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チャイコフスキーがリズムの天才といわれる理由はなんですか?
また、それがよくわかる曲があれば教えてほしいです。
そしてできれば詳しく説明してほしいです。
クラシック初心者なのですみませんがよろしくお願いします!ちなみに私は「悲愴」の第四楽章とか弦楽セレナーデが好きです。

A 回答 (8件)

こんにちは。



チャイコフスキーはリズムの天才、という言い方は、ネットで調べてみると、誰か一人の言ったことが広まっているように思えます。ウィキペディアの日本語版の説明には「リズムの天才と言われ、一つのフレーズを発展の連結にしたり、半音階上昇させたり、または下降させたりと他の作曲家には見られないものがある」と書いてあるのですが、ネットに出ているほかの情報でも、この文章が丸ごとコピーされているようです。この説明の文章自体が不正確で、あまり適切なものとはいえません。また、テレビの音楽番組などでも「リズムの天才」という言い方がされているようですが、これは、日本でよくある、入門者向けのやや通俗的な「レッテル」ともいえます。それに、チャイコフスキーの特徴を言うならば、リズムと並んで、名旋律作家としての天才的な能力も挙げるべきでしょう。
しかし、チャイコフスキーの音楽のリズムが多様、巧みで、生き生きしているのは事実ですので、それについて少し考えてみましょう。理由はいろいろありますが、まず、バレエ音楽をたくさん書いている関係上、リズムに特徴があるいろいろな民族舞踊の音楽の応用があるため、ということは言えるでしょう。バレエ音楽だけでなく、例えば、「悲愴」交響曲の第2楽章も、5拍子のワルツですが、これも民族的なものです。普通の、3拍子のワルツとはまた違った優雅さがあります。また、一つのメロディーを書くにも、いろいろなリズムの形を豊富に使うので、変化に富んだ、生き生きしたメロディーになるということはあります。例えば、ヴァイオリン協奏曲の第1主題なども、長い音符、十六分音符、三連符、付点音符など、異なるリズムが次々と出てきて、変化に富み、音楽が常に前へ前へと進んでいくその書法は、大変魅力的なものです。まず、このメロディーを聴いてみましょう。

ヴァイオリン協奏曲 第1主題


あと、もう一つ特徴的なのは、これも民族的なものだと思いますが、伴奏のリズムがしばしば「後打ち」のリズムになることです。つまり、「ブンチャ、ブンチャ」、というリズムではなくて、「(休)チャ、(休)チャ」というリズムです。この例は、非常にたくさんあります。軽妙で、躍動感のあるリズムで、チャイコフスキーの特徴の一つです。同じく、ヴァイオリン協奏曲の第3楽章の一部を引用します。

https://www.youtube.com/watch?v=cI8siIwR9JM&t=25 …

もう一つ、「くるみ割り人形」の中の「後打ち」のリズムの例。

https://www.youtube.com/watch?v=gTxgnVH_-Zs&t=0m …

これから、チャイコフスキーに特徴的なリズムの処理法をいくつかご紹介しますが、文章で書くだけではなかなか伝えにくいので、楽譜と音源でご説明します。画像は、回答一つに一枚しか張れませんので、何回かに分けて出します。
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すみません。

動画を張るとき、特定の個所から再生されるようにリンクを作ったのですが、教えて!gooのサイトのリニューアルのあと、うまく再生できなくなりました。もう一度張りますが、うまくいかないかもしれないので、開始からの時間も書いておきます。

回答No.3
ヴァイオリン協奏曲 第1主題(開始から1分13秒の個所)


回答No.4
セレナード(開始から8分34秒の個所)
https://www.youtube.com/watch?v=BNxwVOZwu10&t=08 …

回答No.5
交響曲第6番「悲愴」(開始から45分1秒の個所)
https://www.youtube.com/watch?v=JLjGEgJXjwA&t=45 …

回答No.6
交響曲第5番 第3楽章(開始から30分25秒の個所)
https://www.youtube.com/watch?v=e4Lxc6w61J4&t=30 …
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最後に、交響曲第4番第1楽章のテーマを挙げます。

この例では、「後打ち」のリズムと、「ヘミオラ」のリズムの両方を見ることができます。8分の9拍子で書かれていますが、演奏効果は、2+2+2+3拍子という不思議なものになります。



チャイコフスキーのリズムの特徴といえる例をいくつか挙げてきましたが、これでも、その多様なリズムのほんの一部です。しかし、優れた作曲家はみなそれぞれ、特徴的なリズムの語法を持っています。ほかの作曲家の曲を聴くときも、リズムに注意して比較すると面白いと思います。

以上、御参考まで。
「チャイコフスキーがリズムの天才といわれる」の回答画像7
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もう一つの例は、交響曲第5番の第3楽章「ワルツ」の冒頭です。

4小節+4小節の整ったフレーズの間に、3小節のグループが挿入されて、さらにリズムも、4分音符で1+2+2+4という構造になって3拍子から少しはずれます。これによって、流動的で洒落た経過句ができあがり、再び最初のメロディーが戻った時に解放感が生まれます。



さらに続きます。
「チャイコフスキーがリズムの天才といわれる」の回答画像6
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次の例は、「悲愴」の第4楽章の途中の部分です。

さっきの例と同じくヘミオラというリズムになっていますが、そのあと2小節をひとまとめにして、さらにリズムが組み替えてあります。つまり、最初は4分の3拍子で、1-2-3,1-2-3、というリズムなのですが、途中から、「1-2」「3-1」「2-3」と、4分の3拍子2小節の中に、4分の2拍子が3小節入っているようなリズムになります。これは、非常に切迫した雰囲気を出します。そのあと旋律は、逆に、2小節一組の長いフレーズに変わって、旋律は4分の2拍子、伴奏は4分の3拍子のような立体的な構造とともに高揚していきます。



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「チャイコフスキーがリズムの天才といわれる」の回答画像5
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まず、「ヘミオラ」と呼ばれるリズムの形ですが、これは、3拍子の曲の中で、2拍ずつのまとまりを作って、違う拍子感を出す方法です。

ブラームスもよく使いましたが、チャイコフスキーもたくさん使っています。ここにあげる例は、弦楽セレナードの一部です。8分の6拍子なので、基本は、1~3拍目の前半と、4~6拍目の後半に分かれるのですが、途中で、1-2,3-4,5-6拍の三つのグループに組み替えられます。そのリズムの変化を聴いてください。この部分の楽譜を添付します。



似たような例をもう一つ上げておきます。ピアノ協奏曲の第2楽章の一部です。この曲も8分の6拍子で書かれていますが、やはり1-2-3、4-5-6の二つに分かれる小節と、1-2、3-4、5-6の三つに分かれる小節が交錯します。テンポが速いのでめまぐるしく、一瞬、何拍子かわからなくなりますが、意外性に満ちていて、スリリングな効果を上げます。

https://www.youtube.com/watch?v=ItSJ_woWnmk&t=23 …

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「チャイコフスキーがリズムの天才といわれる」の回答画像4
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No.1です。

追加情報です。

チャイコフスキーでは、しばしば「複数の拍子が同時進行」します。
例えば、質問者さんがお好きな「悲愴」の第1楽章や第3楽章では、「4分の4拍子」と「8分の12拍子」が同時進行します。(1拍の中に2連符と3連符とが同居)

第1楽章:下記の7:00あたりから。メロディは「4分の4拍子」、伴奏は「8分の12拍子」。
第3楽章:28:00あたりから、第3楽章全体。ここでもメロディは「4分の4拍子」、伴奏は「8分の12拍子」。

(No.1で挙げたショルティの演奏は、第3楽章がせわしないのでこちらに差し替えました)

それから、No.1の交響曲第4番第1楽章の拍子は、「8分の12拍子」ではなくて「8分の9拍子」でした。訂正します。
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この回答へのお礼

お返事が遅くなってしまってすみません。ひとつひとつ聴かせていただきました♪丁寧に回答してくれてとても嬉しいです!
最初とか二つ目の動画に出てくるのは、二拍三連ですかね?最近習ったリズムなので自信ないですが…
交響曲の4番も初めて聴きましたが、8分の9ってわかってもわかんないです(笑)指揮を見ててもわからない…楽譜が見てみたいです><
違う拍子が同時進行ってあるんですね!初めて知りました。でもそれって簡単にいうとメロディーの1拍に対して伴奏が三連符ってこと??難しいです、違ってたらごめんなさい。
色々考えながら聴けて楽しかったです。どうもありがとうございました。

お礼日時:2015/03/07 05:15

 リズムの天才ですか。

あまりそういう言い方を聞いたことはありませんが。

 チャイコフスキーは、バレエ音楽をいくつか作っていて、それがとても音楽的でありながら踊りやすい、ということがあるのかもしれません。

 たとえば、有名な「眠りの森の美女」の「ワルツ」。1:00あたりからのわくわくするような動きは、「ワルツ」の3拍子とは異なる音形なのに、リズムがはっきりしていて推進感がありますね。


 くるみ割り人形の中の「雪のワルツ」の「粉雪」のような木管のきらきらフレーズや、下記の2:10や3:50あたりのホルンのフレーズなどは、独特なリズム感ですね。全体として、「抒情的」なメロディと内在するリズム感の組み合わせが心地よいですよね。
https://www.youtube.com/watch?v=YZ6wc8H2Cn8

 同じくるみ割り人形のこんなシーンを見れば、各曲の特徴に合わせてリズム感覚が抜群だったことが分かります。踊り手や観衆に、息をつかせずに心地よい躍動感を伝えていますよね。
https://www.youtube.com/watch?v=X3woDDzZu9c&list …


 それに加え、ロシア的なちょっと割り切れないリズム感もあります。
 有名なところでは、交響曲第6番「悲愴」の第2楽章。一見、優雅なワルツ風ですが、きちんと聞いてみれば5拍子です。(下記演奏だと17:00あたりから)
https://www.youtube.com/watch?v=96jjojJbSF8&spfr …

 同様に、交響曲第4番の第1楽章の主部(下記の1:40あたりから)は、何拍子かわからない、不思議な感覚です。(楽譜上は、8分の12拍子)
 特に、第1楽章の終結部分、下記の演奏では17:30あたりからは、拍子もリズムも判別不能なほどです。
https://www.youtube.com/watch?v=t1_xO3TrBDI
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