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感染症で「起因菌として~が検出された」とか「分離菌の薬剤感受性は」という言葉が良く出てきますが、
患者からまず菌が分離されて、それを調べると起因菌はXXだったというようにわかるんでしょうか?
それとも検出と分離は同じですか?

A 回答 (3件)

 感染症の診断に関わる仕事をしています。

ウイルスの方が専門です。

 検出とは検体の中に病原体を見つけること、分離とは検体から病原体を取り出すことを指しますが、意味合いは大きく異なります。
 根本的に異なるのは、分離は「病原体の培養」を伴うのに対し(すなわち病原体を増殖させる)、検出は伴わない、という点です。
 この差が何を意味するかというと、厳密には分離でなければ「病原体の存在」を証明したことにはならない、ということです。

 例えばインフルエンザを例にとりますと、医者でインフルエンザの検査をするのは検査キットを用いて、患者から採取した鼻腔スワブなどの検体の中に「インフルエンザウイルスの一部の抗原(多くはNPという核蛋白質)の存在を"検出"」しているわけです。
 この場合、例えば極端な話、検体中のインフルエンザウイルスが全て死滅していて感染力がなくても、検査では陽性になります。

 それに対し分離とは、同じ鼻腔スワブなどの検体を培養細胞に接種します。検体中にウイルスがいれば、ウイルスが増殖して細胞を破壊する現象(細胞変性効果:CPEといいます)が見られます。そのCPEを起こしたウイルスがインフルエンザウイルスであるかどうかは、結局抗インフルエンザ抗体を用いて「インフルエンザウイルス特有の抗原を"検出"」することによって行うのですが。

 ノロウイルスだと分離培養系が確立していないので、大半のケースではPCRという、遺伝子の特定の配列を増幅させる手法によって検査されています。この場合も、「ノロウイルスの遺伝子を"検出"した」という表現です。

 つまり「検出系」の検査では、その病原体のパーツ(抗原だったり遺伝子だったり)の存在を証明することまでしかできません。
 それに対し分離培養では増殖まで確認しているわけですから、「感染能を持った丸ごとの病原体の存在」を証明していることになります。

 で、検出と分離の意義的な差なのですが、診断系が確立している感染症については差はありません。というか「検出のみで確定診断が可能とされている感染症においては」ですが。
 例えばインフルエンザは医療現場での検査キットを用いた"抗原検出検査"が陽性であれば、インフルエンザと診断できます。(逆の検査陰性をもって"インフルエンザではない"という診断はできない)
 ノロウイルスでは分離培養系が確立していないため、吐瀉物や下痢便などの検体からPCRでノロウイルス遺伝子を検出する検査で陽性となれば、ノロウイルス感染症と診断されています。

 ただ、未知の感染症や重大な感染症に対しては、検出の信頼性は分離に比べるとかなり劣ります。

 例えば鳥インフルエンザでは、簡易検査(実はヒトのインフルエンザ診断用のキットを使っています)陽性では、「確定」とはなりません。むろん状況的に疑わしい場合は、もう高病原性鳥インフルエンザであるという前提で動いていますが、法的に「高病原性鳥インフルエンザ」と確定し、移動制限や殺処分などの命令が出せるのは、ウイルスが分離されてそのウイルスがH5やH7であることが確認された後ということになります。
 アジアで鳥インフルエンザがヒトに感染して多くの人が亡くなっていますが、これらも全て患者からウイルスが分離された上での診断です。

 インフルエンザなどの多くのケーススタディを経ている感染症では、この状況でこの検体からこのウイルスの抗原が検出されればほぼ間違いなく診断できる、というノウハウが確立しているので「検出」のみで診断が可能、ということです。

 ということなので、例えば専門家同士の会話や学会発表などで、「起因菌として~が検出された」という表現はまずあり得ません。
 患者から得た検体を検査する→有意な菌やウイルスが分離される→その病原体が"原因"であることを証明する、という手順が必要になりますから。
 また、「検出」という言葉を使うのなら、例えば「インフルエンザウイルスが検出された」という文章もまずあり得ません。インフルエンザウイルスの"何が"検出されたのか通じませんから。まあ、インフルエンザの検査キットならもう常識として、そういう端折った言い方をしても良いでしょうが。

 新聞報道などではかなり混乱した使い方をされているので判りにくいこともありますけどね。
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この回答へのお礼

ご丁寧な回答ありがとうございました。

なるほど、厳密な違いがあるのですね。
この言葉が出てきた論文の著者は、日本語的にもちょっと乱れた感じがあるので、余計にわかりにくい表現になってたのかもしれません。
なにはともあれ、大変よくわかりました。
ありがとうございました。

お礼日時:2009/03/15 14:53

薬剤耐性は普通、基因菌と想定されている菌について行われると思いますから分離菌と言えば起因菌として検出されたという言い方と同じ意味になると思います。

患者の症状からある程度起因菌が想定される場合もあると思います。
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この回答へのお礼

ありがとうございました。

お礼日時:2009/03/15 14:54

検出:検体の中に発見された


分離:検体の中から目的のものだけを取り出した
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この回答へのお礼

ありがとうございました。 

お礼日時:2009/03/15 14:54

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