スペースシャトルの大気圏再突入速度はマッハ20前後とのことです。この速度では、成層圏の希薄な大気であっても断熱圧縮に近い状態が起き、ディーゼルエンジンのシリンダー内の空気のように温度が急上昇します。スペースシャトルでは、この温度上昇から金属製の機体を守るために断熱セラミックタイルを下面全体に張り付けていますが、このタイルの質量が打ち上げ時総重量の増加に貢献してしまい、打ち上げの所要推力を増大させます。
そこで、疑問なのですが、再突入時の速度をマッハ20からマッハ2ぐらいまでに減速制御できないものでしょうか。ICBMは最短時間で敵地着弾することが目標ですが、スペースシャトルの場合は充分な時間を費やして再突入することが許されます。そこで、再突入の前段階で後ろ向きに姿勢制御し、メインエンジンの噴射で対気速度を減速できる様に思います。再突入速度の制御ができれば、コンコルドなどの民生用旅客機と同様に金属製の機体が可能になり、打ち上げ総重量の軽減のみでなく、ランディングギアの許容応力を落としたり、制動のキャパシティも下げられるなど、各方面での質量軽減ができると思います。
このような素人考えのソリューションは当然検討したうえで、マッハ20の再突入速度を選択した結果が現実のスペースシャトルであることは想像に難くありません。
では、設計時にマッハ20の再突入速度を選択したのはなぜか? 再突入速度の制御はなにか特別な困難が付きまとうものか、ということです。どなたか再突入速度の制御にお詳しい方からご回答いただければ嬉しいです。
No.1
- 回答日時:
なぜそんなに高速で飛んでるのでしょうか。
理由は遠心力と引力を拮抗させて一定の高度を維持してるからです。
仮にそこまで減速した場合、地球の引力にもろに引かれてしまうでしょう。
その状態で降下となると、急速降下どころじゃないですね。
それにそこまで減速する前に大気圏に突入(落下)してしまいます。
(減速すればするほど遠心力が減って落下しますから。)
じゃぁそれを計算して最初はマッハ20で突入して徐々に減速…ってアレ?
仮にマッハ20からマッハ2まで瞬間的に減速したら、中の人は死んでしまいますよ。
そんな手段もありません。
では大気圏に落下しないように外に向けて噴射ながら減速して…となると、
発射時に使ったブースターと同程度のものと、それを減速中噴射し続けるための大量の燃料が必要になります。
打ち上げ時にあんな大きな燃料タンクとブースターをポイ捨てするのに、
帰りの分まで持ってたら打ち上げ時はどれほど大きなタンクとブースターになるんでしょうね。
回答ありがとうございます。
カプセル型の人工衛星の再突入のお話のようにうかがえました。
スペースシャトルは有翼機として設計されたのですから、空力ブレーキの活用も選択肢にあったと思います。
なぜ、マッハ20ら減速するの”瞬間的に減速”しようなどと考えるのでしょうか?手段のないことを挙げても意味は無く、手段のある事に関して利害得失を考えるのがエンジニアリングではないでしょうか。
発射時には(燃料の質量を含めた)重たい物体に速度エネルギと位置エネルギの両方を同時に与える必要があるために巨大なブースターが必要です。一方、再突入の前段では、すでに軽量ですし、位置エネルギを増減する必要はなく、速度エネルギーだけ制御できれば良いのです。”発射時のブースターと同程度のもの”など必要になるわけありません。
子供だましの議論は止めませんか?
成層圏で一旦、対気速度=0にして、自由落下に身を任せたとして、マッハ20にまで加速するでしょうか?希薄とはえ空気抵抗があるので、もっと低速で空気抵抗と重力加速度が均衡するように思えます。この均衡速度の計算方法が分からないのが素人の悲しいところです。
No.2
- 回答日時:
制御の方法はあるんですよ。
地球に向かってエンジンを噴射させばがら降りていけばいいわけです。
ただ、その時に必要な燃料の量が、ロケット打ち上げの時と同じ量の燃料が必要になります。
その燃料を含んだ重量を打ち上げるロケットはありません。
今の10数倍の推力を持つロケットが必要ですから(^_^;
で、マッハ20はその時に発生するGが人間の耐えられる限界なんですわ (^_^;
回答ありがとうございます。
>その時に必要な燃料の量が、ロケット打ち上げの時と同じ量の燃料が必要になります。
打ち上げ時と、再突入の前段階では、初期重量が全く違うので、”ロケット打ち上げの時と同じ量の燃料が必要”になるわけありません。
子供だましの議論は止めにしませんか?
No.4
- 回答日時:
ロケットの推進に関する公式に「ツィオルコフスキーの公式」があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%82%A3% …
このページの例1では、60tの輸送機を秒速7.9kmまで加速するのに最低315tの推進剤が必要となっていますが、
この逆に秒速7.9kmを0kmに減速する場合にも最低315tが必要です。
これだけの推進剤を何処から調達するのかが問題です。
一番良いのは、「何処でもドア」のようなもので地上の推進剤を転送してもらうことですが、そんなアイテムは実在しません。
輸送機と一緒に打ち上げるのであれば、合計375tを打ち上げることになり1970tの推進剤が必要になります。
輸送機だけの場合と比較して推進剤が6倍以上の必要になります。
回答ありがとうございます。
ツィオルコフスキーの公式は参考になります。
しかし、この公式は「宇宙空間に静止している架空のロケット」の加速・減速を論じておりますので、加速も減速も同様のエネルギーが必要になるわけです。
私の質問は現実のスペースシャトルの設計でして、架空のロケットと異なることは、1.地球表面との位置エネルギー(=高度)の増減がある。2.地球の表面は空気で覆われており、スペースシャトルは有翼機である。という決定的な事実があります。
また、発射のプロセスでは、プロセスで消費される燃料も加速しなければなりませんが、再突入のプロセスでは発射時の燃料は既に無いので、初期条件が異なると申し上げておるのです。したがって、両プロセスで必要なエネルギーが同一ではないし、加えて、打ち上げ時(加速)にはマイナスに働いた空気抵抗が、再突入の減速時にはヘルプになります。これも架空のロケットの公式と、実際のスペースシャトルの設計(=制御方法)との決定的な相違です。
No.5
- 回答日時:
#4再び
初期条件が違うというなら、大気圏突入前のシャトルはどのような状態に有るのでしょうか?
風船や気球のようにただ浮かんでいるのでしょうか?(いわゆる弾道飛行というやつ)
もしそうなら、そもそも減速などする必要はありません。
普通に地球の重力に引かれて落ちればよいだけです。ただのスカイダイビングです。
そうではなく地球周回軌道に乗っていたのであれば、秒速7.9kmを減速しないとだめです。
それに「ツィオルコフスキーの公式」は純粋に物理的な公式なので技術革新で推進剤を減らすことは出来ません。
もちろん、打上時には理論値より多くの推進剤が必要ですし、減速も秒速2km程度までで打ち切れば推進剤を減らすことは出来ますがそれでもシャトル以上の量が必要です。
再度の回答ありがとうございます。
初期条件が違うと申したのは、(加速/減速の)プロセス開始時点で質量が違うこと(燃料の分)です。
>それに「ツィオルコフスキーの公式」は純粋に物理的な公式なので技術革新で推進剤を減らすことは出来ません。
「ツィオルコフスキーの公式」は空気抵抗を無視していますが、現実のシャトルは成層圏で希薄ながらも空気抵抗を受けますので、これが減速に活用できます。(その分、減速材が減るのはご理解いただけますか)
原質問を言いかえると、「なぜスペースシャトルは空気抵抗を活用し、時間を掛けながら減速することにより、急激な温度上昇を回避しようとしないのか?」ですね。
No.6
- 回答日時:
>設計時にマッハ20の再突入速度を選択したのはなぜか?
一番シンプルで、着地点の計算が楽だったからではないでしょうか。
突入時に減速しておけば結果、軽くなり操縦性も上がると思います。自由落下では空気抵抗をうまく使えば数百キロ/毎時以上にはあがらないはずですし、あとはパラシュートで着地。それをしなかったのは確かに疑問ですね。
要は周回から落下へのプロセスをほとんどなりゆきにに任せた結果がマッハ20だったのでしょう。
経費の問題も大きかったと思います。
実際は2度に分けて突入したり、機体をすこしねじって投影面積を大きくしたりしてブレーキをかけることもしているようです。
仰るようなマッハ20を避ける方法としては、ステーションで備蓄の燃料を分けてもらったり、ブースターをあらためて背負い、戻るというような方法が考えられたと思いますがそれをしなかったのは、さほどそれによって安全性が増すわけではなかったということではないでしょうか。帰投のプロセスがより複雑になり、回収地点がわかりにくくなる、つまりは経費が倍増するというような事情もあったのではないかと思いますが、どうでしょうか。
回答ありがとうございます。
やっと話がかみ合ってきたようです。
>着地点の計算が楽だったからではないでしょうか。
たしかに、スペースシャトル以前の宇宙船が海面に着水する方針だったのに比べ、スペースシャトルは常にケネディー宇宙センターに帰還しなくてはならないため、再突入ポイントの範囲は狭い範囲に限定されるであろうことが分かります。
>実際は2度に分けて突入したり、機体をすこしねじって投影面積を大きくしたりしてブレーキをかけることもしているようです。
ここが興味のあるポイントです。
空中から水中に突入する場合は、ある一点(この場合は水面)から100%水中になりますが、宇宙から大気圏に突入する場合は、高度の関数で徐々に大気密度が上昇してきますので、例えば大気密度100分の一の高度で充分に時間を費やして、希薄な大気の抵抗を利用して減速することが可能ではないかと思います。
超高速では空気は圧縮性流体として振る舞うし、1970年代のコンピューター制御では、思うように空気抵抗を利用することが難しかったのだろと推量します。
機体が有翼であっても、飛行機の様な制御ができず、球体の(あるいはカプセル型の)人工衛星と同程度の制御で突入させるしかなかったのかもしれません。
No.7ベストアンサー
- 回答日時:
スペースシャトル(に限りませんが)は、地球を回る方向に対し、逆噴射して大気圏に突入します。
空気抵抗を利用できない高度では、逆噴射しないと軌道が下がらないのです。
軌道が下がると、速度は増します。逆噴射しながら速度を増していくという、ちょっとややこしいことになっていますが、位置エネルギーが減る分、運動エネルギーに変わってしまうせいですね。
これだけでも、結構な燃料が必要です。でも逆噴射すればするだけ速度は増してしまうのです。大気圏にたどり着くためには仕方ありません。
それが、マッハ約20なわけです。
もし、地球に向けて真っ逆さまに落ちるべく、ブースターを使うと、地球に降りられず、楕円軌道に変わって行きます。
角運動量保存法則は崩せないので、そうなるしかありません。
もしそれを続けると、楕円軌道が長くなって行き、その軌道が大気圏に触れるところまで来れば、再突入する可能性があります。ただ、再突入速度はマッハ20より速くなります。少なくとも遅くはできません。
やはり、ほぼ円の軌道を下げてきて、再突入するしかありませんが、そこで再突入速度を遅くするには、逆噴射しつつ、重力に逆らうようにも推力を得なければいけません。
その高度では、ほとんど地表の重力と変わりません。マッハ20から減速しつつ、ほぼ重力に逆らって浮くような推力を増していくしかありません。
現状の技術で出来ないわけではないのですが、やはり燃料が大量になることは避けられません。持って行けるような重量ではないので、あらかじめ軌道上に帰還用補助ロケット(シャトル打ち上げについているものを、もっと大きくする)を置いておく必要があります。
これは技術的にはできます。しかし、それに使う予算が膨大過ぎてできないのです。
ですので、そこで安全を期するプランは考察しないわけではないけど実行できないので、それに代わる、緊急脱出手段が検討されています。
スペースシャトルでも、チャレンジャー事故以降、試験機には搭載されていた脱出装置を改良して、搭載しました。シャトルからパラシュートで脱出するシステムです。
しかし、マッハ3以下に減速するまで使えないものでした。最も危険なときに使えないわけです。
スペースシャトル後継機では、シャトル以前に使われていた、乗り組み員のブロックごと、緊急脱出ロケットにする設計が予定されています。
これは短時間とはいえ、10Gを超える過酷な脱出装置(ソユーズの同等の装置では最高17G)ですが、大気圏内での高速の発進中や帰還中にも使用できるため、採用となったようです。
もちろん、これだけでなく脱出システムの研究は継続して行われています。
大気圏内の減速ですが、確かに空力抵抗を利用することは可能ですし、検討や研究は絶えず行われています。
ただ、マッハ20という速度では、不用意に空力抵抗での減速を利用できないのです。亜音速のパラシュートのよういは行きません。
完全に無風の無風のなかへマッハ20で突入していったとしても、空気の乱流の力が大きすぎ、ちょっとしたバランスの崩れでも、機体がたちまち無茶苦茶なきりもみや反転となります。
ご存じのように、スペースシャトルの機体は、速さを目指す超音速機のようではなく、むしろ丸くむっくりしています。空力抵抗を安全に制動力に活かすには、あれで精いっぱいだったのです。
もちろん、設計当時は精いっぱいでも、技術の進歩は止まりませんから、今後はもっと安全に減速する方向に進んでいくでしょう。
この回答への補足
考えていてひとつ難題に気づきました。
地球との万有引力が地球の重心との距離の二乗に逆比例しているのに、他方の空気密度は地表面から等比減少しているため、ある高度では引力に逆らって高度を維持するのに必要は空気の密度が無いということなんですね。
私は、今まで最高でも地上から12000メートル程しか上昇したことが無いので、高高度での重力減少具合(=少ない)と空気密度の減少具合(=大きい)の差が感覚的につかめていませんでした。
空気密度が希薄な高高度で、地球の引力に逆らって高度を維持するだけの浮力を得ようとすると、充分な対気速度だけでなく巨大な翼が無いと駄目なのかもしれません。
質量の大きな惑星で、気体が無い(少ない)惑星などは、着陸したくとも相当なコストがかかることになりますね。スターウォーズで観るようには行かない側面が多少科学的に理解できました。
回答ありがとうございます。
おかげさまで幾つか重要な知見を得ました。
まずは、角運動量保存則ですね。フィギア・スケーターがはじめは体を開き(回転半径を大きくとり)その後に体を中心にまとめることで回転速度を加速しているイメージが重なります。
次に、実際に上空での逆噴射を利用しているが、マッハ20からマッハ2まで減速するだけの燃料は搭載していないということですか。
そうであれば、残りは、燃料噴射を使わずに、希薄な空気の抵抗を使って、時間を掛けて減速制御できないか、が疑問になります。
空気の密度を調べましたら、高度を縦軸に、空気密度を横軸に対数スケールでとった図上で、直線的に密度が減少しているようです。高度130キロぐらいまでは、片対数グラフ上の直線ですから、綺麗な等比減少です。
ここで想像するのは、降下率を極めて少なくとり、空気密度が一定の高度を周回しながら、希薄な空気の抵抗を使って減速し、断熱圧縮による発熱と、宇宙空間への熱放射がバランスするように制御できないかという事です。
環境の温度は十分低いし、金属機体でも300℃位ならば強度を失わずに効率的に放射冷却が期待できるのではないか。
低密度、超高速の状態での空気抵抗は不安定だとおもいますので、極めて短時間に姿勢のブレを検知し、高速で微修正を繰り返す制御が必要でしょうが、このディジタル制御分野こそ1970年代から現代に向かって急速の発展した分野でもあります。
いずれにしましても、コロンビア号が再突入に際して、耐熱煉瓦の一部剥離が原因で解体してししまった悲劇は記憶に新しいところです。
大気圏再突入という危険で困難なプロセスで、隘路を通って、効果的に安全に地球に帰還できるシステムが開発されることを祈っております。
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