向かうべき方向
 先に述べた通り、無期懲役という刑自体は、一生の懲役を内容とする自由刑であり、仮釈放制度とは、刑期満了前に受刑者を条件つきで仮に釈放する制度である。現行法は、無期懲役刑にも仮釈放の余地を認めているが、そもそも、仮釈放は、刑法28条の条件期間を経過し、かつ仮釈放規則所定の要件を満たした場合にはじめて適用されるものであって、当然の前提として保証されているものではない(実際受刑者には仮釈放の申請権はない)わけであるから、重大犯罪を犯した者を刑期途中に釈放するには、慎重な判断が必要不可欠である。
 矯正保護関係の実務家らも、加害者側の視点のみに傾倒するのではなく、遺族や社会の感情も十分考慮し、「もし何か起こったときは自分が責任を取る」ぐらいの心構えが必要だろう。
 2007年度からは、犯罪の動機や態様が特異であり、再犯のおそれについて特に慎重に見極める必要がある者について仮釈放が検討される際には、心理学や精神科の専門家の意見を聞く方針が取られ、そのための予算も計上されており、また、第166回通常国会で更生保護法が成立したことによって仮釈放の審理の際に被害者側が口頭ないし書面で意見を述べることも可能となったが、これらのこと、特に後者については、かねてから指摘されていたことでもあり、非常に高く評価できる。
 こうすることが、今後における仮釈放の真のあり方であり、無期懲役刑確定者の被害者側の感情との均衡もある程度取れるのではないか。
 現在、巷間終身刑といわれているもの、すなわち絶対的無期刑の創設論が挙がっているが、絶対的無期刑(LWOP)は、希望が全くないことから、受刑者を自暴自棄にさせるおそれがあり、処遇にもしばし困難を伴うことから、刑事政策上問題が大きいと考えることもでき、そうした観点からは、そのような刑の創設には慎重にならざるをえない。
 社会感情や特別予防に対する配慮は当然に必要不可欠である。しかしながら、それは絶対的無期刑の創設でなくても、たとえば無期懲役刑に処せられた者に仮釈放が検討される際には、精神医学・心理学等の専門家から「人格鑑定」という形で意見を徴することを必須化するとか、あるいは仮釈放を許すことが可能となるまでの期間を引き上げるなどといった工夫を施すことによっても達成可能である。
 こうすることによって、受刑者に希望を残しながら、絶対的無期刑に比肩する効果を発揮することができ、受刑者の矯正や特別予防、一般予防、社会感情、遺族感情という自由刑論において相反しがちな各点についての均衡が取れていくのではないか。そうした中で成人矯正・犯罪者処遇についての世の理解がそれなりに深まっていくならば、わが国において冷静かつ多角的な自由刑論・刑事政策が展開されることへの端緒となっていくのではないだろうか。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。

お礼日時:2008/07/29 10:21

最後に、刑期途中における条件付釈放である「仮釈放」はどのような場合に適用されるのか、および、受刑者が「仮釈放」された場合におけるその後の扱いについて、具体的に説明します。



 刑法28条は「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる」と規定しています。まず、ここでいう「3分の1」および「10年」という期間は、仮釈放を許すことが可能になるまでの期間(仮釈放条件期間)であり、この期間が経過する前に仮釈放が認められることはありません。

 次に、「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるとき」という文言ですが、きわめてシンプルな文言であり、これだけを基準に仮釈放を判断するのは困難であるため、「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」というものがあり、同規則28条は、仮釈放の要件について、より具体的に、「仮釈放を許す処分は、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めるときにするものとする。ただし、社会の感情がこれを是認すると認められないときは、この限りでない」と規定しており、また同規則18条は「仮釈放等を許すか否かに関する審理は、次に掲げる事項を調査して行うものとする。(1)犯罪又は非行の内容、動機及び原因並びにこれらについての審理対象者の認識及び心情、(2)共犯者の状況、(3)被害者等の状況、(4)審理対象者の性格、経歴、心身の状況、家庭環境及び交友関係、(5)矯正施設における処遇の経過及び審理対象者の生活態度、(6)帰住予定地の生活環境、(7)審理対象者に係る引受人の状況、(8)釈放後の生活の計画、(9)その他審理のために必要な事項」と規定しています。

 仮釈放は、これらの要件が満たされた場合にはじめて適用されるというのが、規定上の建前であり、「刑務所内での態度だけで決まる」わけでも、「反省の態度を示しさえすれば認められる」わけでもないし、まして「年数を基準に機械的に決まる(仮釈放者の平均在所期間の前後でほぼもれなく出れる)」というわけでもありません。もちろん、刑務所内の態度にしても、服役期間にしても、それらはいずれも重要な一事情であるのはたしかですが、それだけで決まるというわけではありません。

 したがって、たとえば、精神障害者や、懲罰回数が多く優遇区分・制限区分の位が低い者、工場不出役・独居処遇中の者、老齢(画像は徳島刑の養護処遇適用状況)や病弱・痴呆の者、保護関係(いわゆる身元引受)が良好でない者、犯罪傾向の非改善が自明であり再犯のおそれが強いとみなされている者(LB級刑務所に多い)などは仮釈放が認められず、それゆえ、その状況が改善されない限り、有期懲役刑であれば刑の満期日まで、無期懲役刑であれば当然一生拘禁されることになります。

 仮釈放後の扱いについては、日本は、仮釈放の期間を「残りの刑の期間」とする「残刑期間主義」を採っており、このため、無期刑の場合は、残刑もまた無期であるため、終期がありませんので、一生、保護観察が継続し、遵守事項違反や新たな犯罪をした場合には仮釈放が取り消される可能性(刑法29条)があります。

 無期懲役刑の本来の趣旨は「一生刑務所で服役すること」ですが、わが国では、無期刑の受刑者にも仮釈放(途中で出ること)の可能性を認めており、巷間終身刑といわれているもの、すなわち「仮釈放のない無期懲役刑」はないので、社会に戻れる可能性があるわけですが、無期懲役の仮釈放というのは、「本来一生刑務所にいなければならないところを、更生したと判断されて、その途中で条件つきで釈放されている状態」にすぎないので、仮釈放が取り消されれば、もちろん無期懲役囚としてまた刑務所に戻らなければなりません。

 取り消されて刑務所に戻った場合も再度の仮釈放が可能で、再度の仮釈放は、(取消前にすでに10年以上服役しているので)理論上は取消しの翌日に行うことも可能です。

 もっとも、再度の仮釈放の場合も、その可否は年数だけで機械的に決まるものではなく、仮釈放規則所定の要件を満たした場合に適用されるものであり、当然ながらそれが認められるには本人の改善と相当長期間の服役が必要で、また取消時にすでに高齢ないし老齢に達している場合がかなりあるので、再度の仮釈放が認められることなく獄死するケースもかなりあります。

 無期刑の仮釈放者について、このような残刑期間主義(残刑主義)を採る国は、日本のほかに、イギリスやカナダ、アメリカなどがあります。

 他方、無期刑の仮釈放者について、仮釈放の期間を「残りの刑の期間」とはせず、仮釈放後一定期間の無事満了をもって自動的に執行免除をする「考試期間主義」を採る国もあり、たとえばフランスでは仮釈放後最大10年、ドイツでは仮釈放後5年、オーストリア・韓国・ルーマニアでは仮釈放後10年を経過すれば執行免除となり、取り消しの可能性もなくなり、完全自由の身を獲られます。

 ただし、日本でも、少年のときに刑の言渡しを受けた者(※犯行時ではなく刑の言渡し時にも少年であることが必要)については考試期間主義が採られており(少年法59条)、無期刑の場合は仮釈放後10年の無事経過、有期刑の場合は刑務所にいた期間と同じ期間(ただし、残刑期間のほうが短いときは残刑期間による)を無事経過すれば完全自由の身になれます。例を挙げると、少年法51条2項により懲役15年の刑を受けた者が7年服役して仮釈放された場合は、仮釈放期間は7年間、10年服役して仮釈放された場合は(残刑期間のほうが短いので)仮釈放期間は5年間ということになります。なお、成人の場合でも、執行免除の恩典(恩赦法8条)を受ければ、残刑期間の満了前に完全自由の身を獲ることができます。執行免除は有期懲役の執行停止出所者や、無期懲役の仮釈放者、長期の有期懲役の早期仮釈放者について、相当長期間経過後に行われる場合があるものです。

 こうしたことについては、森下忠という海外刑法学者が書かれた「刑事政策大綱」「刑事政策の論点II」(成文堂)で、詳しく説明されています。もし興味があれば、お読みになられてはいかがでしょうか。

~よくわかる残刑期間(仮釈放期間)の算出方法~
(1)懲役18年の刑を受けた者が13年で仮釈放された場合
→残刑期は「18-13=5(年)」
(2)無期懲役刑を受けた者が25年で仮釈放された場合
→残刑期は「∞-25=∞」
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次に、用語をめぐる混乱について述べます。



no5で書いたとおり、無期刑という刑罰それ自体は、「ずっと、いつまでも、一生刑務所に入っていなさい」という性格の刑です。

 ただし、その無期刑の受刑者にも、「仮釈放」という形での社会復帰の可能性が認められている法制と、認められていない法制があります。仮釈放とは、一定の要件を満たした者を「刑期途中」で条件をつけて釈放する制度です。

 わが国の現行制度では、前者の法制、すなわち「仮釈放の認められうる無期懲役」のみが採用されており(刑法28条参照)、わが国には、死刑廃止議員連盟の法案(2008年の「重無期刑創設および死刑評決全員一致法案」、2003年の「重無期刑の創設および死刑制度調査会の設置等に関する法律案」)にある重無期懲役のような、「仮釈放のない無期懲役(life imprisonment without parole)」はありません。
 
 巷間「終身刑」と呼ばれているものは、この「仮釈放のない無期懲役」すなわち「本当の無期懲役(絶対的無期刑)」を指します。
 
 しかし、終身刑とは、本来は、無期刑と全く同様「一生の期間にわたる自由刑」をいうにすぎず、英語でも「life imprisonment」または「life sentence」との語が充てられるもので、「仮釈放のない一生の期間にわたる自由刑(life imprisonment without parole)」のみを終身刑というわけではありません。

 ところで、多くの国にも、「一生の期間にわたる自由刑」すなわち「無期刑」が存在します。そして、その多くにおいて、わが国と同様、仮釈放の可能性が認められており、「仮釈放のない無期刑」を置く国は、アメリカ、中国、オランダ、豪州など比較的少数にとどまっています。

 ただ、ヨーロッパ語圏の場合、名称に「生涯」に相当する語が用いられている場合が多いため、現地の名称をそのまま日本語に「直訳」した場合には、「終身刑」という訳語が充てられます。たとえば、ドイツの場合は「Lebenslange Freiheitsstrafe」、イギリスの場合は「life imprisonemnt」(または「life sentence」)、ロシアの場合は「Пожизненное заключение」であり、ここで、「Lebenslange」「Life」「Пожизненное」はいずれも「生涯」という意味で、「Freiheitsstrafe」「imprisonment」「заключение」はいずれも「自由刑(身体の自由を拘束する刑罰)」という意味です。

 それゆえ、ヨーロッパ語圏の「無期刑」は、特にマスコミなどから、「終身刑」と「直訳」されることが多く、このことが『多くの国は、一度入ったら二度と出れる可能性のない刑を置いている』といった類の誤解を蔓延させている根本的かつ決定的な原因となっているのです。
 
 すなわち、普段、「仮釈放のない一生の期間にわたる自由刑」が「終身刑」と定義されながら、諸外国の「無期刑」が、「仮釈放のない無期刑」ではなく「仮釈放の認められうる無期刑」であるにもかかわらず、「終身刑」などと「直訳」されるため、様々な誤解が発生しているということです。
 
 そのように「直訳」されることによって、誤って(過大に)評価されてしまいますが、実際には、仮釈放条件期間(=仮釈放を許すことが可能となるまでの最低期間)を経過し、一定の要件を満たした場合には仮釈放が可能です。

 仮釈放条件期間は、各国の法制によって異なりますが、各国の刑法典を見てみると、一般に15年から25年に設定している国が多いです。わが国のおける無期刑の仮釈放条件期間は(実情はともあれ)規定上10年ですが、これはベルギー・韓国と並んで最も寛容なグループに属します(森下忠「刑事政策の論点II」「刑事政策大綱(新版第2版)」も参照)。

 一定の要件とは、国によって異なりますが、一般に、「再犯のおそれがないこと」「人格が改善されたこと」「悔悟の情が認められること」「社会適応性を有していること」などであり、わが国の仮釈放規則28条(旧規則32条)に規定されている要件と基本的に同様です。

 したがって、絶対仮釈放されないわけでも、例外的な条件下でしか仮釈放されないわけでもありません。もちろん、そもそも仮釈放とは一定の要件を満たした場合に適用されるのですから、いずれ必ず仮釈放されるわけでもありません。

 もっとも、イギリスでは、犯時21歳以上の者による極めて重大な謀殺事案に限り、無期刑を宣告する際、原則一生仮釈放なしで服役することを命じることができる制度があり(2003年英国量刑ガイドライン附則21章等参照)、その場合において、25年以上服役した後における再審査によって「例外的」に仮釈放できる場合がありますが、そのような特殊法制下においてはともかく、一般的に、仮釈放とは、一定の要件を満たした場合に行われるもので、それ以上でもそれ以下でもありません。

 なお、わが国では、以前は、仮釈放規則の規定が半ば形骸化し、仮釈放が安易に行われていましたが、近年では、社会の批判や過去の反省等から、仮釈放運用の適正化が図られつつあり、慎重・綿密に審査されるようになってきています(四国矯正61集「評価についての一考察」などを参照)。
 
 そもそも、仮釈放制度の目的は、画一的な拘禁によるデメリットを回避し、受刑者に希望をもたせ円滑な処遇を図るとともにその改善更生に役立たせることにあり、いわば一種の「アメ」のようなもので、批判の多い制度ではあるものの、その有用性は全面的には否定できず(本間一也他「LIVE刑事法」を参照)、実際、有期刑であれ、無期刑であれ、仮釈放の制度は、近代国家にほぼ共通して存在しているものです。

 法務省の文献や各国の自由刑に関する専門文献などでは、外国の「無期刑」が「仮釈放の認められる無期刑」であるにもかかわらず、「終身刑」などと「直訳」されていることはむしろ少なく、たとえば、法務省司法法制部発行の「ドイツ刑法典」という本(ドイツ刑法典の和訳)では、「無期自由刑」という訳語は多く出てきますが、「終身刑」などという訳語は一切出てきません。また、和仏基本法律用語対照表でも「detention criminelle a perpetuite」は「無期禁錮」、「reclusion criminelle a perpetuite」は「無期懲役」と訳されていますし、和独法律用語辞典でも「Lebenslange Freiheitsstrafe」は「無期自由刑」と訳されています。
 
 このように訳するのが筋であり、「直訳」は誤解を招くためあまり好ましくないです(特に、普段「仮釈放ののない一生の期間にわたる自由刑」を「終身刑」と定義しながらそのように「直訳」するのは何ら整合性がなく非常に問題)。なぜなら、「無期懲役」は、英語に訳すと「life imprisonment」、ドイツ語に訳すと「Lebenslange Freiheitsstrafe」ですし、どのようなジャンルの外国語単語にしても日本語に訳される際に全てが「直訳」されているわけではないですし、「外国語→日本語の訳は必ず"直訳"であるべきである」といった極端な意見を有している人もあまりいないからです。

 なお、台湾のマスコミは、日本のマスコミとは違って、基本的に外国の刑名を自国の語と同様「無期徒刑」と訳しています。

 皆様にも、前述のような「直訳」が「多くの国では、一度入ったら二度と出れる可能性のない刑を置いている」という誤解につながっているということを是非知っていただきたいです。この誤解は何より重大視すべきもので、このカラクリをきちんと理解できるようになってもらいたいです。

 余談ではありますが、こういうこともありました。昨年、中国でATM荒らしの男に無期懲役の判決が出ましたが(ただし、控訴して有期懲役に減刑)、日本メディアの一部はこれを「中国でATM荒らしの男に終身刑判決」などと報じました。中国は「无期徒刑」という名称を用いており、暴力犯罪の場合には仮釈放の可能性がありませんが(ただし有期懲役への減刑が可能)、これは暴力犯罪ではありません。それなのになぜ「終身刑判決」などと報じられたか疑問に思ってよく見てみたところ、「ロイター経由」の記事であることに気づきました。つまり、ロイター通信の記者が「无期徒刑」を「life imprisonment」と訳し、ロイター通信から当該ニュースの英字記事を入手した理解の薄い日本の記者が「life imprisonment」を「終身刑」と「直訳」して、記事にしていたのです。
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次にnep0707さんが仰られている無期懲役刑の性質について詳しく述べます。



時折誤解されているのですが、無期刑というのは、「刑期が不定の刑罰」という意味ではありません。

 実際、きちんとした刑法の教科書や法律用語辞典等(たとえば、小林充「刑法 第3版」、 久保哲男「最新図説刑法総論」、藤木英雄「刑法(全)第3版補訂版」、弘文堂「条解刑法 第2版」、司法協会「刑法概説(六訂版)」、自由国民社「法律用語の基礎知識」など)では、「無期刑とは、一生の期間にわたる自由刑である」旨説明されており、
 (もちろんのこと、別頁の仮釈放制度についての説明の欄では、「仮釈放とは、刑期終了前に受刑者を条件付きで釈放する制度で、現行法では、有期刑については3分の1を、無期刑については10年を経過した後、仮釈放を許すことができる」旨記載されています)
 国語辞典においても、「無期刑とは、終身拘禁を内容とする自由刑である。ただし、現行法上10年を経過すれば仮釈放を許すことも可能である」旨記載されています。また、英語でも「life imprisonment」という語が充てられています(法令用語日英標準対訳辞書273頁などを参照)。

 これはなぜかといいますと、上記説明のとおり、無期刑とは、刑の終期の無い一生の懲役刑・禁錮刑という意味であって、刑期を決めていない絶対的不定期の刑罰という意味ではないとともに、「有期」「無期」は、「刑の性格(刑の性質)」であり、「仮釈放制度」は一定の要件を満たした者を刑期途中で条件をつけて釈放する制度であり刑事政策上の問題でして、両者は分けて考えることが可能であり、本来は分けて説明すべきものであるからです。

 「刑期」というのは、いわば「本来的、建前的な拘禁期間」であり、「実際の拘禁期間」とは刑期終了による釈放(満期釈放)の場合でないと一致しません。
 無期刑そのものの性格は、「ずっと、永久に、いつまでも刑務所に入っていなさい」というものですが、日本の現行の無期刑には「仮釈放」の余地が認められているので、実際問題として生涯出所できる可能性がないというわけではなく、このことから、実質的には、刑期を決めていない絶対的不定期の刑罰のように見えるということであり、ゆえに、この実質を捉えて(プラス言葉の多義性から)、「無期刑とは、刑期が不定の刑罰である」と誤って解釈・説明されることがあるのです。
 基本的なことですが、「刑期」とは何か、「仮釈放」とは何か、その目的は何か、仮釈放はどのような場合に適用されるか(仮釈放等規則28条、刑法28条参照)、それは完全な放免を意味するかなどをよく考えれば、これらのことがだんだんと理解できるようになってくるはずです。ただ、今まで完全に誤った認識でいた場合、多少の思考訓練を積む必要があるかもしれません。

 「無期懲役は、刑期を決めていないだけの10年以上・上限なしの不確定期間の刑罰だから必ずしも懲役30年より重いわけではない」といった誤解も一部に見られますが、そうした認識は、これらのことを理解していない典型例と言えるでしょう。
 繰り返しになりますが、無期刑(無期懲役・無期禁錮)や無期公債の「無期」というのは、無期謹慎などのそれとは違って「ずっと、永久に、いつまでも(一生)」という意味であり、刑期が不定だから出所できるのではなく、30年間の拘禁を刑の本来の内容とする「30年の有期刑」が、現行法上、「30年の刑期の途中(ただし10年から30年までの範囲内)で仮釈放によって社会復帰できうる」のと同じように、現行法は、無期刑の受刑者にも仮釈放の余地を認めているので、(無期刑受刑者であっても)「終生という刑期の途中で“仮釈放”によって社会に復帰できうる」ということが理解でるようになれば、そのような認識も変わってくるでしょう。

 仮釈放の制度は、近代国家における自由刑にほぼ共通して存在するものですが、アメリカやオーストラリアの一部の州、オランダ、中国など比較的少数の国では、通常の無期刑よりも重い無期刑として、仮釈放なしの、絶対的な意味での本当の無期懲役(life imprisonment without parole;仮釈放のない無期懲役)が置かれています。これが、日本における死刑存廃論議などで(刑法用語の本来の定義に反して)巷間「終身刑」と呼ばれているものです。

 「ふつう10年そこそこで出てきてしまうので、無期懲役は軽すぎる」といった(明らかな誤解に基づく)意見も散見されますが、仮に、ほぼ全員が10年程度でもれなく仮釈放になったとしても、それは「無期懲役という刑自体が軽い」のではなく、「無期刑」の受刑者にわずか10年経過後から「仮釈放」の余地を認めている点や、仮釈放制度の運用のされ方に問題があるのであって、刑そのものの問題ではなく、刑事政策の問題なのです。
 たとえば、刑法28条を改正して、無期刑の受刑者に対しては、最低25年の服役を経なければ仮釈放を許すことができないようにするとともに、仮釈放規則(「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」)の28条(旧「仮釈放、仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則」32条)も改正し、その判断基準を厳格化(具体的には、無期刑受刑者に対する仮釈放検討時における「人格鑑定」の必須化など)したり、もしくは刑法28条を改正して、無期刑受刑者に対して仮釈放を認めないようにするか、現行の無期刑より重い仮釈放なしの新たな無期刑を設けるかしたり、あるいは仮釈放の運用の適正化を図るなどすれば、前記のような問題は解消されます。ただし、仮釈放の可能性を認めない場合、どれだけ改心し、社会や遺族の感情も緩和され、かつ相当長期の期間が経過し、かつ本人の犯罪性向も寛解したという場合であっても、画一的に、必ず一生拘禁されることになり、新たな問題も生じてしまうことになるので(この点につき、本間一也他「LIVE刑事法(補訂版)」、森下忠「刑事政策大綱(新版第2版)」などを参照)、様々な見地から慎重かつ多角的な議論が必要となってきます。

 最後になりましたが、この手の議論で嵌ってしまいやすい落とし穴は、「刑そのものの性格」と「刑事政策上の制度」が見事なまでにごっちゃ混ぜになってしまうことです。そのような落とし穴に嵌ってしまうと、誤った前提に基づいて議論することになり、多角的な見地から議論ができなくなってしまうおそれがあるので、そうならぬよう、十分な理解と注意が必要です。
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法律用語という観点で回答します。

法律カテゴリーでの質問ですし。

>無期懲役というのは一生刑務所の中ということなのですか?

無期刑という刑の性質という意味ではそのとおりです。

>終身刑が死ぬまででしたっけ?

刑法用語としての「無期刑」と「終身刑」に意味の違いはありません。
どちらも「life imprisonment」の訳語です。
たぶん大陸法系と英米法系の流れで訳語が2つあると思われます。

ちなみに私の知る限り「どんなことがあっても一生刑務所から出られない刑」を置いている国を私は知りません。
アメリカ、イギリス、スウェーデンには「終身刑」がありますが、
これらはいずれも「どんなことがあっても一生刑務所から出られない刑」ではありません。

世間的には「無期刑」と「終身刑」を違う意味で使っていることが多いようですが、
法律用語とは別の意味を当てていると理解していいでしょう。

余談ですが、このことは、この手の解説をしているサイトや本などが
刑法を理解するために信頼に足るかどうかを判断するいい指標になります。
無期懲役のことを「(原則では)一生刑務所で過ごす刑」であることをきちんと説明していない解説は
まず刑法を理解するための解説としては役に立ちません。

>死刑が一番重くて次が無期懲役?

日本ではそうです。(刑法10条1項、2項をひも解くとそうなる)

>無期懲役後の仮釈放と保護観察ってどんな生活なんですか?
>ほとんど見張られてるだけで普通の生活ができるんですか?

生活に関してはおおむねその理解でいいと思います。

ちなみにたまに無期懲役仮釈放中の者が凶悪犯罪を起こしたりする報道がありますが、
こういうケースは割合としては極めてレアであることはあまり知られていません。
(私は、日本のマスコミの犯罪報道の稚拙さは世界でもワースト上位なのでは?と思っています)

ちなみにwikipediaの法律関係の解説は今はだいぶ改善されましたが、
中には「デタラメ」としか言いようのないひどいものもありますんで、
あまり信用しないほうがいいです。
刑事政策に関する解説書とかを読むことをお勧めします。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。

お礼日時:2008/07/29 10:21

無期懲役は、懲役刑のうち刑期の定められていないものを言います。


一生刑務所の中というわけではありません。
日本の刑法では、死刑の次に重い刑罰として規定されています。

仮釈放は無期懲役後になされるものではなく、無期懲役の刑期内だが仮に釈放している状態です。なので、仮釈放中は常に保護観察に付されます。つまり一生保護観察です。
保護観察ですが、「ほとんど見張られてる」というのがどのような状態を指しているか分かりませんが、例えばドラマで警察官が張り込みをするように見張っていることはありません。
保護観察中には遵守事項がありこれを破るとまた刑務所です。
普通の生活が出来るかですが、居住地制限や遵守事項など多くの制限があります。それ以外は普通といえるのではないでしょうか。

参考までにWikioediaに結構詳しく説明されています。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。

お礼日時:2008/07/29 10:20

今晩は。


無期懲役は日本においては極刑の次に重い刑です。
仮釈放や保護観察というのは、その間に何か犯罪、もしくはその際に決められている事項があるのですがそれを破った場合刑務所に逆戻りという事になります。
簡単にいえばそんなもんではないでしょうか。
詳しく知りたければやはりwikipwdiaが良いですよ。
今、拝見させて頂きましたが漏らす事なく書かれていたので。
私は法学部生なので、これでは満足しなかったのですが、一般の方が知る範囲では十分でないかと思います。

wikipedia↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%87%B2%E5%BD%B9# …
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。

お礼日時:2008/07/29 10:20

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