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基本的な質問ですみません。

例えば、メキシコ帰りのA君がインフルエンザに
なったとします。当局は急いで、それがメキシコでの
豚インフルエンザと一致するかどうか調べますよね?
検出された株がメキシコの株と一致したから、A君は
日本で第一号の豚インフルエンザ患者になりました、という
話の中での株と言うのが、よくわかりません。メキシコで
そのウイルスに感染した段階からA君の体内では、凄い
勢いでウイルスは増殖し、その中には遺伝子の一部が、
突然変異する一匹もいるわけですよね。たまたま、その
突然変異したウイルスがA君の中で優位になり(毒性や
形質等、意味のある違いは何もないウイルスとします)、
それが日本で検出されたならば、A君のインフルエンザは、
メキシコのものと違う、という事にも理論上なりえるわけ
ですよね?一般的に言われている株というのは、遺伝子が
完全に一致しているものだけを言うのでしょうか?
いわゆるクローンウイルス?
しかし、そうだとしたら、1種のウイルスとか細菌につき、
天文学的な株数が存在することにはならないでしょうか?
どのようなウイルスであれ、少しずつ、遺伝子の変異は
起きているのですよね?

それとも便宜上、「特定の抗体を用いた抗原抗体反応で
同様の反応を示せば、同一株だ」ということにしている
のでしょうか。

素人の質問で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

A 回答 (3件)

 病原体の"株"はstrainの訳です。

種族とか血統とかいうあたりがこの単語の元の意味なので、クローンという語義はあまり含まないように思えます。
 ただ、元の株から特定の特徴を示すものだけを"クローニング"して新たなstrainを起こすことはあるので、クローンという語義も含んでいるのでしょう。日本語の"株"は確かにクローンという語義がありますし。

 それはともかく、ご質問のような病原体の"株"は、No.1さんが回答されたとおり、単に「いつどこで何から分離した病原体」を示しているに過ぎません。

 メキシコの患者から分離された新型インフルエンザの株と、アメリカの患者から分離された株の遺伝子配列を調べて、それが高度に一致すれば「メキシコ株とアメリカ株の遺伝子が高度に一致した」というような表現になります。

>ところでA君から初日に取れたウイルス、2日目に取れたウイルス、3日目に分離されたウイルスはそれぞれ別株という事になるのでしょうか?

 それは採取した意図によります。
 単に何の考えもなく、連日A君からウイルスを分離したのであれば、その研究者は分離されたウイルスのうちどれかひとつを適当に選んで「株」とするでしょう。
 対して、例えばウイルスが1人の患者の体内でどのように変異するかを調べよう、という意図で連日採取したのであれば、研究者はそれぞれを別々の株として取り扱い、それらの株の間の遺伝子配列を調べるでしょう。

>はじめの株と【大きく】異なるものになった場合、同一株とは言わなくなるのでしょうか?

 その"違い"を調べて認識した研究者が「別の株だ」と言えば別の株になります。同じ株として取り扱えば同じ株のままです。

 例えば、ワクチンを開発する場合は、分離されたウイルスを弱毒化するために異種細胞(ヒトから取れたウイルスを犬の細胞で、というように)で延々と継代します。
 そうやって病原性をなくすか極めて弱くなったウイルスを「生ワクチン」として使用するわけですが、その時にはそのウイルスは元の株とは"別物"になっているわけです。
 そのワクチンシード株をそのまま元の株名で「○○株が10^6TCID50含まれている」と表記していることもありますし、別の株名で表記している場合もあります。
 どちらかといえば前者が圧倒的に多いですかね。別の株名にした例は、私は豚コレラのワクチンくらいしか思いつきません。(元の野外株はALD株で、それを継代して弱毒化したワクチンシード株名はGPE-)

 細胞株でも事情は同じようなものです。
 普通、細胞は臓器から作製しても数代しか継代できません。それだと安定した実験ができないので困るわけですが、変異してしまって半永久的に継代できる細胞があって、それは株化細胞と呼びます。
 で、私はウイルス畑の人間なのでウイルスの検査や実験に細胞を使うわけですが、一般的にはAというウイルスは細胞で培養できないとか、Bという特定の細胞でしか培養できない、と言われていても、ある特定のラボで使われているCという細胞ではAウイルスを培養できる、というようなことがよく起きます。
 その場合、その「このラボで飼われているこの細胞だけがこのウイルスを培養できる」ことが世に認められれば、その細胞は元の株名とは異なる名前を付けられることになります。
 そういう例はけっこう多いのですが、正式に"世に認められる"のは、彼が論文を書いて誌面に掲載された時点です。

 逆の話をしますと、先ほど例に挙げた豚コレラですが、現在はワクチン接種が全面停止になっているのですが、数年前まではワクチン接種によりこの疾病を防圧していました。
 すると生ワクチンですから、ワクチン接種後2週間ほどは病気の豚を検査した時に、その病気とは無関係に豚から"ワクチン"を分離してしまうことがしばしばあったわけです。
 この場合、分離してしまった時点では「豚から豚コレラウイルスを分離した」ということしか判りません。分離したウイルスがワクチンかどうかを調べるには時間がかかりますから。
 で、精査した結果、分離ウイルスの遺伝子や性状がGPE-株(ワクチンシード株です)と一致すると、「豚からGPE-を分離した」という表現になって、一件落着となるわけです。
 一方、GPE-とは一致しなければ、これは野外株ですから「豚コレラ発生」となるわけです。この時はその分離株には新しい名前が付くわけです。

 というわけで、結局「株」が同じである、別であるというのは「区別する必要があるか否か」によって恣意的に分類される、ということです。
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この回答へのお礼

驚異的なご親切さに深く感謝しております。
Jagar39様の過去の回答歴もしっかり勉強させて
いただきました。
どうも、ありがとうございました。

お礼日時:2009/05/01 14:39

貴方の理解でよろしいのではないかと思います。

株は確かにクローンと訳せると思います。ただ常に変異が生じているというところですが、変異が生じてもその変異体がクローンの大部分を占めるかどうかはわかりません。もしそうなればそのクローンは別のものになったということになると思います。実験室で人工培養されている病原体は実際の感染症を起こすか起こさないかのチェックがされていない場合には増殖しやすいような変異を繰り返してはじめの株と大きく異なるものになってしまうこともあるようです。

この回答への補足

早速のご指導ありがとうございます。
よく理解できました。
そこで、もう一点お伺いさせていただきたいのですが、
(一番目に回答してくださった方にも追加質問させて
いただいたのですが)

>実験室で人工培養されている病原体は実際の感染症を起こすか起こさ>ないかのチェックがされていない場合には増殖しやすいような変異を>繰り返してはじめの株と大きく異なるものになってしまうこともある>ようです。

はじめの株と【大きく】異なるものになった場合、同一株とは言わなくなるのでしょうか?もし言わなくなるのであれば、言わなくなる境目は何なのでしょうか?大きく異なるものに変化する場合もあると思いますし、小さく異なるものに変化する場合もあると思われます。

もしご存知でしたらご教授いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。

補足日時:2009/04/30 10:28
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>検出された株がメキシコの株と一致した


この記述は適切ではありません。
検出された株の遺伝子型がメキシコの株と一致した
検出された株の血清型が・・・
等の記述が適当です。
つまり

>A君のインフルエンザは、メキシコのものと違う、という事にも理論上なりえる
なりえます。

>一般的に言われている株というのは、遺伝子が
完全に一致しているものだけを言うのでしょうか?
一般的には、分離されたウイルスを株として名付けます。
例えば同じウイルスが3人に感染した場合、3人からそれぞれウイルスが分離されれば、3株分離されたことになります。

この回答への補足

丁寧なご解説どうもありがとうございます。よく理解できました。
大変恐縮ですが、もう1点お伺いさせてもらってよろしいでしょうか。

A君が東京の地下鉄でウイルスを拡散させて100人に感染させ、
後日、その100人全員からウイルスが検出された場合、100の遺伝子型が全て同一であっても、100株取れた、という事になるわけですね。

ところでA君から初日に取れたウイルス、2日目に取れたウイルス、3日目に分離されたウイルスはそれぞれ別株という事になるのでしょうか?
もし採取時間に関係なく同一株であるとするならば(実際ありえないのでしょうが)、2日目に起こった突然変異が3日目には優勢になって、3日目に分離されたウイルスの遺伝子型が初日のものと違っていたと仮定するなら、同一株であっても、遺伝子型が違うウイルスが存在する、という事になるのでしょうか。あるいは実験室等で継代されている(→すなわち同一株ということですよね?)ウイルスが、2番目にお答えくださった方が書かれているように突然変異してしまった場合、同一株だけど、遺伝子型も違うし、特定の性質も違うウイルスという風になるのでしょうか?

お手数おかけしまして大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

補足日時:2009/04/30 10:15
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