以前、このSiteで教えてもらったのですが、人の視細胞(少なくとも中心は)が、RGBに対応する3種類の錐体からなるそうです。
しかし、もし短波長側に対応した錐体が「青」に対応していると仮定すると、400nm~450nmまでの光は「青」にしか見えず、波長が紫外領域端400nmに近づくにつれてどんどん「暗く」なるだけのように思えました。長波長側も同様です。
しかし、マンセルの色立体や色環図などでお馴染みのように、色相は、赤~赤紫~紫~青紫~青と、切れ目なく連続しています。
あるSiteでは、眼の3錐体を「赤、緑、紫」と説明していましたがこれもよく考えると合理的とは思えません。
■人の知覚にとって「紫色」とは何なんでしょうか?眼の3錐体モデルで説明してください。
■レーザのような単色光と、広帯域に広がる連続スペクトラムの場合で各々説明してもらうと助かります。「その辺が鍵かな」とチト思ってますんで...。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
三種類の錐体がRGBに対応する、とは言っても、それぞれワイドスペクトルの感度分布を持っています。
それぞれの錐体の最大感度100%としたときに、1%以上の感度を持つ幅を見ますと、だいたいの値ですが
R: 700nm~400nm (peak=580nmあたり)
G: 660nm~400nm (peak=530nmあたり)
B: 520nm~400nm (peak=440nmあたり)
です。特にRは可視光の全波長に感度があるんですね。またGは空間解像度が高いのが特徴です。Bの特徴は短波長において選択的に感度が高いことです。Bと比べると、RとGは互いによく似た感度分布を持っているとすら言えます。射撃競技では黄色いサングラスをよく使いますが、これは青い光をカットしてBの反応を抑えるので、明るさを犠牲にせずに解像度の高いGがよく働くようにできるからだと思われます。
単波長の光fを見た場合には、その波長における感度R(f), G(f), B(f)に応じた信号が発生します。この信号がさらに脳内で黄-青(Y/B)、赤-緑(R/G)、明るさ(L)、という成分に換算されます。この換算結果が色覚です。このため、同じ光に対して黄と青は同時に反応せず、赤と緑も同時には反応しない。
単波長光源の色の見え方について、反対色のペア青-黄、赤-緑をそれぞれ対比させたとき、どちらが優位になるかを調べると、
青:400-500nm、黄:500-700nm
赤:400-480nm、580-700nm、緑:480-580nm
つまり、赤は長波長の「ホントの赤」以外に、短波長においても緑より優位になることが知られています。しかし短波長においては同時に青も見えているので純粋の赤を見ることはできません。これが紫です。
赤でも緑でもない、という状態は480nm, 580nmの2カ所にあり、480nmでは純粋の青、580nmでは純粋の黄色が見えることになります。一方、青でも黄色でもない、という状態は500nmで、この時純粋の緑が見える。ところが長波長の光に於いても黄の成分が消えきらないために、純粋の赤というのはどうもはっきりしない。
またこの数字と、上記の錐体の感度分布を比べると、たとえばRの感度が最大である580nmにおいて赤が一番強く見えるわけではなく、むしろ緑でも赤でもなく黄色に見える。つまり飽くまでもR(f), G(f), B(f)ではなくY/B, R/G, Lの方で色を感じているんだということです。
さて、連続スペクトルs(f)を見たのなら、R(f), G(f), B(f)の代わりに∫R(f)s(f)df, ∫G(f)s(f)df, ∫B(f)s(f)dfが発生し、これがY/B, R/G, Lに変換されることになります。各積分の値だけが問題なので、同じ答が出るスペクトルsは何種類でも存在する。
かくて、結論といたしましては、紫色の単色光や、青と赤が混ざった混合光、一般に∫R(f)s(f)df, ∫G(f)s(f)df, ∫B(f)sがこれらと同じであるようなスペクトルの光はいずれも紫に見える。Bと、そして若干のRが反応する状態を紫と感じるわけです。
余談ながら:カラーディスプレイや写真や印刷が出すスペクトルは、現実の物体の発する光のスペクトルとは似ても似つかない。それにも関わらずおなじ色に見えてしまうのは、ヒトの目の仕組みのせいです。SF映画で宇宙人がテレビ見てたりしますけど、R-G-Bの錐体で色を見ているのではない生物(たとえば蝶の目は5原色)がカラーモニターを見ても、奇妙奇天烈な色に見えるはずですね。なお、ヒトでも4種類目の錐体を持つ個体が少数ながら居ると言われております。
この回答への補足
補足に書くのが適切かどうか分かりませんが、CDや、MOで、回折光を観察すると、青の隣に確かに「紫」が見えます。ということは、一部疑問は残りますが、基本的にstomachmanさんの説明で納得しました。
どうもありがとうございました。一応締め切ります。
実は昨夜電車の中で、「完全に分かった」とヒラメキまして、どなたか回答くださっているか楽しみにして開けてみましたところ、stomachmanさんから丁寧な回答を頂き、しかも私の「ヒラメキ」とは聊か異なる説明で、大変面白く拝見させて頂きました。前回私の不適切な発言のためにスレッド自体が削除されてしまい、stomachmanさんにはご迷惑をおかけしました。遅くなりましたがお詫び申し上げます。
1)「Rは可視光の全波長に感度がある」:
なるほど、そういうもんなんですか。手元の資料中の、眼のRGB錐体に対応したモデルと思われる「CIE1931RGB表色系のと等色関数」によると、R(γ)は確かに広範囲に感度分布を持っているものの、435.8nmを下限としています。これは必ずしも人間の眼を正確にモデル化してないのでしょうか?
2)「Gは空間解像度が高いのが特徴」:
前回も伺いましたね。感度が高いという話は他でも聞いたことがあるのですが、G錐体の密度が高いということですか?また、密度が高いからこそ感度も高いと...。
3)「射撃競技では黄色いサングラス云々」:
なるほど!事実だと面白い話ですね。
4)「脳内で黄-青(Y/B)、赤-緑(R/G)、明るさ(L)、という成分に換算」:
そういうもんなんですか..。RGBに対する感光特性が同じでないので完全に対等に取り合うつもりはないのでが、大雑把には対等と考えると、この説明には対称性が欠けているように感じます。「Y/B」は補色関係であるのに、「R/G」は補色関係でない。「R/C(yan)」、「G/M(agenta)」なら分かりますが...。
5)「青:400-500nm、黄:500-700nm 赤:400-480nm、580-700nm、緑:480-580nm 」:
なるほど。どなたかが実験されたのでしょうから信じるほかないですね。
6)「短波長においては同時に青も見えているので純粋の赤を見ることはできません。これが紫」:
ようやく核心部分に入ってきました。実は昨夜電車の中でヒラメイたのは、
■単色色で「紫」は存在しない。青--青緑(=シアン)--緑--黄色--赤だけ。
■そうでない場合、単に中波長域(=「緑」)が短波長・長波長域に比べて落ち込んでいる、または、「赤」と「青」色の混合が紫。これは光の加色混合や補色の理論でもよく知られている。
■「紫外線」などという表現は間違っている。「青外線」と言うべきでは?
です。しかし、stomachmanさんの話だと、単色光でも「紫」は存在することになります。すると虹を観察すると、青の外側に紫が見える理屈ですね?
7)「長波長の光に於いても黄の成分が消えきらないために純粋の赤というのはどうもはっきりしない」:
そうなんでしょうか?私には疑問に思えます。粗っぽいながら、単純にRGB,CMYモデルで考えれば済むように思ったのですが...。
・RBGは眼の3錐体に対応
・CMYは所謂「補色」であり、隣接2原色の混色でもある。但し、Magenta(=赤紫)はR-Bはスペクトル上は隣接していないもののRGBの対称性(巡回性)を考えると「隣接」としてよい。
・何を「純粋」とするかは単に定義の問題では?
8)「R(f), G(f), B(f)ではなくY/B, R/G, Lの方で色を感じている」:
なるほど。4)のことですね。
9)「同じ答が出るスペクトルsは何種類でも存在する」:
所謂「色相(=Hue)」はまさにそうなんでしょうけど、「彩度(=Saturation)」まで入れるとどうなんでしょう?私には、R,G,Bは一次独立な直交するベクトルに思えます。つまりある色のRGB空間での「座標値」は一意だと思えます。実際、RGB<->HLS空間への変換も一意です。
10)「ヒトでも4種類目の錐体を持つ個体が少数ながら居る」:
もし事実なら面白いですね。「蝶の目は5原色」も大したもんで、紋白蝶も人間から見ればただの白だが、赤外だが、紫外域で立派な「色」を持っているそうですね?
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