No.1ベストアンサー
- 回答日時:
物理学とは一つの独特な世界観を表した学問です。
その世界観とは、1)この宇宙の現象を表す言語は数学である。
2)この宇宙には「自然の基本法則」が存在し、この宇宙の全ての現象はこの基本法則によって統一的に記述出来る。
と言うことです。
因に「法則」とは「Laws」と言う英語、あるいは江戸時代後期のオランダ語の訳ですが、その国では「Laws」とは「法律」を意味します。日本人にはそれが受け入れられず、「法則」という西洋にはない言葉に置き換えています。
この基本法則を数学的に表現すると「この宇宙を記述する最も基本的な変数は正準変数である」ということになります。そして、正準変数の組の定義は、量子力学では正準交換関係に従う変数の組、古典力学ではポアソンの括弧式の関係に従う変数の組のことです。
従って、「この宇宙の基本的な性質あるいは個性は、正準変数が存在することである」と言うことも出来ます。ですから、物理学で正準変数にこだわる理由は、この宇宙の最も基本的な性質にこだわるからです。
逆に言えば、もしこの宇宙の現象を記述するのに、正準交換関係に従わない基本的な物理量が存在していることを誰かが証明出来たら、現在の科学の世界観が決定的に変更されてしまうと言うことです。今までのところ、物理学者は正準変数の存在を否定する現象にはお目に掛かっていません。物理学者の間では今までのところ、正準交換関係に従わない基本的な物理量を見たという主張は、私は幽霊を見たと言う主張と同じ程度に扱われております。
この回答へのお礼
お礼日時:2009/09/21 19:55
正準変数の組の定義が、量子力学では正準交換関係に従う変数の組、古典力学ではポアソンの括弧式の関係に従う変数の組ということは初めて知りました。回答ありがとうございました。
No.4
- 回答日時:
#3で書き忘れたことがありますので、それを補足しておきます。
#3には誤字誤植がいっぱい在りますが、そのつもりで読んで下さい。そもそも、この宇宙に起こる現象の中にシンプレクティック構造を与えることが可能な現象が在りるかどうかは自明なことではありません。ところが、この宇宙の現象の中にそれが可能な現象が在ったと言うことを物理学は発見して来たのです。別の言い方をすると、長年の多大な努力の結果、シンプレクティック構造を持った記述が可能な現象が存在すると言うことがこの宇宙の個性であることを、先人達は見つけて来たのです。その個性の発見があるからこそ、その構造に馴染まない現象がある場合に、それは何故なのか、さらに、この宇宙を特徴付ける個性を我々がまだ十分理解していないようだが、もしシンプレクティック構造を与え得ない現象があるなら、その現象も含めてこの宇宙の個性を特徴付けるものは何であるのかと言う問いや、視点が可能になって来ます。その個性を探る意味でも、正準交換関係にこだわるのは、物理学を発展させるために十分生産的な意味があると思われます。
No.3
- 回答日時:
#1です。
下の#2さんのコメントは、いきなり物理学の上級編になっておりますので、それに関してコメントをさせて頂きます。もちろん私は#2さんのコメントに関して承知しております。古典力学ではエネルギーとしてのハミルトニアンは正準変数であり、その正準共役変数は時間です。ところが量子力学ではハミルトニアンの固有値に下限が存在するために、パウリが証明したように、それに正準共役な時間演算子が存在しません。だからこそ、「時間」は未だに物理学に取って幽霊だと言っているのです。多分#2さんもご存知だと思いますが、物理学の基本法則では時間の向きの対象性が破れていませんが、この宇宙の現象ではその対称性が破れております。ボルツマン以降いろいろな物理学者達がこの物理学の大問題を解決しようとして来ましたが、未だにそれに関して物理学者の間には納得のできる決定的な共通認識が出ていません。物理学者の間では、アインシュタイン以降、時間を時空の幾何学の構成要素の一部として静的に捉える味方が主流を占めておりますが、果たしてそのような捉え方で向きのある時間を理解出来るかどうか、それとは反対に、時間とはナラティブに動的に捉える物ではないのか等々、時間の問題は非平衡物理学の基本的な未解決な問題として、現在でも活発に論じられております。このように「時間」という幽霊をどう理解し、処理するかは、未だに物理学の大問題の一つなのです。
このような大問題を考えるときには、一先ず先人達の作り上げて来た静的幾何学的に捉えた宇宙の定式化を認識し、もしそれに問題があるなら、その何処に問題があるのかを論じると言う形で、物理学が進歩して行くのだと思っております。
電荷の問題もありますが、例えば励起粒子の寿命は重要な物理量であるにもかかわらず、それに対応する演算子が存在しないと言うことから、寿命はハイゼンベルグの言うオブザーバブルではないのかという問題ような問題もありました。しかし、近年、ハミルトニアンの固有値問題を今までの関数空間よりも拡張することによって、ハミルトニアンの複素固有値の虚数部として寿命が認識されるようになって来ました。
私が読むところ、#2さんのコメントは、未だに物理学には多くの未解決な基本問題が残されているよと言いたいのだと思いました。その点私も賛成です。しかし、このような大問題を解決するには、何でも在りという立場ではなく、上にも書きましたように、一先ず先人達の努力に敬意を払いその世界観を明確に認識するという立場に私は立っております。#1では先人達のその努力を紹介したつもりです。
No.2
- 回答日時:
正準交換関係に従わない基本的な物理量、ありますよ。
誰でも知っているハミルトニアンです。もしハミルトニアンに正準共役な力学量があればハミルトニアンの固有値に下限がなくなり宇宙が不安定になってしまいます。http://oshiete1.goo.ne.jp/qa4072468.html
この他、電荷も正準交換関係によらない物理量と言えるでしょう。QCDのような非可換ゲージ理論ではChargeはSU(3)の交換関係を満たしますが、可換なQEDではChargeは他の量と交換関係を形成しません(電荷が量子化されモノポールができるという話はありますが)。別に正準形式が宇宙の絶対真理、不磨の大典というわけでもないと思います。特に重力を正準形式で扱うことの難しさは有名で、昔も今も重力を正準形式によらないで扱おうとする人はいると思います。添付ファイルを見ることができないのでなぜ正準形式に拘るのか正確には不明ですが、シンプレクティック構造を与えたいためと思われます。
http://www.f.waseda.jp/homma_yasushi/kori/articl …
配位空間の余接バンドルがシンプレクティック空間になりますが、そのような幾何学的記述をするために正準変数になることを示しているのではないでしょうか。
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