「酸性」と「酸」
「塩基性」と「塩基」という言葉についての質問です。
参考書を読むと「酸」については2種類定義があります
1水素イオンを与えられる物質
2水に溶解したとき電離し水素イオンを出す物質
「酸性」については
青色リトマス紙を赤変させる、亜鉛と反応する、~~~~~などの性質
と色々な事実を列挙した後に『などの性質』と書いてあります。
質問(1)↑の定義によると
「酸」ではあるが「酸性」ではない物質
「酸」ではないが「酸性」ではある物質
もありえるように思えるのですがどうなのでしょうか?
質問(2)
この「酸性」の定義だとなんだか曖昧に思えるのですが?
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
単純化してイメージ的に書きますので参考にどうぞ。
酸というのは、まず分子レベルで水素を放出しやすい物質です。
たとえばHCLは水素を含んでいて、塩素は電気陰性度が大きいので、水素イオン(中身は陽子です)を出しやすい(放出しやすい、与えやすい、取られやすい、など表現はさまざま)性質の物質のこと。
ただこれは物質間の比較の問題であり、絶対的な酸とか塩基という物質があるわけではないです。
だから強酸とか弱酸という言葉も出てくるのです。
酸性は酸の持つ性質という意味。
その一つとして、水に溶かした場合に水素イオンを多く出すものと説明できます。
要は、酸と酸性は、物質そのものか、水溶液の性質か、という違いですね。
そこで、
「酸」ではあるが「酸性」ではない物質は、存在します。水に溶けない物質なら当然そうなります。
「酸」ではないが「酸性」ではある物質は、原理的にありえません。
☆☆
化学という科目は厳密さを追求しだすと、際限がないものです。
だから、ある程度理解したら、どんどん先に進んでみるのが良い勉強法です。
幅広い知識から見えてくるものがあるはずです。
そして振り返ったとき、前に解らなかった事柄がすんなり理解できるなんてこと多いです。(まあこれは数学なんかでも同じですが)
厳密に考えることは良いことですが、そこで立ち止まってしまうよりも、進んだ方が楽しいです。
No.1
- 回答日時:
参考書には2つの定義が載っているということですが
異なる定義を並立させて載せるというのは教育の立場としては誤りだと思います。
定義が異なれば立場が異なります。
立場が異なれが定義が前提とするもの、扱う対象が異なってきます。
全く同じ場面を前提としていながら定義が異なるということはありません。
全く同じ場面を前提としていながら定義の表現が変わるという場合もあります。その場合は現象的に理解されていたものが実体的な理解に発展したというような場面で出てきます。
(A)そもそもの定義
「酸」、「酸性」は水溶液についての言葉です。「水に溶けると水溶液が酸性をしめすようになる物質を酸と呼ぶ」というのが基本でしょう。「酸」は物質を示す言葉、「酸性」は性質を表す言葉です。
水溶液が示す「酸性」とは一番の基本的な意味で言えば「酸っぱい」ということです。酸っぱいものはたくさんあります。元々酸っぱい味のするものもありますが、酸っぱくなかったものが古くなると酸っぱくなるという場合もあります。果物の汁は前者の代表ですがレモンのようなミカンの仲間の果物で目立ちます。「酢」という漢字も酸っぱいものを表しています。主にスダチや、ダイダイのような酸っぱいミカンを絞った汁を料理に使ってきたものです。そういう酸っぱい汁には金属が溶けるというのは日本ではあまり意識していなかったことのようです。でも「酸っぱいものは酸」という判断は大事なものだと思います。「こういう判断ができるとは思わなかった」と言う高校生が結構多いようです。
(B)酸性の原因は何か。
水溶液の中での水素イオンの濃度が酸性の強さを表している。
これを定義の形にしたものが
「酸とは水に溶けて水溶液中にH^+を放出する性質をもつ物質である」
です。「アレニウスの定義」です。
(A)、(B)は考えている場面は同じです。(A)は現象的な表現ですが(B)はその現象の担い手である実体を使った表現になっています。
中和滴定、pHは水溶液を前提にしているものですからこの定義(B)の中でのものです。
水溶液以外の場面での酸は定義されていません。
高等学校ではこの定義で充分です。(大学であっても特定の分野以外の人にはこれで充分です。)
(C)定義の変更・・・意味の変更
質問文の中の定義
>1.水素イオンを与えられる物質
「酸」は「水溶液」を前提としています。「酸性」は水溶液の性質です。
水溶液以外の反応では「中和反応」という分類はありません。「中和」という言葉は相反する2つの性質があることから出て来たものです。「酸性」とその反対の関係にある「アルカリ性」との間で起こる性質の打ち消しについての言葉です。
ところが水溶液以外でも酸・塩基の反応と似た性質の反応(これは見かけ上です。反応の仕組みまで同じであるということではありません)が起こっているのではないかと考えられるようになりました。その場合、「酸性」という性質は考えていません。反応だけを見ています。水素イオンのやり取りだけで反応を見ています。それで水溶液中で起こる中和反応での「酸」と反応式上で同じ役割をしている物質に対して「水溶液中でしか使うことのできなかったはずの酸という言葉を流用することにした」のです。
酸性を示す物質が酸だと言っていたはずなのにその「酸性」という性質を外してしまったのです。その代わりに水溶液以外での反応に対しても酸、塩基反応という言葉を使うことができるようになりました。
初めに定義されていた場面と異なる場面で同じ言葉を使うのですから元の場面で前提となっていたいくつかの性質、意味を捨てる必要があります。
そういう断りなしに定義を並立させて書いても意味がないのです。
(暗記モノの化学で知ったかぶりをするのには役に立ちます。)
でも「水溶液」という前提を捨てたことによって「酸性」という性質も捨ててしまったということはどこにも書かれていません。電離平衡という性質も水溶液が前提ですから、一生懸命勉強しようとしていることの前提が全部なくなってしまうことになります。
参考
HCl+NH3⇒NH4Cl
これはよく出てくる中和反応です。
普通は水溶液で考えています。
水を仲立ちにして考えていますから
「HClの水溶液中に存在するH^+とNH3の水溶液中に存在するOH^-が反応してH2Oになる」
とします。HClとNH3が直接反応しているわけではありませんが反応に関係している水は反応式の中には出てきません。反応式は反応の仕組みを表しているのではなくて反応に関係する物質の量の変化を表しているだからです。
HClとNH3は気体状態で直接、反応することができます。
これは水が仲立ちになっていません。反応式だけでは区別が付きません。説明がないと分からないのです。
水溶液中での反応の場合はHClはH^+をH2Oに与えています。直接反応ではHClはH^+をNH3に与えています。H^+を与える相手が変わっています。
この関係だけで反応を考えようと言う立場が(C)の定義です。
水は溶媒という働きではなくて反応の相手になります。3つの物質が関係する反応というのはなくなっていつも2つの物質の関係する反応になります。
酸性、アルカリ性という性質は意味を持たなくなりますが酸の強、弱は意味を持っています。H^+を与える方が酸、貰う方は塩基ですが、酸としての性質の弱い方が塩基になっています。2つの物質の相対的な関係ですから相手次第でどちらが酸であるかが変わります。
水にNaを入れた時の反応とエタノールにNaを入れた時の反応を比べてみると対応が分かります。
2Na+2H2O⇒H2+2NaOH
2Na+2C2H5OH⇒H2+2C2H5ONa
C2H5ONa+H2O⇒C2H5OH+NaOH
これは弱酸の塩に強酸を加えると強酸の塩と弱酸になるという反応だと考えることができます。
H2OはC2H5OHよりも強酸だということです。
これは2つの物質の比較で言っています。「H2Oが酸性だ」と言っているのではありません。
こういうことを踏まえて「ブレンステッドの定義」を読んでみて下さい。
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