No.4ベストアンサー
- 回答日時:
頭をひねってみました。
トニ・モリスン、お読みなら、新しいところを行きましょう。
というのもね、やはりアメリカの80年代~90年代にかけて、エスニック・マイノリティの文学研究というのは、大変進歩したんです。
それといっしょに(ここらへんは非常に微妙な領域で、粗っぽくイコールで結んじゃいけません)ポリカル・コレクトネスを求める運動も、昂揚していきます。
モリスンがやったみたいに、白人文学のなかに描かれた黒人像を読み解いていく、みたいな研究も出てくるのですが、一方で、差別摘発みたいな動きもでてくる。
たとえば邦訳されたものでいうと、バーバラ・キングソルヴァー『野菜畑のインディアン』(早川書房)、これは作者に差別的意図がまったくないのはあきらかなんですが、にもかかわらず、白人の女性が、見知らぬネイティヴ・アメリカンの女性から、片田舎のロードハウスで赤ん坊を育ててくれ、と渡される、その子は性的虐待を受けている、みたいな設定を糾弾されることになります(そうして、続編の『天国の豚』が書かれなければならなくなってしまう)。
ここらへんの動きをよくあらわしたものが、フィリップ・ロス『ヒューマン・ステイン』(上岡伸雄訳 集英社)、『白いカラス』というタイトルで映画化もされました。
白人が黒人を小説に登場させる場合も、従来のステロタイプ的な登場のさせかたでは絶対にやっていけなくなっている。その作家がどういう立場を取るか、鮮明にすることを求められてるんです。
もちろん、差別は良くない、差別的な人間は悪いんだ、みたいな、ごくごく良識的な作品もありますが、やっぱりそういうのは読んでつまらない。
そういうなかで、ちょっと古いですがトム・ウルフの『虚栄の篝火』(文藝春秋社)。
トム・ウルフぐらい偉くなると、こんなこと書いてもいいのかな、みたいな感じもしますが。
ここには黒人暴動の作られ方が出てきて、そのなかでの教会の役割みたいなものがよくわかって、個人的に大変おもしろかった。
単に白人-黒人の図式ではなく、オランダ系ワスプ、ユダヤ系、イタリア系、とさまざまなエスニシティが入り組んでいて、ほんと、一筋縄ではいかないアメリカの情況の一端が垣間見えます。ただ舞台が80年代なのがちょっと残念。これも映画になっていますが、やはり糾弾の対象になって、何度も何度も作り変えられた結果、冒頭の長廻ししか見るところのない映画になってしまってます。
手に入りにくいみたいですが、ラッセル・バンクス『大陸漂流』(黒原敏行訳 早川書房)
これはすごい(と意味のない太鼓判)。
あとはポール・オースター『ミスター・ヴァーティゴ』(柴田元幸訳 新潮社)
これも一筋縄ではいかない。ただ、基本はメルヘンとして読むべきなんだろうと思います。
黒人観がわかるかどうかは微妙なんだけど、わたしが個人的に好きなトマス・ピンチョンから『秘密のインテグレーション』(『スロー・ラーナー』所収 志村正雄訳 ちくま文庫)。
これはラストが忘れられない。
頭をひねって出てきたのがここらへんです。何らかの参考になれば。
二度目の回答ありがとうございます!
挙げられた中では特にトム・ウルフ、早速さがしてみたいと思います。
やはり現代のアメリカについて考察するとなると、黒人差別問題のみならず、複雑化したエスニシティ、各マイノリティ同士の関係性等も外せませんね。
No.6
- 回答日時:
もう読んでいるかもしれませんが、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』なんてどうですか?
初めてこの本を読んだ時、白人側の黒人に対する見方に私はびっくりしました。
どう見ても、著者ミッチェルの自分でもそうは思っていない差別意識が無意識に表れているように見えるんですよね。
あからさまな黒人に対する敵視・蔑視ではなく、「黒人は無能な子供のようなもの。だから、白人が奴隷として導いていかなければ生きていけない。それは保護と同然である」というような見方が、敵視じゃない分差別とわかりにくくてて、根の深さを感じたんですよね。
当時の南部白人の黒人に対する視点がよくわかります。
『風とともに去りぬ』、以前から読まなきゃと思いつつ未だに読んでいません…。
黒人を当然のごとく「無能な子供」と例える感覚は、差別意識の本質を窺わせますね。
回答ありがとうございました!
No.5
- 回答日時:
ジェイムズ・エルロイの通称LA四部作をお奨めします。
《ブラックダリア》《ビッグ・ノーウェア》《LAコンフィデンシャル》《ホワイト・ジャズ》の四作品です。この四部作には、本来アメリカ人の白人が抱えているが、隠したがっている、あるいは怯えていることをそのままストレートに書いてあります。
他の作家が砂糖を塗した「清らかなアメリカ」を書いてきたのと異なり、「いや、本当はこうだろう」と、「少なくても、俺はこうだ」と書いています。
これら四部作の登場人物たちは、白人は悪いことをする、黒人はもっと酷い、エスパニックなんか屁みたいに扱っています。つまりいいとこなんてまるでないかのような人物が次から次へと登場して来ます。そしてその中で「生きるための根拠」とな何かを、その人物が人種や移住地などと絡めて考え、行動する姿を描いているのです。「まず自分が生きる」というその極限から、白人から黒人をエスパニックを、また黒人から白人をエスパニックをという視点が描かれています。
奇麗事などなく、時として救いはない世界が展開されます。しかし、それが俺達の本音であり隠したいことであり、怯えていることなんだ。こういうことをノワール小説(悪人小説)という形式を借りて描いた現代アメリカ文学の傑作群です。
ありがとうございます◎
映画版『LAコンフィデンシャル』はだいぶ前に観ましたが、当時は何も気にせずただただストーリーを追っていました。。(もしくは原作よりだいぶソフトだったのかも知れませんね)
新しい観点から原作、そして他の三作品に目を通してみます。
No.3
- 回答日時:
トニ・モリスン『白さと想像力 ――アメリカ文学の黒人像』(大社淑子訳 朝日選書)はすでにお読みでしょうか。
モリスンは同書のなかで、E.A.ポー、ウィラ・キャザー、マーク・トウェイン、アーネスト・ヘミングウェイなどをとりあげ、「アフリカニズム」がどのような形で現れているか、アメリカ白人の黒人像がどのようなものなのかを具体的に見ていきます。
そのほかにもヘンリー・ジェイムズ、ウィリアム・フォークナー、カースン・マッカラーズなど、多くの作家の作品にも言及されています。
このご質問のきっかけが、モリスンをお読みになったもので、それよりさらにほかのものを、というご趣旨であれば、また頭をひねってみますが。
さらにイギリス文学になると、それこそシェイクスピアの『オセロ』から始まって、ディケンズの『大いなる遺産』、R.L.スティーヴンスンの短編、ジョン・コンラッドなど、あげていけばきりがありませんが、モリスンの本にあたるような本はちょっと思いつきません。
「黒人観」というものではありませんが、帝国主義の植民地支配、という観点で、コンラッドやキプリング、オースティンの作品を読み解いたE.サイード『文化と帝国主義』(大橋洋一訳 みすず書房)といったような本もあります。
この回答への補足
ありがとうございます。
おっしゃる通り、『白さと想像力』を含むモリスン等の作品を意識しての質問でした。
モリスンの描く黒人像と対比させられるような「白人による黒人像」をピックアップできれば、と考えています。
No.2
- 回答日時:
こんばんは。
黒人差別問題についてお調べになっているのなら、お役に立たないとは思いますが、ご参考までに。
ダシール・ハメット「夜陰」↓
参考URL:http://www.aga-search.com/32-2spade.html
No.1
- 回答日時:
『アンクル・トムの小屋』。
作者ストウ夫人が南北戦争時代に執筆し、奴隷制度廃止を訴えた。古いですが代表的な本でしょう。参考URL:http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4750310 …
ありがとうございます◎
資料としても活用できそうなので、参考にしてみます。
余談ですがリンク先に紹介されていたもう一冊『The Bluest Eye』、非常に好きな作品です。
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