No.7
- 回答日時:
宇宙線などの放射線を霧箱で捉えた写真を見たことがあると思います。
α線とかβ線の飛跡を見ることが出来ます。粒子1つの飛跡です。
エネルギーが大きいので周囲の物質をイオン化し、それが種になって雲が見える事になります。飛行機雲が見える原理と同じです。放射性粒子1つはどんなに頑張っても見えない大きさなのにその影響は目で見えるスケールのものなんです。
体内でα線やβ線が出れば周りの物質がイオン化されることになります。
エネルギーを失って止まるまで働きは持続します。
遺伝子のDNAがこういう放射線で被爆すれば影響が出るかもしれません。放射線はある値以下は大丈夫という閾値は存在しない、受けた量に応じて影響がでるという説を書いている本もありますがこれがその根拠です。特に体内被曝は直接的です。外部被爆の場合、皮膚表面である程度止まるでしょうが体内被曝の場合は内部の組織がやられます。
C14は生体のたんぱく質、脂質、糖質、・・・の炭素を含む化合物全ての中に分布する事になります。常に体内被曝です。
荒っぽい見積もりをやってみます。
体内に含まれている炭素量を12kgとします。
これは1000モルです。1モル中に炭素原子は6×10^(23)個含まれていますから体内のC14の数は6×10^(14)個です。
半減期が5.7×1000年ということですからこれだけの時間で3×10^(14)個は放射線を出して放射性でなくなっています。これは放出される放射線粒子の数に相当します。
1年あたりに直すと
3×10^(14)/6×1000≒5×10^(10)個
1秒あたりに直すと
4×10^(4)個です。
霧箱の中と同じことが体内で1秒間に4万回ほど起こっているということになります。決して少ない数ではありません。
後はこういうことに対して生体の防御システムがどういう具合に対処しているかということです。
存在比が0.00000000012%であるということだけで大丈夫とは言えないのです。
コンピュータのメモリーの中でも問題になりますね。
放射線粒子が当たって何処かのビットが反転したということが起こると全体に対する割合が小さいから影響も小さいとは言えないことが起こる可能性があります。メモリーにはこういうことを防ぐためのガードがあるはずです。でもメモリーを作っている材料物質自体に放射性同位体が含まれているとガードは役に立ちません。体内被曝です。
DNAは遺伝情報を伝達するためのメモリーのようなものですからどこか1つの傷でも影響が大きいのです。
この回答への補足
見積もり、荒っぽくてもやっていただいてありがとうございます。
生体への影響も怖いですね。人間はもっと水でできているとしても。
霧箱は昔、実際に見ました。ネットで調べると、線源、たとえば、Amでは、α壊変するとβ-線もでるようですが、サランラップ4枚でα線を遮り、βのみ観察すると、面白い軌跡が見られるようですね。
コンピュータのメモリへの影響について、ご存知の文献などありませんか。
No.6
- 回答日時:
お礼のお言葉をありがとうございました。
>>>このお説によれば宇宙線の寄与は小さいことになりますか。
少なくとも同位体の存在比においては、寄与は小さいです。
たとえば、宇宙線によって生じる炭素14の場合は、これらによると、
http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Rmin_GL_006.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%AD%E7%B4%A0
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%AD%E7%B4%A014
C-12 が98.93%
C-13 が1.07%
C-14 が0.00000000012%
です。
なお、
前回、ウラン系列とアクチニウム系列が代表的と申し上げましたが、
ちょっと間違えました。
トリウム系列も重要でした。
放射線のLSIに与える影響に関する仕事をしたとき、トリウム系列も計算に入れたのを思い出しました。
【余談】
こういった、始祖の崩壊が律速している系列では、
始祖の原子数×始祖1個当りの放射能 = 子の原子数×子1個当りの放射能
= 孫の原子数×孫1個当りの放射能 = ひ孫の原子数×ひ孫1個当りの放射能
= ・・・・・
という式が成り立ちます。
この式の意味するところは、
たとえば、ある天然の鉱石にU-238があって、
そのU-238単独の放射能(の合計)が1000ベクレルあるとすると、
子の放射能(の合計)も1000ベクレル、孫の放射能(の合計)も1000ベクレル、ひ孫の放射能(の合計)も1000ベクレル・・・・・です。
U-238は、安定な鉛になるまで14回の崩壊があるので、
子孫の分も合計すれば、U-238単独の放射能の14倍(上の例では14000ベクレル)の放射能がある、というわけです。
(この現象は、「放射平衡」と呼ばれます。)
前回回答の、平社員~部長の例えからも、直感的にわかるかと思いますが。
【余談2】
人類が誕生してから現在に至るまで人類が浴び続けている、地上の天然放射線のことはあまり気にすることはないのですが、
飛行機に乗ったときの中性子被爆は、要注意らしいです。
http://homepage3.nifty.com/anshin-kagaku/sub0510 …
http://www.nirs.go.jp/research/jiscard/informati …
あと、原子力施設関係になりますが、
ヨウ素の放射性同位体は甲状腺に蓄積し、プルトニウムは骨にくっつきます。
これらは、留まっている付近の部位を集中攻撃するので危険です。(と学生時代に習いました。)
以上、ご参考になりましたら。
この回答への補足
系列4つは、今回の件で学びました。化学ハンドブックだったかな。ふつう、詳細データは3系列しか出てないですねえ。
★さらに、付き合わせてしまって申し訳ないんですが、
「放射線のLSIに与える影響に関する仕事をした」とのこと。
このお仕事は論文、解説などで残ってますか?
ありましたら、是非、出典を教えてください。★
(私は一時、放射線ではなく、放射光やイオンのほうで論文を書いてまして、Applied Physics Lettersなどにも掲載されましたので、英文でも読めます。つくばのPFで徹夜したり・・・)
余談、面白いです。勉強になります。キャビンアテンダントの話は聞いたことがありました。
すいません。よろしくお願い致します。
No.5
- 回答日時:
放射性同位体は放射線を出して変化します。
当然時間がたてば放射性同位体の量は減少していきます。
半減期が長ければ現在もかなり存在するでしょうが短ければ存在していないだろうという推測が成り立ちます。考える時間は地球の年齢(45億年)のスケールです。
半減期の短い核種は新しく作り出される仕組みが存在しない限り測定にはかかってこないはずです。
>天然の放射性同位体の多くは、いくつかの「崩壊系列」のうちのどれかに属します。
半減期が地球の年齢程度の始祖の核種があればそこから作り出される核種は寿命の短いものでも絶えず作られているのですから測定にかかってきます。
でもこういう系列に属さないものもあります。
考古学で年代測定に使われている放射性同位体C14の半減期は5.73×1000年です。数千~数万年前ぐらいの生物の遺骸に対して適用可能です(恐竜の時代には適用できません。1億年も前であればC14は残っていません)。生物の体の中にある同位体の存在比が自然界での存在比に比べてどれくらい少なくなっているかで年代を調べます。この測定が可能であるためには自然界の存在比が数万年レベルで一定であるという前提が必要です。
C14は宇宙線の働きでN14が変化して出来ます。
放射性でない同位体が放射性の同位体に変わるのです。
このことから考えると地中にある放射性物質が放射線を出して壊変していく時にその放射線を受けて非放射性の同位体が放射性に変わることもありそうです。
私たちはC14の壊変に伴う放射線の体内被曝を絶えず受けている事になります。
C、H、O、Nは生物の体をを構成する基本元素です。これ等の放射性同位体があれば常に体内被曝にさらされる事になります。3Hも危ないでしょうね。半減期は12.33yです。理科年表に「地球には宇宙線による核反応などによって作られたものが約10kg存在する」という記述があります。
このご回答も興味深いです。
C14はまあ知ってましたが、確かにトリチウムも危ないですね。
10kgという具体値も大変参考になりました。
Tcは系列に入るのかな。
とりあえず、ありがとうございました。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
こんばんは。
天然の放射性同位体の多くは、いくつかの「崩壊系列」のうちのどれかに属します。
崩壊系列は、質量数を4で割ったときのあまりによって、4つに分類されます。
代表的なのは、
1.ウラン系列
ウラン238を始祖とし、14回放射線を出した後に、鉛206に落ち着く。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%A9% …
2.アクチニウム系列
ウラン235を始祖とし、18回放射線を出した後に、鉛207に落ち着く。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AF% …
の2つです。
こういった天然の崩壊列は、始祖となる核種の半減期が非常に長く、
それ以降の、子、孫、ひ孫、玄孫・・・・・の半減期が始祖の核種の半減期に比べれば非常に短いです。
化学の用語に例えれば、始祖の核種の崩壊が「律速段階」になっているわけです。
たとえ話をするならば、
会社で平社員が作った書類に、係長、課長、部長の承認印を押す、という手順があって、
それぞれの所要時間が、
1.平社員が書類を作るのに5時間
2.係長が内容確認してハンコを押すのが3分
3.課長がハンコを押すのが30秒
4.部長がハンコを押すのが1分
だとしましょう。
2~4の「半減期」は非常に短いですが、1の半減期が長いので、
平社員に書類を作るという仕事があり続ける限り、係長、課長、部長は、失業しなくて済むわけです。
つまり、半減期が短い核種の始祖をたどったところに、半減期が非常に長い核種が存在しているのであれば、
その系列の下位の、半減期が短い核種はなくなることはないわけです。
始祖の核種であるU-238,および、U-235 は、今でも地球上にたくさん存在します。
そして、U-238の半減期は45億年、U-235の半減期は7億年です。
よって、ウラン系列、アクチニウム系列にある放射性同位体は、なかなか減ることはない、ということになります。
他の2つの崩壊系列は、下記です。
トリウム系列(Th-232から始まる)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA% …
ネプツニウム系列(Np-237から始まる)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%83%97% …
【余談】
U-238の半減期は45億年なので、地球が誕生してから、だいたい半減していることになります。
U-235の半減期は7億年なので、地球が誕生してから、だいたい85分の1になっています。
現在、U-238とU-235の存在比は、99.3%:0.7% です。
現在の方式の原子力発電に必要なのはU-235だけです。
「プルトニウム」とか「高速増殖炉」という言葉を聞かれたことがあるかと思いますが、
それは、豊富にあるほうのU-238を有効利用する方式の原子力です。
以上、ご参考になりましたら。
この回答への補足
素晴らしい解説! 分かりました。 目からウロコです。
ついでに質問してしまうと、
このお説によれば宇宙線の寄与は小さいことになりますか。
No.3
- 回答日時:
それは、放射性同位体が、新たに作り出されているからです。
放射性同位体の中には、半減期が数十億年といった非常に長寿命ものが存在します。
そのような長寿命の放射性核種が、懐変すると、別の放射性核種ができます。そして新たに生まれた放射性核種は、また懐変して、別の放射性核種になります。これがいくつも起こって、最終的には安定核種になります。
一番初めの放射性核種が無くならない限り、途中で作られる放射性核種もいつまでたっても生まれては壊れつづけるので、なくならないことになります。
他にも、太陽降り注ぐ中性子が、大気中の窒素14と反応して放射性同位体である炭素14をつくり出すようなばあいもあります。
参考URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84% …
「空に太陽がある限り」を思い出しました。あっ、核融合か。
一番最初が、安定に近い核種なんですね。なるほど。
調べると、つい最近まで安定同位体と思われていた放射性同位体元素もあるようですね。
ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
確かに, 外部から取り込むか自分でせっせと作るかしないと放射性同位体はなくなります. だから, 実際に半減期が短いものはすぐになくなっています.
実際 Tc は地球上で天然に存在しない (超新星では確認されています) し, 放射性同位体を使った年代測定法 (C-N, K-Ar, Rb-Sr, U-Pb など) が使えるんだけど.
この回答への補足
共感していただきありがとうございます。
それにしても、超新星(爆発?)でTcをどうやって確認したのでしょうか。
Tcに特有なエネルギーの放射線(α?β?γ?)を確認したということでしょうか。
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