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通謀虚偽表示により悪意の転得者からその物を取返す場合に、悪意の転得者への給付
訴訟で十分でよいことは分かりましたが、この場合に通謀の相手方の抗弁を聞かずに
通謀虚偽の事実の認定は可能なものなのでしょうか?

通謀の相手方の抗弁がないことから、通謀の相手方へは既判力が及ばないのであれば、
対通謀の相手方との関係では問題ないのかもしれませんが、悪意の転得者にしてみれ
ば、参加者としてでもよいので通謀の相手方の抗弁についても審理を尽くして欲しい
と思うのです。

また、敗訴した悪意の転得者にしてみれば、通謀の相手方から代金を返してほしいところ
ですが、通謀の相手方と争った時に、通謀の事実認定がひっくりかえるようなことになると
話がややこしくなるのではないかと心配されます。

A 回答 (2件)

どうも。

通謀虚偽表示ですか。

まず通謀虚偽表示者をA その相手方をB
そしてAから譲り受けた者をC そして訴えられている
悪意の転得者をDとしましょう。

ここで、3つのパターンがございます。
(1)AはBに不動産を移転するという仮装譲渡をしたものの、
実際には渡さなかった。そして、その後CとDに明け渡した。

虚偽表示は原則として無効。とすれば、AはなおBの存在
に関係なく所有権者であるわけです。とすれば、所有権者
であるAから2重に譲渡した場合は、CとDとの対抗問題
となる。これはいいでしょう。

(2)AはBに不動産を仮装に譲渡し、登記もBに移転した。
するとBは自己に登記があることをいいことに、これを
CとDに2重譲渡した。この場合、AとBの譲り渡しは
原則として無効。ですから、悪意の転得者Dも、
普通の譲り受け人Cも、結局無権利者から譲り受けた
ことになります。この時、Dは悪意ですから、所有権は
手に入れることはできません。ですからCが善意で
あれば、結局はCのもんですね。

(3)この場合が一番問題となります。AはBと通謀し、
実際に登記を譲り渡した。そしてBはDにそれを譲渡した。
そしてそれにもかかわらずAはCに譲渡した。

まず民事訴訟法では、現実的に、シンプルに考えます。
初めからCがAB間に虚偽表示があったんですよ^^
といいながら訴えることって考えにくいですよね。
ですから、まず、Cとしては、Aから土地なりなんなりを
譲り受けた。だからDに対して、私の土地だから返せ。
と給付訴訟を提起することになります。

そしてDの抗弁としては、いいえ。貴方のではない。
私の物だ。と主張し返すわけです。

そしてCはAとの契約書等を持ってきます。Dも同様に
Bとの契約書などを持ってきて、自己の主張の裏付けを
はかります。

しかし今問題なのは、Bに登記があるということですね。
Bに登記がある以上、Aから譲り受けたCは、調査が不足
しているのではないか。と評価されそうです。

ですが重要なルール。登記に公信力はないんですよね。
だから、Bが登記を持っているからと言って、Bが正当な
権利者であり、さらにそれから譲り受けたDが正当な
権利者である。というように、登記を持って判断することは
できないのです。

ですから、証人としてAをその場へ連れてくることになります。
本当に貴方の土地だったのですか?Aとしては通謀虚偽表示
だったのです。と答えるか、それを知られたくないがために
そのことを隠すかもしれません。しかし、Aからかった事実は
確かに契約書に記載されておりますから、何らかの言い訳を
しなければならないわけです。それに、Aとしては、あくまでも
仮に移したのであって、本気ではなかったのですから、
そのまま黙ったりウソをついて、契約が有効になられると、
自分の土地を失うことになってしまい、彼にとってもダメージは
大きいわけです。土地は安くとも数百万はするでしょうから。

そのため、Aとしてはあれは通謀虚偽表示だったんですよ。
と大体の場合いうのではないでしょうか。

で、Aと同じように、Dに対するBも証人として連れてこられる
でしょう。Bとしては、Aから譲り受けたという事実をそのまま
にしておきたいものですから、通謀虚偽表示等なかったよ。
と主張し、Aと対立することになりましょう。

かくして、通謀虚偽表示は本当にあったのか。ということが論点
となり、ここで初めて通謀虚偽事実の認定を行うのです。

ですから全体を通してわかるように、Cは不利です。なぜなら
Bに登記があり、Aが通謀虚偽表示だった。と正直に答える可能性は
決して高くはないでしょうから。

ですからAとBもその身辺について調べられることになり、実際にその
ような取引があったのかどうか実際に調べられます。Aがもともとの
所有者であったのであれば、Bに移る前の登記も勿論あるでしょうから
(登記は所有権の流れを忠実に映す物でありますから)。そして
通謀虚偽表示をする人間と言うのは、やはり目的があるものでして、
強制執行を免れるとか債務を免れる目的で外見を自分のものではない
とするわけですから、近々そのような事実があったことが発覚すれば
かなり疑わしいわけです。
調査次第でばれますでしょう。逆にばれなければ、証拠がない。
ということになりますから、通謀虚偽表示はなかったことになります。

さて、これで通謀虚偽表示は認定されたとします。すると、今度は
第三者の悪意の認定ですよね。やはり主観であるからこの世に、
はい、これが貴方の悪意です。と目に見える形で法廷に出すなど
できようはずもありませんから、やはりその場合も調査をします。
しかし、原告に訴訟責任があります。訴えた以上悪意の存在について
原告が証明をしなければなりません。

謎が残りました。確かに事案によって悪意の内容など違うのでしょうが、
しかし悪意ってどうやって証明するのだろうか。

厳しい問題ですね。ここでは虚偽表示について知っていた。ということの
証明になります。自由心証主義をうまく利用し、裁判官に、これは
通謀虚偽表示について知っていたんだろうなぁ。と思わせるくらいしか
ないのではないでしょうか。

このように通謀虚偽表示について、
議論の限りを尽くすわけです。ですから通謀虚偽表示あり、とここで
確定すれば、のちの判決で例えばAとBが争いあったり、BとDが
争ったりすると、前例を持ち出して、やはり通謀虚偽表示はアったのだ
ということになるはずです。ここで否定されてしまうと、まさに
「矛盾判決」となりますから。

ですから前訴で通謀虚偽表示の有無について、既判力は及ぶと
言えるのではないでしょうか。

既判力は、原則として、判決主文で示された訴訟物たる権利・法律関係
の存否に関する判断についてのみ生じ、理由中でなされる前提問題
たる権利・法律関係についての判断には生じない。(114条1項)

これはどういうことか。上のCとDの給付訴訟で、Cは土地の所有権者。
そしてDは無権利者であること。訴訟物は、まさにその土地はCの物
であるかどうか?ということであって、通謀虚偽表示はどうでもよさげ
です。え?上で私は既判力が及ぶって言ったじゃんって。

通謀虚偽表示についても既判力を認めるよ。等と言いますと、あれ?
これについては認められるのになんであれについては・・・?という
ことになり、どこまで既判力を認めるべきかあやふやになります。

したがってこれは、争点効として扱われることになります。
争点効。すなわち、前訴で当事者が主要な争点として実際に争い、
かつ裁判所がこれを審理して下したその判断について生じる通用力で、
同一の争点を主要な先決問題とした別異の後訴請求の審理において、
その判断に反する主張立証を許さず、これと矛盾する判断を禁止
する効力

つまり通謀虚偽表示が前の訴訟では一番の争点だったわけですが、
これがあったとされて初めて前の訴訟は、Cにその土地の所有権
がありました。と認められた以上、この通謀虚偽表示の部分について
別の訴訟で、あ、やっぱありませんでした。ということは許されない
ということですね。

しかしこの争点効は、一つ問題があります。まず、既判力っていうの
がありますが、これには明文の規定がある。しかし争点効はないんです。
ちょっと考えてみれば、前で認められたことが後で認められないことと
して話が進んでいる。というのは、おかしいことに気づきます。
争点効はこういう論理的な疑問から生まれた効力であり、
それが認められるべきではないか。とされているのです。

争点効を認めると、実はさっきと同じ疑問が出てくるのです。通謀虚偽
表示については認められるんだ。ではその次に重要なことは?悪意
があったこと?これについてはどうして認められなくなっちゃうの?
あまり重要ではないからだよ。どうして重要じゃないってわかるの?
どうやって判断したの?なんとなくわかるじゃん。それじゃだめじゃん。
ということになり、既判力として訴訟物に限り認める。という原則を
予想以上に広げてしまいます。私はこれくらいならいいんじゃないの
って思いますし、皆さんも正直感じると思うんです。しかしそれを
認めちゃうとどこまで認めていいかわからなくなるんですね。

ですから、結局信義則に照らし、あまりにも不当であると言える場合に
認める。と、違った角度で似たような理論を使って判断しています。
判例。建物売買契約で、詐欺取り消しが争点効として争われた事例。
詐欺取り消しは前訴で議論を尽くされていた重要な先決事項だった。
しかしこれについては排斥された。争点効は信義則上認められる
ことになった。
ここでの
基準は、前訴勝訴者が、その利益を維持しながら後訴でそれと
相いれない利益を追求し、又はそれに必然的に伴う不利益を
免れようとして前言を翻すことは許さない、矛盾挙動禁止の原則。
前訴で権利行使を怠った敗訴当事者が、後訴で権利失効の
原則に当てはまるかどうかです。

通謀虚偽表示については、既に議論が尽くされておりますから、
これについて、BがDに対して、通謀虚偽表示はなかったんだよ。
と主張し、AB間の権利の有効性を主張すると、争点効が
あるかどうか判断されることになるわけです。話がややこしくなる。

そう裁判官が判断したとき、争点効は信義則により認められる
ことになりましょう。

おわかりいただけましたか(^益^)
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この回答へのお礼

いつも、噛み砕いた分かりやすいご解説ありがとうございます。

尚、現在、「履行補助者の故意過失」という質問を投稿させていただいております。
こちらも、ご都合がよろしければご回答いただけますと幸いです。

お礼日時:2011/06/19 02:40

>この場合に通謀の相手方の抗弁を聞かずに通謀虚偽の事実の認定は可能なものなのでしょうか?



 それは裁判官の自由心証の問題ですし、当事者から見れば、証明の方法の問題ですから、ケースバイケースです。相手方を証人尋問しなければ、必ず証明できないわけではありません、例えば、相手方が作成した確認書を書証として証明する方法もあるわけです。

>通謀の相手方の抗弁がないことから、通謀の相手方へは既判力が及ばないのであれば、

 抗弁がないからではなく、既判力は原則として訴訟当事者にしか及びません。

>通謀の相手方と争った時に、通謀の事実認定がひっくりかえるようなことになると話がややこしくなるのではないかと心配されます。

 いくら相手方に既判力が及ばない(通謀の事実の認定は、理由中の判断ですから、そもそも、訴訟当事者にすら、既判力は生じません。)からと言って、転得者が、敗訴によって現に目的物を失う以上、転得者の相手方に対する追奪担保責任が認められないというのは、実際問題として、どれくらいあるでしょうか。どうしても、それを心配するのであれば、被告の転得者が、相手方に対して訴訟告知しておけば良いだけの話です。
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この回答へのお礼

いつも、懇切丁寧かつ的確な回答をありがとうございます。
なるほど、訴訟告知すればよいのですね。

尚、現在、「履行補助者の故意過失」という質問を投稿させていただいております。
こちらも、ご都合がよろしければご回答いただけますと幸いです。

お礼日時:2011/06/19 02:45

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