薬剤師国家試験93回問17に、【ラウールの法則が成立する溶液について、揮発性溶媒Aの蒸気圧降下の大きさΔPが下式で示されるのは、溶質Bが不揮発性の場合である。ΔP=PA0・XB(PA0:純溶媒Aの蒸気圧、XB:溶質Bのモル分率)】とあり、この問は正解となっていました。
また別のところに、【ヘンリーの法則⇒揮発性の溶質Bの蒸気圧PBは、溶液中に存在する溶質のモル分率(XB)に比例し、以下の式が成立する。 PB=KB・XB (KB:ヘンリーの法則における定数)】とありました。
そして、薬剤師国家試験第87回問21にアセトン-クロロホルム混合溶液の「縦軸:圧力(bar),横軸:クロロホルムのモル分率」を取ったグラフがありました。
ここで、疑問に思いました。
この87回問21では、クロロホルムが溶質Bにあたると思うのですが、クロロホルムは揮発性の溶質であり、ヘンリーの法則が成り立つのは分かりますが、なぜラウールの法則が成り立つのでしょうか?ラウールの法則は上記で述べたことより不揮発性の溶質じゃないと成り立たない気がするのでですがどうでしょうか?
お手数をおかけしますが、ご存知の方がおられましたら、質問対応よろしくお願いいたします。
No.1
- 回答日時:
法則や定義が出てきた時は一度きちんと書かれたもので当たって見る必要があります。
問題の中に書かれているだけのもので考えていると簡単な表現で済ませてしまっているために意味がよく分からないということが起こります。誤解してしまう時もあります。表現が誤りを含んでいる場合もあります。
ラウールの法則は経験則です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A6% …
混合溶液の蒸気圧Pは成分液体の蒸気圧PA、PBの和になります。P=PA+PB
これは理想気体の示す性質です。ラウールの法則には関係がありません。
成分液体A,Bが単独で存在する時の蒸気圧をPAo,PBo、混合溶液中でのA,Bのモル分率をXA,XBとする時に「PA=PAo・XA 、PB=PBo・XB」と書くことができるというところが「ラウールの法則」です。液体と気体をつないでいる部分です。濃度のある限られた領域でしか成り立たない場合が普通です。この関係が全濃度範囲で成り立つような液体は「理想溶液」といいます。
「理想溶液」と「全濃度範囲でラウールの法則が成り立っているとしていい溶液」とは同じ意味だということになります。
問題文に
>ラウールの法則が成立する溶液について
と書かれています。これは「濃度の全範囲において」という言葉が抜けているように思います。でも抜かして書いている場合が多いのが現状でしょう。
XA≦1 ですから PA≦PAo です。
△PA=PAo-PA=PAo(1-XA)=PAo・XB
これはBがどういう物質であるかには関係なく成り立っています。
溶質Bが揮発性であっても不揮発性であっても成り立っていますので第93回の問17の文章は誤りであることになります。
>揮発性溶媒Aの蒸気圧降下の大きさΔPが下式で示されるのは、溶質Bが不揮発性の場合である。ΔP=PA0・XB(PA0:純溶媒Aの蒸気圧、XB:溶質Bのモル分率)
揮発性溶媒Aに溶質Bを溶かした時の混合溶液の蒸気圧をPとします。Bを溶かしたことによって生じる蒸気圧の変化はPAo-Pです。「この変化 PAO-P が上で考えた△PAに等しくなるのはBが不揮発性の場合である」というのであれば正しいです。全圧にBの寄与が無い場合には全圧の変化はそのままAの蒸気圧の変化になるからです。
問21
ラウールの法則が不揮発性の溶質を溶かしたものについてしか成り立たないという理解は誤りです。どちらも揮発性であるという場面の方が普通なんです。片方が不揮発性というのが特殊なんです。
ラウールの法則をこの問題で初めて知ったというような印象の理解の仕方ですね。
ヘンリーの法則は希薄溶液について成り立つものです。
蒸気圧と溶液中でのモル分率が比例します。
比例係数の値はラウールの場合と異なります。
物理化学の教科書できちんと調べてみるのがいいと思います。
No.2
- 回答日時:
一方有機溶剤のアセトンも揮発性ですから、成立する余地はあります(小生ガス畑で薬学畑では無い為、消防に於ける化学の範囲で回答しています)。
No.3
- 回答日時:
>ラウールの法則は上記で述べたことより不揮発性の溶質じゃないと成り立たない気がするのでですがどうでしょうか?
なぜそう思われるのか、理解に苦しみます。
>アセトン-クロロホルム混合溶液の「縦軸:圧力(bar),横軸:クロロホルムのモル分率」を取ったグラフ
一般にこれをP-x線図といいます。
P-x線図の横軸は通常低沸点成分のモル分率を取ります。
このP-x線図において液相線が直線で表せる場合、その系は理想溶液です。
あるいは縦軸に低沸点成分の気相モル分率、横軸に低沸点成分の液相モル分率を取ったy-x線図において、
点(0,1)と点(1,0)を結んだ対角線を対称軸として折り曲げたとき、左右対称になる系も理想系です。
Raoultの法則は「似た性質の物質同士」で成り立つ法則です。
例えばベンゼン/トルエン系、ヘキサン/ペンタン系など。
不揮発性の場合はそもそも蒸気圧を持たないので、Raoult則に従うはずがありません。
なお、Henryの法則は非凝縮性ガスの液体への溶解度を表すものです。
>クロロホルムは揮発性の溶質であり、ヘンリーの法則が成り立つのは分かりますが
とありますが、これは一概に言えません。
例えばCO2/MEA系などはHenry則に従わないことが知られています。
揮発性があるかないかは重要でなく、溶解度が低い場合にしか成り立ちません。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
たぶん第93回の方のXBは溶液中のモル分率ではなく、系に加えたBの総量の事でしょう。
Bが不揮発性ならBの気液平衡を考えなくて良いので、系に加えた総量≒溶液中に存在する溶質のモル分率です。念のためラウール則・ヘンリー則の定義を確認しておいた方が良いかもしれません。
「気相での成分aの蒸気圧Paが、溶液中のモル分率Xaに比例する」…(※)
(1) aが多い範囲で(※)が成立するときには「ラウール則が成立している」といい、その溶液を「理想溶液」と呼ぶ。
Pa = Pa0・Xa(Pa0は純粋なaの蒸気圧,Xa → 1の極限で Pa = Pa0に帰着)
(2) aが少ない範囲で(※)が成立するときには「ヘンリー則が成立している」という。
Pa = Ha・Xa (Haは比例定数,Xa → 0の極限でPa = 0に帰着)
理想溶液では Pa0 = Ha、実在溶液では一般にPa0≠Ha。
半透膜で仕切られた純粋溶媒と溶液について化学ポテンシャルμのつり合いを考えると、浸透圧Πの式(ファントホッフの式)が求まります。蒸気圧降下ΔPはΠに比例するのでΔP = 定数×Πと表現できます。それをΔP = Pa0・Xbに帰着するために必要な条件は(1)Xbが極小(で成分aの活量Aaについてln Aa ≒ -Xbと書ける)(2)気相が理想気体、ということぐらいなので成分Bの揮発性は関係ないように思います。
参考URL:http://jaguar.eng.shizuoka.ac.jp/lecture/chap/no …
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