No.1
- 回答日時:
サルトル(1905-1980)フランスの哲学者ですね。
「実存主義」を唱えた人です。
「実存主義」を説明するのは、かなり難しいですが。
簡単にいうとこうです。
物は「現実に存在することが先か、それとも、本質が決まることが先か」という問題があります。たとえば、「あなたは、あなたとして存在していることが先か、それとも、あなたが何物かということが先に決まっているのか。」という問題です。
それに対して、実存主義は、「存在していることが先だ」というのです。「私は何物?」という前に「私は現実存在している。」のです。
何物か決まる前に、私は存在しているのですから、それからの経験なりの積み上げで「私」は出来ていくのです。そう言う意味で、人は何もしなくてもはじめから「自由」なわけです。その変わり、その「自由」ということで、逆に自分で何でも決めなければならないのです。そうして不安を感じたりするのです。
これを「自由の刑に処せられている」と表現します。
こんなところが、簡単な説明でしょうか。
サルトルは、ボーヴォアールと同棲していました。
ボーヴォアールの「女は女として生まれるのではなく、女になるのだ。」というような思想との共通点もありますね。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
ジャン・ポール・サルトルの何について勉強されているのかで話が違って来ます。まず、哲学者としては、「サルトルの実存主義」を唱えた人です。実存主義というのは、唱えた人ごとで随分内容が違うのです。「ハイデッガーの実存主義」「ヤスペルスの実存主義」では、互いに違いがあり過ぎます。
基本的に実存主義は、「かけがえのないこの私の実存」というものを重視します。この場合の「実存」は、他の人と交換できない、「この私の現なる存在」で、例えば、私は女である、私は学生である、私は27歳である、わたしは北海道生まれである……などは、「私の実存の要素」ではあるが、それは私にとって「非本来的」である。(注:この「私」は、話の例で、わたしのことではありません。わたしは性別・年齢・職業など、公開していません)。
非本来的というのは、そういう「女である」「学生である」「27歳である」「北海道生まれである」というような特性・性質は、そういう性質を他にも持っている人がいて、そういう部分は、他者と交換可能で、独自な唯一の「私の実存」の本来的要素ではないということです。西欧哲学で、こういう属性を「本質」とも云います。「私の実存が、私が何であるか=本質に先立つ」とは、こういう意味です。
サルトルの場合、存在(etre)、無(neant)、即自(etre en-soi)、対自(etre pour-soi)、対他(etre pour-autrui)、また意識(conscience)、アンガージュマン(engagement)などの言葉が、その思想を理解するキーになります。わたしは、サルトルはよく知らないので、一般論になりますが。
サルトルは、意識は対自、対他存在であって、常に対象を必要とするが故に、「無」であるとします。この場合、実質の存在としての実体がなく、機能として、対象を追求し求め、投企してゆく作用のなかに意識の存在はあり、それ故、意識は実体がなく、機能として「自由」であるが、「無」であるとなるのです。対象を求める作用は果てしなく、意識の自己実現というか、実存は充足されることがなく、意識であること、対自・対他存在であることは、完結のない無であり、「自由」は「呪い」であるとなります。
即自存在(エートル・アンスワ)は、物質の存在などがそうで、何か対象に対して存在があるのではなく、意識ではないが故に、それ自身で充足しており、完成しているともされます。即自には、「自由の呪い」はないのです。
即自こそ、存在であり、対自・対他は意識であって、意識は対象を求める過程・作用であって、存在として不完全で、無であるということになります。
サルトルの小説に『嘔吐』というものがありますが、この「嘔吐」とは、意識は、常に対自(自己を意識し、自己を対象とする)であり対他(他者を意識し、他者を対象とする)であって、対象との関係にある「無」なのですが、「ものそれ自体」を考えていると、それは「即自」であり、そのような「存在のありよう」は、意識を超越しており、意識である「私」にとって、到底受容しがたく、生理的に反発を抱くことしかできないものであり、即自存在の「体験」は、まさに「嘔吐」を催させるものに他ならない、ということから、こういうタイトルが付いています。
無である意識である「私」は、いかに自己の実存を充足できるか。サルトルは、対自・対他である意識は、社会的重要事項に「関与・参加(アンガージュマン)」することで、実存を実現できると考えました。社会参加を通じて、人は、ただの人一般から、独自な「その人の実存」へと到達できるというのです。サルトルは、このアンガージュマンの考えから、現代社会(サルトル当時の)では、参加するにたる価値ある社会運動は、マルクス主義しかないと主張し、マルクス主義に接近して行きます。
思想家としては、一体何を主張しているのか、一貫性がないとも言えるのですが、それがサルトルの「実存主義」だということにもなります。
サルトルの思想は、いまは人気がなく、それでも次のような本があるようです。(サルトルは、文学的実存主義のアルベール・カミュなどと対比されます。メルロー=ポンティとも当然親交がありますが、メルロー=ポンティの方が思想家として豊かであるような気がします)。
>「サルトル―実存主義の根本思想」中公新書 124
>矢内原 伊作 (著) 単行本 (1967/02/01) 中央公論新社
>価格: ¥420
>「ハイデガーとサルトルと詩人たち」NHKブックス
>市倉 宏祐 (著) 単行本 (1997/10/01) 日本放送出版協会
>価格: ¥1,120
>「実存主義とは何か」
>J‐P・サルトル (著), 伊吹 武彦 (翻訳) 単行本 (1996/02/01) 人文書院
>価格: ¥1,900
>「同時代人サルトル」講談社学術文庫
>長谷川 宏 (著) 文庫 (2001/08/01) 講談社
>価格: ¥1,100
新書などで読んでみて、大体の輪郭を把握されることです。
以下の『存在と無』はサルトルの主著ですが、わたしは読んだことはありませんし、随分本が高いです。この本で「存在」とか「無」と呼んでいるのが、先に述べた、即自や対自・対他です。
>「存在と無〈上〉-現象学的存在論の試み」
>J‐P サルトル (著), その他 単行本 (1999/05/01) 人文書院
>価格: ¥7,600
>「存在と無〈下〉-現象学的存在論の試み」
>J‐P サルトル (著), その他 単行本 (1999/07/01) 人文書院
>価格: ¥7,600
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