No.1ベストアンサー
- 回答日時:
論理的な「矛盾」については、まず、「論理的に等しい」とは何かを理解しなければなりません。論理的に等しい二つの命題は、「論理等号」で結ぶことができます。丁度、4と(2+2)というのは、数の世界では、同じことで、「等しい」ので、等号を使って、4=2+2と書くように、論理の命題にも、同じ内容のことを言っている、論理的に同じである、「論理的に等値だ」ということがあり、これを、「論理等号」で結びます。
具体的な例で話をしましょう。「ジョンは大酒飲みだ」という命題があるとします。「命題」とは、何か主語があって、その主語について、何かを断定的に述べる文章のようなものです。他方、「大酒飲み」とはどういうことかという疑問も起こります。どれぐらい酒を飲むと「大酒飲み」になるのか。論理学では、こういうことも決めておかないと、話が進まないのです。
そこで、「大酒飲み」とは、1)酒を飲み始めると、一日、最低で2升の酒を飲む。また、2)一週間7日のあいだに、5日以上酒を飲む。この1と2を満たすのが、大酒飲みだとします。すると、「ジョンは大酒飲みだ」という命題をAとして、先の1と2を、S1,S2の命題とします。この時:
A≡S1&S2
と書きます。線が三本並んでいる等号は、普通の等号ではなく、「論理等号」と言います。言葉で云いますと、
ジョンは大酒飲みだ ≡(は、論理的に、右の主張と等しい) S1(ジョンは酒を飲み始めると一日最低で2升の酒を飲む)かつS2(ジョンは、一週間7日のなか、5日以上酒を飲んでいる)
「大酒飲み」とは何かの定義から、この論理式が正しいことが分かるでしょう。こういう風に、論理的に、命題が主張している内容(真偽)が、同じである場合、二つの命題は、論理的に等値である、等しいと言い、二つを論理等号で結びます。
矛盾というのは、簡単に言えば、論理的に等値でないものを、等値だとしたような場合です。「ジョンは大酒飲みである」をAとして、その否定命題を notAつまり、「ジョンは大酒飲みでない」とします。この時:
A≡notA
はおかしい訳です。これが正しいと主張した場合、「矛盾している」と言います。これは間違った式だという場合、別に矛盾ではありません。矛盾したことを、正しいと言っている人は矛盾を主張していることになりますが、それが矛盾していると指摘する人は、別に矛盾していないのです。
矛盾というのは、元々、昔の中国の伝説的故事から来ていて、ある市で、商人が、自分の商品を自慢して、まず最初に「矛(ほこ)」を出し、「この矛は素晴らしい矛で、どんな楯(たて)でも貫き通す」と言いました。また、更に商品を自慢して、今度は、「楯(たて……盾の元の漢字)」を出し、「この楯は素晴らしい楯で、どんな鋭利な刃物もこの楯を貫くことはできない」と言いました。すると、商人の話を聞いていた群集のなかの一人が尋ねたのです。「では、その矛で、その楯を突いてみてくれ。どうなるのだろうか?」
矛について商人が言ったことと、楯について商人が言ったことが、両方とも正しいとすると、その矛でその楯を突くとどうなるのか。現実の話だと、矛の先が折れるとかして、楯の方が強いということになるか、または、矛が見事楯を貫いて、優れた矛であるとなるでしょうが、どちらの場合も、商人の主張には合わないのです。そこで、こういう商人のような主張を「矛盾」と呼ぶのです。
簡単に言うと、命題Aが、「この矛は楯を貫く」だとすれば、反対命題 notAは、「この矛は楯を貫かない」です。Aと notAが論理的に両立することはないので、Aであり、同時に notAであると言っていた商人の言葉は、嘘で、間違っており、矛盾しているのです。
また、Aと notAは、論理的に等値でないので、これを、
A [≠] notA
と書きます。[≠] は、本当は、三本の線にそれを横切る斜め線を引くのですが、記号がありませんので代用します。A≡notA は矛盾ですが、先に言ったように、これを「真だ」というと矛盾になるので、これが「偽」だと言うのは、矛盾ではありません。「真だ」というのを、Rという記号で示し、「偽だ」というのを、Fという記号で示しますと:
(A≡notA)≡R
は、「矛盾を示している式」なのです。式が、こんな形になると、「矛盾しているのだ」という意味になるのです。
もっと込み入っているのですが、 「これは矛盾するんだみたいな記号」というのは、すでにあるのです。「これは矛盾していない」という記号を逆にする(否定する)と、「これは矛盾している」という記号になるのです。
これは矛盾だ、という記号というか、そういう表現の式が確かにあり、ゲーデルの不完全性定理というのは、ある数学の理論を造ると、その理論に対し、ある命題が考えられ、この命題は「真か偽か」で、ある方法で証明して行くと、「真になる」のですが、別の方法で証明してみると、おかしなことに、「偽である」という結果がでるのです。ゲーデルは、どんな数学理論でも、その真偽が決定不能な命題がありえるということを証明しました。
どんな数学の理論も矛盾がある、つまり、不完全なのだ、というのが、ゲーデルの定理なのですが、注意がいるのは、では、その真偽が決定できない命題というのは、具体的に何のことかというと、具体的には、まったく分からないのです。
これは「嘘つきのパラドックス」によく似ていて、例えば、或る男が、「おれの言っていることは嘘だ」と言ったとします。そう言ったのですから、「おれの言っていることは嘘だ」は嘘になります。しかし、これが嘘だと、「おれが言っていることは本当だ」となります。しかし、「おれが言ったこと」は何かと言えば、「おれが言っていることは嘘だ」ですから、この言葉が本当だとすると、やはり、この言葉は嘘だったのか、となります。
しかし、考えなければならないのは、この「嘘つきの男」は、「具体的に何を言ったのか」です。実は、何も具体的に言っていないのです。「おれの言うことは嘘だ。あの林檎は腐っている」と言ったとすると、「あの林檎は腐っていない」と言っているのと同じで、腐っているかどうか、確かめることができます。
ここで、林檎が本当に腐っていた場合、男の言った通りですが、林檎が腐っていなかった場合、男に対し、「嘘を言うな」となり、男は、実際の林檎の状態で、本当のことを言ったか、嘘を言ったか決まります。しかし、「おれの言っていることは嘘だ」では、何が嘘だと言っているのか、さっぱり分からないのです。ゲーデルの不完全性定理に出てくる証明は、これと実によく似ています。
「それは矛盾するのだ」という記号あるいは「概念」はすでにあるのだというのが回答です。(訳の分からない話ですが、あまり易しく言うと、余計におかしくなるので、ゲーデルの定理や、嘘つきのパラドックスの話は、跳ばしても構いません)。
この回答へのお礼
お礼日時:2002/01/27 13:21
凄く難しい話ですね。
全て読みましたが、自分の中で完全に理解できてないので
印刷してじっくり考えます。
こんなに素晴らしい回答をして貰えたことを凄く嬉しく思います。
ありがとうございました。
お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!
おすすめ情報
- ・漫画をレンタルでお得に読める!
- ・人生のプチ美学を教えてください!!
- ・10秒目をつむったら…
- ・あなたの習慣について教えてください!!
- ・牛、豚、鶏、どれか一つ食べられなくなるとしたら?
- ・【大喜利】【投稿~9/18】 おとぎ話『桃太郎』の知られざるエピソード
- ・街中で見かけて「グッときた人」の思い出
- ・「一気に最後まで読んだ」本、教えて下さい!
- ・幼稚園時代「何組」でしたか?
- ・激凹みから立ち直る方法
- ・1つだけ過去を変えられるとしたら?
- ・【あるあるbot連動企画】あるあるbotに投稿したけど採用されなかったあるある募集
- ・【あるあるbot連動企画】フォロワー20万人のアカウントであなたのあるあるを披露してみませんか?
- ・映画のエンドロール観る派?観ない派?
- ・海外旅行から帰ってきたら、まず何を食べる?
- ・誕生日にもらった意外なもの
- ・天使と悪魔選手権
- ・ちょっと先の未来クイズ第2問
- ・【大喜利】【投稿~9/7】 ロボットの住む世界で流行ってる罰ゲームとは?
- ・推しミネラルウォーターはありますか?
- ・都道府県穴埋めゲーム
- ・この人頭いいなと思ったエピソード
- ・準・究極の選択
デイリーランキングこのカテゴリの人気デイリーQ&Aランキング
-
「逆もまた真なり」について
-
背理法について質問があります...
-
高校数学、論理
-
背理法での証明について 疑問に...
-
有理数÷無理数=??
-
数学での背理法について
-
天使と悪魔(論理学)
-
n=3の倍数ならば、n=6の倍数で...
-
数学B漸化式です。 a1=1/5, an+...
-
命題「PならばQ」でPが偽ならば...
-
高校数学 ドモルガンの法則につ...
-
数学の問題です! 教えてくださ...
-
対偶
-
青チャートに、「命題p⇒qの否定...
-
a.bが定数で任意のε>0に対してa...
-
命題の真偽の問題で 命題〇〇に...
-
xは実数とする。次の命題の真偽...
-
高1の数学の問題です
-
数学の証明の問題です。
-
超越数は必ず無理数でないとい...
マンスリーランキングこのカテゴリの人気マンスリーQ&Aランキング
-
命題「PならばQ」でPが偽ならば...
-
n=3の倍数ならば、n=6の倍数で...
-
高校数学 ドモルガンの法則につ...
-
命題を証明せよとはどういう意...
-
数学の背理法について質問です...
-
命題論理に関する英単語
-
「逆もまた真なり」について
-
a>0、b>0⇔a+b>0、ab>0
-
強い仮定、弱い仮定、とは
-
有理数を文字置き→互いに素な整...
-
高校数学、論理
-
数学の論理学的な質問なんです...
-
a,bが有理数として√6が無理数を...
-
数学B漸化式です。 a1=1/5, an+...
-
青チャートに、「命題p⇒qの否定...
-
x≠1⇒xの二乗≠1の真偽
-
高1の数学の問題です
-
ウェイソン選択課題について悩...
-
数学で出てくる十分性と必要性...
-
高校数学です!m,nを整数とする...
おすすめ情報