父が他界しました。父は、公正証書遺言を残しており、そこに私の名前はありませんでした。法定相続人は、私と兄弟2人の3人です。
私は、遺留分減殺請求をしました。遺産の中には、父の興した、兄弟2人が取締役になっているA社を債務者とする銀行の根抵当権の設定された土地が含まれています。相続開始時には、A社は銀行からの借入金はありませんでした。従って、遺産の土地は根抵当権を外せる状態でありました。一方で兄弟たちと父から多額の借入金があります。父が他界した7年前に、A社の銀行からの借入金を父と兄弟たちが肩代わりした格好になっています。
兄弟たちは、「価額弁償の抗弁」は行わないと言ってきました。この場合、私は遺留分減殺請求時に遡って、土地の遺留分割合1/6において兄弟たちと共有になると思います。
ここで私は次のことが心配でなりません。
兄弟たちが銀行から根抵当権を担保に銀行からA社に借入をさせて、A社に兄弟たちからの借入金を返済させるということです。そして、私が、共有物分割の訴えを起こして競売になった場合、根抵当権者である銀行に配当され、私には配当がないのではないかということです。
このようなスキムは法律上あり得るのでしょうか?
No.2
- 回答日時:
遺留分減殺請求の効果は,考えておられるとおりで,直接物的効果を生じる(不動産は共有となり,金銭債権は分割される。
)とされています。ただ,遺留分(金額)の計算は複雑で,(相続時財産+生前贈与等の持ち戻し-債務)×遺留分割合-相続による取得財産
という計算になり,この金額を遺留分以上にもらった相続人に割り付けて,その金額により共有を生じますので,他の相続財産(質問文からも,お父さんの会社に対する貸付金があると見えます。)や生前贈与の存否,負債の存否により,具体的な割合は変わってきます。子供3人が相続人だからといって,必ずしも,すぐに6分の1の共有になるわけではありませ。
それはともかく,今回は,土地は相続財産だが,そこに,会社を債務者とする根抵当権が設定されているということですね。そうした場合,根抵当権設定者(お父さんのことです)の相続開始は,根抵当権の被担保債権の元本確定事由にはなりませんので,会社としては,なお根抵当権の担保枠を自由に利用できる立場にあります。根抵当権の被担保債権の元本の確定とは,確定以後には,新しく発生する債権(元本債権)は,その根抵当権の被担保債権とはならないというものです。
ですから,今の状況では,遺留分減殺請求により,土地に対するあなたの持分が決定した後も,根抵当権の被担保債権が発生する可能性はあります。
ただ,銀行との関係で,被担保債権がなくなったのは7年前ということですから,ことによると,銀行としては,その時点で,会社との貸付取引(与信契約)を終了している可能性があります。その場合には,法律的に厳密にいえば,当該与信契約に基づいて設定された根抵当権を再度利用することはできなくなります。(現実には,新たな貸付取引をする場合でも,前の契約で設定された根抵当権を流用することがないとはいえないと思います。)
そういうことで,現状は,新たな被担保債権が発生する可能性は「ない」可能性もあるが,「ない」と断言することはできないという状況と思えます。この点は,銀行に確認されるのがよいと思います。(少なくとも土地に共有登記が入れば対応してくれると思います。)
次に,仮に銀行が会社に対して新たな貸付をして,新たな被担保債権が生じた場合ですが,その場合には,共有物分割請求をして競売になっても,当然,買受代金から被担保債権が先に弁済されることになります。あなたはその残りからの配当しか受けることができません。また,被担保債権の額が,土地の買受代金を上回る可能性があるとなると,共有物分割による競売の場合でも,競売が無剰余(差押債権者に配当がないこと)で取り消されることもあると思います。(ちょっとその点の実務の取扱は確かではありません。)要するに,競売の方法による共有物分割も,共有物分割による競売を命じる判決をもらったとしても,実際上できなくなる可能性があります。
いずれにしても,根抵当権の被担保債権が土地の価格を下回っていれば,競売が成り立ち,あなたの考えるスキームが実行される可能性はあることになります。
ただ,このようにして土地が競売された場合には,保証人が債務を弁済した場合と同様に,会社に対して,求償権が生じます。要するに,あなたが失った財産部分については,本来債務を弁済すべき会社から,あなた自身にその分を払い戻してもらうという権利が残ることになるわけです。
この回答への補足
大変ご丁寧な回答ありがとうございました。
良く理解できました。会社に対して求償権が生じるということですが、会社の実態は、実質、債務超過と兄弟たちは主張しています。実際の決算書では、1億4000万円の剰余金があることになっています。従って、取締役である兄弟たちは、悪意で借入を行い、当初から返済する意思はないものと想像しています。このような場合、会社法第429条は適用されるのでしょうか?
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
補足質問に対する答えになりますが,会社に対して担保を提供している者は,会社との関係では第三者になりますので,会社法429条が適用されるか,と問われると,「適用される」が答えになります。
しかし,適用された結果,損害賠償が認められるかどうかは,それは具体的な事実関係による訳で,結果がどうなるかは,何ともいえません。
ごくごく簡単にいえば,担保の提供を受けている以上,その担保をどう利用するかは,会社経営上の合理的な裁量の範囲だ,と言われたときに,それをどう打ち破ることができるか,ということになるように思います。
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