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量子力学におけるハイゼンベルクの不確定原理について質問させていただきます。
量子力学の教科書に
位置と運動量の不確定性は
ΔxΔp_[x]≧h/4π
で表され、x(t)=v_[x]t,E(v_[x])=(mv_[x]^2)/2とすると
ΔtΔE≧h/4π
に拡張される。
とされているのですが、どのようにこの“拡張”を証明できるのでしょうか。
よろしくお願いします。

A 回答 (5件)

#3です。


質問者さんにも参考となると思いますので、再びここを借りて、#4さんのポアンカレサイクルについて触れておきましょう。

時間の対称性の破れを論じる時に、しばしばポアンカレサイクルに搦めて論じる方が居りますが、これもやはり慎重に論じないと、判ってもいないのに判った気にさせられてしまうことがあります。

そもそも、ポアンカレサイクルは古典力学の位相空間内の軌跡に関する定理です。そして、その位相空間内で「もし運動が有限領域に閉じ込められているのなら」という条件付きで適用可能な定理です。

従って、その条件を満たさない状況ではポアンカレサイクルの概念は意味をなさなくなります。自然放出の問題では、どこでこの条件が満たされなくなるか、一つ一つ解説してみましょう。

先ず、これは古典力学の問題ではなく、量子力学の問題だと言う点です。従って、始めから位相空間内の軌跡と言う概念が存在しません。このことについてはもう一度後に説明します。

次に、荷電粒子が有限の空間に閉じ込められており、その境界条件にエネルギーの散逸が無い、すなわち量子力学のシュレーディンガー方程式が成り立っている場合には、光のエネルギースペクトルが不連続の値を持ちます。その場合には、運動は準周期的になり、共鳴効果による自然放射は起こりません。自然放射を起こさせるためには荷電粒子は無限大の空間の中に在り、従って光のエネルギースペクトルが連続に成っている必要があります。ですから、運動が有限領域に閉じ込められているという条件も満たさないのです。

もう一つ、上で述べた量子力学について、量子力学は一般に座標空間か運動量空間の中に広がりを持った波動関数を取り扱います。従って、個々の軌跡ではなく、量子論的な確率アンサンブルを扱うのです。そこで、それに対応して、例えば古典力学でも、位相空間内の統計的なアンサンブルを考えてみましょう。これは、一般には位相空間内でゼロでない体積を持って連続的に分布する点の集まりで記述されます。そこで、極端にそのアンサンブルがたった2点だけで出来ているような場合を考えてみましょう。非線形でカオス的な振る舞いを示す古典系では、ある一点の運動の無限近傍での他の一点の振る舞いは、はじめの点との振る舞いと完全に違ったものになることが知られています。ですから、たとえ運動が位相空間内の有限領域に閉じ込められていたとしても、はじめの一点から出発して、ある時間経ってその近傍にまた点が戻って来た時の時間と、その無限近傍のもう一点から出発してそれがその一点の近傍に戻ってくる時間は全然違っています。そこで、その二点が同時に元の2点の近傍に戻ってくる時間はそれぞれの戻ってくる時間の最小公倍数になるわけです。それが、3点に成ったら、その最小公倍数は2点の時よりも桁違いに長くなることは判りますね。ところが一般には古典力学でも位相空間内のアンサンブルは有限な体積を持っているのですから、与えられた一点の周りの無限集合の運動を考えていることになります。従って、カオス的な振る舞いをする非線形系では,その無限の点が同時にもとの近傍に帰ってくる時間は無限大となってしまいます。別な言い方をすると、古典力学でも、位相空間内のアンサンブル、すなわち無限の点の集合全体に対しては、たとえ運動が有限な領域に閉じ込められていたにしても、それに対応するポアンカレサイクルは一般の非線形系には存在しません。

ですから古典力学でも、時間対称性の破れをたった一つの軌跡に対して論じているのか、それともアンサンブルについて論じているのかで、全然違ってくるのです。

いわんや、量子力学では軌跡と言う概念が無く、アンサンブルに関する概念のみが在るのですから、これに対してポアンカレサイクルを持ち出して、その運動を論じるのは筋違いなのです。量子力学の専門の方でも、時間の対称性の破れを専門にしていない方の間では、ポアンカレサイクルに対してこのように混乱している方が時々いると言う経験を、私もしたことがあります。

このように、少なくとも3つの側面から、どうして自然放射の問題をポアンカレサイクルの概念を使いながら説明することに意味が無いか、お判りいただけたでしょうか。
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この回答へのお礼

詳しいご回答ありがとうございます。
頂いたご回答について、調べるなどして懸命に理解しようとしたのですが、この春から初めて量子力学を学び始めたばかりですので、完璧な理解にはもう少し時間が必要になりそうです。
しかし、ΔxΔpとΔtΔEの非等価性だけでなく、量子力学の奥深さと面白さについても教えていただいたような気がします。
ありがとうございました。

お礼日時:2009/05/17 02:56

#2です。


私が大雑把と書いたのは、まさに大雑把にしか書けない不完全な知識しか無いからでした。
私の理解の仕方では不十分で、例外も見落としも多数あり、いろいろな現象の分類もできません。
調和振動子のコヒーレント状態のように、異なるエネルギー固有状態の重ね合わせであるにもかかわらず波束が広がらないというご指摘は、その例外の一例です。

私の示した解釈がどのように不完全でどこから間違っているのか、質問者さんにも汲み取っていただければと思います。

私自身まだ納得していなくて、しっかり考えている専門家ならきっと指摘するだろうと予想した点を#3さんがしっかり突いてくれていると思いました。
ここに
ベキ則、指数関数則、デコヒーレンス、対称性の破れ、共鳴特異性、非線形性による位相の混合、第二法則
などのキーワードが出てきています。私の勉強になっている^^;
時間とエネルギーの不確定性関係が、時間の矢の問題の中で議論されているわけですね。

ちなみにポアンカレサイクルと書いたのは、光の自然放出の勉強をしたときに指数関数的減衰をそのように解釈したことを思い出したのです。上のキーワードでこれを理解し直すきっかけになれば。後日、別に質問を立てるかもしれません。
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この回答へのお礼

詳しいご回答ありがとうございます。
頂いたご回答について、調べるなどして懸命に理解しようとしたのですが、この春から初めて量子力学を学び始めたばかりですので、完璧な理解にはもう少し時間が必要になりそうです。
しかし、ΔxΔpとΔtΔEの非等価性だけでなく、量子力学の奥深さと面白さについても教えていただいたような気がします。
ありがとうございました。

お礼日時:2009/05/17 03:01

この機会に#2さんの解釈に対するコメントを書かせてもらいます。

時間に関する物理学が、現在どういう側面で論じられているかの参考になると思います。

>大雑把に書きます。時間とエネルギーの不確定性関係の簡単な解釈(私の理解)は、「一定のエネルギー幅ΔEで重ねあわされた量子状態は、Δt程度までしかその状態を保持できない」というものです。Δt程度時間が経過すると、重ね合わせの位相がばらばらになってしまうからです。

確かに大雑把に言って、その解釈は間違いではないですが、それをいきなり励起状態の寿命に適用してしまうと間違いになります。ここの例で論じられている自由運動の場合には、平面波の重ね合わせによって局在する波束が作られています。そして自由運動のエネルギーは運動量、あるいは波数ベクトルに関して2次関数として非線形に依存しますから、その非線形性故に、必ずその波束は広がって行きます。ただしその非線形性がどんな非線形性であっても、その広がり方を計算してみると分かりますが、必ず時間に関してベキ関数として広がり、指数関数的振る舞いはしません。ご存知のようにベキ関数には初期条件に依存しないその関数に固有な時間スケールが存在しません。そこで、妥協案としてh/ΔE程度の時間で波束が広がったと看做そうじゃないか、というのがこの「不確定性関係式」の解釈です。実際、調和振動子のような線形な系では、波束は広がりませんし、また1次元空間を伝わる光の波束も、エネルギーが波数ベクトルに線形に依存しているので波束は広がりませんので、上のような「不確定性関係」の解釈が出来なくなってしまいます。

一方、デコヒーレンスを伴った励起状態の崩壊は時間の関数としてベキではなく、指数関数的に起こります。指数関数には初期状態に依存しない、系固有の時間スケールが在りますね。その固有な時間スケールのことを寿命と呼んでいるのです。そして、その指数関数部分が、時間の符号の反転に対する対称性を破っているのです。この指数減衰は荷電粒子と光の間の相互作用を数学的に分析した時にエネルギー空間の中に現れて来る共鳴特異性という特異性が原因で出て来ます。従って、非線形性による位相の混合とは全く違った、相互作用が原因で出てくる特異性から出てくる現象なのです。良く考え見ると、波束の広がりは既に自由運動にも見られる現象なので、波束が時間とともに一方方向に広がって行くから、時間の対称性が破れたと言うわけにはいきませんね。

ですから、もし、
>位相がばらばらになったあとにぐるっと回って元に戻らないのは、そのポアンカレサイクルを無限大とみなせるから、

時間の対称性が破れた、と言おうとするのだったならば、励起状態の崩壊と言う、まさに時間の対称性を破る現象の説明にはなっておりませんね。

>励起状態がある時間で崩壊するのは、その励起状態が「全ハミルトニアン」の固有状態ではないから。

これも、曖昧な表現になっています。自由運動だろうが相互作用が在ろうが、どんな系でも「全ハミルトニアン」の固有状態でなければ、必ず時間的に変化します。その変化は必ずしも崩壊現象ばかりでは在りません。ですから、「全ハミルトニアン」の固有状態で無かったから、崩壊現象と言う時間の向きの対称性を破る運動が起こったと言う説明にはなって居りません。上でも触れましたが、時間の対称性の破れが起こるのは共鳴特異性が原因なのです。

#1の所でも触れておきましたが、物理学の基本方程式は、時間の向きの反転に対して対称に出来ています。それにもかかわらず、この宇宙には励起状態の崩壊やら熱力学系でのエントロピー増大の法則やらと、この物理学の基本方程式あるいは基本原理と呼ばれる物と一見矛盾する現象が充満しています。そこで、この矛盾をどう解決したら良いかは、物理学の大問題の一つになっています。そして、近年のカオスなどの非線形物理学の進歩や、非平衡統計力学の進歩は、この問題を上で触れた共鳴特異性に結びつけるなどの進歩を伴って、現在多くの研究者達によって論じられている問題です。その結果、崩壊現象における時間とエネルギーの間の「不確定性関係」もその文脈の中で理解されつつ在ります。また、その時間の対称性の破れの文脈の中で、果たして、時間に対応した演算子が作れるものかどうかと言う問題も論じられ始めています。
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#1さんのコメント、興味深く読みました。


私はいいかげんな著者なのかなあ、と思ったのですが、著者の苦しみと見るんですね。
たしかに、なるほどその通りかも。。。

私はそれほど詳しくないので初学者的なコメントを。
たまたま手元にある教科書の
『量子力学I』猪木慶治・川合光著(講談社)
には、「拡張」ではなく「推論」と書いてあります。
位置と運動量の不確定性関係と、時間とエネルギーの不確定性関係とを対応付ける、ひとつの試みではないでしょうか。
「証明」にはこだわらない方がよいと思います。
その二つの不確定性関係の意味は違うのですが。

その違いについて大雑把に書きます。
時間とエネルギーの不確定性関係の簡単な解釈(私の理解)は、
「一定のエネルギー幅ΔEで重ねあわされた量子状態は、Δt程度までしかその状態を保持できない」
というものです。Δt程度時間が経過すると、重ね合わせの位相がばらばらになってしまうからです。

励起状態がある時間で崩壊するのは、その励起状態が「全ハミルトニアン」の固有状態ではないから。
全ハミルトニアンの固有状態でその励起状態を展開すると、だいたいエネルギー幅ΔE程度で重ねあわされた量子状態になっていて、だいたいΔt程度の時間で位相がばらばらになり、それが寿命だという感じです。
位相がばらばらになったあとにぐるっと回って元に戻らないのは、そのポアンカレサイクルを無限大とみなせるからです。デコヒーレンスも関係すると思います。
それは位置と運動量の不確定性とはかなり違った意味ですね。
大雑把ですが参考まで。
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なるほど、量子力学の教科書では「拡張」という言葉を使っているのですか。

その教科書の著者の苦しみが良く判ります。この著者は、時間とエネギーの間に不確定性原理が存在するとは言えないものだから、「拡張」するなんて苦し紛れの言葉を使っているのですね。

以下の話は物理学の上級編です。もし物理学を本気で分かりたいのなら、我慢して読んで下さい。

貴方が書いた、x(t)と運動エネルギーE(v_[x])という特殊なエネルギーの表現を使うことにすれば、「時間とエネルギー」の「不確定性関係式」は、数学の論理から誰にでも導き出せます。ですから、その導出法をここでは示しません。もし、貴方がこの式を導き出せないようだったら、物理学を語るための最も基本的な数学という言語を理解していないことになってしまいますので、何とか導出法を理解して下さい。そうでないと、自分はフランス語の詩を書きたいのだが、フランス語を話すことが出来ない、と言っているような物です。

さて、もっと本質的なのは物理です。たとえこの式を数学的に導出できたからと言って、この式の意味が判るようになるわけでは在りません。物理学では位置も運動量も正準共役の関係にある演算子です。そして、不確定性関係とは、その演算子間の期待値と揺らぎの関係式を表しているだけですので、ミステリーでもなんでもなく、ただ単に、位置も運動量も数ではなくて演算子だよ、と言うことを表現しているだけの関係式です。

ところが、物理学ではエネルギーの方は演算子ですが、物理的に意味の在るエネルギーの期待値には必ず下限が在るために、それに正準共役な時間に対応する演算子が存在できないことを、数学的に厳密に証明できるのです。この証明は、量子力学のスーパースター、パウリによってなされました。ですから、時間とは物理学の中でも特別な物理量で、それに対応する演算子が存在しないのです。その結果、現行のままの物理学では、時間とエネルギーの間には原理的に不確定性関係は存在しません。一見驚きなのですが、相対性理論と言う古典力学では時空の幾何学の中で時間と座標を混ぜることができるのに、量子ではそうは行かず、時間は特別なのです。それにも関わらず、時間と運動エネルギーというエネルギーの中でも特殊なエネルギーの間にだけ強引に不確定性関係みたいな物を書いてみたのが、貴方の表現した「時間とエネルギー」の間の「不確定性関係式」なのです。

物理学では、時間とエネルギーに関するこの「偽物」の不確定性関係が使われる場所は、励起状態のエネルギーの不確定性とその励起状態の寿命に結びつける場合です。ところが、励起状態は私達の未来に向かってのみ崩壊しますから、この現象では、この宇宙の時間には過去から未来へと流れる時間の向きがあることを知っていることになります。これを物理学の専門用語では、「この現象では時間の向きの対称性が破れている」と言います。ところが、古典力学でも量子力学でも相対性理論でも、全ての物理学の基本原理では、時間の向きの対称性は破れておらず、従って、過去現在未来と言う一方方向だけ流れる時間の存在を一見否定しています。従って、そもそも励起状態の寿命と言う概念が、物理学の基本原理と一見矛盾してしまうのです。

このことから分かるように、位置と運動量の不確定性関係と、時間とエネルギーの不確定性関係を同列に扱うことは、物理学では出来ません。その苦しさを、この教科書の著者は「拡張」という、苦し紛れの言葉で表現しているのです。
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