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ある本を読んでいて「感染者でウイルスの力価が低い」というような記述があったのですが、ウイルスの力価とはどうゆう指標なのでしょうか?
また、力価が低い場合どうゆう意味なのでしょうか?

教えていただけると幸いです。

A 回答 (3件)

 具体的にどうやって力価を測定するか説明した方が判りやすいでしょう。



 まず、検体(ウイルスが含まれる液体)を段階希釈します。2倍ずつ段階希釈すると2倍、4倍、8倍、16倍・・・に希釈されたウイルス液ができることになります。10倍ずつなら10倍、100倍、1000倍、10000倍・・・ということになります。

 そしてそれらのウイルス液を、そのウイルスに感受性を持っている(そのウイルスが感染することができる)モノに感染させます。それは培養細胞だったり発育鶏卵だったりします。

 その後、ある一定の期間後にその細胞なり発育鶏卵が「ウイルスに感染しているかどうか」を調べます。
 何をもって「ウイルスが感染しているか」判断するのは、測定方法によりいろいろあるのですが、最も単純な細胞変性効果(CPE)を指標とするのでしたら、判定は細胞を顕微鏡で観察してCPEが起きているかどうかを見るだけです。

 で、最終的には「どの希釈濃度まで"感染"することができたか」という数字がそのウイルスの力価となります。
 その数字の出し方や単位は、ウイルスや手法によっていろいろあります。1つのウイルスでもいろいろな方法で力価を測定できますし。

 例えば、インフルエンザウイルスの力価を測定する方法を2つ挙げてみます。

 1つはこのウイルスが持つ「赤血球凝集能」を利用する方法で、ウイルス液を2段階希釈した液を鶏の赤血球と反応させます。
 例えば64倍希釈した液までが赤血球を凝集し、128倍では凝集しなかった場合、このウイルスの力価は「64単位」という言い方をします。
 この手法(HA法)は、反応時間が1時間ほどと短く、反応させる赤血球もラボで採血用の鶏を飼っていれば採血~赤血球調整まで1時間もあればできてしまうので、たいへん手軽に実施可能です。
 インフルエンザウイルス以外にも赤血球凝集能を持つウイルスはけっこうあるので、比較的多用される力価測定法です。ただ、赤血球ならなんでも良いというわけではなく、「豚の赤血球」でなければならないとか「ヒトのO型の赤血球」とか、ウイルスによっていろいろです。どこまで本当か判りませんが、「鶏ではダメだけど烏骨鶏の赤血球ならうまくいく」みたいなものもあって、変わった動物の赤血球に凝集能を持つウイルスを分離した時は、採血する動物を探すのに苦労します。その動物を飼っているヒトや施設が見つかっても、血液が欲しい理由を説明するのに苦労したりして。(どう説明しても、その動物そのものを検査されると勘違いされてしまう)

 また、インフルエンザウイルスは犬の腎臓細胞に感染能を持っています。この犬の腎臓細胞は"株化"されているものなので、つまり市販されています。
 この犬の腎細胞を培養し、それに10段階希釈したウイルスを感染させ、1週間ほど培養してCPE(細胞変性)が起きているか確認する方法もあります。

 この場合、1種の希釈ウイルス液を4本の試験管(培養細胞)に感染させたとして、10000倍希釈のウイルス液が4本中2本の細胞を変性させたとすると、力価は「10^4TCID50/25uL」という表記になります。これは「10の4乗まで酌したウイルスが50%の細胞に感染した」という意味です。/25uLというのは、96穴プレートで試験する場合は、たいてい1wellあたり25uL(マイクロリットル)のウイルス液を接種するからです。
 上では「試験管」と書きましたが、現在ではたいてい96個の穴(well)が開いたプレートを使います。私が初めてウイルスを習った先生は「対トレーションは試験管でやらねばならぬ!」という信念の人でしたが・・・

 同様にインフルエンザウイルスは発育鶏卵(胎仔がいる受精卵です)にも感染するので、やはり10段階希釈したウイルスを9~11日齢の発育鶏卵の尿腔膜内に接種する方法もあります。判定方法は基本は細胞と同じなのですが、鶏胚が死滅するのを見るのか尿腔液を回収してHAの有無を見るのかといったところです。
 この場合、単位はEID50を使います。「50%の卵に感染する」という意味合いです。
 ちなみに細かいことですが、TCID50もEID50も"50"は下付き文字で表記します。

 細胞の場合、ウイルスによって感受性細胞は異なりますので、ウイルスの検査機関では常に10-20種類の細胞を培養しています。
 株化細胞であれば「買える」のでいいのですが、ウイルスには"初代培養細胞"でないと感染しないものもあります。まあノーマルでは細胞は元の臓器から培養するとせいぜい数代しか保たないのですが、「異常を来して半永久的に継代可能になった細胞」が"株化細胞"です。
 初代培養細胞でないと増えてくれないウイルスも多々あるため、この初代培養細胞は基本的に自分で作るしかないので苦労することになります。
 なのでたまに「妊娠した牛の新鮮な死体」などが手に入ると、いそいそと胎仔を取り出して細胞を作るというわけです。中にはすごくレアな「羊の胎仔肺細胞」なんて細胞を持っている人がいたりして、私がさんざ苦労して分離できなかったウイルスをその人がそのレアな細胞であっさり分離してしまったりすると、ちょっと悔しかったりします。
(ちなみにここで言う「分離」と力価測定は作業的にはほぼ同じです)

 このように、いわばウイルスの力価とは「結果論」なんです。
 「このウイルスはVero細胞で10^4TCID50/25uLの力価だった」という場合、この数字は"このVero細胞との組み合わせ"でしか通用しません。同じウイルスをMDCK細胞に接種すれば10^2しか出ないかもしれませんし、逆に10^8くらい出てしまうかもしれません。
 また、同じVero細胞であってもAというラボとBというラボで培養されているVero細胞が「同じもの」である保証もあまりないです。元は同じ細胞でも、それぞれのラボで何代も何代も継代されていくうち、「別物」になってしまうことはよくありますから。
 また、あるラボで培養されている細胞が、新たにあるウイルスに対する感受性を獲得することもよくあります。そうなるとその細胞は例えば"Vero-Jagar細胞"というように新たに名前が付けられて株化される、というわけです。
 そうすると今まで力価測定が不可能だったウイルスが可能になるわけです。

 つまりNo.2さんの回答に付け加えるなら、「その細胞がそのウイルスに対する感受性が低い」という要因もあるわけです。
 例えばコロナウイルスなど、患者の便中にはけたたましい量のウイルスが存在するのですが、「力価を測定」するとロクな数字が出ません。ノロウイルスに至っては未だ感受性細胞が見つかっていないため、力価測定不能ですし。つまり言い方を変えると、どんな系で試験しても「力価ゼロ」という結果しか得られないわけです。
 「力価は結果論」というのはそういう意味合いです。
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この回答へのお礼

Jagar39さま
丁寧な説明をありがとうございました。
書籍やweb上ではなかなか詳しく説明されたものがなくて困っていましたが、おかげさまで随分と頭の中が整理できました。

お礼日時:2007/09/13 14:06

>「液中におけるウイルスの絶対量が少ないために、全体として宿主に感染できる量が少ない」というような量的なものなのか、もしくは「ウイルス自体のもつ感染能力が低い」というような質的なものを指すのでしょうか?



その両方をさします。
ウイルスの液(集合体という意味で)の中には、『感染可能』『1粒子では感染不可能』『感染不可能』等が集まっています。ウイルスの絶対量が少ないと、『感染可能』『1粒子では感染不可能』の量も少なくなるので力価は下がります。また、液の中の比率として『1粒子では感染不可能』『感染不可能』が多い時も力価は下がります。
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ウイルスは普段は粒子数で数えません。


感染価で考える場合が多いかと思います。
この感染価を力価と呼びます。
力価が低いという事は、そのウイルス液の感染できる量が少ないということです。
・・・ややこしいか、説明下手ですみません。
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この回答へのお礼

tunertuneさま、回答ありがとうございました。
ぼんやりとですが、少し理解できた気がします。

ところで、ウイルス液の感染できる量が少ないというのは、「液中におけるウイルスの絶対量が少ないために、全体として宿主に感染できる量が少ない」というような量的なものなのか、もしくは「ウイルス自体のもつ感染能力が低い」というような質的なものを指すのでしょうか?

お礼日時:2007/09/12 18:01

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