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生物なら寿命がありますよね。もしあらゆる老化老衰の原因となる因子を排除して、健康で生き続けることができたら、そのときの命が寿命ということになるのでしょうか。

老化遺伝子や寿命遺伝子が発見されたなどという記事をたまに目にしますが、その遺伝子存在が漠然とした感じで私にはよくわかりません。テロメアは寿命と老いのどちらに作用しているのか、そもそも老いと寿命は切り離して考えられないのでは、など考えていましたが、両者の違いに混乱してきてしまいました。
ご意見や、初心者にも参考になる本がありましたらどうぞ教えてください。

A 回答 (3件)

こんにちは。


「寿命」といいますのは、有性生殖を行なう多細胞生物に定められた生体機能ということになります。これは飽くまで「生物学的な定義」ということでありまして、その「生物学的な意義」に就きましては、長くなりますので今回はちょっと説明を省かせて頂きます。

>そもそも老いと寿命は切り離して考えられないのでは、など考えていましたが、両者の違いに混乱してきてしまいました。

「寿命」といいますのは「細胞の有限分裂回数」です。
これに対しまして、「老化」とは細胞や組織の「機能劣化」であります。
ですから、

>テロメアは寿命と老いのどちらに作用しているのか、

細胞の分裂回数を司る「テロメア」といいますのは老化ではなく、全うすべき「寿命」の方に作用しているということになります。

>老化遺伝子や寿命遺伝子が発見されたなどという記事をたまに目にしますが、その遺伝子存在が漠然とした感じで私にはよくわかりません。

最初に申し上げました通り、「寿命」といいますのは細胞の有限な分裂回数であります。そして、これを司る因子としましては以下のようなものが知られています。

「テロメア」
「アポトーシス」
「モータリン1遺伝子」

これらはみな生物として定められた「プログラム死(計画死)」であり、これによってコントロールされているのが即ち「寿命」であります。そして、これに対しまして「ネグローシス(壊死)」といいますのがある意味では細胞の「老死」と対応します。
では、我々の体細胞といいますのは分裂の回数が限られているのですから、それを使い切ってしまいますならば、そのあとそれぞれの細胞は機能劣化による「ネグローシス(壊死)」によって次々と老死する以外にないということになります。つまり、寿命の長さといいますのは飽くまで細胞に許された分裂回数によって決まるのですが、それを全うしようとするならば、最後はやはり老化によって壊死をすることになります。果たして、「個体としての生物の一生」といいますのはこのようにして終わるわけですよね。ですから、その生物がだいたい何年くらい生きられるのかというのは、これらの組み合わせによって遺伝的に予め決まっているということになります。

「テロメア」といいますのはご承知の通り、細胞が分裂を繰り返すたびに短くなってゆくという遺伝子配列です。そして、「アポトーシス」とは我々の体内で分裂した体細胞のうち、「いらないものを排除」するために遺伝的に定められた計画死ですが、場合によっては「一回限りの分裂」しか許されないこともありますので、こちらは寿命が与えられているといいますよりは、設計上の必要な処置と言った方が良いかも知れません。
「モータリン1」といいますのは「体細胞の分裂回数」を運命付ける遺伝子でありまして、これが陽性として働く限り体細胞は一定の回数しか分裂できません。ですから、「テロメア」や「モータリン1」によって定められた寿命が過ぎますと、その後それぞれの細胞は老化による「ネグローシス(壊死)」を待つばかりということになります。
「モータリン1」には「モータリン2」という全く正反対の遺伝子がありまして、これが発現しますと体細胞の分裂回数は無制限になることが確かめられています。また近年では、「テロメアーゼ」の発見によって「テロメア」の長さを元に戻すことができるならば永遠の寿命を獲得することができるのではないかといった夢のような予測も話題に上っています。
このような「無制限分裂細胞」が理論上可能であるというのはほぼ間違いのないことだと思います。ですが、そこに「老化・機能劣化」が発生しないという保証はありません。従いまして、寿命とは細胞の分裂回数ではありますが、それを無制限にしただけでは、まだ「不老不死」ということにはならないわけです。また、遺伝情報が狂ってしまい、無尽蔵に分裂するのが「がん細胞」であり、もし「アポトーシス」に異変が発生するならば胎児は奇形になってしまいます。

このように、我々多細胞生物の体細胞には「分裂回数」という寿命が定められています。これに対しまして、ほぼ無制限の分裂を許されているのが「ES細胞(胚性幹細胞)」であります。これはどんな細胞にも分裂・分化することができるため「万能細胞」などと呼ばれておりまして、有性生殖を行なう多細胞生物では「受精卵」がそれに当たります。
我々の人体といいますのは一個の受精卵から始まり、それが60兆に及ぶ様々な体細胞に分裂・分化することによって作られます。ですが、何らかの特定の機能を果たす「体細胞」といいますのは、この万能細胞から分化した時点で万能性を失うと共に、分裂回数にきっちりと制限が加えられてしまうわけです。このため、有性生殖を行なう多細胞生物には必然的に「有限寿命」というものが与えられることになります。
では、有性生殖を行なわない「単細胞生物」の身体は、その全てが無制限の分裂回数を持つ「無限寿命細胞」であります。只今ご説明致しました通り、我々多細胞生物の体細胞といいますのは「機能分化」をすることによって「有限回数」が定められてしまいます。ですが、これと異なる点は、単細胞生物といいますのは分裂そのものがクローン個体の製造であるため、ここでは「機能分化」というものは行われないということです。ですから、その細胞は何回分裂を繰り返しても「無限細胞」のままということになり、このため、我々多細胞生物とは違い、単細胞生物には寿命というものがありません。従いまして、「寿命」といいますのは多細胞生物にのみ存在する生体機構であり、そしてそれは、かつて地球生命が有性生殖という生存手段を獲得したと同時に定められた運命ということになるわけです。

>ご意見や、初心者にも参考になる本がありましたらどうぞ教えてください。

最後にちょっとご説明致しました、「寿命あるいは死」が有性生殖生物に獲得された生体機構であるというのは、「田沼靖一」という博士の研究がたいへん有名です。そして、ここでは生物にとって「死とは何か」といったことがたいへん興味深く論じられています。こちらは今回説明を省略致しました「寿命の生物学的な意義」というのが中心になりますので、興味がおありでしたらぜひ検索なさってみて下さい。
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この回答へのお礼

丁寧なご説明ありがとうございます。寿命=細胞の有限分裂回数、という分かりやすく的を得た定義のおかげで、テロメアが寿命と老化どちらに作用するのか、などの疑問点が解決されました。「寿命」「老化」「死」といった一般に用いる言葉も、生物学的に意味を考えると奥が深いですね。教えてくださった田沼博士の研究も調べてみようと思います。

お礼日時:2007/07/19 19:32

>もしあらゆる老化老衰の原因となる因子を排除して、健康で生き続けることができたら、そのときの命が寿命ということになるのでしょうか。



あらゆる老化老衰の原因となる因子を排除した場合、(事故とか、食料がなくならない限り)死にません。

>遺伝子存在が漠然とした感じで私にはよくわかりません。

代表的なのはWerner症候群で、Werner遺伝子に異常があると、老化が早くなります。

>本症は劣性遺伝病であり、ヒト8番染色体上にあるWRNとよばれる単一遺伝子の異常が原因であることが突き止められている。この原因遺伝子は正常遺伝子と比較して正しく並ぶ4つのDNAのたった一つのDNAの並ぶ順番が違っただけである。この遺伝子の役割はまだ完全に解明されていないが、DNAヘリカーゼと呼ばれる酵素タンパクをコードしており染色体の安定性の維持や遺伝子修復に関与するらしい。また、染色体末端に存在するテロメア構造の維持に重要であるらしいことが最近の研究で示されている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7% …

老化現象のひとつとして、もう細胞分裂できなくなり、組織が再生しなくなることがあります。このことによって、個体は寿命を迎えます。細胞分裂ができなくなることはテロメアが短くなることが原因と言われています。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AD% …
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ひとつの考え方として人間は別にしておくことです。

寿命という言葉がすでに長生きはめでたいという意味が入っています。つまりと人間は脳が発達しているので体とは別に長生きしたいと考えています。もうひとつは体の寿命というのは耐用年数というような観点で考えたほうが良く分かると思います。例えば車を何時買い換えるかというような問題です。ユーザーが何十年も一台の車に乗っていたらその車のメーカーははるか以前に倒産してしまうでしょう。一方半年に一回買い換えていたら今度はユーザーが破産すると思います。全然違うことのようですが私は生物個体の生存期間を考えるには参考になることだと思っています。
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