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最近になってキュビスト詩人やキュビズム詩など絵画界の用語なのに、詩の世界で使われている事をはじめて知りました。キュビズムとは絵画の世界で立体派のことですよね。建築や写真の分野でも多くの影響を与えたと聞きましたが、視覚的効果の乏しい詩の世界でキュビズム詩とはどのような詩なのでしょうか。またキュビスト詩人とは代表的な詩人にどのような人がいるのか大変興味を持ちました。どなたか詩の世界に詳しい方やキュビズム詩に詳しい方おしえてください。また、調べられる参考書籍だけでもおしえていただければ幸いです。おねがいします。

A 回答 (2件)

キュビスムは視覚芸術ばかりではなく、音楽や文学にも影響を持った運動としてありました。

ただ、文学上のキュビスムとして理論的な大成を見る前に、ダダやシュルレアリスムに移行していくという経緯があります。ですから文学史では「キュビスム」として別個に取り上げられるというより、シュルレアリスムの項で取り上げられることの方が多いかもしれません。そもそも1917年に「シュルレアリスム」という言葉をつくり出したのが、後述するようにキュビスムの重要人物であるアポリネールなんです。この言葉を初めてアポリネールが書いたのは、ピカソがデザインしたバレエ『バラード』のためのプログラムでした。直後に「シュルレアリスム演劇」として『テレジアの乳房』という戯曲を発表しているんですが、残念ながら翌年にはスペイン風邪で亡くなっています。

シュルレアリスムは当初文学、特に詩を中心とした運動で、視覚芸術を加えるまで少し時間がかかったことを考えると、どこからどこまでが「キュビスム」でどこからがシュルレアリスムなのか、その分岐線を引くのも難しいのかもしれません。
シュルレアリスム運動のリーダーとなったブルトンは、晩年のアポリネールと深い親交を結んでいます。『フランス文学講義IV』では、篠沢さんは「ブルトンはのちのイメージでは教祖的で、威張りたい人ですから、この年長者と喜んで親しんだのは、よほど尊敬していたのでしょう」と、見てきたようなことを書いていらっしゃいます。

さて、ご質問にあるキュビスムの中心的な詩人とは、先ほども書いたアポリネールでしょう。アポリネールは詩人であると同時に美術評論も行っていて、早くからピカソとも親交があります。1905年にはピカソ作品に関する批評を発表し、ピカソが商業的に成功する端緒を開いています。また、もうひとりのキュビスムの重要人物、ジョルジュ・ブラックをピカソに紹介したのもアポリネールでした。

このアポリネールのキュビスム的詩として有名なのが、1914年に発表された「カリグラム」です。これは「視覚的詩」とされていて

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AA% …

こんな感じ。
岩波の世界の美術シリーズの『キュビスム』にはこんなふうに解説してあります。

「アポリネール自身は、適当に拾い集めた断片や無秩序な思考をもとに頁上に形態を作りだすにあたって、マリネッティら未来派の詩論である「自由な言葉」を利用している。カリグラムのいくつかは、道ばたで耳にした会話の断片や、カフェでたまたま眼にした新聞の見出しを利用しており、…キュビスムのコラージュとまさに同様のことをおこなっているのである」(ニール・コックス著 p.410)

そのほかの詩人としては、マックス・ジャコブ、アンドレ・サルモンらがいます。そのほか、一般にはシュルレアリスムに分類されるジャン・コクトーなども、キュビスムの理念を達成した、と評価している人もいます。

日本では堀口大学によってキュビスムの詩人たちは早くも1920年代には紹介されています。
なかでもアポリネールの詩は「セーヌ河」を初め、日本でも有名ですね。
これを受けて春山行夫が「キュビスム文学」を主張しましたが、日本での発展はしなかったようです。

ここでおもに参考にしたのが、文中でも引用した『キュビスム』(ニール・コックス著 田中正之訳 岩波書店)ですが、詩への言及は少ないです。あとはシュルレアリスム関連の本かなあ。でもキュビスムへの言及があるものはやっぱり少ない。新潮文庫からは『アポリネール詩集』堀口大学訳があります。あと詩ではないですが、同じくアポリネールの『異端教祖株式会社』なんかは感じがわかるかもしれません。これは白水Uブックスにもなっていて、比較的手に入れやすいと思います。

以上参考まで。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございました。やはり、シュールレアリスムもといキュビズム詩なるものは、実在していたのですね。ここまで詳しく書いていただいて大変よくわかりました。アポリネールのカリグラムも初めて知りました。あれが、キュビズム詩の代表というような感じですね。アポリネール詩集ぜひ読ませていただきたいと思います。些細な質問にここまで熱心に回答してくださってありがとうございました。大変参考になりました。

お礼日時:2008/10/17 19:01

現代芸術には多少の興味・関心を持っていますが、「キュビスム詩」というのは初耳です。



美術上のキュビスムが詩に影響を与えたということなら、あるいは一種のメタファーとして「キュビスム詩」と称するというのならともかく、文字(記号)から成る詩のテクストがどのように「キュビスム」を連想させる性質なり属性なりを帯びうるのかとなると、私には皆目見当が付きません。

>視覚的効果の乏しい詩の世界でキュビズム詩とはどのような詩なのでしょうか。

キュビスムに限らず、現代芸術の諸思潮というのは19世紀の科学主義、機械主義から人間のナマの感覚や感性を奪還をはかろうという発想を共有していたと考えられます。
もちろん、誕生時にはどんなに革新的な思想であろうとも、それがある程度市民権を得ると、今度は一つの意匠として権威を振るう危険性をも孕んでいるわけです。
現代におけるキュビスムもその難を逃れることはできません。

で、質問者さんがおっしゃる「キュビスム詩」が本当に詩人自身の内的必然性によって要請されたものなのか、それとも単なる意匠程度の着想としてキュビスムの導入を試みただけのものなのか、いまいち私には判然としません。

なお、言語芸術としての詩に関しては、「視覚的効果」と言ったところで、われわれには良くも悪くも記号・テクストの特性や制約を逸脱してそれを感得することが現実的に不可能である以上、やはり私には「キュビスム詩」が存在しうるということ自体がとても信じがたいところです。

ということで、何ら参考にならない回答となってしまいましたが、悪しからずご諒察願い上げます。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございました。キュビズム詩というのは区分が難しそうですね。もう少し私も調べてみようと思います。しかし、歴史を見るとキュビズム誕生の歴史にも様々なバックボーンがある事がわかりました。貴重な回答本当にありがとうございました。参考になりました。

お礼日時:2008/10/17 18:22

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