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小説にでてくるあまり使われない言葉、
特殊にふりがなふってたりする難しい語句って要所要所に出て来たり
しますが、これは読む側にとってどういう効果があるのですか?
また、そういう個性ある語句って小説家はどういうタイミングいれるのですかね?

A 回答 (3件)

これはたんに漢字、あるいは漢語の使用というだけではなく、文学の技巧のひとつである「異化」と考えるといいと思います。



わたしたちは普段、意識することもなく呼吸しています。
ところがその酸素の濃度が突然変わる。あるいは、急に汚染される。
すると、わたしたちは自分が空気を吸っていることを否応なく意識させられますし、逆に、自分がいま息をしていること、いま生きているのだと、なまなましく感じられるようになります。

それと同じで、習慣化されることによって、わたしたちの感覚はすっかり鈍くなってしまっている。
芸術の目的は、日常見慣れたものを、非日常的な形で提示することによって、慣習が感覚を鈍らせる作用を克服することにある、と考えた人(グループ)が二十世紀初頭、ロシアに現れます。
その中のひとりヴィクトル・シクロフスキーはこんなことを言っています。

「慣習化は仕事を、衣服を、家具を、妻を、そして戦争の恐怖を蝕む。……そして芸術は、人が生の感触を取り戻すために存在する。それは人にさまざまな事物をあるがままに、堅いものを「堅いもの」として感じさせるために存在する。芸術の目的は、事物を知識としてではなく、感触として伝えることにある」(『散文の理論』せりか書房)

文章の中に、あまり使い慣れない漢語を混ぜる。
#1の方がおっしゃっておられる

>さらりと読み流すことのできない
>記憶の繋留点(けいりゅうてん)となっているのだと思います。

というのは、うまい言い方だなと感心したのですが、習慣化されていない言葉を挿入することによって、わたしたちの意識を目覚めさせるわけです。

これは漢語の使用に限られません。
たとえば、折口信夫の『死者の書』は、「岩石(いそ)」とか「今(いんま)」のように、ルビをふることによって、古語の持つ響きと漢字の持つ視覚的なイメージが、読者の目と耳を刺激する。
泉鏡花の『草迷宮』という小説では、「とおりゃんせ」という童謡が繰り返し出てくるのですが、鏡花はこの誰でも知っている童謡を使って日常世界に裂け目を入れている。

あるいは横文字を使う。
アントニー・バージェスは『時計仕掛けのオレンジ』のなかで、近未来の不良少年たちにロシア語に近い造語を喋らせることによって、独特な効果をあげています。

あるいは登場人物に思いもかけない行動をとらせることによって、わたしたちの「固定観念」に揺さぶりをかける。
もしかしたら、朝起きたら、突然巨大な甲虫になっているかもしれないのです。

>そういう個性ある語句って小説家はどういうタイミングでいれるのですかね?

こうした語句が「個性がある」のは、語句そのものに個性があるのではなく、文脈の中できわめて適切な使われ方をしているからです。

よく文学作品を評するのに「独創的だ」という言い方をしますが、これは作家がまったく新しいものを創造した、という意味ではありません。
習慣化された現実の見方を逸脱するような描写や文体を導入することで、わたしたちが持っていた「固定観念」に揺さぶりをかけ、「感触」として伝えるということです。
結局は、まったくありふれた言い方にしかならないのだけれど、その作家の独創性のあらわれということになると思います。
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この回答へのお礼

いろいろな方面から、答えていただきありがとうございます。
時計仕掛けのオレンジは見た事あるのですが、そのような観点
から見てなかったので、今度もう一度見てみます。
>よく文学作品を評するのに
これは勘違いしてました。作家が新しいものを創造したという意味
だと思ってました。
勉強になりました。

お礼日時:2004/10/01 21:03

ふりがなにも、「え、どうしてこんな簡単な字にふりがなが?」


と思うこともあって、ふりがなの振ってある字が一概に難しい
言葉だとは言えないことがありますよね。
読者にも初級者から上級者まで居るわけですから、初級者に
配慮しているような本もあります。でも大抵は、難しい言葉の方が
的確な描写ができる、という部分が大きいと思います。

例えば「驚いて目を見張る」よりも「瞠目<どうもく>する」の方が
スマートだし、非常な驚きを表せるのだと思います。
参考になりましたでしょうか。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。
>例えば「驚いて目を見張る」よりも「瞠目<どうもく>する」
まさにこれです!例をあげたかったのですがおもいあたらなくて、、。
>大抵は、難しい言葉の方が
的確な描写ができる、という部分が大きいと思います。
的確なアドバイス、ありがとうございます。

お礼日時:2004/09/30 22:24

読み手にとっては


さらりと読み流すことのできない
記憶の繋留点(けいりゅうてん)となっているのだと思います。
もちろん作品を格調の高いものに見せる演出効果や
作家に対して畏怖や尊敬の念を抱かせる効果も持っているでしょう。
その言葉の使用が成功していればの話ですが。

作家の中には
辞書読みを趣味とする「言葉ヲタク」のような人もいて,
いずれどこかで使ってみたい言葉のリストを温めていることもあるようです。
そういった特殊な言葉が
作品の流れの中で必然性を持つと判断されるときに使われるのでしょう。

この文章の中でもわざとやってみました。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。
>さらりと読み流すことのできない
勉強になりました。わたしもその演出効果などが、
あるんだなとおもったのですが、納得しました。
そういう、普段使わないが、なんとなく意味合いがわかる
ような語句が載った本なんてあるんですかね?

お礼日時:2004/09/30 22:22

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