小さいころから美術館や博物館に行くのが好きで、日本画(特に軸ものの水墨画)や仏教美術が好きです。そんな人間として、今更改めて質問するのも大変恥ずかしいのですが、恥を承知で表記の件質問いたします。
日本画と洋画の違いが、画材の違いにあることくらいはもちろん知っております。日本画は墨彩、または岩絵の具で、洋画は油彩・水彩・アクリル絵の具・テンペラ(ってなんでしたっけ?)、あと堅くて細長い棒状の、チョコレートのような鉛筆のような画材がありましたよね(度忘れして名前が出て来ないんですけど)。そういうので書くのがようがですよね。
しかし、外国の風景を描いてある日本画とか、東山魁夷先生や平山郁夫先生のように、シルクロードや架空の土地や世界の聖地を書いてあっても日本画というのもありますよね。
日本の水墨画や浮世絵・役者絵・掛け軸・障壁画が日本画で、ルノワールやマチスやピカソが洋画というのはすぐ分かりますが、特に日本人が描く日本画と洋画は、大変見わけがつきづらいですよね。それでなくても、アートの世界における目覚ましい進歩あるいは前衛化で、その両方のジャンルをクロスオーバーしたり、あるいは超越した、全く新しい最先端の「現代アート」(これがとてもわけのわからない、画家が何を言いたいのか感じ取りづらい作品)も存在しますから、余計に素人には日本画洋画の区別がつきづらい環境になっています。
画材の違いということではなく、そういっ「たアート界の潮流」という側面を踏まえて、現在における「日本画と洋画の違いに関して、的確な回答を頂戴できる方がおられましたら、よろしくお願いいたします。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
そもそも、明治になって、西洋の技法に目が移る画家が多くなった時に、美術評論家が古い日本の絵を残そうと便宜上つけた名前ですからねぇ・・・・
フェノロサ
http://kajipon.sakura.ne.jp/kt/haka-topic36.html
岡倉天心
http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/nittetsu/guidance/p …
水墨画は、中国の南宗画に影響されたものが大きいですし
そんなに神経質に考える必要はないのでは?
描くために用いた画材で分類するという意見もありますが、滝の絵を描く日本画家として注目されている千住博氏はアクリル絵の具を用いています。
http://www.hiroshisenju.com/
美術大学や美術学校での日本画科と洋画科は、使用する画材で分けている場合が多いのではないでしょうか?
ただ、日本の膠絵に対し、西洋には同じく膠や澱粉を使ったデトランプがありますし、
西洋の油絵の具にたいし、日本では屋外のものや壁画などでは桐油を使ったものがありますね。
日本人が描けばすべて日本画だという意見もあるほどですから。
そういうジャンル分けは、後に学芸員や研究家が行うこともありますが、
たいてい、公募展では、描いた人の感覚で出展先を選ぶというものが殆どではないですか?
もっとも描いている人にとっては、あまり重要なことではないような気がします。
どちらの画壇の方が評価されやすいかということは考えるとは思いますが・・・
美術館の学芸員や画廊主の見解
徳島県立近代美術館
http://www.art.tokushima-ec.ed.jp/article/000724 …
山種美術館
http://www.yamatane-museum.or.jp/nihonga.html
トーキヨウアート
http://www.tokyoart.jp/japanese/
わぁ~すごい!!
大変専門的ですが、詳しくコメントいただいた上、リンクを貼ってくださった各サイトの何と詳しいことか!
どのサイトも大変専門的に詳しく書いてあるので、時間があるとき追々じっくりと腰を据えて拝見させていただきますとして、まずはお礼を申し上げます。
画材の違い以外でしたら、明治時代の歴史的背景があるのですね。確かにそうですね。この件に関しては、「フェノロサ」や「岡倉天心翁」のサイトに詳しいですが、「フェノロサ」や「岡倉天心」は「日本美術再発見」の功績から「日本美術の大恩人」と並び称される人たちですよね。
茨城県の大津港に「五浦美術館」があるのをご存じだと存じますが、ここは、「日本美術院」の発祥の地でもありますね。ここに岡倉天心を筆頭に、横山大観・菱田春草ら明治画壇の巨匠たちが集まり、日本人自ら貶めていた日本美術を催行させるべく立ちあがったのでしたよね?
「フェノロサ」のサイトには、明治になってから起こった、かの「廃仏毀釈」に対しても、懸命に日本の仏教美術を守る活動をした旨、書いてありました。
そんな日本美術軽視の風潮の中で、「日本画」と「洋画」という区別がなされたというわけですね。
ただ少なくとも、現代画壇においては、もう一人の回答者様が「《ミックスメディア》というのもあるし」ということを仰っていることから、そんなに厳密に区別がつけられないし、つける必要もなくなってきたことは事実ですね?
結論としては、「神経質に考えることもないけれど、もし考えるとすれば、いろいろと歴史的な事情があって、このような区別ができた」ということ。「廃仏毀釈運動」など、明治期の美術界の事情が影響していることなど、大変参考になりました。ありがとうございました。
No.5
- 回答日時:
西洋でもそうですが、日本の絵などを芸術品という観念を持って捉え見ることを始めたのは、極最近でしょう。
例えば、
襖絵や屏風絵は、装飾品(工芸品、装飾品;インテリアアート)
仏画などは、西洋の宗教画と同じく、説明の為の絵(説明図:イラストレーション)
浮世絵、役者絵などは、現代で言えばポスター。(代替え品:広告)
肖像画は写真。(複写、複製品)
写真の発明で、記録などの分野の需要が減ってしまい、CGによって更にその需要は脅かされています。
そして、絵は、表現の為のものになったということでしょう。
芸術は、ぶっちゃけた話、良くも悪くも 見せ物ですから。
(絵ではなく、音楽や舞台、映画などの芸術として考えれば判り易いのでは?)
>それでも私はやはり、正統的な線引きのある時代の絵画の方が好きですね。毎年秋の「日展」で「洋画」・「日本画」・「彫刻」・「工芸」の各部を見ても、変に「前衛的」なだけで、古典回帰主義な私には、「斬新」というより「ただ単なる邪道」にしかどうしても見えませんので。
これは、絵をインテリアアート(工芸品)として捉えているからではないでしょうか?
絵を物としてみるなら、これはある意味素直な捉え方ではないのでしょうか?
一つの絵の用途だと思います。
ただ、芸術家としての画家であれば、工芸品としての絵ではなく、表現の為の手段として絵を描くでしょう。
そして、それを行なう為の、食う為の手段として売り絵(工芸品:インテリアアート)があるのでは?
実際には、後者の割合が殆どで、その中に、前者をスパイス的に盛り込むというのが、殆どではないかと思います。(絵が売れなくては食えませんから)
しかし、どちらが、崇高であるとか、そういう話はまた別の次元の話ですが・・・
たびたびお世話になりまして恐れ入ります。
なんか、当初の質問から比べると、随分と専門的な深みにどんどんはまって行って、「勉強不足の私には付いて行けなくなってきたぞぉ~っっ!!」って感じですf(^^); 芸大美術学部1年生の「美術総論」の講義みたいになってきましたね(^^) ここまで来ると話が少々難しくて、なんとコメントしてよいのやらという感じです。
私の絵画作品のとらえ方について、「インテリアアート」として捉えているのではないかとのご指摘ですが、もしかしたらそうかもしれませんね。自分では今迄そんな気はしなかったのですが、そうおっしゃられるとそうかもしれないです。仏像にしても本阿弥光悦好みの楽茶碗にしても、浮世絵やそれこそ平山画伯らの絵にしても、私たち消費者は、信仰の対象や工芸品やインテリアとして飾ることを想定して鑑賞しますから。
ただ、それを生み出すアーティスト側の立場ではそうは捉えていない。「表現の手段としての絵」、もしくは生活の糧を得る手段としての「売り絵」としてとらえているということですね。
ところで話は違いますが、このサイトには、「当初の質問と関係のない内容や、投稿者同士の議論のQ&Aは、(問答無用で)削除させていただきます」というのがありますので、このあたりでそろそろ回答を締め切らせていただきたいと思います。それと言いますのも、私としては、あなた様からのこのような大変為になるお話を、これからもたくさん拝聴して、美術の勉強したいのですが、サイト管理者のOK Wave様が全く理解して下さらず、管理者の勝手な都合と権限でルール違反扱いにして削除するのです。そういう事情なので、不本意ながら締め切りたいと存じます。今まで大変お世話になりましてありがとうございました。
No.4
- 回答日時:
No2のllamaです。
>平山郁夫画伯や東山魁夷画伯の絵は日本画といえるのかどうか
擁護する気は全くといってないのですが、このお二人の経歴から考えて
紛れもなく日本伝統美術の流れをくむ画家であることは間違いないようです。
平山画伯は前田青邨に師事し、東山画伯は結城素明に師事とあります。
このお二人のお師匠さんを遡っていくと・・・平山画伯は狩野派に東山画伯は
円山派にたどり着くようです。(青邨の師は梶田半古、結城の師は川端玉章)
竹久夢二にはっきりとした師はなく単なる人気イラストレーターの
ような扱いですね。
現代の作品を見て判断すると到底納得はいかないのですが、私は以前
東京芸大収蔵展なるもので平山画伯と東山画伯の卒業制作を見たこと
があるのですが、伝統的な線と色彩を尊重した正統派の完成度の高い
絵画でした。
いつの頃からかそのような伝統的な画法を捨て新しい表現様式に移行
したようですが、その辺りを区切れば以前は日本画家だったと
言ってもよいのではないかと思っています。
教育機関が整備され画商や画壇などが複雑にいりみだれて以前のような
師弟制度が影を潜めて○○派というものを伝え守っていく必要が
なくなって一個人の画家として尊重されるようになることで”伝統的な
日本画”ではいられなくなったようですね。
自由の代償として日本画の伝統は隅っこに追いやられて一個の絵画と
して扱うようになったと考えれば今の色々な表現様式や画材の導入も
納得がいきますね。
個性的な絵、画法、モティーフでないと誰が描いた絵として認知され
にくいですから。
もちろん過去の偉人たちの表現様式も個性的で様々な実験は試みては
いるものの頑なに守られている頑固さも持ち合わせている気がします。
ですから現在の日本画と呼ぶものは日本人の画家(絵師)が描いた絵画
以上でも以下でもない言えるのではないかと。
やはり、平山・東山両画伯は日本画家ですね。ホッとしました。これに対して、「竹久夢二は単なるイラストレーター」とのこと。確かにそうですね、東京根津や伊香保などにある「夢二記念美術館」の展示作品を見ると、文芸雑誌等の挿絵が多いです。いわば現代のイラストレーターの先駆けと言えますね。私も同感です。夢二作品は、描かれているモチーフが「明治日本の風俗」ということで有名ですが、日本人が日本の風俗を描いているからと言って、所謂「日本画」とも思えないし、されど「洋画」でもないような気がします。無理にジャンル分けをすれば「伝統絵画風の(もしくは近代絵画風の)イラストレーション」としか言えませんね。そもそも絵画の製作目的が出版物の挿絵なり楽譜の表紙絵なので、その面からも「○○画家」というよりイラストレーターですね。
「教育機関が~」以降の内容はNO1様とも被りますが、「一個人の画家として尊重されるようになることで“伝統的な日本画”ではいられなくなった」、「自由の代償として日本画の伝統は隅っこに追いやられて一個の絵画として扱うようになった」、「個性的な絵、画法、モティーフでないと誰が描いた絵として認知されにくい」とは、最近のアート界の動向を見れば素人目にも何となく感じます。今時「日本画」・「洋画」・「イラスト」などと明確な線引きをする事自体、芸術にはナンセンスなのですね。それらの固定観念を一切超越した所に、深遠なるアートの世界を追求して行くのが現代美術界なのですね。
それでも私はやはり、正統的な線引きのある時代の絵画の方が好きですね。毎年秋の「日展」で「洋画」・「日本画」・「彫刻」・「工芸」の各部を見ても、変に「前衛的」なだけで、古典回帰主義な私には、「斬新」というより「ただ単なる邪道」にしかどうしても見えませんので。作品からは「作家が何を表現したいのか」が一目で分かるどころか「考えても理解不能」ですから。少なくとも現代アートは、私の好きな伝統的な作品や琳派の「八橋蒔絵螺鈿硯箱」の様な「単純明快さ」が全くないと思います。古いですかね?私の美術観は。
色々な面からの作品の見方をお教えくださり、大変勉強になりました。これでまた、美術館や博物館を訪れる楽しみが増えました。大変ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
#1です。
画材の違いという事であれば、(ポピュラーな)泥絵の具(水干絵の具)に(高価な)天然岩絵の具のアクセントが主で平面的なテクスチャの古い日本画に対し、(釉薬を応用した)新岩絵の具や、水晶末を合成顔料で着色した合成岩絵の具の発明で、これらを ふんだん使う事ができるようになり、また、飾り方もフレキシブルな掛け軸から額装になった事で、基底材も自由に選べる事から、厚塗りが可能になり、絵の具の盛り上げを多用する比較的新しい洋画(ゴッホなど)の様な表現が可能になった事もありますね。
泥絵の具も 合成顔料の出現で、テンペラ用に販売されている顔料を使われる顔料も積極的に使われていますね。
箔に関していうなら、洋画でもテンペラなどにはよく併用されます。
またメデイゥムも、膠だけではなく、桐油はもちろん、合成樹脂(例えば、絵具屋三吉のアートグやアクリル樹脂メディムなど)を使う画家も増えてきて、#2さんのおっしゃるようにミクストメディア的なものになりつつあるのではないでしょうか。
画家の立場から言えば、何を使って描くかではなく、描きたいものを表現する為には、どんな画材を選択したら自分のイメージに近づけられるかという事が重要だと思います。
「画家の立場から言えば、何を使って描くかではなく、描きたいものを表現する為には、どんな画材を選択したら自分のイメージに近づけられるかという事が重要だと思います。」
全く仰るとおりですね。そういう考え方のもとに描かれた作品が世に出されたとき、観る側が勝手に(ではないでしょうが?)ジャンル分けをしているだけなのでしょうね。ましてや現代のような、既成観念的な画材をつかわずに、自由な発想で製作されているアートの世界を見ますと、もはや「日本画」だの「洋画」だのと区分けすること自体、時代遅れでナンセンスなのかもしれませんね(^^)
それにしても、このような基本的な稚拙な質問でもしてみるものですね。おかげであなた様やNo2様からの専門的なご意見をお伺い出来ましたので、美術館を訪ねた時の「作品に対する目の付けどころ」がまたひとつを増えたような気が致します。今迄このようなことに注意して作品を鑑賞したことはなく、それこそ「画材は何だろう」とか、洋画なら「キャンバス」だが日本画なら「絹本」なのか「紙本」なのか、「製作年代は?」等、そんなことばかりをポイントにしてみてきたので、お二方のご意見を伺い、新たな見方ができると思います。
大変ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
決定的な違いがない以上この現代では日本画とそうでない絵の区別は
付けにくいですね。
最近のものはミクストメディアと言ってしまえば事足りるわけですので。
まあしいて違いといえば質問者さんがご指摘の画材の違いに付け加えて
画面のサイズぐらいでしょうか。西洋画のタブローの大きさの基準は
西洋の建物の大きさをもとに基準を作っているので構図もおのずと
変わってくるようです。が、日本の油絵のキャンバスサイズも海外の
サイズに合わせようとはしているのですが、尺度が尺貫法のころのまま
流通してしまっているので海外の額縁と合わないというコントみたいな
ことになっています。木材の長さが尺貫法で切ってあるのでそうせざる
をえないらしいです。
日本の伝統的な絵画の画面の大きさも日本家屋の長さの基準に合わせて
決められています。
最近の日本画家も油絵の基準の大きさのパネルを使って
描いている人が増えているようですのでコレも弱いのですが。
(日本で売っている大きさなので海外のもとはちがいます。
ああ、ややこしい。)
ものすごく了見のせまい言い方をしてしまえば、明治以降に限って
○○派の流れを汲む師匠に付いて絵を学んでいないものの絵は
日本画ではないといえるのではないかと思いますね。画法の手本に
そって絵を描いていないわけですから。アウトローですね。
(そうなると竹久夢二とかは日本画っぽくは描いてますが日本画では
なくなりますね。)
でもたとえ画材が日本画の画材だったとしてもそれは日本画なん
でしょうか?
結局本人が自己申告する以外ないような気がします。いいかげんだな~。
明確な日本画と呼べるものはフェノロサ以降~戦後のまでのもので
いい気がします。
それ以前のものは大和絵とかいろいろいわれて区別されてますから。
この度の私のような質問を既に当サイトに投稿し、既に回答が出ているQ&Aや、この度のNO1さまの回答を拝見した上で、あなた様の回答を拝見しました。
「画材による違い」でない、「日本画・洋画」の違いということで回答をお願いしましたところ、私の思いもよらない着眼点で回答いただき、大変に参考になりましたこと、まずはお礼申し上げます。
「日本画と洋画の違い」が、それを飾る家屋の大きさの違いに伴うキャンバスサイズの違いにあるというのは、私にとって意外な発見です。
「ものすごく了見の狭い~」以降のコメントは、No1様のコメントと少しかぶりますね。
No1さまが千住博さんの「滝シリーズ」に触れていらっしゃいましたが、あなた様の仰る「そうなると竹久夢二とかは日本画っぽくは描いてますが日本画ではなくなりますね。」という文章を拝見いたしますと、「それなら、平山画伯や東山画伯の日本画も「日本画や否や」ということになりますね。また、「桜の画家」中島千波画伯も日本画家なの?ということになりますね?
「フェノロサ」を境にして「日本画と洋画」の区別がつけられた。それ以前のものは「大和絵」や「浮世絵」などと言われてきた。ただ、その頃はまだ「洋画」が日本に入ってきていなかったか、日本人に普及していなかった。それが明治維新以降の急速な西洋化志向や廃物喜色運動のあおりを受けて、やむなくそのような区別を付けざるを得なくなった。そこに後から、「画材の違い」だの「家屋の建築様式がどう」のと、無理やりとってつけたような理由をつけただけなのかもしれませんね?
大変参考になりました。要は、今迄のお二方のご意見を総合しますと、そんなに神経質になる必要はないということでしょうね?どうしても区別がつけたかったら、やはり画材の違いでしょうね。少なくとも近世までは・・・。
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