前、鳥羽に旅行に行った時、三島由紀夫の「潮騒」を読みました。
「潮騒」の舞台となった島のモデル、神島っていうのが鳥羽湾にあるそうで
結局、神島までは片道四十分もかかるので、
経由地の菅島へ灯台を見に行くに留まったのですが……
それで質問です。これはタブーなのでしょうが、
「潮騒」って何処が面白いんですか?
ストーリーは、確かにシンプルで美しいと思います。
ヒロインのやることなすこと 溜め息をつくようなものばかりですが
でも、巨匠・三島由紀夫の代表作として讃えられているわりには
面白みが欠ける様な気がして……
ラストの描写が微妙に少ない様な気がする所為かもしれませんが。
「潮騒」のどういうところに世の人が惹かれるのか
是非、ご教示ください。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
「潮騒」は三島の代表作ではありませんよ。
良い譬えが見つからないんですが、J.S. バッハで言えばニ短調の
「トッカータとフーガ」、ベートーヴェンで言えば月光のピアノ・ソナタ、
ショパンで言えば幻想即興曲。「通俗名曲」なんて言われますが、
要するに、その芸術家にとっては決して傑作ではないけれど、
一般的によく知られている作品、初学者のための入門的な作品です。
シェイクスピアで言えば「ロミオとジュリエット」、ゲーテで言えば
「若きウェルテルの悩み」とか。
解説に書いてあると思いますが、「潮騒」の生むきっかけとなったのは
ギリシア旅行の印象(とダフニスとクロエの物語)でして、彼はここに
彼が理解したギリシアの清廉で健全な世界を描こうとしたわけですね。
当然ながら、小綺麗でさっぱりとしてはいるのですが、
全てが健康美に溢れた、ある意味クサい青春ドラマですからアクがないんです。
先述の芸術家の諸作品と同様、実際に通俗的な評価は得られたのですが
(現在も得られていますね。「走れメロス」と合わせて、いかにも教育者が
好みそうな小説です)、文学に通じた人からは、あまり良くは語られません。
三島自身も嫌気がさして、転向しちゃいますからね。
「シンプルで美しい、面白みにかける」っていうのはもっともな意見だと
思います。
ありがとうございます。
確かに、バッハとかベートーヴェンとかショパンとか
よく知られているけど 決して傑作とは言えないものばかりですね。
(音楽好きに、分かりやすい譬えを下さって有り難う)
読んだ本には解説なんて付いてなかった……文庫本じゃなかったしな。
ギリシアの健全青春ドラマが原点なのですか。
パチッ☆-(^ー'*)bナルホド、納得しました。
余談ですが、「走れメロス」はストーリーが面白いから好きですけどね。
というか、ヒーローを地獄に貶めてから最高の王座につかす、っていう手法が好きなんです。
三島由紀夫を読むのは初めてで、前TVで観るまで 割腹自殺した事も知らなかった ビギナーですが
少しでも 三島ワールドへの理解を 深められたと思います。
丁寧なご回答、感謝致します。
No.9
- 回答日時:
再度wildcatです。
三島由紀夫という作家に興味があるなら「岬にての物語」という本を読むと彼の本質を知る手がかりになると思います。
彼は戯曲がすきなんです。「潮騒」にしたって「宴のあと」とか「美徳のよろめき」とかにしてもジャンルを広げているだけ、三島由紀夫の作家人生における劇中劇です。だから、書いてある文章は「他人の目」で書いてありますから風景は人造的だし、感情も機械的で乾燥しています。(と、考えるのは私だけかもしれませんが)
私は、「潮騒」をそういう観点でみることで納得しています。
この回答への補足
皆様のご回答、ありがとうございました。
もうそろそろ、ポイント発行をしたいと思います。
昨日、図書館に行って、「豊饒の海」以外の
「金閣寺」「憂国」「岬にての物語」などを借りてきました。
いつ、読み終わるか。どういう印象を、受けるか。そういう事は分かりませんが、
この作品に出逢えてよかった、と思えるだけの感想が抱けたら、と思っています。
こういう、「どういった解釈をするか」という質問に対してポイントをつけるのに、非常に悩みます。
何か、事実を調べるものなら……できるだけ詳しく書いてくれた人、
私自身に対してメッセージをくれた人など、
そういう基準でポイントを誰に発行するか決めるのですが。
でも、折角回答してくれたのに、ポイントを発行しないのは嫌なのです。
そういう質問なら、最初から締め切りません。
誰にポイントを発行するかまだ決めていませんが、誰だとしてもご了承ください。
そして、これからもmay-riverを宜しくお願いします。
ありがとうございます。
戯曲。シェイクスピアの「ロメオとジュリエット」すらまともに読んでません……。
三島由紀夫はそういうのが好きなのですか。変わった趣味っつーか、凄い人ですね。
「岬にての物語」ですね。一度読んでみます。
No.8
- 回答日時:
若い頃、私はこれは実は三島の本質に近いのではないかと思っていました。
ちょっと斜に構えてですが。皆さんがおっしゃるように「憂国」も「金閣寺」も「豊饒の海」もいいのですが、文学気取りをなくして実はこんな単純でロマンチックなものを彼は書きたいのではないか?なんて思ったりしました。友達にも三島作品が好きなやつは結構いて、その文学青年気取りがいやで私は「潮騒」が三島の本質なんだなぞといったものです。それは私の読み方の浅さもあったのでしょうが、若い頃は何かカッコつけて無理してるような感じがしたものでした。ビートルズがややこしいコード進行から単純なものに帰ったように。じゃ、今は?…若い頃読んだので今また改めて読もうとも思わないというのが本音です。ありがとうございます。
ロマンチックですか……たしかに、ロマンチックです。
私は主人公みたいな人は、タイプじゃないですけど。
でも、シンプルなストーリーほど「売れる小説」にするのは難しいでしょうね。
No.7
- 回答日時:
私は「潮騒」好きですよ。
その時にあった小説だと思います。今はあまり見かけませんが、素直な青春小説ととらえれば、その時の青年はわくわくしました。あの火を「飛び越えて」のフェレーズ良いではないですか、今の青年のそのような一途さ、素直さ、ウブさないですね。その社会で読者は楽しんだと思いますよ。むずかしい話になりますが、小説、大説(?)時にあったものだと思います。今21世紀になってみると20世紀後半の見向きもされない小説いっぱいありますよね。それと同じとは言いませんが、時代を経たらそんなの当たり前かな?ありがとうございます。
私、基本的に平成生まれですしね……
「潮騒」の時代性が、今には合わないっていうのは、ちょっと悲しいかもしれません。
No.6
- 回答日時:
実は私は「潮騒」の良さが理解できないのです。
三島由紀夫では「花盛りの森」から「豊饒の海」まで
読んでいますが、ときたまこのような作品を書くことがあります。
また、太宰治といわれましたが、こちらの方も「晩年」から「グッドバイ」までよんでいます。彼にもときたま「走れメロス」のような作品を書くこともあります。
どちらも感性が似ていると思います。出口のない魂の発露を求めての挑戦的作品だと思います。どういう作品を書くことで自分は満足なのかを自分自身に問いただすために彼らはこういう作品も書いたのでしょう。
ありがとうございます。
偉大な作家でも、傑作ばかり書いている訳ではないのですね。
「更に上を求めて」っていうの、格好イイもの書きのあり方だと思いました!
No.4
- 回答日時:
この頃に書かれた「金閣寺」の方が代表作だと思いますが。
どちらかというとその対にあるものだと思います。彼は「暗い、鬱屈した心」を書くのに卓越した人です。従って、この作品のように明るく爽やかな作品は「苦手」のようです。しかし、彼はこの作品を書いたのは、彼の好きな「葉隠れ」における「忍ぶ恋」を書きたかったからだそうです。
No.3
- 回答日時:
この頃に書かれた「金閣寺」の方が代表作だと思いますが。
どちらかというとその対にあるものだと思います。彼は「暗い、鬱屈した心」を書くのに卓越した人です。従って、この作品のように明るく爽やかな作品は「苦手」のようです。しかし、彼はこの作品を書いたのは、彼の好きな「葉隠れ」における「忍ぶ恋」を書きたかったからだそうです。
No.2
- 回答日時:
「潮騒」・・ですか。
三島作品では異色ですよね。私自身はさっぱりしすぎて余り好きではないのですが、
「シンプルで美しい」ところが評価されているのではないでしょうか。
図書館で探して作品論を読んでみるのもいいかも・・と思うのですが、
自分で調べるほど「潮騒」に執着はないし、不勉強なのでよくわかりません。
お調べになられるのでしたら、文献目録が出ているサイトはあるようですが。
http://www.asahi-net.or.jp/~ds8y-tktr/
(既にご存知だったらすみません。)
余談ですが・・・三島ワールド、ということなら
個人的には「憂国」がお薦め!!だと思うんですけど。(偏見?)
短編だし、いかがですか?(そんな事訊いてないって)
回答になってませんね。失礼しました~~
ありがとうございます。
「作品論」……そんなものがあるのですか。初めて知りました。
図書館で、探して見る事にします。
「憂国」……読み方から分からない(T_T)
今度、図書館で借ります。
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