こんにちは。
民事訴訟法についてお聞きしたいことがあります。
昨年度行われましたある国立大学の法科大学院の
入試問題についてです。
問題文
民事訴訟法114条1項の「主文に包含するものに限り」とは、どういう意味か。以下の3つの事例を比較しながら、答えなさい。
(ア)相殺の抗弁の事案(問題文省略します)
(イ)地主Xは、借地人Yに対して、「YはXに対して金100万円と 引換えに、本件建物を収去して本件土地を明け渡せ」との確定判決を えた(前訴判決)そこで、Yは、任意で建物を収去して土地を
明け渡した後、Xに対して、100万円の給付訴訟を提起 した(後行訴訟)
(ウ)争点効理論に関する事案(問題文省略します)
答えについて
かかる問題で、(イ)はどういうことが問われているのでしょうか?
自分は、(イ)は初めてみる事案でした。
今考えている構成が、
(イ)におけるYの後行訴訟は、前訴判決の判決主文中の判断(訴訟物)についてのものなので、114条1項により、当然に後行訴訟をなしえない。そこで、(イ)の事例においては、「主文に包含するものに限り」とは、当然のことを規定したものである、と思ったのですが。
ちなみに、実際の試験では、(イ)の事例を既判力の時的限界の話しとして書いてしまいました。そこで、(イ)は全部×のはずですが、ただ、それでもAがきました(ウの事案の処理ができていたからだと思います)
(イ)は引換給付判決のようですが、「引換えに」の部分が前訴の判決理由中の判断なんでしょうか?それとも、ここの部分も主文の判断なのでしょうか?
ここが分かりません。「引換えに」が判決主文の判断なら、先に書いた自分の処理でいいような気がするのですが、判決理由中の判断なら、どうなるか分かりません。
どうかご教授下さい。
よろしくお願いいたします。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
問題は、「三つの事例を比較しながら」というくらいなので全て同じ法的問題と考えるべきで、ならば既判力の客観的範囲の理解を問うものでしょう。
既判力の客観的範囲は、
a.主文に包含するものに限る
b.例外として理由中の判断でも相殺の抗弁に対する判断は既判力を生じるものがある
というのが条文であり、また判例通説。
更に、
c.相殺の抗弁以外の理由中の判断でも主要な争点については既判力または既判力類似の効力(争点効)を認めるべきである(判例通説は否定)
というのが争点効の議論でこれは客観的範囲を拡張すべきかどうかという議論。
ここで、既判力の客観的範囲は、主文に包含するものに限りであるわけですが、設問の(イ)は逆に、主文に書いてあれば全て既判力があるのかということを問うているのだと思います。この点について、最判昭和39年2月4日は、
「反対債権たる代金請求権は、当該訴訟における訴訟物とならず、したがつて、これが引換給付判決の主文に掲記せられて居る場合においても、その存在及び数額について既判力を生ずる余地はない」
と述べており、引換給付判決主文中の反対債権については、既判力を認めていない様子です。
既判力が無い限り、後訴は当然に可能です。その場合、裁判所は、前訴で認められた反対債権について後訴で請求棄却の判決を書くこともできます。なお、仮に既判力を認めた場合、後訴は原則として訴えの利益を欠くものとして却下になります。
さて、「比較して」というのですから、条文の原則の趣旨および既判力の根拠(述べなくてもいいかもしれませんが述べた方が後で理由付けにも使えていいと思います)を述べた上で、
ア.主文に包含しなくても明文で例外的に認められる場合
イ.主文に包含していても例外的に認められない場合
ウ.主文に包含していない上に明文が無い場合でも認めることがありうるか
ということをどこがどう違ってどういう結論の違いになるのかを述べれば良いと思います。ただ、イの問題は知名度は低い論点だと思います。少なくとも、家にある基本書には載っていません。ですから、イができなくても他ができれば充分かもしれません。
参考URL:http://courtdomino2.courts.go.jp/schanrei.nsf/13 …
ご返信ありがとうございます。
なるほど、よーーーく分かりました。
素晴らしいです!!!!!!
すーっと頭に入りました。
イは、「イ.主文に包含していても例外的に認められない場合」についてですか!
初めてみました!
そうすると、全て合点がいきます!
このような問題、できなくても仕方がない!と
思いました。
どうもありがとうございました<__>
No.2
- 回答日時:
一ヶ所まずい記述があるので訂正と補足をします。
イについて「主文に包含していても例外的に認められない場合」と書きましたが、そもそも既判力の客観的範囲を定める「主文に包含するものに限り」とは、判決主文中に表示せられたる"訴訟物たる権利関係"の存否に限り、という意味であると考えるのが通説(そしておそらく判例)です。ならば、先に引用した判例も述べている通り、引換給付判決における反対債権は「訴訟物ではない」以上、既判力が及ばないというのは、当然の帰結になります。すると、「例外」とは言えないことになります。
ところでURLが表示できないということなので、下記のページで民事事件の事件番号昭和36年オ1299で検索してみてください。
参考URL:http://courtdomino2.courts.go.jp/schanrei.nsf/
お返事が遅くなって大変申し訳ありません
(さらに質問を考えていたので。。)
大変参考になりました。本当にありがとうございました。神様です。
感謝!!
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